15cm F6 変形ドブソニアン

→望遠鏡


1.計画

移動観望用の望遠鏡が欲しくなりました。
20cmドブソニアンは有るのですが、軽自動車への積み込みには場所をとってしまい結構大変です。
この荷台寸法に合わせると、焦点距離は900mm以下にしたいところです。
以前、観望会で10cm〜11.4cm反射望遠鏡を覗かせてもらったとき、惑星(木星、土星)が予想以上に良く見えました。
そこで15cmF6の望遠鏡を製作する事にしました。

手軽に観望したいと言うことで、架台はドブソニアンタイプになります。しかし通常の架台では高度の低い星を見るときに、接眼部の位置が低くなり覗くのが大変です。例えば、15cmF6で鏡筒重心から接眼部までの距離を36cmとします。すると望遠鏡を水平にした時と天頂を向けた時では36cmの高低差が有ります。この高低差を少なく出来れば椅子に座ったままで星を観望できます。

ドブソニアンでは鏡筒の重心に耳軸を取り付けますが、この耳軸の取りつけ位置を鏡筒重心からずらして取り付ければ接眼部の移動量を少なく出来ます。もちろん、その為にはバランスツウェイトが必要になります。

耳軸の位置を色々変えて見た結果、鏡筒重心から接眼部側に10cm、鏡筒の直角方向に15cmの場所に耳軸を設ける事にしました。この場合、接眼部の高度差は最大で15cmになり、椅子に座ったまま地平線から天頂までを観望出来ます。
      (→設計図はこちら。破線の円弧が接眼部の軌跡です)。

 

2.鏡材の準備

-1.主鏡

20年以上前に磨いた鏡(自作1号鏡)が有ります。これは15cmF7.3ですが、F6を作れば使うことかなくなってしまう為、この鏡を再研磨する事にしました(記念に残そうとも思いましたが)。

-2.斜鏡

1号望遠鏡のものをそのまま使います(短径48mm)。

3.鏡面研磨(主鏡)

-1.砂ずり

#80〜2000まで砂ずりします。
球面計を使い、目的の焦点距離にします。

今回は裏面も平らに研磨しました。 

裏面砂ずりの様子
     

#500の反転ずり
   

 

球面計で曲率を測ります

        

-2.磨き

ウッドピッチ(大和研材より購入)を使いました。
裏面はコルク板にセリウムを塗って磨きました。

ピッチ盤
  

磨きの様子
  

 

裏面磨きのコルク盤

 

 

-3.整形&テスト

フーコーテストにて鏡面測定しながらパラボラ面に仕上げます。  

テスト結果    D152mm、曲率半径R1778mm

測定デ−タ

理論値 r69=0  r54=1.04  r37=1.91  r17=2.52
測定値 r69=0  r54=1.06  r37=2.03  r17=2.75

1/10λ

主鏡測定のマスク

(精度測定には木村さんのExcel鏡面研磨支援ソフトを使用しました)

 

4.鏡筒製作

1号望遠鏡のものを200mmカットして使いました。主鏡セル、斜鏡金具もそのまま使います。

架台取り付部は
5mmアルミ板で出来ていて、
M8ネジ2本で架台に取り付けます。

9mm合板の四角筒です。
接眼部はボーグヘリコイドTです。

5.架台製作

基本的にはドブソニアンタイプですが、耳軸を鏡筒には取りつけずに、鏡筒から斜め前に出る錘入れの箱に取り付けます。

左の箱の中ヘ右の錘をいれます。

錘にはM8長ネジが付き、これで錘の位置を調整します。
ちょうどエレベーターのようになります。

鏡筒はつまみの付いたM8ネジで取り付けます。

  →耳軸の加工はこちら。ジグソーで切りました.

錘箱と錘

 

 

側板の強度を得るために前板を斜めに取り付けます。
前板は収納時の事を考え、蝶番でつながれ真直ぐに
立てることが出来ます。
(M5ネジを左右各1本はずします)

本体

 

 

土台とその上の回転盤はM8ボルトでつながれています。
ここは通常はずしません。

回転盤に本体を乗せ、4本のネジで固定します。

土台と回転盤

 

 

6.完成 

全体写真

収納状態

 

2000年 石川町SLFにて

 

 

7.反省

とても気に入っています。
やはり椅子に座ったまま観望出来るので楽です。
全体としては思ったより重くなってしまいましたが(27kg)、分割すれば7〜8kgなので問題有りません。
水平回転が少し重くなってしまいました。
斜鏡が大きいので、もう少し小さくしようと思います。(→35mm斜鏡セルを製作しました)