前田の算数

 算 数 以 外 の  実 践 事 例
3年 図工 「神々のお面」
迫力あるお面を作るには…
      

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 は じ め に
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「子供たちに、自由にのびのびと作品をつくらせたい」
 教師ならば、誰だってそう願う。
 しかし、実は、この「自由に」というのが、1番難しい。
 「自由にかいてごらん」と言って、子供たちに画用紙を渡したからといって、自由でのびのびとした作品が生まれるわけではないのである。

 子供たちの自由な創造力を引き出すには、逆に、活動の幅を制限してやる方がいいのではないかと考える。
 子どもたちは、制限された条件の中で、できる限りの工夫をしようとする。
 その工夫の中にこそ、子供たちの自由な発想が、いっぱいつまっていると思うのである。

本実践では、まずは「目」、次は「目のまわりの模様」といったように、かく場所を限定して、かき進めた。また、使う色も2色と限定した。
子どもたちは、制限された条件の中で、自由な発想を広げていった。


 ○ 使うもの: 黒の色画用紙(八つ切)・色鉛筆・はさみ

 ○ 所要時間: 60分


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 手順1 プロローグ
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 まず、世界のお面の写真を見せながら、「お面には、神が宿る」といった話をした。
 そして、どんな神様が宿るお面を作りたいか、イメージをふくらませる時間を設けた。
 次に、黒の色画用紙を配り、「黒い紙に白色でかくこと」を説明した。

 普段、白い紙に黒色でかくことが多い子供たちにとって、黒い紙に白色でかくことは、新鮮である。 
 「おもしろそう」「やってみたい」と、これからの活動に、好奇心が高まった。

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 手順2 目と目の模様をかく
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@ 条件を提示。


 ・ 目玉はつけない。

 ・ こくかく。

 ・ 画用紙の真ん中にかく。



※ 目玉をつけないのは、お面らしさを出すためである。
※ こくかくのは、黒画用紙にぼやけないためである。
※ 真ん中にかくのは、上下に十分にスペースをとっておくことで、 後で輪郭をかく際に、
 自由な発想をしやすくするためである。



A 3種類の目を見比べる。

 教師がかいた3種類の目を提示し、それぞれ、どんな感じがするか、子供たちに問い掛けた。



 

 


 

 


 

 

 「怖い感じ」「悲しい感じ」「不気味な感じ」「優しい感じ」など、子供たちは、目の形によって、表情が生まれることに気付いていった。


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 活動を、制限する
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 ここでは、自由に全部をかかせずに、「目をかく」「目のまわりに模様をつける」というように、活動の幅を制限した。

 活動の幅を制限することで、子供たちは、限られた中で、できる限りの工夫をしようと、自由な創造力を発揮していった。


 ここで生まれてくる工夫は、どれも、その子なりの思いがこもったものである。
 子供たちの作品を、いっぱいほめてまわった。



B 目をかく。

C 目のまわりに模様をつける。



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手順3 鼻と鼻の模様をかく。
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@ 4種類の鼻を見比べる。

 教師がかいた「太い鼻」「細い鼻」「長い鼻」「短い鼻」を提示し、それぞれのどんな感じがするか、問い掛けた。子供たちは、鼻の形によって、表情が生まれることに気付いていった。

A 条件を提示。


 ・ 人間みたいな鼻でなくてもよい。


 この条件に、子供たちは、想像をふくらませ、いろいろな質問をしてきた。
 「鼻の穴はなくてもいいか」
 「鼻の穴は3つでもいいか」
 「鼻に飾りをつけてもいいか」
 などなど。

 どの質問に対しても、YESと答えた。
 ここで出てくる質問こそが、子供たちが自由な発想をしている姿なのである。

B 鼻と鼻の模様をかく。

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手順4 輪郭をかく
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@ 2種類の輪郭を見比べる。





 教師がかいた2種類の輪郭を提示し、それぞれどんな感じがするか、問い掛けた。
「宇宙人みたい」「優しそう」「強そう」「賢そう」など、子供たちは、輪郭によって、表情が生まれることに気付いていった。

A 輪郭をかく。

B 輪郭のまわりに、飾りをつける。

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手順5 口をかく
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・ 人間みたいな口でなくてもよい。


 ここまでくると、子供たちは、教師が何も言わなくても、いろいろな工夫していった。
 作品を見てまわりながら、そんな工夫を、ほめていった。


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手順6 模様をつける
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 ・ 白の他に、2色だけ使ってもよい。

 ・ 教室を散歩し、友達の作品を自由に見てまわってもよい。




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 鑑賞は、制作途中にも!
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 ここでは、友達の作品を見てまわる場を設けた。

 鑑賞というと、作品の完成後に行われることが多い。
 もちろん、それはそれで、意義あることである。
 しかし、作品の制作途中にも、大いに鑑賞を行うべきである。
 制作途中の鑑賞は、その後の制作活動に生かせるからである。
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手順7 切り取る
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 最後にまわりを切り取って、作品の完成である。





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 作品の掲示
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 できた作品を掲示した。
 その際、「@いろいろな角度で」「A掲示板からはみ出すように」掲示した。

 私が出来上がった作品を掲示していると、そこに通りかかった低学年の子供たちが、口々に「こわーい」とつぶやいていった。
 みんなの作品を集まると、すごい迫力になる。

   



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  付 記
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※ 本題材のように「黒い紙に白色でかく」という活動を、版画の学習の前に行っておくのも面白い。版画において、「彫った部分が白くなる」ことは、子供たちにとってイメージがつかみにくいものである。版画の学習をする前に「かいた部分が白くなる」活動をしておくことで、版画の学習がスムーズに行えると考える。

※ 本題材を応用して、「神々のお面」の版画バージョンの実践も行った。

※ 参考実践: 酒井式描画法「先生の顔」


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