デジタルホームにいたる、3つの段階

はじめに


最近、ホームネットワーキングに関する記事が目立つようになってきた。 米Cahners In-Stat Groupはホーム・ネットワーク市場を調査し,「ホーム・ネットワークがユーザに認知される時期はすでに終わった。パソコン・ベンダや家電メーカのほとんどすべてが,2000年にこの市場に参入するだろう」 との調査結果を発表した。 (1) また、MicrosoftやIntelなどパソコン業界のビックネームや日本の家電メーカー各社も 次々にこの業界に参入しようとしている。

しかし、すぐにテレビがデジタル化し冷蔵庫や電子レンジがインターネットに接続する状況にはならないであろう。 なぜなら、冷蔵庫や電子レンジ、テレビなど家電製品をはじめとする耐久消費財の 買い替え周期は非常に長い、日本経済新聞(平成11年3月2日)によるとエアコンや電気冷蔵庫の買い替え周期は約12年、カラーテレビは約10年、VTR・ビデオカメラは約8年と非常に長い。急速に普及したパソコンと違い今ある機器でも十分使えるのに「インターネットにつながる冷蔵庫」を新たに購入する人は非常に少数だろう。

もちろん買い替えのサイクルが遅いからといっても、 家電製品は毎年売れている、それらの新しい製品をインターネットや 他の家電と相互通信できるデジタル家電にすれば、デジタル家電は徐々に 普及するかもしれないが、電子レンジや冷蔵庫など個々の家電がそれぞれ インターネットにつながっていても、その商品価値は落ちてしまう。 テジタル家電はデジタル家電同士が相互通信する事によって、初めて意味があるのである。

例えば自分が留守の時、訪問してきた相手の用件やビデオに写った顔を記録する インターホンがあるとする。これがパソコンと相互通信できるようになれば、その情報を記録し、他の情報と同時に検索、比較、記録する事もできるし自動的にパソコンの内のアドレス帳に、顔写真や相手の声などが記録されるだろう。 さらに、携帯電話と通信ができるようになれば 外出時でも訪問してきた相手とリアルタイムで応答する事もできる。

しかし、これがデジタル家電と相互通信できなければ、 ただの「声と顔が記録できる留守番インターホン」で終わってしまう。 重要なのは、「インターネットにつながる冷蔵庫」ではなく、 家全体の家電の相互通信を可能にし、そこから新しい「サービス」を開発し 提供する事である。

だからと言って、すぐに家庭の家電製品がすぐに相互通信するとは思えない。 家電と一口に言っても、様々事情によりテジタル化しやすい物としにくいものがあるからだ。

私は「家庭内の総デジタル化」には3つの段階があり。 この3つの段階ごとに急速に発展していくものと考えている。

   まず、第一の段階はすでにテジタル家電化している、AV機器と携帯電話やPDAの情報端末などの相互通信だ。 ソニーが発売しているデジタルビデオカメラは「i LINK」(IEEE1394)が装備され、一般家庭でもパソコンが編集機器として利用できるようになってきた。また、「Palm」や「WindowsCE」はパソコンとの相互通信が大きなウリになってきている、さらに携帯電話も次々とインターネットに対応してきている、 webを通じてスケジュールやアドレス帳などの情報を共有できるようになってきている。

携帯電話やヘッドホンステレオなどは冷蔵庫や洗濯機などの大型家電 などと比べて買い替えのサイクルが速い、AV機器や情報端末は次々と 相互通信できたり、インターネットに接続できる物が現れるだろう。

しかし現段階ではそれぞれの機器のつながりが薄く、まだまだ機器の相互通信が 少ない。今後はインターネットとの融合と個々の機器のつながりをより一層強めなければならない。これらの事を含めた、テジタル家電の第一段階は「第一段階 情報、AV機器の融合」で詳しく述べようと思う。

第二段階はデレビのデジタル化である。 2000年には BS放送が開始される、BSデジタル放送では1チャンネルで2つのハイビジョン番組が放送でき、それに加えプラスアルファのサービス(データ放送)が可能になる、 さらに、地上派のテレビ放送も2003年にも東京、大阪、名古屋の大都市圏で それ以外の地域も2006年にはテジタル放送が開始され、2010年にはテレビ放送が完全にデジタル化され、現在のテレビでは見られなくなってしまう。

完全にデジタル化するという事は、いままでの普通のテレビが使えなくなってしまうという事にもなる。 普通のテレビでも、アダプターを付ければデジタル放送を見られるが、アダプターを取り付けるだけではデジタル放送の「売り」の一つである、ハイビジョン放送が見られない。

現在テレビが我々の生活の中で重要な位置にいるのは間違いがない、 完全にデジタル放送になる10年の間に 家のテレビをデジタル放送対応のテレビに買い替えなければテレビがみられなくなるというのなら、私たちはデレビを買い替えるであろう。

このような、事情からデジタル放送対応テレビとそれの周辺機器は確実に売れるだろう、しかし「普通のテレビ」から「デジタルテレビ」に何が変わるのだろうか? 1999年12月3日付朝日新聞の中でデジタル放送のサービスとして以下の内容が上げられていた。

  • 高画質で鮮明、迫力あるワイド画面を楽しむ  

  • 電子番組ガイド(EPG)を表示し、1000チャンネルの中から番組を探して録画予約  

  • スポーツ選手のデータ、チーム成績のチェック  

  • イベント案内を見て、チケットの予約や購入  

  • 遊園地やスタジアムがある地域の天気予報を調べる  

  • お店紹介を見ながら行き方、連絡先をチェック  

  • 番組で紹介される商品の買い物  

  • アンケートに回答、懸賞に応募  

  • テレビのクイズ番組に参加する

    さて、上の内容を見て高額なデジタル放送対応テレビを買ってまで 受けようと思うサービスがあるだろうか? 確かに「高画質なワイド画面」は魅力だが、それだけのために10万〜30万円 払うだけの価値があるだろうか?

    他のサービスもほとんどがインターネットで代用が可能だ。 これからインターネットは広帯域技術が進歩し、 現在のビデオ程度の映像なら、テレビが完全にデジタル放送に移行する前に インターネットで見られる事が可能だろう。高いお金を払ってデジタル放送用のテレビ に買い替えたのに、この程度のサービスでは買った人達は大いに不満だろう。

    だが逆に言えばコンテンツが不在という事は、そこに画期的なサービスを 提供する事ができれば第2のYahoo!やLYCOS になる事も可能だという事だ。 繰り返しになるが、大切なのは「いかにデジタル放送対応テレビを売るか」ではなく 「デジタル放送時代のキラーコンテンツをどうやって作るか?」である。 このような、テジタル家電の第2段階である「デジタル放送」の詳しい内容は 「第二段階 デジタル放送の大津波」で述べる。

    第3段階は冷蔵庫や洗濯機、エアコンなどの純粋な家電のデジタル化だ。 これも繰り返しになるが、冷蔵庫だけがインターネットに つながっていては意味がない、家電製品すべてがデジタル化し相互通信を行い そこから新しいサービスを開発しなければ意味がないのである。

    相互通信ができるテジタル家電のサービスは便利なものだが、「自然に明るくなる電球」や「インターネットにつながる電子レンジ」程度のマイナーバージョンアップでは 誰も欲しがらない、デジタル家電には今の家電の機能をレベルアップした機能以上に 新たな機能概念が必要だ。

    しかし、新しい機能概念と言っても、どのような「機能」をつけ、どのようなサービスを行えば良いのであろうか? 私はデジタル家電の新しい機能概念として「自動化」「健康情報」という 2つのキーワードがあると思う。

    「自動化」というのは、文字通り家庭内のテジタル家電が自動的に 働いてくれる事である。「今までも炊飯器やビデオデッキなどは自動的に 動いてくれたではないか」という意見もあるだろうが、私はそれは完全な自動化ではないように思う。テジタル家電の完全な自動化は私たちが毎日寝る前に炊飯器やコーヒーメーカ、毎日の録画しているビデオの予約、目覚ましなどを一々セットしなければならない。

    しかし、相互通信しているデジタル家電なら私たちの生活パターンを覚えているので わざわざセットしなくとも自動的にそれらの事をこなしていくだろう。

    もう一つのキーワードは「健康情報」だ。 現代人が健康情報に高い関心を持っているのにも関わらず、 家庭内にある家電機器の大半が「健康情報」とは無関係だ。

    しかし、家電がテジタル化すればそれらの状況は一変するだろう。 例えば、これから携帯電話やパソコンにはテレビ電話のための簡単な カメラが内蔵されると考えられるが、テレビ電話以外にも 解像度が上がれば自分の顔を写す事ができる、「テジタルミラー」として活用できる事も可能となるだろう。そうなれば、自分の肌の状態や顔の体型なども保存でき 専門の健康情報サイトに問い合わせればより詳しい健康情報を得ることができるし、 また、ヘッドホンに体温や血圧なども測定できる機能を取り付ければ、 毎日の健康データを容易に得ることが事ができる。

    ただし、ここで重要なのは「顔の体型を保存できる鏡」でも「毎日虫歯があるかチェックできる歯ブラシ」でもない、デジタル家電が今までの家電と大きく変化すると思われる点は「新しい機能」をインターネットやDVDやCD-ROMから組み込める点だ。 いくら、新しい機能がそのためにハードを一々買い直すのはあまり、現実的ではないだろう。

    また、これまでのような家電製品の販売方法だと年々廃棄される電化製品が 増え、廃棄された電化製品によって環境に大きな問題が生じる事は間違いない 通産省発表の資料によると廃棄の見通しを台数で見ると、家電製品のうち、テレビ、エアコン、冷蔵庫、洗濯機の主要4品目では、平成2年には約1,400万台であったものが、平成10年には約2,000万台に達するものと予想されている。 環境のためにも、新しいサービスを追加していき商品寿命を延ばすデジタル家電は これからの時代に合っているのではないだろうか。 「第三段階 すべてがテジタル機器になる」ではこのような デジタル家電のサービスをリサイクルの話も含めて詳しく解説していきたいと思う。




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    作成・横田真俊

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    第一段階 情報、AV機器の融合

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