前田の算数
(インド式、かけ算、ネイピアの計算棒)

前 田 の 算 数  実 践 事 例
3年「かけ算のひっ算」
のかけ算

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 子供たちは、教科書に出ていないような、
 いわゆる「おまけの話」が大好きである。
 ここでは、「かけ算の筆算」の学習のその発展として、
 世界のいろいろなかけ算の方法を紹介した。
 日本の筆算と「共通するところ」や「違うところ」を見つけていく中で、
 かけ算の意味の理解を深めてほしいと考えたのである。
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 (1)線をひくだけで答えが…!?


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@ 計算方法の紹介

12×23」と板書。

「12×23を昔々のインドの計算方法で計算してみます。
 線をひくだけで答えがでてくる魔法の計算です。
 九九を覚えていなくても計算できるんですよ。」
※インドが発祥かどうかについては、諸説あります。

そう言って、ゆっくりと黒板に線をひいていった。



まずは、線を斜めに1本と2本ひく。
子供たちからは、
「あ、分かった。12だ。」という声があがった。




次に、線を斜めに2本と3本ひく。
子供たちからは、
「やっぱりそうだ。これは23のことだ。」
という声があがった。

そんな子供たちの顔を見ながら、黙って計算を続けた。



線の交点を色チョークで囲み、2、7、6と書き、
12×23=276」と板書した。

早くも、その意味を理解した子供たちから、
「なるほどー」
「かしこーい」
「おもしろーい」
という歓声があがった。

そんな子供たちを指名して前に出させ、この計算のやり方を説明してもらった。




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A 練習問題

「今度は、自分でやってみましょう。」

そう言って、簡単な練習問題を提示した。

「分からない人は手を挙げてくださいね。」
と、教室を回りながら、分からない子に個別指導する。
また、早く終わった子には、
終わった人は、自分で問題を作って解いてみましょう。
と指示を出した。

そのうち、あちこちから、「うわあ面倒だ」というつぶやきが聞こえ出した。
実は、この計算方法、数字が小さい時はいいのだが、数字が大きくなると、線がごちゃごちゃになり、数えるのも大変になるのである。

中には、面白い子もいた。
3桁でもできるか試す子が出てきたのである。
「ほほう。3桁のかけ算に挑戦している人がいますよ」
と驚いてみせると、挑戦意欲を掻き立てられた他の子供たちも、3桁や4桁の計算を始めた。
ここでは、3桁や4桁の計算については個別の指導にとどめ、全体の場では説明しなかった。
子供たちの中には、新しい計算方法との出会いに戸惑っている子もいる。
そんな子供たちを、無用に混乱させないためである。
能力に応じて挑戦して欲しいと考えたのである。

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B 日本の筆算と比較する

さて、こうして、子供たちが古代インド式の計算方法を理解したところで、
古代インド式の計算方法の横に、日本の筆算を板書した。
そして、

「古代インド式と、今の日本の筆算、
 これからは、どっちを使っていきたいですか。」

と子供たちに問いかけた。
古代インド式と比較することで、今の日本の筆算の特徴に気づいて欲しいと考えたのである。

「今の日本のやり方がいい」という子供たちが、圧倒的に多かった。
理由を尋ねると、
・今の日本の筆算の方が、速く簡単にできる。
・古代インド式だと、大きい数字の時に大変。
などの意見が出てきた。
実は、古代インド式の計算方法、数字が小さい時はいいのだが、数字が大きくなると、線がごちゃごちゃになり、数えるのも大変になるのである。
子供たちは、
「例えば、98×76だと線がこんなにいっぱいになって…」
と、具体例を出しながら、インド式の面倒さを説明した。

反対に、
「インド式を使っていきたい」
という子供たちもいた。
理由を尋ねると、
・見た目で答えが分かる。
・九九を知らない1年生でも計算できる。
などの意見が出てきた。

「古代インド式と今の日本の筆算の違いが、いっぱい見つかりましたね。」
 それなら反対に…、」と言って、次のように投げかけた。

「古代インド式と、今の日本の筆算で、
 同じところはありませんか。」

最初は、発問の意図が分からずに、きょとんとしている子が多かった。
そこで、
「どんなことでもいいんですよ。」
とアドバイスした。
すると、
「本当にどんなことでもいいの?」と言いながら、1人の子が手を挙げた。
「当たり前なんだけど…」と前置きしながら、
「どちらも答えが同じです。」
と自信なさげに発言した。

「素晴らしい!当たり前のことに気づくのは、難しいことですよ。」
そう言って、その発言を、大いに褒めると、他の子供たちの空気も和らぎ出した。
「なんだ、そんなことでいいんだったら…」
と次々に手が挙がる。


「出てくる数字が同じです」

「インド式にも日本の筆算のどちらにも、2×2や2×3があります。」

「どちららも、4と3を足しています」

などの共通点が見つかった。

どちらも、12を10と2に分け、23を20と3に分けて計算している。
時代や国は変わっても、
分けて計算して、後から足す
という計算の基本は同じなのである。

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(2) ななめに足すと答えが分かる…!?


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@ 計算方法の紹介

 さて、次に、もう少し時代を進めて、ます目を使ったインド式の計算方法を紹介した。
例えば、「13×24」なら次のように計算する。

手順1: ますの外に問題の数字を書く。



手順2: ますの中に、それぞれの積を書く。



手順3: 斜めに足す




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A 練習問題

紹介した後に、練習問題を提示し、実際に自分で解いてみた。


(3) ネイピアの計算棒をプレゼント



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授業の最後には、
厚紙で作った「ネイピアの計算棒」を子供たちにプレゼントし、
使い方を説明した。

「ネイピアの計算棒」とは、九九表を棒状に切ったもので、
スコットランドのネイピアが発明したものである。
インド式のます目を使った計算方法を応用している。

  <ネイピアの計算棒>

例えば、「425×□」なら、
次のように「ネイピアの計算棒」を置くと答えがすぐ分かる。



子供たちは、
「これは便利だ」「今度から使ってみよう」
と喜んでいた。


 筆算の特徴は、筆算だけを見ていても気づかない。
 他の方法と比べてみることで、
 筆算の特徴が見えてくるのである。

 国や時代が変わっても、
 「分けて計算して、後から足す
 という考え方は、同じである。

 この考えを、より簡単に行おうとした集大成が、
 今の筆算なのである。


計算のやり方を動画でも紹介しています。
ご覧ください。
↓ ↓ ↓ 
https://youtu.be/b4Mqv3e6KRY



 

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