前田の算数
前 田 の 算 数 実 践 事 例 | |||||||
2年「かけ算」九九の活用 | |||||||
課題提示のアイディア! | |||||||
1、提案 研究授業で定番の「かけ算の活用」の授業。 今回は、『課題提示の工夫』について提案したい。 ※参考文献 ・「教科書プラス坪田算数2年生:○の数はいくつ?」坪田耕三著:東洋館出版社 ・「算数授業研究63号:色の効果を考える/夏坂哲志」筑波大学附属小学校算数研究部著:東洋館出版社 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (1) ちらり提示で、かけ算を使いたくさせる! ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「教えたいことは教師が言うのではなく、子どもが発見するようにしなさい」 と、よく言われる。 本授業のねらいは、“同じ数のかたまりずつまとめて、かけ算を使って数えると、速く確実に数えられること”を実感することである。 「かけ算を使って求めましょう」と教師が言うのではなく、子どもが自ら「かけ算を使って数えたい!」と思って動き出すように、授業を仕組みたい。 @ ちらっとだけ見せる そのために、課題を2〜3秒だけ見せて「何個あった?」と尋ねる。 速く数えようとする中で、同じ数のかたまりずつまとめて見て、かけ算を使って数えていく姿を期待する。 A 「本当?」「絶対?」と尋ねる さらに、「本当に25個?」と尋ねることで、子どもの「だって…」を引き出す。 「だって…」と説明する中で、「黒いチョコが4×4で16個で…だから…」と、かけ算を用いて自分の見方を表現する姿を期待する。 |
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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (2) 提示の仕方で、生まれる考えが変わる! ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 同じ課題でも、提示の仕方によって、出てくる子供の考えが違ってくる。 本授業では、次の工夫することで、多様な考えを引き出したい。 @ 少しずつ見せる 端から、少しずつめくって提示する。チョコが4+3+4+3…と順番に見えていき、解決への見通しが持てる。4と3を合わせて7のまとまりと見ると、7×3+4や7×4−3という考えが生まれる。 A 色の効果を使う チョコの色を茶色と黒に色分けする。 黒色と茶色のチョコに分けて、4×4+3×3と見る発想が生まれやすくなる。 B マス目を付ける マス目を付けることで、チョコの入ってない部分が強調される。 箱全部にチョコが入っていたら7×7で49個、そこから食べた分の6×4の24個を引いて25個という考えが生まれやすくなる。 C 箱入りのチョコにする アレイ図の変わりに、箱入りのチョコを使って提示する。 チョコだとアレイ図に比べ、移動する考えが生まれやすくなる。 本授業の課題では、うまく並び替えると、5×5の正方形になる。 |
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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2、略案 @、「ばらばらに並んだチョコ」と「まとまって並んだチョコ」を見て、 数えやすさを比べる。 A、箱に入ったチョコレートの数を、工夫して数える。 B、似たような問題を解いて定着を図る。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ |
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3、授業の実際 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ @ かけ算を使うとぱっと分かるね! ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 導入にゲームを行った。 チョコレートの写真を3秒だけ見て、何個あるかを当てるというゲームである。 教室を右側チームと左側チームに分けて、右側チームの子どもたちにはあの写真を、左側チームの子どもたちにはいの写真を、3秒だけ見せる。 正解者が多いチームが勝ちというルールである。
結果は、右側チームは0点、左側チームは7点で、左側チームの勝ちとなった。 この結果に、右側チームからブーイングが起こった。 「いの方が簡単だったんじゃないの?」と言うのである。 「そんなことありませんよ。実は、どっちも正解は25個だったんです。」 と、とぼけてみせた。 すると「だったら、見せて!」と子どもたち。 「いいですよ。ほら。どっちも25個でしょ。」 と、あといの写真を提示した。 写真を見た子どもたちから 「ずるーい。あは、ばらばらだー!」 とブーイングが起こった。 そこで、 「どうしていの方が、ぱっと数えられるのかな」 と子どもたちに尋ねた。 子どもたちは、 「あはぐちゃぐちゃで分かりにくい。いはまとまってる。」 「まとまってるとかけ算の式が使えるよ。5×5で25だって、ぱっと分かる。」 「全部数えなくても、縦と横を見ると分かる」 「きちんと縦は5個、横は5個って並んでいるから、真ん中の所は数えなくても分かる」 と、理由を説明しながら、かけ算を使うよさを実感していった。 |
3秒見せるよ。何個かな? あは正解0人 いは正解7人 ずるーい!だって… |
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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ A これも、かけ算を使えるかな? ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ “きちんと並んでいる時は、かけ算を使って数えると速く正確に数えられること”を確認した後、 「今度は、うまく数えられるかな」と言ってチョコレートの箱を提示した。 今度のチョコレートは、工夫しないとうまく数えられない並び方になっている。 解決への見通しを持たせるために、少しずつ見せていくことにした。 「3秒間見せる前に、大サービス。半分ほどだけじっくりと見せますね」 そう言って、端から少しずつふたをめくっていった。 角をちらりとめくと、チョコレートが入っていない。 「お腹がすいて、少し食べちゃったんです」と言うと、 「先生は、6個も食べたんだね」という声が返ってきた。 やがて、少しずつチョコレートが見えていく。 子どもたちは、「あ、3個ある」「次は4個だ」「合わせて7個だ」 と数えながら、チョコレートを見つめていた。 半分程まで見せたところで、 「さて、そろそろ全部見せますよ。3秒だけなのでしっかりと見てね。」 そう言って、ふたを全部取り払った。 「14個だ」「16個だ」「28個だ」という声が挙がった。 16個と思った子は、縦に4個、横に4個あるので「4×4で16個だ」と計算したのである。 「本当にそうだったかな」そう言って、もう1度、3秒間見せた。 「あれ、違う。中にもっとあるよ」と子どもたちは、騒ぎ出した。 再度、3秒間見せると、だんだん、「25個だ」という声が増えていった。 ここで、正解を発表することにした。 本授業で大切なのは、正解を求めることよりも、どうやって求めたかである。 始めに正解を言っておいた方が、求め方に話し合いの焦点がしぼられていく。 「正解は25個です。確かめてみましょう」 そう言って、チョコレートをじっくりと見せた。 子どもたちと一緒に「1、2、3…」と数えていき、25個だということを確認した。 子どもたちからは「1個ずつ数えなくても分かるよ」という声が挙がった。 そこで、「これも、もっと、うまく数えられないかな」 と問い掛け、ワークシートを配った。 ワークシートには、チョコレートの図がかかれている。 どんなやり方で求めたのか、図と式を使ってかくように指示を出した。 |
少しずつ見せるよ |
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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ B 同じ式から、いろんな図が出来るよ! ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ それぞれが考えたやり方を紹介し合う場を設けた。 1人目の子を指名して、まずは、式だけを発表してもらった。
次に、「この式から、どんな図になるか分かるかな」 と問い掛け、式を発表した子と別の子に図をかいてもらった。 さらに、「言葉で説明できるかな」と問い掛け、別の子に説明してもらった。
ここでは、別の子に発表させることで、“式を読む力”“図を読む力”を育むことをねらった。 中には、「その式で、別の図にもなるよ」という子が出てきて、次のような図をかいた。 さらに、「もっと別の図にもなるよ」と、次のような図をかく子も出てきた。 子どもたちから「すごーい」というため息が聞こえた。 同じ式から、いろんな図ができるのが面白い。 |
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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ C いろんな考え方があるね! ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 同様に、“式”から“図”を推理しながら、いろんなやり方を紹介してもらった。
など、いろんなやり方が紹介された。 “分けて考えて、後で足す” “まとまりを作って、囲んでいく” “あると見る”など、 子どもたちは、かけ算を使うための様々な工夫を紹介していった。 |
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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ D 5×4+1? ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 話し合いの中で、俊樹が、 「5×4=20、20+5=25」 というやり方を紹介した。 その式を見た翔太が 「その式を1つにすると、5×5=25になるよ」 と発言した。 “5×4+5”と表した俊樹と、5×5と表した翔太、それぞれの思いを聞いてみることにした。 “5×4+5”と表した俊樹は、“ダイヤの形が4つできて、真ん中に5個余ったから足した”のだと説明した。最初の5×4は、ダイヤの形の5が4つあるという意味。余った5個は偶然できた“5”。同じ“5”でも意味が違うので、“5×4+5”と分けて表したのである。 きっと俊樹は、答えの“25”という数を見て、5の固まりを作ればうまくいくという予感がしたのであろう。しかし、すっきり同じ形を5つ作ることはできなかった。偶然できた“5”を同じ“5”とすることに抵抗を感じたのであろう。 一方、“5×5”と表した翔太は、“1つの式で表した方が、簡単だから”だと説明した。ただし、説明の中に「ちょっと強引に見ると」という言葉が付け加わった。 俊樹と翔太、どちらからも、今のやり方に十分満足はしておらず、 “何とか、すっきり5×5と表したい”という思いが感じとられた。 すると、2人の思いを聞いていたある子が、 「5×5にできるよ」と声を挙げた。 チョコレートを移動させればいいというのである。 前に出てやってもらうと、なるほど、縦5個、横5個の正方形になった。 すっきり並んだチョコレートに、子どもたちからどよめきが起こった。 |
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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ E 工夫すると、かけ算を使えるね! ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 学習したことをまとめると、次のようになる。 “同じまとまりを作って、かけ算を使うと速く正確に数えられる” そして、同じまとまりを作るためには、 ・分けて考えて、後で足す ・まとまりを作って、囲む ・あると見る ・移動させる といった工夫をすればよい、ということが分かった。 最後に、適用問題を1問出した。次のような並び方のチョコである。 最後の問題では、本物のチョコを提示した。 答えは、41個。 ちょうどクラスの人数分40個と私の分を足して、41個になる。 授業の後に、おいしく食べた。 |
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