前田の算数

前 田 の 算 数  実 践 事 例
3年「重さ」 〜 おもちゃ王国からの挑戦状 〜
数値化するよさを、実感させる

     

指導案(PDF)
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 は じ め に
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「量と測定」の領域で、大切にしたいこと。
ずばり一言でいうなら
単位を決めて、そのいくつ分かで数量化する考え
である。

「単位を決めて、そのいくつ分かで数量化する考え」
それを、知識として教え込むのではなく、
子供が自ら発見していけるように、授業を仕組みたい。

本実践では、
@直接比較、
A間接比較、
B任意単位による測定、
C普遍単位による測定
といった測量の4つの段階を十分に体験させ、数値化に至る過程を大切に扱った。
「数量化することのよさ」を、実感を伴って理解していってほしいと考えたからである。

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1、重さチャンピオンを決めよう (直接比較)

(1)課題を把握する

 おもちゃ王国からビデオレターが届いたという設定で学習をスタートした。
 ビデオレターは、次のようなも内容である

   ◆◇おもちゃ王国からのビデオレター@

 3年2組のみんなが持っている
 人形やぬいぐるみやロボットの中で、
 一番重いものを探し出しほしい。


 ビデオレターを見た子供たちは、口々に、
「家に大きいぬいぐるみがあるから、持ってこよう。」
「大きいからって重いってわけじゃないよ。」
「どうやってチャンピオンを調べるの。」
などとつぶやき、これから始まる重さの学習へ、意欲を高めていった。





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(2)重さを比べる方法を考える。

「ところで、全員のおもちゃがそろった時、どんな方法で重さを比べたらいいかな。」
と投げかけた。
そして、「例えば…」と言いながら、教師が用意した大きなぬいぐるみと小さな人形を提示した。

「このぬいぐるみと人形なら、どっちが重いと思うかな。」

そう問いかけると、子供たちから、
「見ただけじゃ分からない」
「持ってみないと分からないよ」
という声があがる。
それならばと、実際に持って比べてみることにした。

みんなを代表して、政夫を指名。
実際にぬいぐるみと人形を持ってもらった。
政夫は迷いながらも「人形の方が重いよ」と判断した。

そこで、

「よし、これで決定。重いのは人形の方だね。」

と、子供たちに言ってみせた。
しかし、他の子供たちが、それに納得しない。
「政夫が間違ってるかもしれない」
というのである。
「じゃあ、みんなも持ってみて、多数決で決めよう」
と提案してみたが、子どもたちは多数決でもダメだという。
「人間の手では、正確には分からない」
と言うのである。

そこで、正確に重さを比べる方法について、考えていくことにした。


「正確に重さを比べる方法を考えよう」

と、学習問題を提示すると、早速ユニークな発想が、どんどん出てきた。

例えば、2つのおもちゃを手に持ってぶらんと下げる方法。
手のひらを上に向けて持つよりも、筋肉の力が加わらずに、正確だというのである。
しかし、人間の手を使うのだから、完全に正確ではないという反対意見が出てきた。

例えば、わたの上に乗せる方法。
わたが深く沈んだ方が重いというのである。
しかし、結果がはっきりと分からないという反対意見が出てきた。

例えば、水に沈める方法。
深く沈んだ方が重いというのである。
しかし、重いものが沈むとは限らないという反対意見が出てきた。
「すいかは水に浮くけど、10円だまは沈むよ」
と、生活経験を語って説明した。

様々なユニークな発想が出てきた。
しかし、正確に比べられるかどうかを話し合っていった結果、
方法は、
「シーソーを使って比べる」
「天秤を使って比べる」
「ゴムの伸びで比べる」
「ばねの伸びで比べる」
の4つに絞らた。

こうして、重さを比べる方法を考える中で、子どもたちは、
「重さは見た目だけでは判断できないこと」や「重さと比重の違い」など、
重さの概念について理解していった。





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(3)重さを比べ合う。

3日後、全員のおもちゃがそろったところで、いよいよ重さ比べをした。

まずは、班ごとの1位を決める。
子供たちは、思い思いの方法で、重さを比べ合った。
おもちゃには、鉄や綿や布やプラスチックなど、いろいろな素材がある。
小さいおもちゃが勝ったり、大きいおもちゃが負けたりといった逆転劇が起こり、あちらこちらで歓声が沸きおこった。
こうした活動の時間は、十分に保証してやりたい。
子どもたちは、実際にモノとふれあう中で、
「重さは、見た目だけでは判断できない」という重さの概念や、
重さの量感を身に付けていくのである。

班の1位が決まったところで、その1位同士で重さを比べることにした。
クラスには、全部で10班ある。
10人全員が、全員と比べ合っていては、時間がかかる。
そこで、トーナメント戦を行うことにした。
AよりBが重く、BよりCが重ければ、当然AよりCが重い。
間接比較の発想である。

トーナメント戦を行うにあたって、
天秤、シーソー、ゴム、バネ、4つの方法のうち、
どの方法を使うか、話し合った。
結果、トーナメント戦は、天秤を使って対決することに決まった。
「天秤だと2つの重さを1度で比べられる」
「天秤だと、どんな重さのものでも比べられる」
「天秤だと、勝ち負けがはっきりと分かる」
「シーソーよりも、微妙な違いが比べられる」
というのが理由である。

「頑張れー」という歓声に包まれた熱戦(?)が繰り広げられ、
重さチャンピオンは、亜紀が持ってきたホワイトタイガーのぬいぐるみに決まった。
もちろん頑張っても結果は変わらないのだが、
それでも応援したくなるのが、子どもの素直な発想である。









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2、王様に重さを伝えよう。 (任意単位・普遍単位による比較)

(1)課題を把握する

チャンピオンが決まったという報告を、ビデオで撮影し王様へ送った。
すると、おもちゃ王国から返事が届いた。


   ◆◇ おもちゃ王国からのビデオレターA

 みんなの持ってきたおもちゃは、
 どれくらいの重さだったか
 伝えてほしい。


どうやって、王様に重さを伝えればいいのだろうか…。
子供たちは思考を始めた。

これまで、子供たちは、直接比較で重さを比べ合ってきた。
しかし、その場にいない王様に伝えるには、直接比較では無理なのである。

これまでのやり方では不都合が生じる場面を設定することで、
子供たちが、「○○の何個分で表そう」と、自ら気づいていく姿を期待したのである。

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(2) 重さを伝える方法を考える。

和也が持ってきたピカチューのぬいぐるみを例に挙げ、
どうやって重さを伝えるかを、話し合った。


「ピカチューの重さは、(   )です。」


と板書し、

「(   ) の中にどんな言葉を入れたらいいかな」

と、子供たちに問い掛けた。

発問の意味が分からずにきょとんとしている子もいたので、
「ピカチューの重さは、まあまあ重いです。
 どうだい。これで、いいいかな」
と例を示した。
「それじゃあ、ダメ―」
と、子どもたち。
「まあまあって言葉じゃ、重さが正確に伝わらないよ」
というのである。

「ピカチューをゴムに吊してみて、何p伸びた重さですって伝えればいいよ。」
という考えが出てきた。
「ゴムの伸びだと、数で表せるから、王様にも伝わるよ」
というのである。

実際にゴムに吊してみた。
そして、
 「ピカチューの重さは、ゴムの伸び3p分の重さです。
  どうだい。これで、いいかな。」
と問いかけた。
しかし、子供たちは、「それじゃあ駄目だ」という。
「それじゃあ、ちゃんと伝わらないよ。
 だって、ゴムでも、太いゴム、細いゴム、いろんなゴムがあるよ。」
「pって長さでしょ。重さじゃないよ。重さで伝えた方が、分かりやすいよ。」
というのである。

ゴムの伸びで表すと、「数値化できる」というよさがある。
しかし、
「ゴムの種類によって伸び方が違う」
「重さを長さで伝えることになり、王様に分かりにくい」
という不完全さも見つかった。

だったら、重さを、天秤を使って数値化できないだろうかという方向に、話し合いは進んだ。
やがて、
「ピカチューとのりを天秤で釣り合わせて、のりがいくつ分と言えばいいよ。」
という考えが出てきた。

「よし、早速やってみよう」
と、子供たちから、のりを集めようとすると、
「先生、それじゃあ駄目だよ」
とブーイングが起こった。
「同じのりじゃないと駄目」
「新品ののりじゃないと駄目」
というのである。

こういった発言を予想して、新品ののりをいくつか用意しておいた。
早速、のりのいくつ分かで重さを表してみる。
天秤の一方にピカチューを吊し、もう一方にのりを入れていく。
1個、2個、3個…。
4個入れても、ピカチューの方がまだまだ重い。
ところが、5個入れたところで、のりの方がぐーんと下がってしまった。

それを見て、子供たちはざわつき出した。
「のりは重すぎるから駄目だよ。微妙な重さを表せない。もっと軽いものじゃないと」
というのである。




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(3) 単位になりえる物の条件を考える


ここで、話し合いを交通整理することにした。
「何が明らかになって、何について考えればいいのか」
を明確にすることが、話し合いにおける教師の大切な役割である。

「何かの何個分で表せばよいこと」
が明らかになり、
「何の何個分で表すか」
について考えればよいことを、
子供たちに確認した。

つまり、ここからは
「任意単位になり得るものの条件」
について、話し合っていくのである。

黒板に


「ピカチューの重さは、(  )の△こ分の重さです。」


と書き、

「何の何個分で表せばいいかな。」

と問いかけた。

子供たちからは、「鉛筆」「消しゴム」「おはじき」「一円玉」など、こんな物がいいのではないかというアイディアがたくさん出てきた。
ここでは、それぞれ

「どうしてそれがいいと思ったの?」

と理由を聞いていった。
子供たちが任意単位に選んだ物自体は「鉛筆」「消しゴム」…と、ばらばらである。
しかし、それを選んだ背景には、共通することがあるのと考えたのである。
理由を聞いていく中で、単位になり得るものは、次の条件を備えているものだと、子供たちは気付いていった。


  ・同じ物が身近にたくさんある物

  ・ある程度小さい物

  ・どこにでもあって、誰でも知っている物


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(4) 任意単位を用いて重さ表す。


これらの条件を満たす物として、1円玉が挙げられる。
子どもたちは、1円玉の何個分かで、自分のおもちゃの重さを表し、王様に報告した。

そして、そういった任意単位の究極が「g」や「kg」といった普遍単位であることに気付いていった。

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3、はかりを使いこなそう

その後、はかりの使い方や目盛りの読み方を学習し、
「g」や「kg」といった普遍単位で重さを表す練習を行った。

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 お わ り に
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見た目だけではどちらが重いか分からない物を提示することで、
子どもたちは、直接比較の方法を思い付いた。

比べる人数を拡張することで、
子どもたちは、間接比較の方法を思い付いた。

重さを伝える場を設けることで、
子どもたちは、任意単位による測定の方法を思い付いた。

任意単位になるべきものの条件を考える中で、
子どもたちは、普遍単位による測定の方法を思い付いた。

こうして、測定の4段階を体験する中で、子どもたちは、
「重さを数値化することのよさ」について、
実感を伴って理解していった・

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