前田の算数
前 田 の 算 数 実 践 事 例 | ||
5年 四角形と三角形の面積 | ||
比較で導入!平行四辺形VS長方形 | ||
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1、比較で導入 平行四辺形 VS 長方形 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ★ぐにゃぐにゃ四角形で導入 平行四辺形の面積の学習の導入において、下図のような教具を用いた。 名付けて、ぐにゃぐにゃ四角形。 ボール紙で作った辺の4隅を鳩目で止めたものである。 辺の長さはそのままに、長方形や平行四辺形に形を変えることができる。 この教具でできる長方形と平行四辺形(右図)の、どちらが広いかを考えることから学習をスタートした。 教科書では、1つの平行四辺形を提示し、その面積を求めるという導入になっている。 確かに、平行四辺形だけを提示した方が、混乱がなく、授業の流れはシンプルになる。 しかし、私があえて平行四辺形と長方形を提示したのには、3つの理由がある。 |
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★理由@ 切実感を生む 1つ目の理由は、切実感である。 子供にとって、いきなり平行四辺形を提示されて「面積を求めましょう」と言われたとしたら、どうだろう。 何のために求めなければならないのか、切実感が沸かない。 やらされる学習になってしまうだろう。 しかし、2つの四角形を提示されれば「どちらが広いか」が気になり、「面積を知りたい」という思いが高まる。 まして、今回提示する2つの四角形は、どちらも同じ面積だと予想する子供がほとんどである。 それなのに、実は面積が異なる。 その意外性が「「面積を知りたい」という思いを強めるのである。 「量と測定」領域の学習は、比べることから学習がスタートするのが基本である。 「長さ」も「かさ」も「重さ」の学習も、「どちらが長い」「どちらが多い」「どちらが思い」と、比べることから学習をスタートしてきた。 5年生の学習だから、そこを端折って「面積を求めましょう」からスタートするというの1つの考えではあるが、私は、やはり比較から学習をしたいと考える。 |
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★理由A 誤概念を訂正できる 2つ目の理由は、誤概念を訂正できることである。 子供の中には、辺の長さが同じなら面積が同じと思っている子供が多い。 そうとは限らないことを、どこかの場面で指導しなければない。 どこで指導してもよいわけだが、導入で取り扱ったのは、子供の誤概念をプラスに働かせられると考えたからである。 辺の長さが同じ長方形と平行四辺形。 ところが重ねてみると、面積が違う。 「あれ、辺の長さが同じなのに、面積が違うの?」という驚きが、「面積を求めよう」という意欲へとプラスに働くとことをねらったのである。 |
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★理由B 解決への見通しがもてる 3つ目の理由は、解決の見通しがもてることである。 まずは、長方形を提示し、長方形の面積を求める。 ここで、暗に長方形なら「縦×横」の公式で面積を求められることが確認できる。 次に、平行四辺形を提示し、どちらが広いか尋ねる。 重ねてみると、平行四辺形の端っこが少しはみ出す。 それを見た子供は、はみ出した分を反対側に動かせば、ぴったりと重なることに気付くだろう。 はみ出た分を切って動かしてくっつければ、長方形になる。 等積変形の考えである。 「@長方形なら面積を求められる」「A等積変形すれば、長方形にできる」この2つのヒントが、解決への見通しにつながると考えたのである。 |
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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2、授業の実際 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ★比較で導入 「今日は、こんな物を持って来ました」 そう言って、袋の中から「ぐにゃぐにゃ四角形」を取り出す。 子供たちが興味津々で見つめる中、形をぐにゃぐにゃ動かしてみせる。 次のような形になったところで、 「これは、何という四角形ですか。」 と子どもに尋ねる。 「長方形」と子どもが答える。 さらに、面積を尋ね、その求め方を確認する。 公式は「縦×横」で、面積は「30」になる。 次に、ぐにゃぐにゃ四角形を、次のような形にして、 「これは、何という四角形ですか」 と子どもに尋ねる。 「平行四辺形」と子どもは答える。 そして、いよいよ問題である。 「どちらが大きいと思いますか」 と子ども尋ねた。 大多数の子供は「同じ」と答えた。 しかし、1名だけが「長方形の方が大きい」と答えた。 正直、たった1名とは、予想外だった。 本当はここで、「同じ派」「長方形派」で議論しようと計画していたのである。 たった1名VS大多数では議論は難しい。 しかも、頼みの綱の1名に理由を尋ねると、 「なんとなく。見た目で」 という理由だった。 そうなれば、仕方がない。 「○○さんは、見た目でそう思ったんだって」 そう言って、子供たちの顔を見渡した。 じっくり待っていると、誰かが何か言ってくれるものである。 ある子が手を挙げ、 「きっと、平行四辺形の方は、ぐにゃっとつぶれているから、そう見えたんじゃない」 と、その子の考えを代弁してくれた。 それに対して、同じ派からは、 「でも、縦につぶれているけど、その分、横にはみ出しているよ」 といった反論が聞こえてきた。 そのつぶやきを取り上げ、二つの四角形を重ねてみせた それを見た子供たちから、 「あれ・・・、ちょっと待った」 「先生、考えを変えてもいいですか」 といったつぶやきがあがった。 「やっぱり、平行四辺形の方が小さい」 というのである。 平行四辺形のはみ出た部分を、動かしてくっつけると、長方形になる。 それは、青い長方形よりも小さいというのである。 さらに、面積が同じではないう理由を、極論を使って説明する子も出てきた。 ぐにゃぐにゃ四角形を、どんどんつぶしていくと、やがて、面積がゼロになる。 だから、平行四辺形の方が小さいという理由である。 こうして、「辺の長さが等しいからといって、面積が等しいとは限らない」ことを確認した上で、 「平行四辺形の面積の求め方を考えよう」 と、学習課題を提示した。 さらに、「いろいろな方法で求められるかな」と煽り、挑戦意欲に火を付けた。 子供たちは、「長方形に等積変形すれば、面積を求められそうだ」という解決への見通しをもっている。 意欲的に、課題に取り組んでいった。 |
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★その後の展開 <自力解決> 自力解決の場では、子どもたちに色上質紙に平行四辺形を印刷したものを配り、切ったり貼ったりして考えられるようにした。 ここでは、あえて1枚ずつ配り、1つ考えるごとに、紙を前に取りに来るよう指示を出した。 紙を取りに来る子に、「お、2つ目だね」「すごい、3つ目!」と声をかけて意欲を高めると共に、周りに子にも刺激を与えるためである。 また、紙を取りに行き来する中で、友達のノートを見ることになる。 それが発想のヒントになると考えたのである。 <話合い・まとめ> 話合いの場では、それぞれのやり方を紹介し合った後、 「それぞれの考えに共通すること」について話し合った。 どのやり方も、共通するのは、 「形を変えて長方形にすると求められる」 ということである。 |
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