ともすれば頼りないオレンジの灯り。 揺れる影。 ビクトールが寝台に乗り上げる格好になったフリックの掌を取った。 「な、フリック…」 そのビクトールの掌が、瞳が、熱い。 「駄目だ…傷に障る…」 やらんわりと拒絶するフリックの目元が赤い。 どこか熱を持ったような瞳が揺らめいて。 本心からではない台詞のせいで、どこかしら落ち着きが無い。 「傷なんざ、もう全然気にならねぇよ。」 そのフリックの心を見透かすように、ビクトールが追い討ちを掛けた。 ビクトールの体には幾重もの包帯が巻かれている。 頭、胸、腹、腕にも。 肌の見えている部分の方が少ないくらいだ。 それでも、ビクトールは平気な顔でフリックを引き寄せる。 抱き込まれても、フリックは目を逸らしたままで。 「ほんとにもう殆ど痛くはねぇんだ。紋章の力ってのは偉大だよなぁ。」 「……」 何も応えないフリックの頭を抱え込んでビクトールがひとりごちた。 目に映る白い包帯に、フリックは唇を噛み締める。 この、無残な姿は、自分のせいでもたらされたものなのだ。 自分の至らなさを痛感した。 そして、失われる恐怖と絶望に打ちのめされた。 ビクトールの、其処にある想いと、自分にもまたあるその想いに胸を抉れた。 そろそろとフリックは顔を上げる。 そこにあるのは、生きて温もりのあるビクトールの顔だ。 手を伸ばして頬に触れると温かい。 それだけで、何故か泣きたくなるような気持ちになって、また、フリックは顔を伏せてしまった。 その日、フリックとビクトールは戦場に居た。 「これで最後なんだろーなっ?!」 「ああ!何とか無事に突破出来たな。」 普段二人は大概戦の先陣を切る。 しかし今日は殿に配備し、大将であるヤマトの護衛に付いていた。 先日、ついにマチルダ騎士団が敵国ハイランドに降伏したとの情報を得た。 そこで隙を突いて、ハイランドに押さえられていたミューズに攻め入る作戦に出たのだ。 しかしいざミューズに辿り着いてみると、そこはもう廃都と化していた。 そして街を我が物顔で徘徊する金色の大狼。 獣の紋章の眷属だというその怪物は、ミューズ市民を血祭りに上げる事で獣の紋章を封印から解き放とうとしているらしい。 その惨状に呆然とする最中、北と東から敵軍が接近しているとの報告を受けた。 伏兵を避ける為、北の中央を突っ切って撤退する事を余儀なくされる。 当然軍主のヤマトは危険を避ける為、後方に布陣する。 先鋒が蹴散らした兵がまた襲ってくるのを迎撃する役に、ビクトールとフリックがついたのだった。 「おい、早く行こうぜ!」 追い縋る敵兵を尽く打ちのめしていた二人は、本陣から少し遅れた形になっている。 これが最後だと思われる部隊を切り伏せると、そこには夥しい数の骸が転がっていた。 もう誰一人として自分達以外の者が立っていない事を見計らって、ビクトールが身を翻し歩き出す。 それに続こうとしたフリックは、背筋に走る悪寒にはっとして振り返った。 そして目にしたものは。 夕焼けで赤く染まる空に、更に眩い光を放つ赤。 それが炎を象って強く煌いている。 火、または烈火の紋章。 誰かまだ、息の根があったのだろう。 紋章のものなのか札の力なのかも解らないが、今、確実にそれは発動の様を呈している。 あ、と思ったフリックは息を呑んだ。 間に合わない。 そう、思ったところで一瞬意識が飛んだ。 「−−−っ!」 大きすぎて何と言ったか判別すら出来ない爆音が降ってくると、次に身を焦がすような熱風が通り抜けた。 長かったのか短かったのかさえも解らない時が過ぎると、痛い程の静寂が訪れた。 その間、何度も体を襲った地響きのような衝撃に、まだ少し手が震えている。 自分に圧し掛かる何か、からフリックは這いずり出した。 「生きて…る…?」 辺り一面は焼け野原で。 先程までそこにあった筈の死体は焦げて色と形を変えていた。 遠くの方に見えるものは、無残にも散り散りとなり、更に遠くのは形すら残っていない。 そして、まだはっきりしない意識でフリックは条件反射のように辺りを見渡して。 「……っ?!」 それに気付き目を見開いた。 先程、フリックに覆い被さっていたモノ。 焦げた防具から合間見える焼け爛れた肉。 焼け焦げ、そこに無造作に放り出された人型のそれ。 「あ…あ…」 慌てて座り込みまじまじと見詰める。 まさか、と真っ白になった頭で思う。 けれど見違える筈もなく。 見るも無残な姿の相棒に我が目を疑った。 「ビクトール?!!」 動かぬそれは応えを返さない。 否、返す事が出来ない。 フリックの血の気がざっと引いた。 「な、何でっ?!ビクトール?!ビクトール…っ!!!」 体を揺すって声を張り上げる。 けれどとても生きているようにはみえない。 たとえ、息があったとしてもこの怪我ではとてももつとは思えない。 「嘘だっ!…ビクトール目を開けろ!頼むからっ…っ!」 反応の無い手を握って尚強く呼び掛ける。 大きく分厚い掌。 いつも自分に触れる温かい掌。 自分は幾度この手に救われた事だろう。 両の掌で祈るように包み込んで、ビクトールの手に額を擦りつけ。 「いやだ…死ぬな…死ぬなっ…死ぬなあっ…!」 喉が枯れるほど言葉を吐き出して慟哭する。 涙でよく見えないビクトールに、それでもフリックは懸命に呼びかけ続ける。 消えてしまう。 逝ってしまう。 また、何よりも大事なものが。 また、自分を置き去りにしていってしまう。 いくら握り締めても微動だにしない冷たく重い手。 いつもなら強く握り返して、自分の好きな、あの笑顔で応えてくれるのに。 「退いて!!フリックさん!!!」 声が聞こえたと同時に、フリックは肩を大きく押されて脇に押しやられる。 「ルックも…!早くっ!!!」 叫ぶ声はヤマトのものだ。 フリックが茫然と見遣ると、ヤマトの右手に光が集まっていく様が見えた。 そしてそこから大きな緑の光線が盾の形を造り出す。 それが空に広がると、優しい光が惜しみなく降り注ぎ始めた。 その全ての光がビクトールの体へと吸い込まれていく。 輝く盾の紋章に重なるように、続いて水の紋章も浮き上がった。 「…まったくもう、世話焼かせないでよね…」 ヤマトの後ろからルックが手を翳してビクトールへと力を注いでいる。 憎まれ口の割には、その表情は真剣だ。 凄まじい程のエネルギーが、力なく横たわる体へと流れ込んでいた。 すぅと輝く盾の紋章の光が掻き消えると、今度は破魔の紋章が姿を現す。 そして水が消えると、風の紋章が。 息継ぐ間もなく、次々と効果の高い上級魔法が唱えられていく。 けれどそれでもビクトールは動かない。 「……」 懸命にビクトールを救おうとしている二人の姿を見て、フリックが拳を握り締めた。 レベルの高い魔法のせいで、フリックの両の手にも宿る紋章が共鳴を起こしてその存在を主張している。 右手には雷鳴。 左手には火。 それらは、より強くなるために宿した。 ビクトールの隣に立ち続けていられるように。 少しでもビクトールの助けになれるように。 強くなりたかった。 強くなったつもりだった。 なのに。 どうして今、こんなにも自分は無力なのだろう。 自分のこの手は、人を殺める事には長けていても救う事には何の役にも立たない。 あの男の助けになりたいと、守れるようになりたいと、そう思っていたのに。 それなのに、どうして。 自分は庇われて、あの男は死に掛けているのだろう。 どうして。 自分はこんなところで、ただ何も出来ずに見ている事しか出来ないのだろう。 動かないビクトールに、フリックの心が焦れていく。 どうしようもない不安が心を喰い潰す。 何よりも大切なものが、目の前でなくなるかもしれない焦燥に襲われ戦慄いた。 どうする事も出来ない自分に愕然としながらも、ひたすら祈り、願っていたフリックの目に、それがぼんやりと映り込んだ。 「あれ…は…」 黒い、大きなビクトールの剣。 「星辰剣…」 それを認識すると、フリックは飛び上がってそれに駆け寄っていった。 激しい炎に晒されても傷ひとつなく健在し、黒光りしているそれは沈黙を通していた。 「星辰剣!聞こえているんだろ?!頼む、あいつを助けてくれっ!!」 地面に手をついて覗き込むようにしてフリックが叫ぶ。 「このままだと死んじまう…お願いだから、力を貸してくれ…っ!」 取り縋るフリックの目から涙がぱたぱたと星辰剣に降り注ぐ。 「頼む…何でもするから…だから…」 応えない星辰剣にそれでもフリックは呼び掛け懇願した。 暫くただの物質であった剣が、ゆっくりと輝きを放ち始め、ふわりと宙に浮いた。 「…青雷よ、それは出来ぬ。」 「何でだよっ?!あんた真の紋章なんだろ?だったら持ち主は不死身なんじゃないのかよ!!」 応えがあった事に安堵したのもつかの間、星辰剣の言葉にフリックが納得いかないと叫ぶ。 「…わしはあやつの生死には関与せぬ事になっておる。」 「そんなっ…!」 「これはあやつが決めた事なのだ。」 「でもっ…だからって…!」 星辰剣の非情な態度に怒りさえ覚え、フリックが声を荒げその刀身に掴み掛かろうと立ち上がる。 「落ち着くのじゃ、この若造。心配せずとも良い。」 憤るフリックを制して、星辰剣が僅かにその体をビクトールの方に向けた。 先程よりも、そこは力場が拡大している。 幾つもの紋章が浮かんでは消え、光の波が空より押し寄せている。 ビクトールの体は、その光の帯で姿さえ見えない。 「大丈夫だよ、フリックさん。」 「っ?!…ナナミ?!」 後ろから少女の手が伸びてフリックの腕が掴まれる。 驚いたフリックにナナミは力強く頷いた。 「絶対、ビクトールさんは助かるから!」 気付けば先に行った筈の同胞がわらわらとこちらへ駆けて来る。 癒しの紋章を持った者達が、その持てうる力でビクトールへと魔法をかけていた。 「……」 その壮絶な光景に、フリックの目元がまた熱くなって視界が霞んだ。 ビクトールが、助かるかもしれない。 そして、ビクトールの命を救おうとしている者がこんなにも沢山いるのだという事実。 「行こう、フリックさん。」 ナナミが立ち尽くすフリックの腕を引いた。 フリックは引かれるまま、よろよろと歩き出す。 ビクトールのいる、そのところへ。 光しか見えないその空間に入って心臓が飛び上がった。 差し入れた手を、確かに握り返す力がある。 「…っ…」 フリックもまた握る掌に力を込めて歯を食いしばった。 人の形になった影がゆっくりと起き上がる。 「フリック…か…?」 「ビクトール…っ!」 手を引いて抱き締めた。 身に馴染んだ大きな体がそこにある。 温かに血の流れるのを感じ取って、フリックは目を閉じて抱く腕にありったけの力を込めた。 泣き顔を見せたくはないと思っていたのに、勝手に流れる涙に内心舌打ちをして。 けれどもう涙を止める事が出来ない。 次第に光が弱まっていく頃、同じくして後ろの方で歓声が湧き上がっていく。 その声に掻き消されるのをいい事に、フリックはただひたすら声の限り泣いていた。 ビクトールが、まさに奇跡の生還を遂げてからまる一日が経っていた。 紋章の力は絶大で、はじめフリックが見た死を覚悟する程の姿からは想像も付かない程ビクトールの怪我は回復している。 包帯が隈なく体を包んではいるが、赤くなっている程度できっと痛みもさほどはないのだろう。 しかしそれでも生死を彷徨った経験は激しい疲弊を伴うらしく、ビクトールは今も昏々と眠りに就いていた。 フリックはそのビクトールの側にずっといた。 時折眠りから醒めないビクトールの頬や首筋に触れては命の躍動を感じ、安堵につく。 生きている。 ただ、それだけの事が、こんなにも嬉しいのだと。 そして、また逆に失いそうになった瞬間を思い出しては身震いをした。 もし、自分があの時もっと早くに魔法に気付いていれば。 もし、自分がもっと強くて自らを守る術を持っていたとしたら。 ビクトールは自分を庇わなかっただろうか。 もし、ヤマト達が来てくれなかったら。 もし、あのままビクトールが死んでいたら。 もっともっと強ければよかった。 庇ってなど貰わなくていいくらいに。 ビクトールを助けられるくらいに。 自分の至らなさで大事な人を失う事だけは、もう二度としたくないと。 そう強く強く心に想っていたのに。 その為に強くなりたかったのに。 夕暮れに染まる穏やかなオレンジ色の光が部屋を満たす。 その、淡い西日に照らされた星辰剣が、ふいにフリックに話掛けた。 「のう、青雷よ…」 「何だ…?」 少し驚いて星辰剣をフリックは見た。 あまりこの剣に話し掛けられる事は日常ではない。 「おぬし、おかしいとは思わなんだか?」 「何が?」 星辰剣の言いたい事がよく掴めなくて、フリックは首を傾げた。 「いくら頑丈さが取り得とはいえ、この木偶の坊がこれだけの傷を負っているのじゃ。庇われたおぬしがまったくの無傷と言うのも不自然ではないか?」 「あ…そう言えば…」 ビクトールが死に掛ける程の威力を持った破壊力。 それに晒されて、幾ら庇われたといってもあまりにも影響が少なすぎる。 フリックが負ったのはほんの掠り傷程度のものだけだ。 「何か…訳があるんだな?」 フリックは星辰剣が何か伝えてくれようとしているのだと感じ、それを求めた。 「本当は、口止めされておるのじゃが…あまりに見ておられんのでな。」 その言葉にフリックは苦笑いを浮かべる。 「おぬしも真の紋章がもたらす力は何か知っておるじゃろう。」 「不老不死の体と絶大な紋章の力だろう?」 「そうじゃ!この有難い恩恵に、皆争ってでも手に入れようと血眼になっておる!」 「ああ…そうだろうな。」 「しかしじゃ!この馬鹿は…『そんなもんはいらねぇ』などとほざきよった!!」 「……」 憤慨する星辰剣に、フリックは少し笑みを漏らした。 その言葉はビクトールらしい、と思う。 何者にも頼らず、人として生きて大地にしっかりと足を下ろすこの男には、きっと不要なものなのだろう。 「そしてこうも言った。『その替わり』…」 「『その替わり』?」 「『相棒の命を出来る限り救ってくれ』とな。」 「なっ…?!」 「そこでわしは奴と契約した。紋章の力は授けぬ。そして相棒…おぬしを3度だけ助けると。」 「……」 「気に食わぬ顔をしておるな。」 「当たり前だっ!!そんな勝手に俺の事…それに…っ!!」 ビクトールに、自分は誰かの庇護が必要だなどと思われていたなどと。 けれども。 それを否定する事など今の自分には出来ない。 現にこうして命を救って貰っているのだ。 その事こそが悔しくてフリックは拳を握り締めた。 「こうも言っておったぞ。『ただ命を救うだけではなく、五体満足で指の一本も欠けさせるな』とな。従って3度のうちの一度をこの度使ったのじゃが…」 「…って事は…ちょっと待てよ。」 星辰剣の言葉を頭で繰り返してフリックは信じられない、という顔をした。 「じゃあ、ビクトールは俺を庇う必要なんてなかったじゃないかよっ?!」 「うむ。とんだ無駄骨じゃな。」 「あんたが守ってくれる事は解ってたんだよな?!だったら、俺の事なんて放っといてさっさと自分だけ逃げりゃあよかったんだ!」 「まさしくその通りじゃ。しかし、それこそがこの男のあほうたる所以じゃろうて。」 「…何やってんだよ…馬鹿野郎…」 がっくりと肩を落としてフリックが項垂れる。 命が助かったからよかったものの。 助ける必要の無い人間を助けて死んでしまうなど。 そんな馬鹿げた事でこの世からいなくなってしまわれたら堪らない。 「くそ…」 あんなにも酷く胸の潰れる程の辛い思いをさせられた。 また、大事なものを失くすのかと。 「そう呆れるでない。解っておってもそうせずにはおられなかったんじゃろう。」 「……」 『守りたい』という気持ちが強ければ強いほど。 自己を犠牲にする事など造作もなくなってしまう。 どれだけ己が傷付いてでも。 何者もから守ってあげたいと思うのは、ただの自己満足なのかもしれないけれど。 「心底ぬしに骨抜きの馬鹿なんじゃから仕方なかろうて。」 「ほんと大馬鹿だ…」 星辰剣の揶揄の入った言葉に、フリックは少し笑って応える。 「したがっておぬしも一々馬鹿のする事に気を病む必要など何処にもなかろうて。」 「星辰剣…?」 「……」 「おい…?」 「……」 唐突に、星辰剣が黙ってしまった。 言いたい事を言い終えたからだろう。 自分勝手さに呆れながらも、気を遣ってくれたであろう事にフリックは心からの笑みを引いた。 ビクトールのもうひとりの相棒。 普段憎まれ口を叩き合いながらも、こうしていざとなると手を貸してくれる。 そして、フリックはあの時の事をも思い出す。 先に行かせたのに、敵の紋章の発動を知って駆け付けてくれたヤマトにルック。 そして紋章を持った他の仲間を引き連れて来てくれたナナミ。 それに応じて力を貸してくれた仲間達。 ビクトールを大事に想ってくれる人達。 そんな人々を置いて死ぬ事になってでも、自分を助けようとしたビクトール。 出来るなら、庇ってなど欲しくなかった。 その人々のために、ビクトールには生きていて欲しいと思うのだ。 そして彼らと共に幸せに生きて欲しいと思うのだ。 自分なんかのために、全てを失ってなど欲しくないのに。 けれど。 けれども。 ビクトールの気持ちも痛いほど自分には解って胸が軋む。 「どうしてなんだろうな。」 夕闇は紫の雲を棚引かせて空を夜へと変貌させていく。 もう薄暗い部屋で、ビクトールの顔もよく見えなくなっていた。 「守りたいと、強く思えば思う程…どうして傷付ける事になってしまうんだろうな…」 守りたいから自分は死を省みない。 けれどそれこそが一番、相手をより深く傷付けるのだ。 赤く長い髪で気丈な、今はいない女の姿が目に浮かぶ。 大事に思えば思う程、傷付けて。 そして守ってやる事すら出来なかった。 もう二度とあんな想いはしたくない。 もう、二度と大切な人を失いたくはないのだと。 過去に何もかもを失ったビクトールもきっと。 そんな想いに支配されて自分を守ろうとするのだ。 未だ目を覚まさないビクトールの掌を取って握り締める。 影は長く濃く。 血のように赤い夕日は、まるで今日で死んでしまうかのように山々に消え。 やがて暗がりに、何もかも埋め尽くされていった。 |
next→ |
CLOSE |