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歯 成 |
12歳の時、 僕はジャイアンツの王貞治選手に憧れて、 クラスの同級生と、草野球チームを作った。 監督には、言い出しっぺの僕がなった。 が、あんまりうまくないくせに、威張ってばかりいる監督に、 選手のみんなは嫌気がさしたのだろう。 たった一試合やっただけで、誰も練習に来なくなった。 12歳の時、 僕は同じクラスの女の子が好きになった。 顔を見る度に意地悪をしていたので、 その子は僕を避けるようになった。 僕には、他人との接触の仕方がわからなかった。 だから、いつも一人だった。 夏休みは自転車に乗って、一人で市内を走り回った。 市内にある七件の本屋に順番に立ち寄り、 店内をグルっと歩き回ったら、すぐ次に向かう。 別に、本が買いたかったわけではない。 僕はどこかへ行きたかった。 が、それがどこなのか、僕自身にもわからなかったのだ。 僕はいつも不安でいっぱいで、 早く大人になりたいと願っていた。 だから、毎日ペダルをこいで、 その不安から必死で逃げようとしていたのだろう。 12歳の時、 僕はいつも歯を食いしばっていた。 だから、テレビや映画で、歯を食いしばっている男の子を見ると、 ついつい涙が出てしまう。 『スタンド・バイ・ミー』が好きなのは、きっとそのためだと思う。 というわけで、今回は、歯を食いしばる男の子の物語。 舞台は1980年。今から18年前の、夏休みだ。 |
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