前田の算数
前 田 の 算 数 実 践 事 例 | |||||||
2年 かけ算九九 | |||||||
きまり発見で、数の感覚を豊かに! | |||||||
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1、は じ め に ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ★きまり発見で、数の感覚を豊かに! かけ算九九のの学習では、それぞれの段の九九を「@つくる」「A覚える」という活動が繰り返されるのが一般的である。 しかし、作って覚えるばかりでは、味気ない学びになってしまう。 せっかく九九表は、美しい数の並びになっているのである。 九九表からきまりを発見する活動を取り入れてみては、どうだろう。 各段の九九をつくるたびに、作った段の「きまりを見付ける」という活動を取り入れるのである。 つまり、それぞれの段の九九について 「@つくる」「Aきまりを見付ける」「B覚える」という流れで学習を進めるのだ。 通常は、単元の終わりに九九表からきまりを見付ける学習を行いう。 しかし、いきなり九九表にある「81個」もの数を眺めても、なかなかきまりを発見しづらいものである。 2年生の子供の子供にとって、観察対象が多すぎるからである。 それより、各段ごとに、「9個」の数にしぼって観察することで、様々なきまりを発見することができる。 ★覚えるのもばっちり! これを読んだ方の中には、「きまりを見付ける」という活動を付け足すと、時数が足りるのかを心配される方もおられるかもしれない。 しかし、実際にやってみると、そんな心配はなくなる。 何しろ、きまりを見付けようと、各段の答えの9個の数と、何度もにらめっこしているのである。覚える活動に入る頃には、半分覚えている状態になっている。 つまり、「Aきまりを見付ける」の時間を入れることで、「B覚える」の時間が短縮できるわけである。 また、きまりと結びつけると、覚え間違いもしにくくなる。 間違えやすい九九の代表格に、「4×7」「4×8」「6×7」「6×8」等がある。 それは、「し」「しち」「はち」の語呂が似ていることが間違えやすい原因である。 しかし、きまりを見つける中で数の感覚が豊かになっていれば、 「この段の答えが、こんな数になるはずないな」 と、間違いに気付くことができるのである。 |
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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2、授業の実際 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ★ 5の段 子供は、それぞれの九九を作る中で、無意識のうちに様々なきまりを使っている。 例えば5×4の答えは、5を4回足すことなので、通常は「5+5+5+5」をして答えを見付ける。 しかし、中には5を4回足すのは面倒なので、先に求めた5×3=15に5を足して「15+5」と求める子も出てくる。 これは「かける数が1増えるごとに答えはかけられる数ずつ増えていく」というきまりを使っているのである。 また、5×4は、5×2の2つ分だから「10+10」と求める子も出てくる。 これは、「分配法則」というきまりを使っています。 さらに、5×5、5×6、5×7…と九九を作り進めるうちに、計算せずにすらすらと答えを書いていく子が出てくる。 「5の段の一の位は、0、5、0、5…と続くから、次は0のはず」といったように、一の位のきまりを使っているのである。 こうして子供が無意識のうちにきまりを使っている姿を見かけたら 「きまり発見だね」 とほめて、価値付けていく。 |
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★ 2の段、3の段、4の段 単元の始めのうちは、手際よく九九を作るためにきまりを発見していく子供たちだが、こうした声かけを続けるうちに、きまりを見付けること自体が楽しくなっていく。 例えば、一の位に目を向けた子供は、 「5の段の一の位は、5,0,5,0と繰り返すよ」 「2の段の一の位は、24680を繰り返すよ」 「3の段の一の位には、3692581470って、全部の数字が登場するよ」 「4の段の一の位は、48260を繰り返すよ。全部、2の段の数だよ。」 といったきまりを見付けていく。 例えば、十の位に目を向けた子供は、 「5の段の十の位は、00112233…って、同じ数が2回ずつ続くよ」 「2の段の十の位は、0000011111…って、同じ数が5回ずつ続くよ」 といったきまりを見付けていく。 子供って、きまりを見つけるのが大好きなのだ。 中には、みつけたきまりを確かめるために、2×10、2×11…と、九九の世界を拡張して考える子も出てくる。 多少九九をはみ出したって、それは、それでいい。 きまりを発見していこうとする思いに寄り添いたい。 子供たちがきまりを見付けるたびに、教室に掲示していくと、ますますやる気がアップする。 子供が着目した視点ごとに整理して掲示することで、何に目を向ければきまりが見つかるのかが分かり、ますますきまりを見付けるのがうまくなっていく。 |
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★9の段 九九の中でも特に面白いのは、9の段である。 9の段の答えは、まるでエレベーターのように、十の位の数は1ずつ減っているのに対して、一の位の数は1ずつ増えていく。 この2つのきまりを合わせると、「十の位と一の位をたすと、9になる」というきまりが見付かるのである。 子供たちは、5、2、3、4の段において、「十の位と一の位に分けて考えると面白い発見があること」を強く実感してきた。 そのため、9の段の学習でも、十の位や一の位に着目してきまりを発見する子供が多かった。 最初は 「9は大きい数だから、9の段をつくるのが難しそう」 と感じた子もいたが、十の位や一の位のきまりに着目すると、簡単に9の段をつくることができる。 見付けたきまりを紹介し合う場で、ある子が 「十の位の数が1ずつ増える」 と発言し、別の子が 「一の位は1ずつ減る」 とつけ足した。 発言に合わせ、9の段を黒板に貼り、十の位と一の位に色分けして板書してみせた。 すると、黒板を見ていた子が 「十の位と一の位が逆さまになってる」 と驚きの声をあげた。 十の位は、9,8、7…、1、十の位は、1、2、3…、9とちょうど点対称に数が並んでいるのである。 他の子供たちも「本当だ」「面白い。エレベーターみたいだね」と、十の位と一の位の関係に着目して観察していった。 そんな中、ある子が 「1+8=9、2+7=9、答えの十の位と一の位を足すと9になる」 と発言した。 十の位と一の位を足すという見方は、これまでにない発想である。 この見方をみんなにも広めたいと思った。 そこで、 「答えの18の1と8を足すと9、27の2と7を足すと9…」 といったように、9×2から順に足して9になることを1つずつ確かめていくことにした。 その際、「足すと9になること」を確認する度「あ、また偶然9になる!」と驚いてみせた。 そうやってとぼけることで、子供が「偶然じゃないよ。だって…」と理由を説明していく姿をねらったのである。 18、27、36…と続けていくうちに、子供たちの「偶然じゃないよ」という声がどんどん高まっていった。 その声がクラス全体に広まったところで、 「どうして、ずっと9になるの?」 と子供たちに問い掛けた。 子供たちは 「だって、十の位は1ずつ減っていくけど、その分一の位が1ずつ増えていくから、ずっと9で変わらないよ」 と説明した。 理由が明確になり、子供たちはきまりへの自信を深めていった。 |
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「ずっと9で変わらない」と自信満々の子供たち。 しばらくの間、「4+5=9、9で変わらないね。」「5+4=9、やっぱりずっと変わらず9だね。」…と、変わらず9になり続けることを確かめていった。 そんな中、一部の子供の中から、 「あれ、答えが99になって、たして18になる時がある」 といったつぶやきが聞こえてきた。 九九の範囲をこえてきまりが成り立つかを考え始めたのである。 この発想を全体に広めたいと思ったが、すぐには取り上げなかった。 じっくりと「たして9」になることを確かめていき、その度にあえて「ずっと変わらず9だね」と言い続けた。 続けるうちに、 「ずっと9じゃないよ。ほら、9×11の時…」 と周りの子に説明し出す子が出てきた。 しめしめである。 そうした声がクラス全体に広まったところで、1人の子を指名して思いを語らせた。 そして、9×11=99で、9+9=18になる事実を確認し、 「たすと9になるはずなのに、18になってしまう」 という矛盾をクラスで共有した。 そして、 「成り立たない場合があるなら、これは“きまり”って言えないね」 と揺さぶって、黒板に大きくバツをつけようとした。 すると、何人かの子から 「バツじゃないよ」 「全部9になる方法があります」 という声があがった。 その言葉に立ち止まり、 「この18をどうすれば9と見られるの?」 と全体に投げかけた。 ここでは、きまりが成り立つか成り立たないかを議論しても空中戦になる。 そこで、どう見れば成り立つと見られるのかという問いに焦点を絞って考えていくことにしたのである。 難しい問いではあるが、子供たちは何とかきまりを見出そうと試行錯誤した。 そんな中、ある子が 「答えをまた足せばいい」 と発言した。 「99の9と9をたすと18だけど、その18の十の位と一の位をまたたすと1+8で9になる」 というのである。 見方を工夫することで、1度は成り立たないように思えたきまりが成り立つようになった。 このように見方を工夫すれば、答えが3桁になっても足して9と見ることができる。 子供たちは、「だったら…」と発想を広げていった。 そして、 「9×12=108だけど、1+0+8をすれば9になる。9×13=117だけど、1+1+7をすれば9になる」 「108は十の位が10で一の位が8とみれば、10+8で18、18の1と8をたせば9とみれる。117は、11+7で18、1+8で9とみれる」 といったように、様々な見方を工夫しながらきまりが使える範囲を拡張していった。 この日の授業で、子供たちは「十の位と一の位に分けて観察する見方」に加え、「答えに並ぶ数を操作する見方」「きまりを修正して一般化する見方」を身に付けた。数の見方を増やし、数への感覚を豊かにしたのである。 次の日には、右のようなアレイ図を紹介して、足して9になる理由を子供たちに説明した。 図を見れば、9のまとまり4つが、10のまとまり3つと6に変身することが分かる。 子供たちは、9のまとまりを「10のまとまりより1小さいまとまりなんだね」と捉えていった。 |
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★6の段、8の段、7の段 その後、6の段や8の段、7の段の学習においても、子供たちは、9の段の学習を生かして様々なきまりを発見していった。 例えば、 「8の段は、答えの十の位と一の位をたすと、8、7、6…となって、1ずつ減っている 」 「7の段なら、7、5、3…となって、2ずつ減っている」 といったきまりである。 そして、例えば、「8×6=48」の4と8を足して「12」になった時には「さらに1と2を足して3と見ればいい」といったように工夫していった。(右図) これらは、9の段で身に付けた 「答えに並ぶ数を操作する見方」 「きまりを修正して一般化する見方」 を生かした発見である。 本単元では、9の段をあえて最後ではなく早めに扱った。きまりを発見しやすい9の段を早めに扱うことで、9の段で身に付けた見方を他の段に生かせるようにしたのである。 |
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単元の後半では、見付けたきまりを友達と自由に紹介し合う時間を設けた。 黒板も子供たちに解放し、自由に使わせた。 黒板の前で友達と紹介し合う子もいれば、ノートを見せ合いながら紹介し合う子もいる。 中には、友達から聞いたきまりから、新たなきまりをひらめき、自分の席に戻って追究する子もいる。 そういう自由に学ぶ場を設けたのである。 少しずつそういう時間を長くしていき、8の段、7の段あたりでは、30分近くをそうした時間にあてた。 単元前半が、きまり発見の視点を増やしていく時間だとすれば、単元後半は、身に付けた視点を生かしていく時間にしたわけである。 |
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発展として、10の段、11の段、12の段と、九九の範囲を越えたかけ算も考えた。そこでも、子供たちは、次のようなきまりを見付けていった。
11の段では、十の位と一の位は同じ数になることに気付いた。 答えが百を越えるときまりは成り立たないように思えたが、子供たちは、百の位と一の位を足した数が、十の位の数と同じになることを発見していった。 9の段で得た「きまりを修正して一般化する見方」を生かしたのである。 |
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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3、お わ り に ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ かけ算九九では、もちろん九九の暗記が大切である。 しかし、暗記ばかりしている算数では、ちょっぴり寂しい。 きまりを発見することは数感覚を豊かにする。 そして、何よりも、楽しく、子供が夢中になるのである。 ※ 尚、このページでは、長い長いかけ算九九の単元から、きまり発見の授業だけを抜き出してまとめた。 しかし、その前後や途中において、九九を覚える学習や、九九を生活へ活用する学習など、様々なことを行っている。 興味があれば、そうした実践も紹介しているので、見ていただきたい。 (九九指導のお薦めアイディア) |
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