『音色のお茶会』
贅沢な休日
いつもとは少し違う休日
それは思ったより贅沢な休日
話の途中で急に静かになったと思えば、月森はうとうとしていて今にも眠ってしまいそうだった。
声を掛けると返事はするが、どうも明確な意思というよりは無意識に近いらしい。
今日は久し振りに二人で出掛けた。少し遠出をしたのは俺たちにとって初めてかもしれない。
いつもならコンサートとか楽器店とか、二人で出掛けるといえばそんな場所が多かった。
でも最近の月森は音楽ばかりに根を詰め過ぎているような気がして、俺は外へと連れ出した。
散歩くらいのつもりで家を出たが、折角だからと電車に乗って郊外にある大きな公園に向かった。
その公園に目的があったわけではなく、ただ二人で歩き、そしていっぱい話をした。
話なんてどこでも出来ると思っていたが、自然の中だからこそ話せることもあるらしい。
普段の月森からは考えられないほどよくしゃべり、俺たちは本当に色々な話をした。
行きの電車ではどこか不機嫌そうな表情だったが、帰りの電車では穏やかな表情になっていた。
今日一日が月森の息抜きになったのならば嬉しいと、俺はそんな風に思った。
けれど普段とは違う行動をして、月森を疲れさせてしまったのだろうか。
それが音楽ならば、どんなに長い時間を練習に充てていてもこんな風に寝てしまうことはないだろう。
音楽を介さずに月森と過ごしたのは初めてで、それが月森にとっていいことなのかどうかわからない。
俺はとても有意義な時間を過ごせたと思っているが、俺一人だけが楽しかったのでは意味がない。
そっと近付き正面に座ると、眠ってしまったであろう月森の顔を覗き込むように見上げた。
その眠そうな目を開けた月森の腕が、俺が声を掛けるよりも前にそっと抱き締めてくる。
腕の中に抱き込まれ、そして耳元でささやかれた言葉がとても嬉しかった。
たったそれだけなのに、今日が更に嬉しくて楽しくて幸せなものになる。
これからも月森と色々な休日を過ごせたらいいと、俺は月森の背に腕を回しながらそう思った。
贅沢な休日
2010.2.11
コルダ話52作目。
サイト開設10年記念のお話です。
甘めの話を意識して書いたつもりですが…。
最後、月森君がなんと言ったかはご想像にお任せします。
コルダ話52作目。
サイト開設10年記念のお話です。
甘めの話を意識して書いたつもりですが…。
最後、月森君がなんと言ったかはご想像にお任せします。