庶民的タイ国料理店 チャクラ
~密閉空間でなぶり殺し編~
札幌は狸小路の横のビルに誰が見ても怪しい看板がある。
その看板は一見すると、いや、かなり遠くから見てもコカコーラの看板なのだが、
近づくと気づく点がある。
・・・英語ではないのだ。
それこそ「ミミズが這った」ような字体。タイ語であることは少し見ればわかるだろう。
こういった看板に惹かれてしまうのは社会不適合でしょうか。そうですか。
その店に日曜日の夜に足を運んだのだが、なんと定休日。
日曜に休むとはなんと商売をする気がない事か。ますます惹かれる。
必ずこの店に足を踏み入れてやる。
そして、店の名もわからないまま決行の日は訪れてしまった。
ビルに入り階段を下る。下るのだ。
あれだけ派手な看板を掲げておいて地下に潜らせるとはいい度胸だ。
そして俺達は店内へと足を踏み入れた。
タイ。誰がどう見てもそこはタイ。かなりいい。
これだけ徹底していると気持ちがいい。レジ横にはタイ語の新聞まである。
これは期待できそうだ。嬉々としながらメニューを開く。
まずはドリンク類を見ていこう。ビール党の俺は当然ビールメニューを見る。
ホアンタムで見たことのある名が並ぶ。タイガーもあるようだ。
当然目を引く名もある。「ビンタン」を始めとしてその名前だけでも面白い。
俺と友人のSはその中から適当にチョイスした。
後はハズシ王冒険家のGに期待だな。
G「タイファンタメロンを。」
俺&S「・・・!?」
何だそれは。どこからそんな面白い物を見つけてくるんだ。
トレジャーハンターGというやつか?(古)
だが、事はさらに風雲急を告げる。
店員「パイナップルも入荷してますよ。」
G「あ、じゃあそれで。」
俺&S「・・・オイ、悪化したぞ。」
タイのファンタ。しかもパイナップル味。
ファンタのパイナップル味なんて日本でさえ見たことないぞ。
さすがハズシ王冒険家である。
そしてドリンク類が届き、乾杯となった。
見慣れないビール瓶が二つに、もっと見慣れない缶が一つ。
迷っていても仕方ない。飲み始めよう。
そして次の瞬間、Gの動きが止まった。.
「甘っ!」
不穏な予感は的中した。やはりやってくれたなGことハズシ(以下略
ジュースだから甘いのは当然だろうと思いつつ、一口貰ってみる。
二人「・・・甘すぎだろ、これは!」
甘い、というよりくど過ぎる。あえて表現するなら
駄菓子屋の30円ジュースを親の仇とばかりに濃縮した感じなのだ。
3人そろって故郷の「大光」という店を思い出してしまった。すごいパワーである。
Gはかなり長い間この強敵と向かい合うこととなった。これがタイ人の好みなのか?
だとすれば恐ろしい民族である。どうりでどの国も植民地にしなかったわけだ。
そして、食べ物の注文へと入っていく。
冒険家「タイ風パイナップルチャーハンを。」
・・・まだ懲りてなかったのか。不屈の精神が冒険家を支えているのだろうか。
あれ飲んだだけでもう3ヶ月はパイナップルなんて見たくもないぞ、俺は。
しかし、ここで大きな誤算があった。
3人「・・・美味い!?」そう、美味かったのである。
時たま思いっきりパイナップルの味がして、こういった料理に不慣れな
典型的日本人である俺達は閉口したが、チャーハンそのものが実にいい味なのだ。
ナッツがそのまんまの形で入ってるのには驚いたが。
俺達はチャーハンを異常な速さで平らげ、2度目の注文に入った。
魅力的なメニューたちから何を頼むか思案した挙句、俺達は
鶏肉の激辛炒めを頼んだ。そしてもう一つ。
この店の全てとも言える物、この店に来た意義とも言えるメニューを注文した。
「蛙の辛い炒め物」である。
こんなメニューがあるのに頼まなくては探検隊の名折れである。
むしろこれが全てだ。冒険が面白いってのあるし。
そしてしばらくして、まず激辛炒めが来た。
・・・見た目で辛い。梅干を見て唾液が出る感じだ。
3人で箸をつける。3人同時なのはちょっとした心中のようなものである。
・・・なんてことはない。激辛といっても客が食べられるように加減はしてあるだろう。
それに俺は辛いものには自信があるのだ。
しかし、一口目を口に飲み込んでから十数秒後、それは起こった。
「・・・!?」咳き込む。3人同時。まさに心中。
辛い。外国の唐辛子はじわじわ来るというが、まさにそれ。
他の物の味などわからなくさせるパワーがあった。この料理が着てやっと
Gのタイファンタパイナップルは姿を消すこととなる。
そして激辛炒めに驚くのもつかの間、俺たちの前に奴が姿をあらわした。
見た目の普通さが恐ろしい、蛙の辛い炒め物。
赤ピーマンなどの中に、明らかに見慣れない肉がある。
そして何故骨付きなのだ!?
気持ち悪いという言葉を抑えつつ箸をつける。
つーか何故この二人は嬉々としているのだ。おかしいぞお前等。
とにかく見ていても減らないので箸をつける。
だが、それがいけなかった。いや、いずれは訪れることなのだ。
早いか遅いか、それだけの問題だ。
俺「手か?手なのか!?」
G「いや、むしろ水掻きだろう?」
S「いや、論点はそこじゃないだろう!?」
負けた。完全敗北である。イッツァチャクラーズリーサルウェポンね。
俺達はタイ語の新聞を手に店を去った。
必ず誰かに食わせる。その思いを胸に・・・。
庶民的タイ国料理店 チャクラ