前田の算数
前 田 の 算 数 実 践 事 例 | |||||||
3学年「長い長さのはかり方」の導入(巻き尺) | |||||||
イルビング・サラディノ選手の走り幅跳びの記録は? | |||||||
指導案(PDF) | |||||||
曖昧さを浮き彫りにする | |||||||
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1、はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ これから学習しようとしていることを、既に知っている子供がいる場合がある。 「長いものの長さのはかり方」の1時間目。 子供たちは、ここで初めて巻き尺と出会い、「@巻き尺の有用性」や「A巻き尺の使い方」を学習することになっている。 しかし実際には、子供たちのほとんどが、生活経験の中で既に巻き尺の存在を知っている。 教師が、長いものに30pものさしをあててみせて、 「ものさし1つじゃ測れないだけど、どうすればいいかな」 と子供たちに問いかけたとする。 最初のうちは「ものさしを何個も継ぎ足せばいいよ」などの考えも出てくるだろうが、10分も経たないうちに「巻き尺を使えばいい」という結論に至ってしまうであろう。 そんな時、教師はどうすればよいのだろうか? そこで、話し合いを終えてしまえばよいのだろうか? 或いは、「学校で習ってないことを言ってはいけません」と言えばよいのだろうか? そうではあるまい。 本実践では、そこからさらに踏み込んで、
そうすることで、子供たちは「そうじゃないよ。だって…」と考えていった。 そして、測るものによって用いる計器を選択することの大切さに気付いていった。 分かったつもりでいる曖昧さが浮き彫りになることで、子供たちは自分の考えを見つめ直し、見方や考え方を深めていくのである。 |
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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2、授業の実際 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「長いものの長さのはかり方」を学習する9月、本校では陸上記録会に向けての練習の真っ最中である。そんな子供たちに、世界陸上の走り幅跳びで優勝したイルビング・サラディノ選手が跳んだ長さと同じ長さの模造紙を提示した。教室からはみ出す長さに、子供たちは驚きの声を上げる。そして、「一体どのくらいの長さなのか知りたい」という思いを高めていった。 早速、イルビング・サラディノ選手が跳んだ長さを測ってみようということになった。しかし、私が用いたのは30pものさしである。もちろん、それでは長さが足りなくて測れない。
と子供たちに問いかけた。 最初のうちは、 「ものさしを何個も継ぎ足せばいいよ」 などの考えが出てきたものの、しばらくすると、巻き尺を使えばいいことに気付く子が出てき出した。 その理由を尋ねると、
「正確」という言葉が、キーワードとなりそうである。 そのことを、ものさしを使って説明するよう促した。実際にものさしを操作しながら比較することで、巻き尺の有用性を実感させようと考えたのである。何人かが前に出てきて説明し、他のみんなも納得の様子であった。 さて、こうして納得している子供たちに、揺さぶりをかけることにした。
子供たちは一瞬「あれ」という表情をして、「でも…」と口々につぶやき出した。 さっきまで安易に「巻き尺がいい」と思っていたのだが、考えの曖昧さが浮き彫りになることで、心が揺さぶられ、自分の考えを見つめ直し始めているのである。 そして、
などと、測るものによって用いる用具を選択することの大切さに気付いていった。 考えを見つめ直し、見方や考え方を深めていったのである。 |
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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ イルビング・サラディノ選手の走り幅跳びの長さは、長い長さであるから、当然巻き尺を使うと便利である。
さて、ここで、「@巻き尺の使い方を教え」「A巻き尺を使わせる」の順番で行うのが普通である。しかし、私はあえてその順番を入れ替えようと考えた。なぜなら、子供たちの思いは、「巻き尺の使い方を知りたい」のではなく、とにかく早く「巻き尺を使ってみたい」のではないかと考えたからである。 巻き尺を配り、十分に触らせた後、「測ってみたい」という子供たちの中から、6人(3ペア)の子供たちを指名し、前に出てきて測ってもらった。 この時、
測ってくれた子供たちの報告をこっそり聞いた後、その長さをみんなに発表した。
結果を聞いて、子供たちは騒ぎ出した。 何と3つのペアが報告した長さが、ばらばらだったからである。 私は、 「あれ、おかしいよね」 と言って、次のように投げかけた。
子供たちは、「多分…」と反論する。
曖昧さを浮き彫りにしたことで、巻き尺の正しい使い方に意識が向いていったのである。 そこで、子供たちに 「正しい使い方を理解すれば、正確に測れそうですね。 さっきは、まだ使い方を学習していなかったので、ばらばらになって当然です。 今から正しい使い方を学習していきましょう」 と投げかけた。 はじめから何でも教えてしまうのではなく、子供たちの意識が、正しい使い方に向いたところで、使い方を教える。必要感を抱いているから、子供たちは真剣に使い方を学ぼうとするのである。 |
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そう言って、みんなの前で測ってみせた。 この時、あえて、0の合わせ方を間違えてみせたり、巻き尺がねじれたまま測ってみせたりという演技をした。 子供たちは、「先生、違うよ。そこは、〜しなくちゃ」などと私の測り方を訂正しながら、楽しく巻き尺の使い方を理解していった。 ちなみに、正しく測ると、8m57pであった。 驚くべき記録に、そしてやっと測れた喜びに、子供たちから拍手が起こる。 その後、みんなから出てきたアドバイスをもとに、巻き尺の正しい使い方を板書にまとめ、ノートに写させた。 そして、もう1度、何人かに前に出て測ってもらった。 子供たちは、正しい使い方をしないと、正しく測れないことを、身にしみて感じている。使い方をしっかりと確認しながら、慎重に測っていった。正しい使い方をすれば、どの子が測っても記録は同じく8m57pであった。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 最後に、明日は、いろんなものの長さを巻き尺を使って測ってみることを告げて授業を終えた。 |
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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3、まとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 曖昧さを浮き彫りにすることで、子供たちは、心が揺さぶられ、自分の考えを見直し、見方や考え方を深めていく。 また、曖昧さを浮き彫りにすることで、子供たちは、「知りたい」「考えたい」という思いを高めていく。 「分からない」を「分かる」にすることだけが教師の役目ではなく、「分かったつもり」の曖昧さを浮き彫りし「分からない」ことを自覚させることも、教師の大切な役割なのだと、私は思う。 |
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