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レポート2.家庭教育プログラムの魅力
(めだか:児童福祉、養育家庭の専門誌 no.21 平成15年12月)

 家庭教育の特質は前回でも述べました“悪くなる前に対処“ですが、私がとても魅力的だと思うことをいくつか紹介させていただきます。まず第一に、このプログラムは自分で自分をサポートできるようになることを基本においています。講習会(プログラム)を通して、自分で考え、解決策を見つけることはとても大切なことだと思います。

 時々目にするこんな光景があります。自分だけでは心細いし、わからないから、他の人がやっていることと、とりあえず、同じ事をしておこう。また反対に、人から話を聴くことのできない人たちです。人からの話や意見が、自分の考えを否定されたかのように思う人や、プライドが傷ついたとおお暴れする人。けれども両方とも他人任せの、自分勝手ということになると思います。自分で決断することが不安な人は、少しずつ、解決策を見つけていけばいい事で、あわてる必要もありませんが、いつも誰かと同じことしていればという考えは、安易なことと認識するべきです。また、“聞く耳持たず”は新たに自分のためになるものが探せる機会と相手を知るのによいコミュニケーションの機会を放棄しているようなものだと思います。家庭教育プログラムは情報と知識提供をするもので、その中で受講者は自分の生活への手がかりを見出していくものです。

 第二に、家庭教育の魅力は、人の一生を踏まえてプログラム作りができることです。幼児、青少年、成年、中年、老年とライフラインを通して人間の成長をみています。幼児期は、肉体的発達が著しいときで、親は言葉がまだままならない我が子の子育てに大奮闘で心身とも忙しいときだと思います。幼児もまた毎日が未知なる世界との出会いでこれもまた心身とも忙しい時期です。また青少年期は、“家の子は大きくなって、手がはなれた”時ではありますが、この時期の青少年への精神的サポートと監視ではなく観察(見守る)が大切なときでもあります。成年期、中年期は社会的満足感、成功感が少なからず、気になるときでもあります。老年になれば、身体の衰えは、前に比べ身近なものになってきます。

 人は一生を通じて心身ともに変わっていくものです。家庭教育プログラム作成には、人間の肉体的,精神的、社会的発達(変化)を考慮しています。家庭教育プログラムは個人や家庭の多種多様な必要性に応じられて作られるものです。
 
 最後にもう一つ、このプログラムは、個人の成長や問題をエコロジー的に捉えています。個人の成長は、周りの環境が大いに影響すると考えています。母親と子どもの関係、父親と子どもの関係、夫婦の関係がおよぼす子どもとの関係、近所との関係、学校との関係、地域との関係、会社と親の関係が及ぼす家族への影響、法律と家族の関係などです。たとえば、幼児虐待はただ単に暴力的な母親が自分の子を虐待した。ことではなく、ストレスを一人で抱え込み、子育てをした結果、幼児虐待してしまったとか、子どもとの接し方がわからず、不安から幼児虐待しまうという結果になることもあるます。これらは、エコロジー的に見ると母親の家族との関係が及ぼす子どもとの関係と母親と地域(子育ての情報)との関係になります。

 その他には、暴力的な夫が妻に暴力をふるうのではなく、夫もまた、会社でのストレスや行き詰まりから、身近にいる妻に暴力をふるうといった例があります。妻を自分より、弱いものと見下したとき、家の外で保持できない自分の立場を、妻を自分の権威下に置くことで、自分の欲望を満足させる例もあります。これは会社と夫の関係が及ぼす妻への影響と、妻と夫との関係になります。ここには数点だけエコロジーの例を挙げましたが、個人や家族が快適に暮らすには、それらを取り囲む環境が影響するもので、また互いに影響しあうものです。

 家庭教育プログラムの大きな魅力は、問題解決を個人、家族で促せる様、その手助けをするために作るもので、人の一生(生から死)を踏まえ、家族、社会との関わりから捉えているところだと思います。一人ひとりに個性があるように、各家庭の環境も違い、各地域文化,習慣がちがいますから、問題を色々な角度から、また全体的に見ることは不可欠だと思います。各自の問題解決には、これが一番いいと結論をだすより、情報、知識を得た後で、自分なりに家族で物事を決めることの方が納得がいくと思います。自分のことは自分で責任を持ち、それゆえに他の人と協力ができ、また親切にもできると思います。家庭教育プログラムは個人の成長、家族の生活向上、そして人との調和に役立つプログラムとして、身近で実践していけるものです。
次号では、具体的な例を取り挙げてお話をしていきたいと思います。