前田の算数
前 田 の 算 数 実 践 事 例 | |||||||
第4学年 「電卓を使って計算しよう」 | |||||||
電卓マジック 〜算数トリックを見やぶれ〜 | |||||||
指導案(PDF) | |||||||
はじめに 東京書籍の教科書に、「電たくを使って計算しよう」というページがあり、次のような電卓を使った不思議な計算が紹介されている。
本来は、電卓の使い方を学ぶことがねらいのページなのだが、そこにアレンジを加えてみた。規則を見つけ、見つけた規則が成り立つ理由を考えていく授業である。 |
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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (1)導入のマジック 「マジックをします。」 そう言って、1人の子供を指名する。
驚く子供たちから、「もう1回やって」と,、リクエストの声があがる。 「いいでしょう」と言って、1人の子供を指名する。
子供たちから笑いがおこる。 しかし、何人か不思議そうな顔をしている子もいる。 「おやおや、みなさん笑ってますね。 しかし、まだ何人か不思議そうな顔をした人もいますよ。 念のため、誰かこのマジックのトリックを説明してくれませんか。」 と言って、子供の中の1人に説明してもらう。 「1から3までの紙が教室のどこかに貼ってあって、1って言ったら1の紙をめくって、2って言ったら2の紙をめくって、3って言ったら3の紙をめくる。」 「1から3の何を答えても当たるようになってる。」 実はこのマジック、ナポレオンズがTVでやっていたのを真似したものである。 冗談みたいなマジックであるが、「何を答えても当たるようになっている」という言葉が、この後の授業のキーワードになってくる。 |
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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (2)規則を見つける @算数マジック、その1 さて、 「今のは冗談。ここからが本気のマジックだよ。」 そう言って、袋の中から仰々しく紙を取り出す。 いよいよ算数マジックの始まりである。 子供たちは、今度もトリックを見やぶってみせようと、真剣な表情で見つめる。 同じ教材でも、提示の仕方で授業は大きく変わってくる。 今回は、マジック風に演出した導入を試みた。 「トリックを見やぶろう」という挑戦意欲が、「規則を見つけようとする算数的な態度」につながると考えたのである。 袋の中からとりだした紙を裏返しにして黒板に貼る。 「この紙の裏には、数がかいてあります。 あなた方は絶対にこの数を選ぶでしょう」 そう言って1人の子供を指名する。 |
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「ずるだ、ずるだ。」 「何を答えても2220になるよ」 とブーイングが起こる。 理由を尋ねると、 |
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子供たちの説明を聞きながら、式をチョークで色分けして板書する。
他の子供たちも、納得する。 A 算数マジック その2 「またしても、見やぶられましたね。では、次のはどうかな。さっきのが初級レベル。今度のは超上級レベルですよ。」 そんなことを言いながら、袋の中から紙を取り出して黒板にはる。 そして、電卓のモデル図を指さしながら、今度のルールを説明する。
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「また、どれも2220になるんじゃないの」 と子供から野次がとぶ。 気の早い子は、電卓をいじって試し出す。 こんな子供を注意してはいけない。 子供がじっと話を聞いているのは、楽しい授業ではないのだ。 しかし、黙って子供たちの野次に負けているわけにもいかない。 次のように反論した。 「え、どれも2220になる…。そんなはずはありませんよ。 だって、何から始めてもいいし、どちら向きに回ってもいいんですよ。 そうすると、16種類もの式ができるんですよ。 本当に全部2220になりますか。」 そう言って、16種類の式を書いた模造紙を子供たちに見せた。
それでも子供たちは、 「きっと全部2220になるよ」と言いはる。 本当に全部2220になるか試してみることになった。
そうやって、夢中になって電卓を使っているうちに、電卓の使い方を学習していく。 |
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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ B 整理して確かめる さて、本当なら、ここで 「全部試さなくてもいいんじゃない」 という子が出てきてほしかったのだが、なかなか出てこなかったので、次のようなヒントを与えた。
何人かの子供たちが、 「あ、そうか。先生の言ってること分かったぞ。」 と手を挙げる。 その中の1人を指名する。 「同じ数を並び変えただけの式がある。例えば、 123+369+987+741 369+987+741+123 741+123+369+987 987+741+123+369 は同じ数を並び変えただけで、答えは同じはず。 だから、123+369+987+741 だけ計算すれば、4つともの答えを確かめられる。」 すると、 「他にも同じ数を並び変えただけの式があるよ」 と他の子供たちも続く。 前に出てきてもらって、同じ数が出てくる式同士を色分けしていく。 だんだん、「あ、そうか」「なるほど」という子供たちが増えていく。
まとめると、 ・左回りで1・3・7・9から始まる式 ・左回りで2・4・6・8から始まる式 ・右回りで1・3・7・9から始まる式 ・右回りで2・4・6・8から始まる式 の4種類の式を確かめればいいことになる。 実際に確かめてみると、4種類とも答えは「2220」になる。 |
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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (3)規則が成り立つ理由を考える。 @理由を考えようとする マジックのトリックは、見事に見やぶられてしまった。 しかし、授業はここからが本番である。 規則を見つけて終わりではなく、規則が成り立つ理由を考える子供に育ってほしいと思うのである。 そこで、 「やっぱりインチキだった。」 という子供たちに、 「あれ、偶然ですね。 先生もまさか16種類とも2220になるとは思いませんでした。」 とぼけてみせた。すると、子供たちは、 「偶然じゃないよ。何か理由があるはずだ」 と反論する。 そして、全部が「2220」になる理由を考えていくことになった。 |
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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ A考えるべきことを整理する
まずは、考えるべきことを整理しなければならない。 ・どちら向きに回っても答えが同じになる理由を考え、 ・どこから始めても答えが同じになる理由を考えれば、 全部「2220」になることが証明されることを、子供たちに確認した。 |
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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ Bどちら向きに回っても答えが同じになる理由を考える
ヒントが必要である。 そこで、次のように板書してみせた。 筆算にしたところがミソである。 板書する様子を見ていた子から、 「そうか、分かった。」 という声があがる。
「じゃあ、囲んでみますよ」 と、チョークで囲んでいく。 百の位から順番に囲んでいく。 百の位を赤で囲み、十の位を青で囲む。
お調子者が「黄色」と答え、別の子が「赤色だよ」と反論する。 「赤色」にしようという子に理由を聞く。
こうして、どちら向きに回っても答えが同じになる理由が証明された。 |
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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ C どこから始めても答えが同じになる理由を考える
「1・3・7・9」から始めるパターンと、「2・4・6・8」から始めるパターンの2種類がある。 先程と同じように、筆算にして板書する。 そして、先程と同じように「1・3・7・9」は赤、「2・4・6・8」は青と、チョークで色分けして囲んでいくのだが、困ったことになる。 さっきは、どちらも「赤青赤」だったのだが、 今度は、2・4・6・8から始めた式は、「青赤青」になるのである。
子供たちは、
それでは、
青 2+4+6+8 2つの式を板書し、見比べる。 ある子が次のように説明した。
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同じ説明を別の子に、電卓の図を使って説明してもらう。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 見えなかったものが見えてくる! それが、算数の楽しさの1つである。 ここでは、マジックの中で使われていなかった「5」という数が見えてきたのである。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 電卓の数が全部「5」に見えてくると、答えが2220になる理由は簡単に分かる。 どこから始めても、555+555+555+555 どちら向きに回っても、555+555+555+555 答えは同じ。 当たり前である。 |
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おわりに 今回の授業では、不思議な計算を知るだけでなく、 不思議な計算になる「理由」を考えた。 不思議と出会った時、「なぜ」と思える子供、 そんな子供に育ってほしいと、私は願っている。 |
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