前田の算数

前 田 の 算 数  実 践 事 例
2年 長いものの長さのたんい
量感を身に付ける 2つのポイント

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 1、 は じ め に
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学力調査をすると、“量感”に関する問題は、なぜか決まって点数が低い。
量感を身に付けようと、体験的な活動の場を保障するのだが、
それでも、なかなか身に付かない。

“量感”が身に付き難い原因は、何なのだろうか。
私は、“量感ってどんな力なのか”が、
漠然と捉えられていることに原因があると思う。

“量感”すなわち、量に対する“感覚”。
この“感覚”という言葉が、何だか漠然としたイメージの言葉である。
“感覚”という言葉からは、
“活動している中で、自然に身に付くもの”という印象をもってしまいがちである。
しかし、本当にそうだろうか。
いろいろな物の長さを測ってさえいれば、長さの量感が身につくであろうか。
いろいろな物の重さを測ってさえいれば、重さの量感が身につくであろうか。
そうではあるまい。
百回、長さを測ったって、百回、重さを量ったって、
ただ闇雲に活動していたのでは、量感は身に付かないのである。

本稿では、
@量感って、どんな力なのか?
Aその力を育むために、どうすればよいのか?
について、考えていきたい。



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 2、量感を身に付けるには
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私は、量感を身に付けるには、次の2つがポイントになると考える。


 1、武器になる量を身につけること

 2、“武器になる量のいくつ分”と考えられるようにすること



例えば、目の前に長机があって、その長さがどのくらいか見当をつけるとする。
そんな時、人は、どんな思考を辿るだろうか。
量感の身に付いている子は、当てづっぽうで答えたりはしない。
「僕の身長よりちょっと大きいから…」
「1mものさし1個と、30pものさしの2個分ほどだから…」
などと考える。
つまり、何か自分の武器になる量を基して、その何倍あるかを考えるのである。

大切なことは、
まず、武器になる量をしっかりと身に付けさせることである。
「1pは爪くらいの長さ」、
「1sはランドセルくらいの重さ」、
「1Lは台所の牛乳くらいのかさ」、
「1平方メートルは、新聞紙2枚分くらいの広さ」
など、武器になる量を持たせる。

次に、その武器になる量を使って、
「何々のいくつ分くらいの長さだから…」
といった見当の付け方ができるようにすることである。

1、武器になる量を身につけること
2、武器になる量のいくつ分と考えられるようにすること


この2つを、教師がしっかりと意識しながら、体験的な活動を行うことで、
子どもたちに量感が身に付くと、私は考える。


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 3、武器になる量を身に付けるには
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それでは、武器になる量を身に付ける為には、どうすればいいのだろうか。

@ 身近なものと関連づける

まず第一に、
“身近なものと関連付けること”
が大切である。

例えば、長さならば、体の一部と関連付けるのがいいと思う。
1pなら、爪ぐらいの長さ、
1mなら、手を開いたより少し短い長さ、
1qなら、15分くらい歩いた距離、
などである。

また、日本には、昔から「あた」「つか」「ひろ」「歩」といった長さの単位がある。
昔から伝わる単位は、生活に根付いている。
こうした単位を紹介してやるのも効果的である。

「あた」は親指から中指までの長さ。
自分の“あた”の長さを覚えておくと、
尺取り虫のようにして測れて便利である。



「つか」は手をグーにした時の横の長さ。
自分の“つか”の長さを覚えておくと、
棒などの長さを測るのに便利である。



「ひろ」は両手を広げた時の長さ。
自分の身長とほとんど同じ長さになるので、
覚えやすくて便利である。



「1歩」とは、歩くときの歩幅。
自分の歩幅を覚えておくと、
距離を測る時に便利である。
1歩だけの長さを測ると誤差が大きいので、
10歩の長さを測って、10で割ってやると、より正確である。



身近なものと関連づけて、体感させることで、
子どもは武器になる量を身に付けていく。



“あた”を使って…




“つか”を使って…




“ひろ”を使って…


A 必要感をもたせる

武器になる量を身に付ける為に大切なことの2つ目は、
必要感をもたせることである。

教師に指示されて覚えても、
時間が経てば、すぐに忘れてしまう。
反対に、必要感をもって覚えたことは、
時間が経っても忘れないものである。

例えば、自分の“あた”、“つか”の長さを覚えさせたい時には、
「“あた”や“つか”の長さを調べましょう」
と、教師から指示をするのではなく、
「“あた”や“つか”の長さを調べたい」
と子どもに思わせることが大切である。


「ロッカーの長さを、ものさしを使わないで測ります」
「本当の長さに1番近い人が優勝です」
と言い、
「ただし、その前に、2分だけものさしを触ってもいいですよ」
と付け加える。

すると、その2分の間に、子どもたちは、長さを必死で体に写し取ろうとする。
ちょうど10pになるように親指と中指を開いてく子。
自分の親指から小指までの長さを測ってみる子、などなど。
教師に指示されなくても、子どもは自ら、
体を使って、長さを写し取ろうとするのである。
それが、子どもの自然な姿である。

活動の後、体を使って長さの見当を付けた子を、大いに褒め、
日本に昔から伝わる「あた」「つか」「ひろ」「歩」などの単位を紹介する。
すると、子どもたちは、
「なるほど、便利そうだ」
「自分の“あた”や“つか”って、どのくらいの長さだろう。
 調べて使ってみたいな」
と思うであろう。

そして、もう1度、長さの見当を付けるゲームを行う。
ゲームの前に、自分の長さを測る時間を設けてやれば、
子どもたちは、必死になって、自分の体の長さを調べようとする。
中には、
「僕は指3本が、ちょうど10p。こっちの方が使いやすいよ」
と、自分の体に合ったオリジナルの単位を創り出す子も出てくる。


自分で「調べたい」と思って調べた長さは、
時間が経っても、忘れにくいものである。
必要感をもって活動することで、
子どもは、武器になる量を確かなものにしていく。


指で長さを写し取って…


指を使って測ってみよう





測る対象そのものにも、
「測ってみたい」と思わせる必要感があれば、なおさらいいと思う。

身近な生活場面と関連づけることで、必要感が生まれる
例えば、校内陸上記録会の大会記録を教材にする。

(例1)
立ち幅跳びの大会記録と同じ長さの紙テープを用意して、
「どのくらいの長さかな?」
と見当をつける活動。

(例2)
走り幅跳びの大会記録が4m63pということを伝え、
「4m63pって、どのくらいの長さかな?」
と見当を付ける活動。

「測ってみたい」と必要感を持たせることで、
子どもたちは、夢中になって、取り組む。


  

立幅跳で、こんなに跳んだの?
一体何m何p?



4m63pってどんな長さ?
え、こんなに長いの!

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 4、“武器になる量のいくつ分”と考えられるようにするには
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武器になる量を身に付けたら、
その“いくつ分”と考えて、見当を付けられるようにしていきたい。
それでは、“武器になる量のいくつ分”と考えられるようにするには、
どうすればよいのだろうか。

@ 武器になる量を使う場を設ける

まず、第一に、武器になる量を使う場を設けることが、大切だと思う。
当たり前のことであるが、案外、忘れがちになってしまうことである。

例えば、1qの学習。
学校から1qの場所を予想して、実際に歩いてみる。
1qを歩いてみて、15〜20分かかることを体感する。
これは、3年生になれば、必ず見られる光景である。

しかし、その後に、1qの量感を活用して、
見当をつける活動を、ちゃんと行っているだろうか。
1qの量感を身に付けた後には、
次のような活動を取り入れたい。

駅までの距離を考える。
駅まで歩くのに、いつも30分かかっている。
1q歩くのに15分かかったのだから、
きっと駅までは2qくらいだと見当をつける。
見当をつけた後、実際に測って確かめる。
1qの量感を活用する活動である。


例えば、1平方メートルの学習。
1平方メートルの中に何人入れるかを試して、
その広さを体感する。
これは、4年生になれば、必ず見られる光景である。

しかし、その後に、1平方メートルの量感を活用して、
見当をつける活動を、ちゃんと行っているだろうか。
1平方メートルの量感を身に付けた後には、
次のような活動を取り入れたい。

学級花壇の面積を考える。
学級花壇は、新聞紙16枚くらい。
1平方メートルは新聞紙2枚分くらいだから、
学級花壇は8平方メートルくらいだと見当をつける。
見当を付けた後、実際に測って確かめる。
1平方メートルの量感を活用する活動である。


武器になる量を身に付けたら、
武器になる量を使う場を設ける。
案外、忘れがちになってしまうが、。
とても大切なことだと思う。


A 予想の根拠を問う

2つ目に大切なことは、予想の根拠を問うことである。

例えば、“学校にある様々なものの長さを測ってみる”という活動がある。
大抵は、「予想」と「結果」をノートに書かせる。
私は、そこに「予想した理由」を書かせる欄を設けてはどうかな、と思う。

「結果」が何m何pだったのかは、
数日すれば忘れてしまうことだし、
忘れてしまってよいことである。
大切なのは、「予想した理由」である。
「“ひろ”が1つよりちょっと長かったから、余った分を“あた”で測ったよ。
 測ってみると“あた”が3つ分だったよ。 だから、168pと予想したよ。」
といった見当の付け方。
武器になる量のいくつ分と見る考え方こそ、
しっかりと定着させたいことだと思うのである。





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 5、武器を持たせ、武器の使い方を教える
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まとめると、次のようになる。


量感を身に付けるには、

1、武器になる量を身につける
 @身近なものと関連づける
 A必要感をもたせる

2、“武器になる量のいくつ分”と考えられるようにする
 @武器になる量を使う場を設ける
 A予想の根拠を問う


これらを意識しながら活動させることで、量感が身に付くと考える。

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