いっちー氏インタビュー

1998/11/26 23:35〜25:12 IRCにて収録


---------- それでは、ichiさんのインタビューを始めたいと思います。よろしくお願いします。

こちらこそ、よろしくお願いします(どきどき)

---------- まず最初にプロフィールの方を頂けますか?

はい。Inet上では「ichi」あるいは「いっちー」、Niftyでは「AVO」と名乗っています。1965年8月生まれ33歳。妻と二人家族。外資系の金融機関に勤務。現在は資産運用業務に携わっています。

---------- 今、NHK特集とかでアツい業界ですね。

はい、まさしくあの世界です。ちなみに前の業務(金融先物)に携わっていた時、あの有名なLTCMも私の顧客の一つでした。良いお客さんでしたよ(笑)

---------- ほんとにいつもお忙しそうなんですが、HPやったり、書く時間確保したりするのが大変でしょう?

そうなんです。そのような活動の時間はほとんど取ることが出来ません。実はHPも最近はほとんど手を入れることが出来ず、最終更新からなんと2ヶ月半も経過してしまいました(爆) 天使シリーズの最終話「鎮魂歌」も一年以上更新が止まっています。ノートパソコンを手に入れてからは通勤の行き帰りの電車の中、片道30分間だけが主な活動時間です。そんなわけでNiftyでは何とか活動しているんですが。

---------- Niftyでの活動と言いますと?

わたし、元々アニメ創作フォーラム(FANCREA)のエヴァ創作系会議室「居酒屋豊泰創作厨房」(#15)で活動していたのです。 私がそこでアクティブだった頃と同時期(1996年から1997年前半)にそこで活動していた面々が、今は個人的なパティオ(非公開会議室)に集まってまして、普段はそこで他愛も無い雑談をしているんです。時々OFF会をしたり、最近では恋愛ビジュアルノベルを作ろうなんて企画も進行していたりしますが。

---------- HP立ち上げより先にNiftyの活動があったんですか?

そのとおりです。「天使」も元々はNiftyのその会議室で発表したものでした。もっとも、それに先立つエヴァとの出会いはWeb上だったので、そこでNiftyでそのような会議室が存在することを活動を知り、参加したという形です。そもそも、その頃WebでのHPの開き方なんて皆目見当も付かなかったので、とりあえず自分の参加できる環境の整っているNiftyで活動を始めたわけです。

---------- HPを立ち上げられたのはいつだったんでしょう?

自前のHPは1996年9月です。それ以前にいくぽんさんという方にお誘いいただき、彼のHPに間借りする形で8月に「天使」はWeb上に発表されています。いくぽんさんとはそのNiftyの会議室で知り合った仲です。

---------- 本放送当時のNiftyでエヴァってどんな感じだったんでしょう?

う〜ん。実は私、本放送当時はエヴァの存在をほとんど知らなかったんです。ましてやNiftyに専門の会議室があるなんて夢にも思いませんでした。本放送時、私がエヴァを観たのはたったの一回。それもあの「見て! 私を見て!」で始まったという(笑) 偶然だったんですけどね。「今日日のアニメはえらくシリアスで難解だな〜」と思ったのを覚えています。で、放送終了後にWebでの騒ぎから「ああ、あのアニメか」という感じでエヴァを認識して、HP巡りをしているうちにどっぷり浸かってしまったという展開でした。だから、本放送時のエヴァもNiftyもWebもあまり良く知らないんです。

---------- 本放送見てらっしゃらないのに、8月に作品発表って、ずいぶん早いですね。

ええ、実はNiftyでの公開はそれよりも更に早くて7月だったんです(笑) 結構知られていることですが、「天使」は動く絵はほとんど見ないで書いたんですよ(爆) 主な情報はWebで拾いました。その節は西村さんや林さんのHPのお世話になりました(笑) 他に参考にしたのは、まだ黎明期だったWeb上でのパロディ小説。Qとか、Xとか、LC小説化計画ですね。 加えてNiftyの会議室の過去ログから、作品を頭の中で再構成して書き上げたのが「天使」だったわけです。よくやったもんだと、今になって思います。 でも、書き始めたらあっという間に仕上がってしまいました。確か4週間くらいしかかからなかったと思います。結局全話分のビデオを見たのはその年の暮れ近くになってからでした。

---------- 「天使」以降のエヴァ関連活動ってどのような感じになるでしょう?

「天使」が思いのほか好評だったので、勢いで自前のHPを開設したのが1996年9月。そこから「天使」続編に当たる「親愛なる」を書き始めまして、これが完結したのが翌年の春映画公開の前日(笑) その後、夏映画前に更に続編となる「鎮魂歌」を書き始めたのですが、これが中断したままです。また、1997年初めに発足した「エヴァ小説ML」に参加しまして、ここから派生した出版部では中田さんたちにお世話になりました。「小夜曲」と「輪舞曲」に参加させていただきました。あと、1996年後半は某HPのチャットに頻繁に出没して、暮れにOFF会を開いたりしました。その節は、ご参加いただきありがとうございました(笑)

---------- 第2回は長久-西村コンビでやったんですがね(^^;

ええ、あの時は途中まで私が幹事を引き受けていたのに、直前になって海外出張が入ってしまい、突然代わりをお願いしたのでしたよね。ご迷惑をおかけしましたm(__)m

---------- エヴァ以前からもいろいろ書かれていたんでしょうか?

いえ、この一連の活動がまったくの初めてと言って良いですね。まともな作文なんて、中学校以来でした。

---------- 「エヴァで書こう」と思われた理由ってなんだったんでしょう?

そうですね。今になってみれば不思議なのですが。そもそも自分が創作をするタイプだとは余り思ってなかったんです。ましてや、自分の書いたものをWebで発表するなんて立場になろうとは、実際に書き始めるまで思いも寄りませんでした。でも、Web上でエヴァに出会い、それについていろいろと調べているうちに「自分も一つ書いてみようかな」という気がしたんですね。良く言われていることですが、エヴァというプラットフォームが、初心者にも創作をしやすい環境を提供していたんじゃないでしょうか。リアルな登場人物、マニアックな世界観、謎の多い設定、どれも自分でいじるには好都合なものばかりでした。このプラットフォームの上に自分の描きたいストーリーを乗せるだけで、ある程度のモノは作り出せる環境だったんだと思います。ですから、「エヴァで書こう」と思ったのではなく、「書こうと思わせたのがエヴァだった」ということです。エヴァとの出会いが無ければ、創作物を書くなんてことは一生無かったと思います。

---------- エヴァで書いた事によって、書けるんだ、もっと何か書きたいって思われたりしてますか?

ええ、実は先ほどお話した某所でのビジュアルノベル計画で、シナリオの一部を書かせていただいたりしています。また、エヴァ小説出版部から更に派生したProgressiveの第一回にも参加させていただきました。生まれて初めてオリジナルで書いた作品でした。酷い出来でしたが(苦笑) 今は、先のビジュアルノベル用に立てたプロットを流用して、とりあえず一つオリジナルの長編を書いてみようかと思っています。それから、蛇足なんですがDTMも始めてしまいました。文章よりも、むしろ音楽の方が得意分野なので、こっちもやってみたいと思っていたんです。これもビジュアルノベル計画のBGMという形で発表の予定です。時間が取れなくてなかなか作業は出来ないのですが。

---------- エヴァで書いた事をキッカケにかなり世界が広がったようですね(^^;

ええ、文章に限らず自分の創作物を広く発表するようになりました。自分でも驚いています。それに、こうして怪しい交友関係も広がりましたし(爆)

---------- エヴァ以前にもInetやNiftyを結構利用されていたんですか?

Inetはもっぱら会社からWeb巡りをしていただけですね。NiftyはパラグライダーのMLのメールボックス代わりに使っていただけです。ですから、自分にとってInetやNiftyもエヴァがきっかけではまったものなんです。あと、同人活動も。まさか自分が「あの」コミケに参加することになろうとは夢にも思いませんでしたから(笑)

---------- お仕事の関係上、「周りには言えんな」とかってあります?

いえ、会社の中ではむしろ宣伝して回ってます(爆) 別にアブないコンテンツではないですし。HP持っているおかげで「実は私もアニメ好きで」という告白を会社の複数の人間から受けました(笑) ただ、日記に時々各方面に対して批判的なことを書いているので、その筋の方には秘密にしてありますけど。余裕があったら、経済コラムみたいなHPを別に立ち上げたいと思ってるんですけどね。

---------- 話はそれますが、数学屋から見て経済方面って主要な就職先だったりするんですが、実際、数学屋はちゃんと仕事してますか(^^;

計量的手法って奴ですよね。ええ、未だに金融界ではロケットエンジニア信仰が存在します。もっとも、日本人のクオンツ(計量的手法を用いる金融エンジニア)で名の知れた人はほとんどいませんね。日本の金融界自体が、ものすごく時代遅れな世界ですから。米国の10年後ろを追いかけているような状態です。米国の有名ビジネススクールのMBAくらい取っていないと、なかなか通用しないのでは?

---------- 関西で有名な数理経済学の先生が、日本の研究者って「バカばっか(意訳)」って愚痴こぼしてた事もありましたよ(^^; 日本経済、がんばって支えて下さい。私が貢献できるのは、コミケでのフローを増やすぐらいですが(^^;

でも、あれはGDPには計算されてないような? 一種の闇経済ですから(爆)

---------- これから何か書こうと思ってる人にメッセージなんかありましたら、お願いします。

いったい自分は書くことで何を伝えたいのか、何を主張したいのか、目的意識を持つべきだと思います。特にエヴァのパロディで見られることが多いのですが、文章はうまいし、内容も面白い。ストーリーにも意外性があり、読んでいて飽きない。しかし、何も伝わってこない作品があるんです。作者が、何のメッセージも込めていない文章なんて、意味が無いと思うんですよ。ただ単に、自分はこんなうまい文章が書けるんですという以外に、何も主張していない。そんなモノよりも、技術的には下手でも「俺はこれが言いたいんだ」というメッセージが強烈に伝わってくる文章の方が人を感動させると思います。だから、技術を磨くと同時に、自分自身を振り返って、一体自分は何を人に伝えられるのか、何を伝えるべきなのかを良く考えていただけると、良いのではないでしょうか。

---------- それでは最後になりますが、ichiさんにとってエヴァってなんだったんでしょう?

一言で言って、諸悪の根元ですね(爆) 自分をInetやNiftyに引きずり込み、あまつさえ同人活動という酷く怪しい世界に足を踏み込むきっかけとなり、そしてどっぷり浸かって抜けられなくなった原因です。睡眠時間が削られ、妻にもかなり煙たがられることとなりました。しかし、これはこれでとても楽しい世界であり、自分自身を表現できる術を身に付けることのきっかけとなったという点で、自分にとって意義のある出会いだったとも言えます。幸いにして社会生活に支障はきたしませんでしたが、仕事と家庭生活、そして同人関連活動の絶妙なバランスを取って行くのはなかなかスリルがあります。結局、今の自分はエヴァ無しではありえなかったということだけは言えると思いますよ。

---------- 本日は長時間にわたり有り難うございました。これからもいろいろ(ホントにいろいろ)がんばって下さい。しかし、同人ってある意味、仕手戦ですよね(爆)

はい、まったく。とても興味深い賭けですね。では、本当にありがとうございました。


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