TeaParty ~紅茶のお茶会~

『音色のお茶会』

恋宿り

嫌な空模様になった…。
部活中に感じたその思いは部室へと戻る頃には現実になっていた。
ポツポツと落ちてきた雨粒はあっという間にザーザー降りになる。

傘、持ってないし…。
そう思うと着替えの手が止まる。
このまま濡れて帰るのならば制服よりジャージのほうがましだ。

仕方ない、行くか…。
しばらく空を眺めていたが、どうみても止みそうにない。
その雨の中に意を決して飛び出した。

「土浦」
追い越したその人物に声を掛けられ思わず足が止まった。
振り返った瞬間、真っ直ぐ見つめられた視線がぶつかる。

「月森…」
その顔を見て少し驚く。
見たはずの後ろ姿にも気付かずに走っていたらしい。

「ずっと走ってきたのか」
言いながら、すっ、と差していた傘を差し出されその距離が縮まる。
何故か、ドキリとした。

「あぁ…」
短い返事の後、変な沈黙が続く。
傘に当たる雨の音が、やけに耳につくように思えた。

「雨宿りで家に…寄っていくか」
自然と近い位置にある耳元にささやくような言葉が届く。
その言葉の意味することを、俺は悟る。

こっからなら自分家のほうが近い…。
そう思いながらも俺は小さくうなずいた。
雨宿りなんて、ただの言い訳だから。



恋宿り
2008.5.20
コルダ話15作目。
超短編。雨が降ったので思い付きました。
ラストは相変わらずですよ。