水槽
「なあ、この水槽、どっから餌をやるようになってるんだ？」
「ああ、そいつは餌はいらねぇんだとよ。」
「いらない？」
「お日さんにさえ当ててりゃあ、そん中で自給自足出来るようになってっるってよ。」
「へえ…餌もか？」
「おう。バクテリアっつーのがいて、そいつを食うんだとよ。」
「……」
「……」
「……」
「…どうせ、お前のこったから、その魚が『可哀想』とか思ってんだろ。」
「…悪いかよ？」
「悪くはねぇけどよ…案外、こいつは幸せかもしんねぇじゃねぇか。」
「根拠は？」
「外敵はいねぇし、餌は食い放題、生涯安泰ってやつだろ？」
「……」
「『幸せ』か『不幸せ』かどうかなんて、そいつにしか解りゃあしねぇんだしな。」
「そうかもしれないけど…」
「それに、魚が『幸せ』を感じるかどうかも怪しいしなー」
「……」
「だろ？」
「それでも、俺は…俺が、この魚だったら『不幸せ』だと思う。」
「……」
「確かにここでいれば平和なんだろうけど…ほんとはもっと広い世界があるのに、出て行けないなんてな……って、何だよ？」
「いや、お前らしーなーと思ってよ。」
