前田の算数

前 田 の 算 数  実 践 事 例
4年 国語「ローマ字」
を に すると…

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 逆さま再生の不思議
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 屋根裏の物置に高校時代に買った古いテープレコーダーが眠っている。
 今では使うこともない。
 しかし、古いからといって馬鹿にはできない。
 再生速度を変えて再生できたり、逆回しに再生できたりと、MDやiPodにはないテープレコーダーならではの機能もあるのである。

 逆回しに再生すると、面白い実験ができる。
 例えば、「トマト」を逆向きに再生しても「トマト」には聞こえない。
 しかし、「赤坂(AKASAKA)」といったローマ字の回文を逆回しに再生すると、「赤坂」と聞こえるのである。
 なぜなら、自分では「と」という1音を発音しているつもりでも、本当は「T(子音)」と「O(母音)」を組み合わせて発音しているからである。

 さて、この古いテープレコーダーを使って、子供たちと遊んでみようと思い立った。
 4年生では、「ローマ字」を学習する。
 「子音+母音」という音の構造を窓口に、日本語とローマ字の違いについて考えていこうと思ったのである。


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 授 業 の 実 際
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◇ 分かった、逆さ言葉だ

 授業の始めは、クイズで導入した。


 第1問: 共通していることは何?

 ・たった今 鳥と小鳥と舞い立った

 ・のきさらむ虫の音のしむ 紫野

 ・関係ないけんか

 ・トマト


 最初の2つを見せた時点で、子供たちから「五七五だ」「俳句だ」という得意気な声があがった。
 しかし、3つ目の「関係ないけんか」を提示すると、子供たちは「あれ」「五七五じゃないぞ」「何が共通してるの」と考え始めた。
 そのうちに、何人かが、正解に気づき始めた。
 早く答えが分かった子供には、ヒントや他の例を出してもらった。
 「平仮名で考えれば分かるよ」というヒントや、
 「ママが私にしたわがまま」「新聞紙」などの例が出てきた。
 そして、どんどん分かる子が増えていった。
 そう、どれも回文になっているのである。


 続いて、第2問。


 第2問: 共通していることは何?

・あったかな日に花買った

・裏になる

・赤坂


 今度は、なかなか答えに気づく子が少ない。
 しかし、ある子が出した「ローマ字にすれば分かる」というヒントで、一気に答えに気づいた子が増えた。
 「ATTAKANAHINIHANAKATTA(あったかな日に花買った)」
 「URANINARU(裏になる)」…。
 そう、ローマ字の回文なのである。

◇ 逆さ言葉を逆さにすると…

 さて、ここで


 これらの回文を逆さまに再生すると、どうなるでしょう。


と、子供たちに問いかけた。
 子供たちは、当然といった顔つきで、
「平仮名の回文は逆さにしても大丈夫だけど、ローマ字のはならない。
 例えば、“トマト”は“トマト”になるけど、“赤坂”は、“かさかあ”になってしまう。」
と予想した。

 しかし、実際にやってみると、そうはならないのである。
 「赤坂(AKASAKA)」は逆さまに再生しても「赤坂(AKASAKA)」になるのに、「トマト(TOMATO)」は「オタモトゥ(OTAMOT)」になってしまうのである。
 この矛盾に「あれ」「どうして」と、子供たちは興味津々の様子。
 そして、考えを出し合っていくうちに、子供たちは「子音+母音」で成り立つ音の仕組みに気づいていった。

 こうして、「子音+母音」の仕組みが分かったところで、テープレコーダーの逆さま再生を使って遊んでみた。
 名付けて、
『○○と録音して、逆さまに再生したら何と聞こえるでしょうクイズ!』
である。
 「秋(AKI)」が「烏賊(IKA)」になったり、「牛(USI)」が「椅子(ISU)」になったり…。
 子供たちは、クイズを考えたり解いたりする中で、楽しみながらローマ字に親しんでいった。


◇ ローマ字と平仮名を比べてみると

 さて、最後に、ローマ字と平仮名、それぞれの良さについて考えてみる時間を設けた。
 「子音」と「母音」を分けて表記するローマ字と、「子音+母音」で1つの文字として表記するひらがなと、それぞれ、どんな良いところがあるのだろうか。

 真っ先に出てきたのは、平仮名の良い所であった。
 「書くときに文字数が少なくて楽だ」というのである。
 ローマ字の学習で苦戦してきた子供たちにとって「ローマ字は字数が多くて面倒」という印象が、よほど強かったのであろう。

 それに対して、「書くときの文字数はローマ字の方が多いけど、文字の数自体はローマ字の方が少ないよ」とローマ字のよさを主張する子供も出てきた。
 平仮名の76文字に対して、ローマ字は26文字しかない。
 「だから、パソコンのキーボードにも使われてるね」と他の子供が付け足した。

 こうして、授業を通して子供たちは、音の構造を窓口に、「子音」や「母音」についての理解を深め、日本語とローマ字の相違について考えていった。



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