前田の算数

前 田 の 算 数  実 践 事 例
5年 倍数と約数
算数オリンピックの問題に挑戦! −青は何枚?−

5年「倍数と約数」 算数オリンピックの問題に挑戦(青は何枚?)

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 1、は じ め に
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時には、難しい問題にチャレンジしてみるのもおもしろい。
算数オリンピックに次のようなおもしろい問題がある。



1996年 算数オリンピック(第5回大会トライアル)」に出題された問題


 1から50までの数字を1つずつ書いたカードが50枚あります。このカードは、片面が青に、もう1つの面が赤にぬられていて、どちらの面にも同じ数字が書かれています。生徒が50人いるクラスの先生がこの50枚のカードを全て赤の面を上にして机に並べ、「さあ、これから出席番号順に1番の人から1人ずつ前に出てきて、自分の出席番号の倍数になるカードをすべてうらがえし、青だったら赤に、赤だったら青にしなさい」と言いました。
 さて、出席番号50番の最後の生徒が先生に言われたようにうらがえしたあと、青の面が上になっているカードは何枚ありますか。

   


一見すると「倍数」の問題に見えるが、1つ1つの数に着目してみると、実は「約数」の問題になっている。
 例えば、24のカードなら{1番、2番、3番、4番、6番、8番、12番、24番}の8人がカードを裏返すことになる。8回裏返すと、カードの色は{青、赤、青、赤、青、赤、青、赤}と変わっていき、結局、元通りの赤色になる。例えば、25のカードなら、{1番、5番、25番}の3人が裏返し、カードの色は{青、赤、青}と変化し、最後には青色になる。
 つまり、カードの約数の個数に着目すればよいのである。約数の個数が偶数個なら赤色になり、奇数個なら青色になる。

 ちなみに、ほとんどの数は、約数の個数が偶数個になっている。例えば24の約数なら{1、2、3、4、6、8、1224}の8つである。これらの約数は{1と24}{2と12}{3と8}{4と6}と、積が24になるもの同士で2つずつペアにすることができる。

 ただし、約数の個数が奇数個になる例外の数もある。2549などがそうである。例えば、25の約数は{1、5、25}の3つである。{1と25}はペアになるが、{}はペアがいない。自分自身がペアになるからである。
 つまり、1×1=、2×2=、3×3=、4×4=25、5×5=49など、ある数を二乗した数だけは、約数の数が奇数個になるのである。

 答えは、2549の5枚となる。

 この問題は、倍数や約数の理解を深めるのにぴったりの教材である。
 この問題を授業で扱ってみることにした。
(ただし、私のクラスの人数に合わせて、数値を50人から40人に変更した)


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 2、 授 業 の 実 際
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(1)解けるかな?


「今日は、算数オリンピックの問題に挑戦してみましょう。」
そう言って、1〜40までの数字が書かれた赤いカードを提示した。

   

「かなり難しい問題なんだけど、みんなには解けるかなあ」
と言えば、子どもの挑戦意欲が掻き立てられる。

 難しい問題である。
 問題の提示は、条件を1つずつ小出しにして、ゆっくり丁寧におこないたい。


 まずは、出席番号1番の子を指名して、ホワイトボードに貼ってある1から40のカードを裏返すように指示した。他の子どもたちは、これから何が起こるのか興味津々で見つめる。
 見ている子どもたちから「裏は赤色だ」というつぶやきが聞こえたので、黒板にも「表は青、裏は赤」と書いた。
 子どものつぶやきをひろいながら、1つずつルールを確認していくのである。


 続いて、出席番号2番の子を指名してホワイトボードの所に出て来てもらった。勘の鋭い子が
「あ、分かった。1番から順に40人全員がめくっていくんだ」
とつぶやいた。
「いい予想です、その通り」とほめて、
「1番から40番までめくる」というルールを追加した。


「だったら、最後には赤色に戻るね」という子が出てきた。
どうしてそう思ったのか尋ねると、
「だって、40人は偶数だから、青赤、青赤…ってなって、最後は赤に戻る」と答えた。
 なるほど、面白い発言である。偶数回めくると赤になることをみんなにも確認した。このことが後々のポイントになっていく。
 しかし
「でも、そんなに簡単な問題じゃないんですよ」
そう言って、
「2番の子は、2の倍数のカードだけめくってください」
と指示を出した。
 さらに、3番の子に3の倍数をめくってもらった。
 自分の番号の倍数のカードだけめくるというルールを伝え、
「最後に青色のカードは何枚になりますか」と尋ねた。
「え、そんなの分からないよ…」と、子どもたちからどよめきがおこった。



(2)24のカードは、赤?青?

「難しい問題なので、1つ1つのカードについて、先生と一緒に考えていきましょう。」
そう提案して、
「例えば、
24のカードについて考えてみましょう」
と投げかけた。


 まずは、24のカードを裏返す人に立ってもらった。
出席番号が{1番、2番、3番、4番、6番、8番、
12番、24番}の子どもたちである。
子どもたちは
24のカードを裏返すのは、24の約数の人だね」
「偶数回カードを裏返すから、
24のカードは赤色になるね」
などと、気付いていった。


 次に、25のカードを裏返す人に立ってもらった。
出席番号が{1番、5番、25番}の子どもたちである。
子どもたちは「
25の約数は3つだ」「奇数回だから、青色になるね」などと、気付いていった。

(3)約数の個数を調べよう!

 約数の個数が偶数か奇数かを調べれば分かることを確認し、
「1から40までの数の約数の個数を調べよう」
と提案した。
「え、全部?」
と動揺しながらも、子どもたちはノートに向かい、夢中になって約数の個数を調べ始めた。


 問題集にも
「次の数の約数を求めましょう」
というような問題がよく出題される。
こうした問題も、少し目先を変え、目的をもたせるだけで、子どもたちは夢中になって取り組んでいくのである。

 もちろん、全ての数の約数を求めて欲しいと思っていたわけではない。
 作業をする中で「これじゃ大変だ」「もっと楽にできないかな」ときまりに着目していく姿を期待していたのである。


(4)きまりを見つけたよ!

 しかし、きまりに目を向けていく子が思ったよりも少なかったので、こちらからヒントを与えることにした。
 数名の子に前に出てもらい、1から20までの数の約数を黒板に書いてもらった。



  {}1個→奇数個

  {1、2}2個→偶数個

 3 {1、3}2個→偶数個

  {1、2、4}3個→奇数個

  {1、5}2個→偶数個

  {1、2、3、6}4個→偶数個

  {1、7}2個→偶数個

  {1、2、4、8}4個→偶数個
 
  {1、3、9}3個→奇数個

 10 {1、2、5、10}4個→偶数個

 11 {1、11}2個→偶数個

 12 {1、2、3、4、6、12}6個→偶数個

 13 {1、13}2個→偶数個

 14 {1、2、7、14}4個→偶数個

 15 {1、3、5、15}4個→偶数個

 16 {1、2、4、8、16}5個→奇数個

 17 {1、17}2個→偶数個

 18 {1、2、9、18}4個→偶数個

 19 {1、19}2個→偶数個

 20 {1、2、4、5、1020}6個→偶数個


 1から20までの約数を見せて、
「よく観察すると、何か気付くことが出てきますよ」
と子どもたちに助言した。


 だんだん「分かった!」という声が聞かれ始めた。

 答えが分かった子から、こっそり私の所に言いに来るように指示した。
 子どもたちは、こっそり言いに来るのが大好きである。

 正解だった子には、ヒントを考えるように指示した。

 分かった子にヒントを言わせるという活動は、ヒントを言う子にとっては自分の考えを簡潔にまとめることになり、ヒントを聞く子にとっては、考える見通しを持つことになる。

「奇数回だけ青」
「ほとんどは赤」
「ペア」
「赤は全部ペアになる」などのヒントが出てきた。











(5)ペアになってるよ!

「ペア」というキーワードは大切にしたい。
「ペア」って何のことなのか、1人の子を指名し、図で表してもらった。

  

 {1と24}{2と12}{3と8}{4と6}が矢印で結ばれた。
 他の数の約数についても同様に、ペア同士を矢印で結んでもらった。

 図を見た子どもたちから「なるほど」という声があちこちであがった。

  

 さらに、
「同じ数を2回かけるとペアにならない」
「例えば、1×1、2×2、3×3」などと、ヒントが続いた。

 ヒントが増えるに連れて、正解に辿り着く子がどんどん増えていった。
 ひらめく瞬間は気持ちのいいものである。
 子どもたちの表情が、ぱっと明るくなる。

「算数オリンピックの問題が解けるなんて凄い!天才です」
そんなふうにほめて、授業を終えた。















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