前田の算数

算 数 以 外 の  実 践 事 例
道徳 イソップ物語「水を打つ漁師」 (中・高学年)
イソップ物語で討論の道徳を!

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 イソップ物語で、討論の授業を!
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イソップ物語に「水を打つ漁師」という話がある。
この話を教材にして、道徳の授業をおこなった。


漁師が川で漁をしていました。その漁師は川をせきとめるように岸から岸へあみをはりました。それから麻ひもの先に石を結びつけ、それで水面をたたきました。あわてふためいてにげる魚をあみにかけようというものでした。
 漁師がそうするのを見て、
「川をにごらせると、きれいな水がのめなくなるではないか」
といって、近くに住む人がもんくをいいました。
「だが、魚をとらなければ、私はうえ死にしてしまうではないか。」
と漁師は答えました。





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 1、互いの意見を主張し合う
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お話を読んだ後

あなたは、漁師と川下の人のどちらに賛成しますか。

と発問した。

ワークシートに自分の考えを書いた後、討論の場を設けた。
ここでの討論では、多少の悪ノリがあってもよい。
お互いの主張がはっきりと見えてくることが大切である。
討論が活発になるように、座席を移動し、漁師派と川下派に分かれて向かい合わせた。

討論では、次のような意見が出てきた。


【漁師に賛成の意見】
・魚をとらないと飢え死にしてしまう。きれいな水より命の方が大切。
・ずっと水を打っているわけじゃない。打っていない時間に水を飲めばいい。
・水を打っていない時間に、水をくんでためておけばいい。
・別の場所で水を飲めばいい。


【川下の人に賛成の意見】
・水が汚いと病気になる。子どもが病気になるかもしれない。
・仕事は変えることができる。住む場所は、なかなか変えられない。
・水を打つのは、もっと下流でやればいい。
・水を打つなら、時間を決めて、ひとこと言ってからやるべき。


最初のうち、子どもたちは、
漁師派 魚をとらないと、飢え死にしてしまうよ。水より命が大切だと思う。
川下派 でも、水が汚いと、子どもが病気になって死んでしまうかもしれないよ。
といったように、楽しくやり合っていた。

しかし、時間が経つに連れ、
漁師派 ずっと水を打っているわけじゃないんだから、
水を打っていない時間に水を飲めばいいよ。
川下派 だったら、時間を決めてやってほしい。
何時から何時までやると言ってくれるならいい。

といったように、相手の立場も考えた上で、妥協案を考え始める意見が出てきだした。

【ワークシート】

(   )に賛成です。
だって







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 2、互いの立場を考える
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そこで、新たな発問をすることにした。
「いったん、それぞれの立場を忘れてください」と言い、

今からあなたがたは,村長さんになります。
漁師、川下の人の二人の言い分を聞いて、どうやって解決しますか。

と発問した。
どちらの立場も考えた上で、もう1度、問題を見つめ直してほしいと思ったのである。

子どもたちからは、次のような解決策が出てきた。


・漁師は時間を決めてやる。その時間をちゃんと、川下の人に伝える。

・川下の人は、もっと上流で水をくみ、漁師は、もっと下流で水を打つ。

・漁師と川下の人で、話し合いの場を設ける。


どれも、どちらの立場も考えての解決策である。

話し合いのまとめとして、次のような発問をした。

今日の授業で学習したことをもとにして、
「仲良く生活するためには〜が大切である」の
「〜」に入る言葉を考えましょう。

子どもたちからは、「〜」に入る言葉として、
・互いを思いやること
・相手の思いを聞くこと
・分かり合うこと
などの言葉が出てきた。

最後に、次の詩を紹介し、授業を終えた。

  楽しさってね  (山本真吾)

 わたしが楽しいだけの1日ではなく
 あなたが楽しいだけの1日ではなく
 あの人が楽しいだけの1日ではなく
 みんなが楽しい1日だとイイね

 わたしが100%楽しいと、あなたが楽しくないかもしれない
 あなたが100%楽しいと、あの人が楽しくないかもしれない
 あの人が100%楽しいと、だれかが楽しくないかもしれない

 わたしがほんのちょっとがまんして
 あなたがほんのちょっとがまんして
 あの人がほんのちょっとがまんして
 みんなでほんのちょっとがまんすると
 みんなが80%楽しいんじゃないかな
 みんなで楽しいと、120%楽しいよ

 人と人が生きていくって、そういうことじゃないかな
 一人でいても、きっと楽しくないよ
 だから、みんなでほんのちょっとがまんして
 みんなでほんのちょっとがんばって
 楽しくいこうよ


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 お わ り に
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2人以上で生活していれば、必ずケンカがおこる。
どちらかが正しく、どちらかが悪いとはっきりするケンカばかりではない。
時には、互いの正義と正義がぶつかり合ってケンカが起こることだってある。

個人的には、7主張して3譲るぐらいが、仲良く過ごす極意かなと思っている。
大切なのは、自分の主張ばかりではなく、
相手の気持ちも考えて、よりよい着地点を見つけることではないだろうか。

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