前田の算数

前 田 の 算 数  実 践 事 例
2年生 「千までの数」
子どもは 手で 考える!


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知識”だけでなく、“十進法の考え”を!
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子どもたちは、日常生活の中で、
“100円”や“200円”といったように、3桁の数を使っている。
子どもたちの中には、“3桁の数”の学習をする前から、
「そんなの、もう知ってるよ!」
という子が、いっぱいいる。

しかし“千までの数”の学習では、
千まで数えられるようにさえなれば、よいわけではない。

“千までの数”の学習で、もっとも大切にしたいこと、
それは、10ずつまとまるごとに1つ上の位に上げていく“十進法”の考えである。

本実践では、実際に「メロンの種の数」や「輪ゴム1箱の数」を調べる中で、
“十のまとまり10個を、百のまとまりにしていくよさ”
を実感していけるように、授業を仕組んだ。


第1・2時
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@いくつあるかな?
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何個あるか知りたい物を、各自、家から持ち寄った。
アジサイの花びらの数、メロン1個の種の数、袋に入っているマカロニの数、箱に入っている輪ゴムの数などなど…、様々な物が、教室に集まった。

持ってくる物の条件は、次の3つである。

 @何個あるか知りたい物

 A200から800ほどありそうな物

 B動かして数えられる物

これについては、事前に学級通信で学習の趣旨を伝え、保護者にも協力をお願いしておいた。

早速、何個あるか数えてみる。

ある容器から他の容器に移し変えながら、「235、236、237…」と1つずつ数えていく子。
10ずつのまとまりをつくって数える子。
子どもたちは、いろんな方法で数えていった。

そのうちに、1つずつ数えていた子が、
「あれ、何個だっけ?」
と数が分からなくなってくる。
だんだん10ずつのまとまりをつくって数える子が増えていった。

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Aペアで確認してみると…
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「△△は、○○個だったよ」とうれしそうに報告する子どもたち。
ここで、本当に合っているか、ペアの人同士で確認してみる場を設けた。
ここが、授業のミソである。
確認してみると、あちらこちらから「あれっ?」という声が挙がった。
数え直してみると、ほとんどのペアが、数が合わないのである。

「お互いの数がぴったりと合うまで、何度も何度も数え直してみますか?」
そう問い掛けると、子どもたちは、さすがにぞっとした表情に…。
「何度も数え直さなくてもよくするために、数が分かるように並べてみよう」
という気持ちが高まっていった。


授業の流れ


袋からびんに移しながら
「235、236、237…」


あれ、どこまで数えたっけ?


そうだ!10のまとまりを
作って数えよう



10のまとまりを作ると
どこまで数えたか忘れないね


でも、10のまとまりが、
机からはみ出しちゃったよ…


10がいっぱい!
いくつか分からないよ…



そうだ! 10が10個で
百のまとまりをつくろう


百のまとまりを作ると
分かりやすく表せるね


第3・4時
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B数が分かるように並べよう
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数が分かるように並べる方法について話し合った。
10ずつのまとまりをつくることは、1年生で既習の内容である。
「10ずつのまとまりをつくればいい」という考えは容易に出てきた。

ここでさらに、10のまとまり10で100のかたまりをつくることにも気付いてほしい。
そこで、実際に10ずつのまとまりをつくって数えていた子の写真を、子どもたちにぱっと見せた。
そして、
「何個あったか分かりましたか?」
と問い掛けた。
10のまとまりも、何十個もあれば、ぱっと見てどれだけあるか分からない。
子どもたちは
「あれ、何個あるか、分からないな」
「だったら、10のまとまり10個ずつで、まとまりをつくっていけばいいよ」
と100のまとまりをつくることに気付いていった。

こうした話し合いの後、実際に、自分の持ってきたものを数が分かるように並べ、写真に撮った。


第5時

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Cお友達の持ってきた物の数を見て回ろう
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実際に子どもたちが並べた写真を使って、千までの数の読み方や書き方を指導した。

その後、お友達の持ってきたものが何個あるか、写真を見て回る時間を設けた。
誰の何が何個だったかをノートに書くことで、数を読んだり書いたりする練習の場とした。


アジサイの花びらの数は、
686枚

メロン1個の種の数は、
698個

輪ゴムは1箱に
658個

お米1/4合で
811粒

※ 第7〜10時は、実際に数えたことと関連させながら、教科書を使って学習を進めた。
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 操 作 活 動 は 大 切 !

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 新指導要領に伴って、東京書籍の教科書が大きく変わった。
 以前の教科書には
、たくさんの象が並んでいる挿絵が掲載されていた。それがいくつあるか数えるのである。挿絵は、親切に十や百まとまりごとに並んでいるため、子どもたちは十や百のまとまりを作るように導かれる。しかし、それでは、ただ何となく十や百のまとまりをつくっただけにすぎず、十進法の考えを身につけたことにはならない。大切なのは、十や百のまとまりを作ることではなく、「十や百のまとまりをつくりたい!」という考えを持つことなのである。

   

 23年度版の教科書には、クリップのつかみ取り大会の様子が掲載されている。

    

象とクリップの違いは何か?
 まず、第一に「数えたい」という“切実感”である。象の数を数えたい子は滅多にいないが、クリップのつかみ取り大会なら、誰のクリップが多いか、数えたくなるに違いない。
 そして、象とクリップには、切実感以上に、もっと大きな違いがある。それは、“動かせるか、動かせないか”という違いである。数える際、象は、動かして操作できないのに対して、クリップは動かして操作できる。動かせる物と動かせない物とでは数え方が違ってくる。動かせる物は並べて数えることになり、動かせないものは印を付けて数えることになる。「印をつける」という操作よりも「並べる」という操作の方が、有益な操作である。なぜなら、「数を数える」という活動の後には、「数を表す」という活動がある。数を表す際には、何度も並べ替えられる方が、学習が豊かに展開できるからである。

 象からクリップに変わった背景には、「算数の授業の中に、もっと操作活動を取り入れましょう」というメッセージが込められているのではないだろうか。私も、このメッセージに大賛成である。「十進法」の考えを身に付けるには、実際に具体物を並べて数えるという活動が欠かせないと考えている。
 
操作に用いる具体物は、ある程度数えにくい物の方がよいと思う。数えているうちに、落ちたり転がったりして、何度も数え間違えるからこそ、「数え直さなくてもいいように、十や百のまとまりをつくらなきゃ!」という切実感を抱く。数え間違いこそが、大切な教材になるのである。

 算数の学習では、ついつい知識・内容を理解させることばかりに目を奪われがちである。しかし、具体物を操作して「十進法」の考え方を身に付けることこそ、大切なことだと思うのである。

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