前田の算数

前 田 の 算 数  実 践 事 例
6年 「場合の数」
おもしろ問題×5

「場合の数」の単元には、面白い問題がたくさんある。
その中でも、私が特に気に入ってる問題を5つ紹介したい。



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 おもしろ問題@
 
階段の上り方は、何通り?
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セールスポイント
 いろいろな発想が出てくる!



問題
階段の上り方は何通り?




条件@ 階段は5段
条件A 1段か2段ずつ上る。

1段+2段+2段=5段



参考文献
「研究授業で使いたい算数教材20」
細水保宏、ガウスの会著、東洋館出版社


「場合の数」と聞いて、ぱっと頭に浮かぶのが「樹形図」である。
ついつい、樹形図の指導にばかり時間を割いてしまいがちになる。
しかし、何も樹形図にばかりこだわる必要はない。
「場合の数」の本質は、「整理して数える」ということである。
大切なのは、落ちや重なりがないように、ルールを決めて数えていくことである。

この問題のセールスポイントは、子どもたちからいろいろな発想が出てくることである。
この問題では、それぞれの数え方のよさについて、じっくりと話し合わせたい。
よりよい数え方について話し合う中で、
ルールを決めて数えていくことの大切さに気付かせたい。


僕は、式に表してみたよ。
2+1+2
2+2+1
1+2+2
1+1+1+1+1
1+1+1+2
1+1+2+1
1+2+1+1
2+1+1+1
全部で8通りあったよ。


僕は、数えもらさないように
整理して書いたよ。
3歩
2+2+

2+
+2
+2+2
4歩
1+1+1+

1+1+
+1
1+
+1+1
+1+1+1
5歩
1+1+1+1+1


僕は、数えもらさないように、
ルールを決めて書いたよ。

ルール
2が使える時は、なるべく2を使う
2が使えなくなったら、1を使う


2+2+1
2+1+2
2+1+1+1
1+2+2
1+2+1+1
1+1+2+1
1+1+1+2
1+1+1+1+1


僕は、すっきりと図を表したよ。


表に表したら、面白い発見をしたよ。

段数
上り方

3段 1+2=3
4段 2+3=5
5段 3+5=8


きっと6段になったら、5+8で13通りになるよ。







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 おもしろ問題A
 
片手でいくつ数えられる?
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セールスポイント
 子どもが興味をひきつける!

授業の後のちょっと余った時間に、こんな練習問題を出してみてはどうだろう。
「真似してごらん」そう言って、
指を折ったり曲げたりと、様々な形の手をつくってみせる。
子どもたちは、何が始まるのかと興味津々になる。
子どもたちが食いついてきたところで、問題を提示する。
次のような問題である。

指を伸ばしたり、折ったりすると、手の形は何通りできますか?

子どもたちは、きょとんとした顔になる。
この問題は、一見「場合の数」と関係なさそうな問題に見えるからである。

しばらく経ったところでヒントをあげてもいい。
「親指は伸ばすか、折るかのどちらかです。」
「伸ばすを○、曲げるを×とすると、こんな図になります」


「人差し指も、伸ばすか、折るかのどちらかです。」
「伸ばすを○、曲げるを×とすると、こんな図になります」


「親指と人差し指で、4通りの手の形ができましたね。
 残りの3本も使うと何通りできるか考えてみましょう」

考えるとっかかりが分かると、後は簡単である。
答えは、32通りになる。

子どもたちの中には、残りの図を全部かかなくても、
2×2×2×2×2=32と計算で求められる子も出てくる。
一見、場合の数と関係なさそうな問題なのに、
これまで学習してきた考えを使って解けるところが、この問題の魅力である。

ちなみに、親指が1、人差し指が2、中指が4、薬指が8、小指が16といったように、各指の表す大きさを決めると、片手だけで、0〜31までの32通りの数を数えることができる。
そんな話を、おまけの話として、子どもたちに聞かせてあげるのもよいだろう。
子どもは、「おまけの話」が大好きである。





そんな話をしていると、子どもたちの中には、
「だったら、両手を使ったら、いくつまで数えられるかな?」
なんて子も出てくる。
2を10乗すればよいのだから、
2×2×2×2×2×2×2×2×2×2で、1024通りである。
理論上は、なんと、0〜1023まで数えられるということになる。
実際数えようとすると、複雑すぎて大変だが…。


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 おもしろ問題B
 
パスワードは何通り?
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セールスポイント
 生活に根ざしている!

東京書籍の教科書の「算数のお話」のコーナーには、パスワードに関する問題が載っている。
それを少しアレンジして、次のような問題を出題してみた。


・0〜9の数字を使ってパスワードをつくる
・パスワードは4桁である。
・同じ数字を何度使ってもよい。
・パスワードは何通りできるだろうか。

これまでに、子どもたちは、「場合の数」の勉強をしてきている。
真面目な子は、それを生かして、
「1桁目は0〜9の10通り、そのそれぞれに対して、2桁目も0〜9の10通り…。
 だから、10×10×10×10で10000通り」
と考える。

しかし、発想のやわらかい子は、単純にぱっと答えを求める。
「1〜9999の10000通り」
と考えるのである。

どちらの考えも面白いが、両方の考えを合わせて見ると、十進位取り記数法のよさが見えてきて、さらに面白い。

さて、この1万という数を多いとみるか、少ないとみるか…?
最近のパスワードは、「数字だけでなく、必ずアルファベットも入れてください」と言われることが多い。
先程の問題を少し発展させ、数字だけでなくアルファベットも使ってみたら、どうなるだろうか。


・0〜9の数字と、26文字のアルファベット
 計36文字を使ってパスワードをつくる
・パスワードは4桁である。
・同じ数字やアルファベットを何度使ってもよい。
・パスワードは何通りできるだろうか。

36×36×36×36=1679616
なんと、160万以上ものパスワードができる。
パスワードにはアルファベットを入れた方がよいことが実感できる。


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 おもしろ問題B
 
6つの中から4つを選ぶと…?
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セールスポイント
 ひらめきの快感を得られる!

子どもたちに、遠足に持って行きたいお菓子を尋ねる。
Aぷっちょ、Bチョコ、Cガム、Dポテチ、Eしげきっくす、Fうまい棒
などが出てくる。
そこで、次のような問題を出す。

この6つの中から、2つのお菓子だけ、
遠足に持っていけることになったとします。
何通りの組み合わせがありますか。

6×5÷2で、答えは、15通りである。

そんな問題を解いた後に、次のような問題を出すと面白い。

この6つの中から、4つのお菓子だけ、
遠足に持っていけることになったとします。
何通りの組み合わせがありますか。

選ぶお菓子が2つから4つに増えて、一見、難しそうに見える。
しかし、発想を転換すれば、あっという間に解けるところが、この問題の面白さである。
持っていく4つを選ぶということは、持っていかない2つを選ぶのと同じことである。
答えはさっきと同じ、15通りである。


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 おもしろ問題D
 
行き方は何通り?
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セールスポイント
 意外なところに場合の数が応用できる!

テストが早く終わる子がいる。
そんな子には、テストの余った時間を利用して、
ちょっぴり難しい問題に挑戦させるのもいい。
算数が好きな子は、夢中になって取り組む。


家から学校への行き方は、何通りあるでしょう。
ただし、遠回りはしないこととします。

 


一見、この問題は、図形問題にも見える。
しかし、少し考えを整理して、
学校への行き方を矢印で表してみると、どうだろう。
例えば、
 例 ↑→↑→↑
 例 →↑↑↑→
 例 ↑↑→→↑
といった具合になる。

つまり、5つある矢印のうち、横向きの2つを選ぶ問題なのである。
5×4÷2=10、答えは10通りになる。


同じように、一見「場合の数」の問題には見えない面白問題がある。
次のような問題である。


この中に四角形は、何個ありますか?

  


しかし、この問題も、数ある頂点の中から4つの頂点を選ぶ問題だと思えば、場合の数の学習が応用できる。

横には4つの頂点が並んでいる。
4つの頂点から2つの頂点を選ぶと、横の辺が決まる。
横の辺の選び方は、4×3÷2で6通りになる。



同じように、
縦には5つの頂点が並んでいる。
5つの頂点から2つの頂点を選ぶと、縦の辺が決まる。
縦の辺の選び方は、5×4÷2で10通りになる。

横が6通りで縦が10通りだから、
6×10で60通りの長方形ができるというわけである。
一見、場合の数と関係なさそうなところに、場合の数の考えが応用できるところが、この問題の面白さである。
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