前田の算数

前 田 の 算 数  実 践 事 例
高学年 10進法と12進法と歴史のロマン
10進法の特徴は、10進法以外と比べて分かる

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 は じ め に
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普段、当たり前に使っている10進位取り記数法。
あまりに当たり前すぎて、10進法について考える機会は少ない。
しかし、どうして人類は10進法を使ってきたのだろうか?
時には、そんな歴史のロマンについて考えてみるのも面白い。

10進法の特徴は、10進法だけを使っていては、見えてこない。
10進法の特徴は、2進法・3進法・12進法など、
10進法でないものと比べて、初めて見えてくる。

本実践では、まず、10進法以外のいろいろな数え方を試して、
10進法の特徴を捉えた。
その上で、どうして人類が10進法を使ってきたのか、
人類の歴史のロマンに迫ってみた。




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10個の数字で、どんな大きさも表せる!
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「みんなが使っている数え方は、十進位取り記数法って言うんですよ。」
「10個の数字でどんな大きさの数でも表せる方法です。」
そう言って、黒板に0〜9の10個の数字カードを貼った。

「0の次は1、1の次は2。さて、2の次は何だか分かりますか?」
そう尋ねると、子どもたちはきょとんとした顔になった。
あまりに簡単な問題に、警戒しているのである。
1人の子を指名すると、指名された子は恐る恐る「3…」と答えた。
さらに、「ファイナルアンサー?」とからかうと、
「多分…」と不安そうになる。
そこで、「正解!さすが5年生!賢い!」と大げさに褒めてみせた。
不安そうだった表情が、ぱっと明るくなり、
他の子どもたちからは「そんなの簡単だよー!」という笑いが起こった。

「だったら、3の次は何ですか?」
そう尋ねると、今度はみんな自信満々に手を挙げた。
「4」、「正解!さすが!賢い!」、「4の次は?」「5」…
そんなやりとりを、しばらく楽しんだ。

こうして9まで進んだところで、
「これで全部の数字を使ってしまったね。今度は難しいよ」
と言い、
「さて、9の次は、どうするか知ってる?」
と尋ねた。

9の次は10。
そんな当たり前のことなのだが、
こんなふうに尋ねられると、何だか自信がなくなるものである。
手を挙げる子の数がうんと減った。

それでも、十進位取り記数法の意味をしっかりと理解している子は、
どんな質問のされ方でも平気である。
「10だと思います。1と0を使います」
と答えた。

「正解!さすが!賢い!」
と大げさに褒めてやり、
「2つの数字を使うんだね」
と確認した。

その後、11、12、13と…と進んでいき、
「こんなふうにずっとやっていって、99まで来たら、次はどうしますか?」
と尋ねた。
今度は、多くの子の手が挙がり、
「100です。1と0と0、3つの数字を使います」
と答えた。


同様に、999の次は、4つの数字を使って1000。
9999の次は、5つの数字を使って10000。
になる。
「たった10個の数字を使って、どんな大きさの数でも表せるんですね」
と確認した。

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3進法を試してみよう!
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「次は、3進法を試してみましょう」
「3進法は、3個の数字でどんな大きさの数でも表せる方法です。」
そういって、0〜2までの3つの数字カードを黒板に貼った。

「0の次は?」「1」「正解!」
「1の次は?」「2」「正解!」

こうして9まで進んだところで、
「これで全部の数字を使ってしまったね。今度は難しいよ」
と言い、
「さて、2の次は、どうするか知ってる?」
と尋ねた。

勘の鋭い子が手を挙げて、
「1と0、2つの数字を使って、10だと思います」
と答えた。
実は、さっきの十進法の時のやりとりが、この問題の布石になっている。

10、11、12、
20、21、22と進み、
「これで2つの数字では表せなくなりました。」
「22の後はどうなると思いますか?」
と尋ねた。
答えは100。
3つの数字を使うのである。

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どうして十進法が使われてきたのかな?
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3進法と同様に、4進法、5進法…など、いろいろな表し方が考えられる。
しかし、古代文明において、もっとも多く使われてきたのが、十進法なのである。

「どうして、十進法が使われてきたのかな?」
「体をよーく見ると、ヒントがあるよ」
そう子どもたちに問い掛けた。

自分の体を眺めていた子どもたちから、
「分かった!指が十本だからだ。」
という声があがった。
人間は、数を数えるのに指を使う。
10進法の10は、指の本数と関係しているのである。

「じゃあ、昔の人は、10より大きい数をどうやって数えてたと思う?」
子どもたちに尋ねた。

お調子者の男の子が、
「足の指!」と答えた。
「どうやって数えるの?やってみて」
と言うと、足を持ち上げて必死にやってみるから面白い。
結局は「やっぱり無理だなあ」と諦めた。

次に、右手で10を数えて、10ごとに左手で数えるというアイディアが出てきた。
5までは指を折っていって数える。
6から10までは指を伸ばしていって数える。
10になるごとに左手の指を折っていくというのである。

また、10になるごとに石を置いていく考えや、
10になるごとに印を付けていく考えなど、
様々なアイディアが出てきた。
どの考えにも共通するのは、
10のまとまりを作るということである。

きっと、昔の人も、そんな数え方をしていたのであろう。
指を折って数え、10になるごとに、例えば石を置くなど何らかの印を付ける。
石が3つと指が2本なら、32。
指の本数が10本だから、10ずつまとまりを作る文化が生まれたのであろう。


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どうして12進法が使われてきたのかな?
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ちなみに、十進法と並んで、多くの文明で使われてきたのが、
12進法の考えである。

現在も、12進法は、いろんなところに見られる。
例えば、1ダースは12個。
時計の目盛りは12時間。

では、どうして12進法が多くの文明で使われてきたのだろう。
それは、約数が多いからである。
10の約数は、1、2、5、10の4つだけなのに対して、
12の約数は、1、2、3、4、6、12と多い。

数えることが主流な文化では10進法を用いたのに対して、
分けることが主流な文化では10進法を用いたそうである。
例えば、天文学などが発達した文明では12進法を用いられている。
方角を分ける際に、12という数が都合いいのである。


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どうして60進法が使われてきたのかな?
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さて、約数の多い12でも、分けられない数がある。
それは「5」である。

だったら、「5」でも分けられる数はないだろうか。

実は、ある。
12に5をかけた数である。
12×5=60。
60は、1、2、3、4、5、6…で分けられる数である。
更に言うと、10でも12でも分けられる数である。

60という数は、とても便利な数で、
メソポタミア文明に60進法が用いられている。

この60という数。
子どもたちにとっても見覚えのある数である。
時計は1分60秒。60進法になっている。



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 お わ り に
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普段、当たり前に使っている十進位取り記数法。
しかし、こうして歴史のロマンにふれてみると、
算数が楽しくなっていく。

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