中田吉法氏インタビュー

1998/11/18 23:23〜24:53 IRCにて収録


---------- それでは、中田さんのインタビューをはじめさせていただきます。最初にプロフィールを頂けますか?

はい。中田@筑波大こと、中田吉法と申します。エヴァ関係の物を書くときはWhite、オリジナル小説のときは白霧草と名乗ってます。筑波大学情報学類4年次3年(^^;、エヴァ小説ML出版部初代首謀者、オリジナル小説同人誌Progressive編集人、ってあたりが今の肩書きでしょうか。

---------- エヴァ小説ML出版部設立の経緯などをお聞かせ頂けますか?

発端は、ML設立直前ぐらいに同じにML参加予定だった、MIDNiGHT Home Page主催の秋葉氏とのチャットからでした。「せっかくMLできるんだから、記念に何か作りたいね」って話から始まって、シャレのつもりでMLに流したらあれよあれよとホントに本を作ってしまったという感じでした。出だしからしていいかげんだったので、問題処理能力が低いとか誰も動かないとかが原因で、毎度毎度あちこちに迷惑をかけるヒドイ集団です。

---------- そもそもエヴァ小説MLの設立過程っていうのは、どんな感じだったんでしょう?

それもひどくいいかげんで、確かエヴァ小説MLの管理人の稲葉さんが、あちらこちらの掲示板に書き込みして人を集めたのだと憶えてます。それで適当に集まった面子が、最初の面々でした。

---------- なんか、あんまり高尚じゃないですね(^^; (関係者の方、すいません)

---------- まあ、小説のMLなので出版部も自然と出来たと考えて良いですね。

どうでしょう? 「本作ろう!」って話を持ち出したのは立ち上げ直後なんですけど、いきなりだったもんで、大混乱を引き起こしたという記憶があります。それに、正直な話、あんまり自然な流れでもなかったですね。密かに「オリジナル小説の世界に2、3人引きずりこむ」という思惑があったので(笑)

---------- 数々の思惑が交錯していたと(^^;

そうですね。純粋にエヴァ小説の本に決定するまでも、いくらか議論がありましたし。

---------- それは出版部においてですか?

一応そういうことになるんでしょうか。もうエヴァ小説自体冷めかけてるからオリジナルも入れようとか、オリジナルだけにした方がいいとか、そういう話がありました。
ただ、初期のころはML本体と出版部とがほぼ同一体だったので、「出版部」としての議論だったかと訊かれると、「良くわからない」としか答えられません(^^; それではやりにくいからと、次第に分割されたんですけど。
でも、はじまりがいいかげんなものはやることもいいかげんで、MLの管理人は稲葉さん、出版部の宣伝ページは私、でも通販はnaryさん、というわけのわからない事態になって、挙げ句の果てに今年出したCD-ROMでは代表がAWの林さんに移りました。

---------- 実際に出版部の活動家(^^;っていうのは何人ぐらいなんですか?

毎回入れ替わりがあったりするんで、総勢で20人強になったかと思います。平均だと10人強ってとこですかね。あ、これは小説書いた人の数だけでです。絵描きの人も入れると、全部で40人ぐらい関わってるんじゃないでしょうか。

---------- それで、出版部の活動実績としてはどのようなものがありますか?

まずは1997年夏発行の「小夜曲〜Serenade〜」、同年冬発行の「輪舞曲〜Ronde〜」で、ここまでが紙の同人誌。あとはそれらのPDF版及び新作小説集「組曲〜Suite〜」を収録したCD-ROMの「舞踏会〜Dance Party〜」、で全部ですね。多分、「出版部」の名義でこれ以上活動することはないんじゃないかと思います。個人的な希望ではあとひとつ「舞踏会〜Dance Party〜」のオンライン版を作りたいとは思ってます。でも、参加人数が多すぎて、権利関係がモメそうなのがネックなんですが。

---------- 出版部の活動は、Inetから実体化して、従来の同人活動になったわけですが、メンバーの中には通常の同人活動がはじめての人もいらっしゃったんじゃないですか?

はい。はじめての人の方が多かったぐらいです。かくいう私もほとんどはじめてでした。それが迷惑かけまくる要因でもあったんですが。

---------- 中田さん自身の、エヴァ小説ML以前の活動っていうのは、どのような感じだったんでしょう?

小説そのものは中学ぐらいから書き始めて、高校のサークルでも少々書いてました。そのころはぽつぽつと書くぐらいで、今ほど目的意識もなかったです。ただ、なんとなく書いていたって感じですね。で、大学に入った年にエヴァが始まりまして、エヴァの熱にうかされた勢いで某ML(gainax-mlから枝分れした、非公開のエヴァのMLなんですけど)上で小説を「連載」しはじめました。それが、"After 10 years"です。で、本編放映中にアフターストーリが終わるというアホなことになったんですが、まぁ「インターネット上のエヴァ小説」という観点なら最初期のものだったと思います。あとはエヴァンゲリオン小説化計画Genesis Q希望新世紀エヴァンゲリオンX、あたりの公開を見て「俺もWebに載せよう」と思い、ついでに続編を書き始めたました。

---------- 中学高校の時代にはどのようなものを書いていらっしゃったんでしょう?

ジュブナイル風の小説、スペオペもどき、SF短編ってあたりです。

---------- エヴァの小説をやるきっかけってなんだったんでしょう?

熱にうかされて、ですね。冗談みたいに聞こえるかもしれないけど、本放送中のあの頃はホントにエヴァ中心に世界が回っていたので(笑) 直接の原因は、シンジとアスカのキスシーンがあった話――「嘘と沈黙」だから、16か17話でしたか。それのキスシーンを見て、「ああ、10年後の話でこういうシーンがあるかもなぁ」と想像というか妄想したそのままを書き出しにして、勢いにまかせてダダーッと書いてしまいました。

---------- まあ、同じ熱病にかかったおかげで知り合ってこんな事してるわけですから、良かったんでしょうね、結果的には(^^;

どうなんでしょ? 主因じゃないにせよ、エヴァ小説に逃避できてしまったのは留年した一因なので、複雑な気分なんですが(^^;

---------- 学校の方では、どのような事をご専門にされてるんですか?

情報工学ですね。コンピュータをいじりたおして遊んでます。実は、今日の夕方まで必死でレポート用のプログラム組んでました。

---------- 進級、今度こそがんばって下さいね(^^;

なんとかなると思います。と言っても、レポート提出した今となっては、祈るのみなんですが(^^;。

---------- それじゃあ、次は今後の事についてお話頂きたいのですが、出版部から先鋭化(^^;したProgressiveについてお聞かせ下さい。

はい。エヴァ小説ML出版部設立当初から、林さんと共謀して「オリジナル小説に何人か引きずり込む」という目論見があったのですが、念願かなって(笑)昨年の冬にオリジナル小説短編集"Progressive"を発行できました。もちろん、何人か引きずり込んだ上で、です(笑)
名前が「プログレッシブ・ナイフ」から取ったように思えるのは偶然の一致です。単に「前進し続ける」って意味の単語を探しただけなんです。けど、元がエヴァ小説であることも残せるし、気に入ってる名前です。
活動の方針は、名が体を現わすというか、「本気で書くことを追求する」という前提の下で、短編小説集としてできるだけのクオリティを求めるということです。ただ、参加している面子が皆忙しく、なかなか時間を割けないのが現状ですが。

---------- 今年の夏には第2弾も出されましたよね。今後はどんなペースで活動されるんでしょう?

今のところは夏と冬のコミックマーケットに合わせて年2冊、ということなんですが、冗談半分ながら話だけは出ているGenesis Q画像補完計画遂行委員会の絵描きさんたちとの合同企画とかが立ち上がったら、年1冊になるかもしれません。後は、各自に長編の別冊でも出してほしいとかも考えてます。まぁ、先のことは先にならなきゃわからないですが(^^;

---------- 中田さん自身は、どのようなものを書いていきたいとお考えですか?

いろいろ、ですね。Progressiveに限らないんですが、特にProgressiveでは、書いたことのないもの、実験的なものを書きたいです。実際、現在企画進行中の3も含めて、出来る限り挑戦の姿勢でやってます。大前提として、「いいもの」になるようにってことも考えてるんですが、それ以上に失敗を怖れないでやらなきゃっていうか。
それと、構成力に欠けるきらいがあるので、いっぺんちゃんと長編を筋道立てて書かないといけないな、と漠然と思ってます。でも、学業はともかく、多趣味なのが災いしてあっちこっちから編集の仕事やらなんやらがポコポコ湧いて出てくるんでなかなか時間がないんですよね。

---------- 書いた事がないけど書いてみたいジャンルなんかありますか?

中学のころから考えると、あらかた手を出した気もするんですよね……少女小説モドキはやったし、ライトファンタジーも、ホラーも。ああ、歴史小説は憧れますね。知識が足りないので無理ですが。あと、童話とか推理小説も。
ただ、「何が書きたい」じゃなくって、書けるものならなんでも書きたいってのがホントのところですね。

---------- 実際に書いてらっしゃる中田さんから、これから書きたい人へのメッセージなんかありますか?

読むだけじゃなく、映画やら音楽やら漫画やらアニメやらドラマやらを見聞きして、「悔しいっ!」て思えるようになれ、ってことですかね。そういう悔しい気持ち、充実した敗北感の積み重ねがないと、ものは作れないんじゃないかと、思うんです。まだ私なんかが口にするべき言葉じゃないのかもしれないですが。それでも、悔しいと思ってきた気持ちはたくさんある、その気持ちを積み重ねたいと、真剣に想ってます。

---------- それでは最後に、中田さんにとってエヴァってなんだったんでしょう?

熱病であり、走り出すためのきっかけだったんだと思います。10年後にどんなふうに想い返すかはわからないけれど、確実に私の人生を分岐させた何か、ですね。そういう意味では、あの年にエヴァを見られたことは、幸運だったと、思いたいです。

---------- 今日は長時間にわたり有り難うございました。これからの中田さんのご活躍を心よりお祈りしています。編集の方と、学業の方もがんばって下さい(^^;

はい、まだまだ未熟ですが、留年しない程度に頑張りたいと思います。


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