前田の算数
前 田 の 算 数 実 践 事 例 | ||||||||||||||||||
3年「棒グラフ」 | ||||||||||||||||||
月光ハイクのだんとつさを伝えよう | ||||||||||||||||||
指導案(PDF) | ||||||||||||||||||
目次 1、はじめに 2、実践事例 ・ 2.1 単元について ・ 2.2 考える楽しさを味わうために ・ 2.3 全体計画 ・ 2.4 指導の実際 3、まとめ |
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1.はじめに 算数の楽しさについて考えてみたい。 ビデオや写真、アニメのキャラクターやお菓子などを教材に使うと、一時的に子供たちの心をぐっと惹きつけることはできる。しかし、それだけでは、はじめのうちはよいのだが、学習が進むに連れて、子供の意欲はだんだんと減退していく。 それは、算数の本質に迫る楽しさではないからである。 では、算数の本質に迫る楽しさとは、どのようなものだろう。
そのような教材に対して、子供は夢中になる。 そして、答えを導くだけに満足せず、「より速く」「簡単に」「正確に」できる方法を模索したり、「いつでも言えることなのか」と一般性を図ったりと、より算数的に価値の高いものを求め、とことん追究していく。そのような時、子供は、考える楽しさを味わっているのではないだろうか。 また、自分にはなかった発想と出会った時も、子供は目を輝かせる。新しい発見に、子供の心は「なるほど」と「でも…」の間で心が揺れる。そして、自分の考え方を見つめ直していく。こうして、算数的な見方・考え方が拡張された時、子供は考える楽しさを味わっているのではないだろうか。 3年生「棒グラフと表」の実践を通して、考える楽しさを味わう子供の様相とそのための手立てにについて検証する。 |
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2.実践事例 2.1 単元名 第3学年 棒グラフと表 ~なかよし合宿の思い出を伝えよう~ 2.2 単元について 「棒グラフと表」で身に付けたい力 統計的な処理の学習は、『数量に関する様々なデータを、目的に応じて収集し、分類整理し、それを表現できるようにすること』をねらいとしている。本単元では、資料の分類整理をして棒グラフに表すことが、学習の中心になる。 ①「資料の分類整理」において身に付けたい力 資料の分類整理においては、簡単な観点から分類の項目を選び、資料を目的に応じた手際のよい方法で分かりやすく整理していく能力を伸ばすようにしたい。集計に当たっては、ただ単に答えを出すだけでなく、誤りがないことを確かめたり、誤りがおきにくいような方法を工夫したりと、より速く簡単に正確な方法を求める姿を育てることも大切である。このために合計欄の働きや、「正」の字を使った集計にも着目させたい。 ②「棒グラフ」において身に付けたい力 棒グラフにおいては、第2学年「A数と計算」において、絵を用いた簡単なグラフに表す経験をしてきている。「D数量関係」において学習する本単元では、棒グラフに表すことによって、単に数の大小をよむだけでなく、最大値や最小値をとらえたり、項目間の関係、集団のもつ全体的な特徴などをよみとったりすることができるようにしたい。そして、全体の傾向をとらえやすいといった棒グラフのよさを実感できるようにしたい。 なお、棒グラフをかく場面では、グラフ用紙の大きさによって、見通しをもって最小目盛りを取るなど、分かりやすく伝えるために工夫していく姿を期待したい。また、友達のつくった棒グラフと自分のつくった棒グラフを見比べるなどしながら、大きい順に項目を並べたり、数量の少ない項目をまとめて「その他」としたりするなどの工夫にも気づくようにしたい。 ③最終的に身に付けたい力 子供たちは、今後、第4学年において折れ線グラフを学習し、第5・6学年において帯グラフや円グラフを学習していく。最終的に望む姿は、それぞれの表現方法のよさを理解した上で、目的に応じた表現方法の選択ができる姿である。 そのためにも、本単元において、表と棒グラフ、それぞれのよさをしっかりと理解しておくことが大切である。本単元では、①混沌としたものを整理し、②分かりやすく伝える活動や、③表と棒グラフを比べる活動を通して、次のようなよさを感じられるようにしたい。 ◆表 - 簡潔で明確に整理できる。 ◆棒グラフ- 大きさが比べやすく、全体の傾向をとらえやすい。 |
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2.3 考える楽しさを味わう子供を育てるために | ||||||||||||||||||
2.3-1 『必要感』をもつことで、子供は主体的に活動する。 この秋、3年生は、呉羽青少年自然の家で、宿泊学習を体験した。 この「なかよし合宿」は、子供たちにとって、生まれて初めて親元を離れての集団生活であり、心に残るものとなった。 私は、この「なかよし合宿」を教材に使おうと考えた。 お世話になった呉羽青少年自然の家の方々に思い出を伝えるという活動を仕組むことで、「分かりやすく伝えたい」という「必要感」をもてると考えたからである。 そして、 ◆ 混沌とした情報を整理しよう ◆ 整理した情報を分かりやすく表そう といった願いが、単元を通して持続され、主体的に活動していく原動力になると考えたのである。 |
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2.3-2 適度な『負荷』に対して、子供は追究意欲を かき立てられる。 子供たちから自由な発想を引き出したい。 教師ならば、誰もがそう願う。 しかし、「何でも自由に考えてごらん」と言ったからといって、自由な発想が生まれるわけではない。活動の幅を制限する方が、子供たちの自由な発想を引き出せるのではないかと、私は思う。子供たちは、適度な負荷を与えられ、窮屈で不便な状態に追い込まれた時こそ、それを何とか打開しようと自由な発想を生み出すと考える。 本実践では、文集に載せるという条件を加えることで、紙面の大きさがB5に制限され、使える色も白黒に制限されるようにした。そうすることで、子供たちが限られた紙面の大きさの中で分かりやすく表そうと、目盛りの取り方など様々な工夫をしていくことになると考えた。 また、「なかよし合宿」で楽しかった活動のアンケートは、調査対象の数を拡張することができる。 最初は、操作活動がしやすいようにクラス40人を調査対象とするが、その後、学年のランキングをつくろうともちかけ、調査対象を80人に拡張する。調査対象の数を拡張することにより、絵グラフではなく棒で表す便利さを実感すると共に、目盛りの取り方を工夫せざるをえない状況に追い込まれると考えた。 |
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2.3-3 異なる考えと出会い、自分の考えの曖昧さが浮き彫りになった時、子供は自分の考えを見直していく。 子供たちの身のまわりには、棒グラフがあふれている。 棒グラフについて、既に何となく知っていることも多いであろう。 しかし、本当に棒グラフについて理解しているかといえば、そうではない。 その曖昧な部分を浮き彫りしていく。 例えば、子供たちの中には、漠然と「棒グラフで表すと、ぱっと見て分かりやすい」と感じている子が多い。しかし、本当に棒グラフは、ぱっと見て分かりやすいだろうか。 表とグラフを比較してみる。 人数が分かりやすいのは、どちらだろう。 表の方ではないだろうか。 漠然と「グラフで表すとぱっと見て分かりやすい」と思っていた子供たちは、「人数を表すのなら表の方が分かりやすいよ」という友達の考えと出会うことで、自分の考えの曖昧さに気づき、立ち止まるであろう。そして、「人数そのものなら、表の方が分かりやすい、でも…」と自分の考えを見直し、表とグラフのそれぞれのよさについて追究していくであろう。 |
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2.4 全体計画(全10時間) 呉羽青少年自然の家の方々になかよし合宿 の思い出を伝えよう。 第1次 整理のしかた (2時間) ○ どんな活動がどれだけの人気かを調べて整理しよう 第2次 棒グラフ(4時間) ○ 分かりやすく伝える方法を考えよう ○ 3年生全体の人気度を伝えよう 第3次 2次元表 (1時間) ○ 1組と2組の人気の違いが分かりやすくなるように表そう 第4次 活用(2時間) ○ 棒グラフを使って、呉羽青少年自然の家の方々に、附属小3年2組について紹介しよう 第5次 まとめ(1時間) |
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2.5 指導の実際 |
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2.5-1 <第1次 整理のしかた 1/2時> ◆相手意識・目的意識を明確にすることで、「伝えたい」という必要感が高まっていった子供たち◆ 「なかよし合宿」の思い出を文集にまとめている時のこと。 子供たちの中から「文集ができあがったら、お世話になった呉羽青少年自然の家の方々にも届けたい」という声があがってきた。 そこで、呉羽青少年自然の家の方々に協力をいただき、ビデオレターにて、次のようなメッセージを子供たちに送っていただいた。
ビデオレターを見て、子供たちの中に「なかよし合宿の人気を伝えたい」という思いが高まる。さっそく、どの活動が1番楽しかったかを、1人1人アンケートカードに書いた。そして、その結果を子供たちに、あえて、カードをばらばらに並べて提示した。 ばらばらのアンケートカードを見て、子供たちは、指さしながら数え出した。
「4位は」「5位は」と続けて聞いていくうち に子供たちの答えは、だんだんあやしくなって いく。
子供たちとこのようなやりとりをしながら、何を伝えたいのか確認していった。 子供たちは、 「1位だけでなくて2位や3位など、全体の様子を伝えたい。」 「順位だけでなくて、どの活動がどのくらいの人気なのかも伝えたい。」 という思いを高めていった。 ある子がこれらをまとめて、「人気度」という言葉で表し、 「呉羽青少年自然の家の方々になかよし合宿の人気度を伝えよう」 という学習課題が、子供たちの手でできあがった。 目的意識、相手意識を明確にすることで、子供たちに「分かりやすく伝えたい」という必要感が生まれたのである。 |
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2.5-2 <第1次 整理のしかた 2/2時> ◆「必要感」をもって取り組むことで、算数的に価値の高い方法を求めていった子供たち◆ まずは、どの活動に何人の票が集まったのか、人数を調べることになった。 グループごとに分かれて、思い思いの方法で人数を調べていった。 ほとんどのグループは、最初にカードを「月光ハイク」「ターザンロープ」などの種類ごとに分けて、次に種類ごとにカードの枚数を数える、という方法であった。どうしてそのようにしたのかを尋ねると 「ばらばらのまま数えると、数えにくい」 「ばらばらのまま数えると、同じカードを重複して数えたり、数え忘れたりすることがある」 といった理由が返ってきた。 そこには、より簡単に、より正確に、数えようと工夫する姿勢がうかがえる。 この方法を聞いて 「もっと速くできる方法があるよ」という子が出てきた。 分けながら数えることができるのだと言う。 その子が、前に出て実際にやってみる。 最初にどんな種類があるかをメモしておいて、数えたカードから、そこに○をつけていくという方法である。
しかし、「それでは、結局○の数を数えないといけない」という声があがる。 「○じゃなくて、『正』の字を使えばいい。正の字だと5のかたまりになるよ」 というのである。 「『正』の字だと、スペースもあまり使わないよ」 と他の子も続く。 みんなも「なるほど」と納得の様子。
納得している子供たちに、
と揺さぶりをかけた。 これに、子供たちは「駄目。5画じゃないもん。」「5画じゃないと数えにくいよ。」と、答えた。 「だったら、『田』じゃだめなの。5画だよ。」 と追い打ちをかけると、子供たちは、 「だめ。2画目におれがある。まっすぐでないと『はやく』『かんたんに』ならない。」と、答えた。 そんなやりとりをしながら、「正」の字のよさを確認した。 (ついでに外国の数え方「 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 子供たちは、集計の結果だけでなく、集計の方法にもこだわっていった。 このように、必要感をもって、本気で教材と向き合うことで、子供たちは算数的に価値の高い方法を求めていくのだということが確かめられた。 |
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2.5-3 <第2次 棒グラフ1/4時> ◆多様な考え方と出会うことで、見方・考え方を深めていった子供たち◆ 集計した結果を表にまとめたものを提示した。 子供たちの中から「もっと見やすくできるよ」との声があがる。 子供たちは、表に順位を書き入れたり、●を使ったグラフで表したり、棒グラフで表したりと、様々な工夫を凝らしていった。 加代子は、表の月光ハイクの欄に「40人中19人」と書き加えるという工夫をした。 それは、「ただ19人といっても、呉羽青少年自然の家の方々は、何人中の19人かは分からない。40人中と書くことで、月光ハイクの人気のだんとつさを伝えたい。」という願いからである。 しかし、「40人中」と書き加えることで、ただの表よりはだんとつさが伝わるようになったものの、もっといい方法はないかと、まだまだ自分の表し方に満足し切ってない様子だった。 加代子のような子は、他にも多数いた。 そこで、みんなで考えを出し合い、深めていく場を設けることにした。 |
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<第2次 棒グラフ 2/4時> ① 表とグラフを比べる 最初に、●の数で表した健太のグラフを、全体の場で取り上げた。 そして、子供たちに
と投げかけた。 子供たちは、グラフで表そうとした健太の真意を探る中で、グラフのよさに目を向けていった。
話し合いの中で、「ずば抜けて」や「一目で」という言葉が出てきた。 「月光ハイクのだんとつさを表したい」という願いをもって試行錯誤してきた加代子は、これらの言葉に心を動かされた。加代子は、健太の方法に共感し、次のように発言した。
加代子は、●の「個数」ではなく、「高さ」に着目したのである。 この「高さ」というキーワードが、子供たちの見方・考え方を深めていくこととなった。 「高さ」に着目すると、健太のグラフにも問題点が見えてきた。 月光ハイクが本当の高さではないというのである。
さらに、加代子は図を使って、「本当の高さ」について説明する。
というのである。 では、1列にさえすればよいのだろうか。 高さへこだわり出した子供たちの中には、●のかき方にも目を向ける子が出てきた。 例えば、次のような意見である。
高さへのこだわりが強まるにつれ、●で表す方法にも、改善点が見えてきた。 |
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② 棒グラフと絵グラフを比べる 子供たちが、「本当の高さ」にこだわりを持ったところで、 棒の高さで表している子供のグラフを紹介した。 このグラフを見て、加代子は、「あっ、そうか」と声をあげる。 加代子の思いを聞いてみる。
こうして加代子は、自分とは異なる考えと出会う中で、見方・考え方を拡張し、棒グラフのよさに気づいていったのである。 さて、加代子のように棒グラフよさに共感した子がいる一方、 棒よりも●の方がいいという子もたくさんいた。 「●だって、月光ハイクを1列にして、●をます目にそろえてかけば、 ちゃんとだんとつさが伝わる」というのである。 棒よりも●の方がよいという子供たちの理由は、 「●の方が、人数を数えやすい」 という考えである。 棒がいいのか、●がいいのか、意見が分かれ、話し合いは続いた。 高さで表すことのよさには、全員納得したものの、 高さを●と棒のどちらで表すとよいかは、次回への課題に残して、この時間は終わった。 |
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2.5-4 <第2次 棒グラフ 3/4> ◆曖昧さが浮き彫りになることで、見方・考え方を深めていった子供たち◆ 次の時間には、調査対象をクラス40人から、3年生全体79人に増やして、アンケートをとった。 調査対象を増やすことで、棒で表すよさを際立たせたいと考えたからである。 学年全体のアンケート結果に子供たちの関心が高まる。 「1位はやっぱり月光ハイクかな」 「月光ハイクが、何かに抜かされてるかな」 とつぶやく子供たちに、アンケートの結果を提示した。 アンケート結果の表を見て、 「やっぱり月光ハイクがだんとつだ」 と子供たちは声をあげた。 学年全体で見てもだんとつな月光ハイクの人気を、呉羽少年自然の家の方々へ伝えたいという思いが高まる。 そうして、
という学習課題ができあがった。 前の時間に高さで表すよさに気づいた子供たちは、棒グラフや●のグラフを使えばよいことには容易に気づいた。 しかし、いざグラフをかこうとして、子供たちは立ち止まる。 調査対象が79名に増えたため、ます目が足りないからである。 子供たちは、新たな負荷に追究意欲をかきたてられ、1ますを二人分と見るなど、目盛りの取り方を工夫して表していった。 |
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<第2次 棒グラフ 4/4時> それぞれが考えた方法を、全体の場で話し合う。 子供たちの表し方は、大きく分けて、棒グラフと●のグラフの2通りであった。 棒グラフで表した子供たちは、 「●よりも、はやくかける」 「●だと小さいから、見づらい」 という考えであった。 一方、●のグラフで表した子供たちは、 「人数が分かりやすい」 という考えであった。 棒グラフと●のグラフのどちらがよいのか、話し合いは、なかなか決着がつかない。 ここで、話し合いを整理する必要を感じた。 学習課題を明確にし、何が解明されて、何を話し合うべきなのかをはっきりとさせるのが、話し合いにおける教師の役目である。 ここでは、話し合いの焦点が、「だんとつさを伝える」ことから、だんだん「かきやすさ」や「数えやすさ」にずれていっていったように感じた。また、棒グラフのよさを主張している子供たちの中に、表と比べたグラフのよさを主張している意見と、●と比べた棒のよさを主張している意見が混在しているようにも感じた。 そこで、
と言い、同じ19人を、●が19個で表したものと棒で表したものと、数字で19とかいて表したものと、3通りを提示して見比べた。 子供たちからは、●も棒もどちらも数えにくいという声があがる。
今回の学習課題は「だんとつさ」を伝えることである。 「だんとつさ」は、棒でも●でも伝わることを確認した。 さて、その上で、「自分なら棒と●のどちらを使いたいか」と子供たちに問い掛けた。 すると、棒を使うという子が、圧倒的に多かった。 理由をまとめると、
前回の授業と比べ、調査対象が79人に増えたため、●のグラフでは、かくのが大変になり、また、●が小さくなったのである。 一方、棒グラフは、どんなに調査対象が増えても、目盛りの取り方を工夫することで、簡単に、一定の太さでかける。調査対象を増やすことで、棒のよさが際立ったのである。 |
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学習を始める前、子供たちの中には、ただ漠然と 「グラフは表よりもぱっと見て分かりやすい」 と感じていた子も多い。 しかし、「人数そのものなら、表の方が分かりやすい」という事実と向き合うことで、自分の考えの曖昧さが浮き彫りになり、考えを見直していったのである。 そして、大きさが比べやすく全体の傾向をとらえやすいというグラフのよさに気づいていったのである。 |
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<第3・4・5次> その後の学習では、クラスの様子を呉羽青少年自然の家の方々に伝えようと、クラスについてのいろいろなアンケート結果を棒グラフで表すという活動を行った。その中で、「その他」や「順序項目」の扱いについて考えていった。 |
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3 まとめ 3.1 成果 3.1-1 必要感について 本実践では、子供たちにとって思い入れのある「なかよし合宿」を教材に取り扱い、相手意識・目的意識を明確にしたことで、子供たちの中に、「分かりやすく伝えたい」という必要感が生まれた。そして、その思いは単元を通して継続した。 必要感をもった子供たちは、自らの手で学習課題をつくり上げ、その課題に没頭する中で、集計の結果だけでなく集計の方法にもこだわっていった。このような、算数的により価値の高い方法を求めていく姿こそ、考える楽しさを味わう子供の姿だと考える。 本実践から、他教科や生活と関連させることが、必要感を生み出す上で効果的であることが分かった。授業を考える際、面白いアイディアはいつでも必ずわいてくるものではない。しかし、他教科や生活と関連させることはできる。研究授業だけに限らず、日常の授業においても、生かしていきたいことである。 3.1-2 適度の負荷について 本実践では、文集に載せるという条件を加えることで、紙面の大きさがB5に制限され、使える色も白黒に制限されるようにした。そうすることによって、「月光ハイクを2列で表すのがよいのか1列で表すのがよいのか」について考えることになり、また、79人と調査対象が増えた際には「二人で1ますと見ればいい」「●だと調査対象が増えると小さくなるが、棒だと一定の太さで表せる」という考えを引き出すこととなった。 例えば、仮に学級新聞にまとめるというような場合と、本実践とを比べてみる。学級新聞ならば、調査対象が増えても、グラフそのものを大きくすれば解決できてしまうし、だんとつさを表すのに、色を工夫するなど、算数以外の要素が入ってきてしまったであろう。 条件を制限し、適度な負荷を与えたからこそ、子供の自由な発想が生み出すことができたといえる。このような自由な発想を生み出す姿こそ、考える楽しさを味わう子供の姿だと考える。 3.1-3 考える楽しさを味わえる教材とは 考える楽しさを味わえる教材について考える。 自力解決の場においては、「必要感」や「適度な負荷」が大切なことが分かった。 それに加え、「多様な解決方法」が生まれ、それらを比較する中で「驚き」や「矛盾」が生まれる教材であることが、話し合いの場において大切であることが分かった。本実践では、多様な集計方法が比較したからこそ、より算数的に価値の高い集計方法を求める姿が見られたのである。また、多様な表し方を比較したからこそ、棒グラフのよさに気づくことができたのである。また、表やグラフなどの多様な考えを比較する中で、「人数そのものなら表の方が分かりやすい」などの矛盾や驚きが生まれたからこそ、子供たちの考えを深めていったのである。 まとめると、考える楽しさを味わえる教材とは、 ◇解決したいという『必要感』をもてる教材 ◇適度な『負荷』のある教材 ◆『多様な解決方法』を生みだす教材 ◆『驚き』や『矛盾』を生みだす教材 であると言える。 3.1-4 曖昧さを浮き彫りにすることについて 曖昧さを浮き彫りにすることで、子供は自分の考えを見直していく。 本実践で考えてみる。子供たちは、最初はただ漠然と「グラフは表よりもぱっと見て分かりやすい」と感じていた。しかし、「人数そのものなら、表の方が分かりやすい」という事実と向き合うことで、自分の考えの曖昧さが浮き彫りになり、考えを見直していった。そして、大きさが比べやすく全体の傾向を捉えやすいというグラフのよさに気づいていった。 子供たちは、生活経験から、様々な誤った素朴概念を抱いている。例えば、「三角形の高さは三角形の中にある」「かけると答えは元より大きくなる」などがそれにあたる。こうした誤った素朴概念こそ楽しい授業づくりのチャンスと捉える教師の姿勢が、大切である。 曖昧さを浮き彫りになり、自分の考えを見直していくことによって、子供の見方・考え方は深まっていくのである。そうした子供の姿こそ、考える楽しさを味わう子供の姿だと考える。 3.2 課題 今回の実践を通して、学習課題が明確であることが大切だと、改めて痛感した。 最初、「人気度を、ぱっと見て分かりやすく伝えよう」という課題で授業をした。その時には、「人気度」という言葉自体が曖昧であったため、話し合いはあまり深まらなかった。そこで、次の時間には「月光ハイクの人気のだんとつさを、ぱっと見て分かりやすく伝えよう」とした。そうすることによって、子供たちからは「グラフだと、数を数えなくても見ただけで、月光ハイクが2位の2倍だと分かる」「計算しなくても分かる」「月光ハイクと2位とのだんとつさの方が、2位と3位のだんとつさより大きいのが分かる」などの考えが引き出せた。このような考えは、「人気度」という学習課題では引き出せなかったものである。 伝える相手が「呉羽少年自然の家の方々」と明確であり、伝える内容が「月光ハイクのだんとつさ」と明確であるからこそ、子供たちに解決したいという必要感が生まれ、算数的に価値の高い言葉が引き出せたのだと思う。 |
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