TeaParty ~紅茶のお茶会~

『音色のお茶会』

石鹸ミルフィーユ *

 逢うのは久し振りで、だからもちろん触れ合うのも久し振り
 それがいくら濃密であろうとも一回やって、はい、お終い、なんてことにはなるはずもなく
 汗をかいたから、なんてそれはただの言い訳で、二人で傾れ込んだのはバスルーム
 玄関から寝室へと場所を変えた更に後の、バスルームでのそれは一体、何回目だったのだろうか
 さすがに逆上せると湯槽を出ても名残は尽きず、二人の距離は身体を洗うにしては密着し過ぎている

「これはなんだ?」
 目的というよりはひとつの手段である身体を洗うためのボディソープの、その手前には見慣れない小さな塊
「あぁ、石鹸だ。詰め替えの新しいやつ、買ってくるの忘れたからさ」
 小振りの四角い石鹸を三段に重ね、その上には更に、丸い石鹸がひとつ
「なんだかケーキみたいだな」
 触れば確かに石鹸で、でももしバスルームではなかったら、石鹸とは判らないかもしれない
「ひとつじゃ小さくて物足りないし、ちょっと面白いだろ」
 それは、ほんのちょっぴりの遊び心

「俺もケーキを食べていいだろうか」
 ケーキみたいな石鹸は、思ったよりも泡立ちがいい
「お前、食い過ぎ」
 ふわふわの泡はまるで、生クリームを思わせる
「ダメか?」
 差し詰め上気した肌は、焼きたてのスポンジといったところだろうか
「残さずに食うなら、構わないぜ」

 触れた唇は、ケーキよりもはるかに甘い



石鹸ミルフィーユ
2010.7.16
コルダ話56作目。
急に思い付いた超短編。
色々なんだかあれな感じですが、
さらっと読んでくださればとっても嬉しいです。