TeaParty ~紅茶のお茶会~

『音色のお茶会』

花に嵐3

 嵐のような時間が過ぎれば静寂が訪れる…予定だったが、静寂というよりはただ単に指一本も動かしたくないくらいの眠気と怠さと疲労感で、おとなしくしている他になす術がない状態だった。
 歩いて帰ってきた時点で既に蓄積されていた疲労は、更に上乗せされて俺へと襲い掛かっている。ある意味どちらも自業自得だが、さすがにこの状態は辛過ぎる。
 それでも心は充分に満たされていて、結構、無茶なことをした自分に感心やら苦笑いやら、そんなことを感じる余裕だけはあった。
 歩いて帰ってきたほうが早かったのか、電車の再開を待って帰ってきたほうが早かったのか。そこはやはり気になったが、確かめるつもりは全くない。
 無理をしたのは月森のため。というより、自分のためだからそれでいい。

 とろとろと夢と現の間を彷徨っていると、月森は俺の髪を撫でるように触れてきた。
 時折、物足りなげに何度も落とされるキスは、俺にもどこか物足りなさを感じさせはしたが、さすがに答えるだけの体力はもう残っていない。
 だが、月森をまだもう少し感じていたくて、明日はきっと筋肉痛で辛い思いをするのだろうとか、明日こそ月森とゆっくり話をしたいとか、そういえば明日の予定を確認していなかったとか、そんなことを考えて意識を現に引き留めている。
 そんな努力も長くは持たず、繰り返す瞬きの回数が減り、そのうちに瞼が上がらなくなってしまった。
「土浦? 寝てしまったのか?」
 聞こえてくる月森の声に寝ていないと声を出すことも首を振ることも出来ないでいれば、包み込まれるようにそっと抱き締められた。
 伝わる月森の体温があたたかくて気持ちいい。
 月森が傍にいることを実感して、また同じ時間を過ごせることが幸せで、心もあたたかくなった。

 ずっと傍にいられないこともわかっている。
 それでもまたこうやって傍にいることを望み、そして叶えてきた。
 これからもずっと、俺たちはお互いへの想いを抱えていくのだろう。

「おやすみ…」
 囁くようなその声に誘われ、俺は眠りへと落ちていった。



花に嵐
2011.11.2
コルダ話68作目。
台風の日に電車が止まり、歩いて帰った体験をネタに
LR話を書いてみました!!
でも、9割以上、妄想でフィクションです(笑)