前田の算数

 合 唱 指 導 の コ ツ
歌声をきれいにする5つのコツ
小学校合唱指導
コツ①
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 姿勢・表情の指導は、意識が高まってから
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 子供たちの歌声をきれいにしたい。
 そんなとき、まず、何から指導するだろう。

 どうも
足は肩幅で、姿勢はこうで、口の開け方はこうで
といったように、まずは型から指導する先生が多いような気がする。

 しかし、頭ごなしに型ばかりを押し付ける指導をみると、何だか軍隊のような印象を抱いてしまう。

 教師がよく使う言葉に、
「いい表情で歌いましょう」
という言葉がある。

 しかし、そもそも、教師の思い描く「いい表情」って、本当に子供にとって「いい表情」なのだろうか。
 眉や頬を引き上げて、目と口をうんと開いて歌う表情。
 それは、子供たちが憧れるアイドルやモデルのオシャレな表情とは程遠いものなのではないだろうか。
 「気色悪い顔」というのが、子供たちの本音かもしれない。

 もちろん、だからそんな表情で歌わせないというのではない。
 子供たちには、そういう表情を、美しいと感じられるようになってほしい。
 そう願っている。
 しかし、そうなるには、時間がかかる。
 そう思うのである。

 まずは、楽しく歌いこんで、子供たちを曲の世界に十分に浸らせたい。
 歌いこみながら、子供たちが本気になり、「きれいに歌いたい」という思いが高まるのを待つのだである。
「もっときれいな声で歌いたい」
 そんな思いが高まったところで、
「きれいに歌うためのコツを教えるよ」
と言って、表情や姿勢について指導していけばよいと思うのだ。

 何も「①正しい姿勢や表情で歌えるようになる」「②正しい音程で歌えるようになる」「③曲想をつけて歌えるようになる」といったように、必ずしも段階をおって指導していく必要はない。
 正しい表情で歌えていない時期だって、曲想について指導してもいい。
 曲想を突き詰める中で、どうしてもきれいな声が必要になるだろう。
 そして、きれいな声のためには、正しい表情が必要になる。
 そこで、正しい表情を教える。
 そういう順番で指導したって構わない。


 
コツ②
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 よい声のイメージをもたせる
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 きれいな声を出す指導だって、まず「姿勢・表情」からなんてきまりはない。

 声を床に落とさないように

 眉間から歌声を飛ばすつもりで

 目の前に大きな川をイメージして、
 川の向こうに歌声を飛ばしてごらん。
などと声をかけて、よい声のイメージをもたせるのもいい。

 おでこに手を添えて歌わせ、
 歌声を手のひらに当てましょう
と指示するのもよいだろう。

 そうやってよい声のイメージをもたせていく。
 意識を高め、きれいな歌声が出せたという達成感を抱かせ、さらにきれいな歌声を出したいという願いを抱かせる。

 そうした思いが高まったところで、
「もっと、声がきれいになる方法を教えるよ」
と言って、「姿勢・表情」の指導をすれば、子供にストンと落ちる。

 眉や頬を引き上げて、目と口をうんと開いて歌う表情。
 私だったら、恥ずかしい。
 子供だって、そうだろう。
 しかし、「恥ずかしさ」よりも、「きれいな歌声を出したい思い」が高まる時が、やがて来る。
 そうなるように、仕掛けていく。
 そして、そのときに、歌う表情を指導するのである。
 啐啄同時。
 子供が欲したときに指導するのが、教育の基本である。

 
 
コツ③

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 理由を説明して、納得させる
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 コツ①、②のような指導を経て、子供の中に「きれいに歌いたい」という思いが高まったとしよう。
 いよいよ表情を指導するわけだが、ここでも、頭ごなしに「こうしなさい」と命令するのは感心できない。
 それでは、まるで軍隊である。

 ちゃんと子供に納得させた上で、歌わせたいものである。
 そのためには、子供が納得できるだけの説明が要になる。

 よく「口を大きく開きなさい」という指導を目にすることがある。
 しかし、子供にとっての「口を大きく開く」というのは、下図のようなイメージではないだろうか。



 そうではなく、あくびをした時のように、のどを大きく開かなければ、いい声は出ない。
 正しくは、下図のようなイメージである。



 あくびのときの口の形
 私の場合、そんな言葉をよく使う。
 そう言っても伝わらなければ、具体的に
 奥歯を指一本分開ける
と言うときもある。
 実際に奥歯に指を入れながら歌ってみるのもいい。
 そうやって、口の中に、大きな洞窟をつくるのである。

 さらに、子供たちには
 声を口から出さない
と教える。



 口から出すのではなく、
  声を上の歯ぐきの裏にあてる
と教える。




 そうすることで、声が、口の中で振動し、増幅して出ていく。
 子供たちには、
 口の中に大きな洞窟をつくって、その中で声を響かせるんですよ。
と伝える。

 「音は振動である」なんて話は、子供には少し難しい。
 そんなときの必殺技がオルゴールだ。
 オルゴールを使うと理解しやすい。

 オルゴールの中身だけを取り出して、子供に音を聞かせる。
 ものすごく小さな音になり、ほとんど聞き取れない。
 しかしオルゴールの中身を、壁や窓ガラスに当ててみると、どうだろう。
 途端に音が大きくなる。
 振動する面積が大きくなるからである。

 これは、ミニネタの土作先生に教えていただいた科学実験である。
 子供に受けること、間違いない。

 振動する面積をなるべく大きくした方がいい。
 それは、歌声も同じである。
 そのためには、できるだけ口の中の洞窟を大きくし、そこに歌声を当ててやればよいのである。

 
 
コツ④
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 比較して、納得させる
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口が開くようになったら、今度は目を大きく開き、頬を引き上げたい。
 頬を引き上げるという表現は、子供には難しい。
 私の場合、
 ほっぺたにたこ焼きをつくる
 という言葉をよく使う。
 これは、同僚の音楽の先生がよく使われていた言葉だ。

 このことも、ただ教え込むだけでは駄目だろう。
 子供に実感させて、納得させなければならない。

 そのために、手っ取り早いのは、
 比較させること
である。

 実際に、目を大きく開き、頬を引き上げた表情でしゃべらせてみる。
 次に、眉間にしわを寄せた表情でしゃべらせてみる。
 声が全然違ってくるはずである。

 子供たちは、納得できれば頑張れる。

 
 コツ⑤
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 ゲーム感覚で楽しく練習
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 理屈っぽい指導ばかりでなく、楽しい活動も織り交ぜていきたい。

 例えば、
 3~4人で円になって歌う
 というのも楽しい。

 互いの顔を見合いっこして、
 グループの中で、一番大きな口を開けてた人を選びましょう
なんてやると、盛り上がる。

 例えば、
 いい表情で歌えている子を、前に出させる
というのもいい。
 歌っている最中に、いい表情の子を見つけて、どんどん前に立たせていくのである。
 得意な子は、自分も選ばれようと必死になるし、
 苦手な子は、前の子の表情を見てお手本にできる。
 せっかく選んだのなら、前に立った子だけで歌わせてみるのも面白い。
 表情だけで選んだはずなのに、歌声もきれいなものである。
 表情がよいと、歌声もきれいになるということを、聞いている子供たちも実感できる。

 これをちょっぴり応用させて、教室の壁をステージ1、ステージ2、ステージ3にするのも盛り上がる。
 まずは、ステージ1の壁の前で歌う。
 歌わせながら、表情がいい子をステージ2の壁の前に移動させる。
 さらに、声が大きい子はステージ3に移動させる。
 こうすると、ゲーム感覚で盛り上がる。

 ただし、コツ⑤に書いた3つの例には、注意が必要である。
 これらは、外発的動機付けである。
 コツ①~④で示した内発的動機付けとうまく組み合わせて行えば効果絶大だが、バランスよくやらないと、苦手な子を委縮させ、合唱嫌いをつくってしまう。

 

 お わ り に

 きれいな声を出させるための5つのコツについて書いた。
 つまるところは、「楽しく歌えたらいいなあ」と思っている。
 歌うって本来楽しいことである。
 目くじらたてて、指導するのではなく、子供の思いに寄り添いながら、きれいな歌声を作り上げていきたい。
 
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