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国際フォーラム’91 名古屋

 

 

 

 

 

 

 

 

世界の中の日米関係

 

 

激動する国際政治と経済

 

 

平成3年6月17日

 

 

13:00〜16:00

 

 

テレピア・ホール

 

 

 

Panelist

 

外務省外務報道官

渡辺泰造

昭和9年生まれ、東京大学法学部卒業

在米大使館参事官、在ロサンジェエルス総領事、

特命全権公使、在米大使館在勤を経て平成元年1月より現職

 

静岡県立大学国際学部教授

中西輝政

昭和22年生まれ、京都大学法学部卒業、同大学大学院修士過程修了

英ケンブリッジ大学歴史学部大学院修了、米スタンフオ−ド大学客員研究員等を経て現職

(株)野村総合研究所取締役

奥村洋彦

昭和17年生まれ、名古屋大学経済学部卒業

日本銀行を経て昭和47年、野村総合研究所入社、

昭和52年6月〜53年9月米国ブルッキングス研究所客員研究員

 

名古屋商工会議所副会頭

トヨタ自動車(株)相談役

神尾秀雄

大正9年生まれ、横浜専門学校(神奈川大学)商科卒業

日米貿易振興会名古屋貿易センタ−会長、日本商工会議所政策委員会委員。

(財)愛知県国際交流協会副会長などを兼任

 

インサイダ−編集長

高野 孟

昭和19年生まれ、早稲田大学文学部卒業

昭和55年より「インサイダ−」代表兼編集長

主な著書に「復活する大欧州・漂流する日本」ごま書房等がある。

 

 

 

 

      渡辺報道官の基調講演(要旨)

            平成3年6月18日、中日新聞 朝刊 

 

日米関係は相互理解がうまく行く仲ではない。人種、文化、宗教などが違うし、50年前には戦争をした相手同志である。安保や経済権益の問題で両国はうまく調整しているが、底流には反感があることは否めない。

例えば安保問題では、日本が戦闘機を自主開発しようという動きにアメリカは警戒している。将来、自動車と同じように、防衛面の技術でも日本に追い越されてしまうのではないかという不安からだ。  

経済では、柑橘類の交渉でアメリカは日本全体に対する不満を洩らす。文化や社会に対する批判も生まれている。  

1930年代、日本は国際環境が悪化したとき、野放図のままだった。そして戦争に突入した。このままではいつか来た道を戻ってしまう。

日本の外交で大切なことは、総合的、大局的な見方をすることだ。

個別の権益がぶつかる中、まず必要なのは、自分達の利益を確認し、代弁すること。

常に日本全体の利益を念頭におき、勇気を持ってこちらの利益を伝えることだ。

二つ目は。相手の痛み、苦しみを理解してあげること。

それには正確な情報が欠かせず、情報は人と人との暖かい関係を深めることで得られる。アメリカは今、独力で国際問題を解決することが少なくなっている。

環境問題や、貧富の格差の是正など、日本の果たす役割は多い。

 

         平成3年6月25日 02:25東海テレビ 放送 

 

今の日米関係で、危険な動向というものは安全保障、経済権益の調整、これはその時と同じ様に問題があります。でも実質面におきましてはかなり着実に調整が図られている。にもかかわらず調整の道程において、相手方において反日感情が高まりつつある。これが一つの大きな問題であろうと思われます。このようなときにアメリカ国内でも非常な日本に対してこういう態度、どういう態度を取るべきかという議論はなされ、日本のことを一生懸命弁護していた人達、が、湾岸危機における日本の腰を引いた態度に対して、今度は日本に対して非常な失望と不満と、落胆を示す。

この防衛関係において基本的にはうまくいっている。実質的にはうまくいっている関係が、パ−セプション、あるいは感情の面でも非常な摩擦の原因となってきているというのが、安全保障の面での実態だろうと思います。

今、最も大切なことは相互的な、大局的な見方をする、これが絶対に必要だろうという感じがします。個別の権益がぶつかりあいます。その時に日本とアメリカがどのようにすればうまく生きていけるのだろうか、そういう総合的な見地からこの権益のぶつかり合いの解決の道を求め、見付けだす、それから同じようなことですけれども、大局的見地から見て、自分達の利益、これを確認し合う事だろうと思います。

アメリカ自身がもう世界の指導者として独力で解決できる問題が少なくなっているということだろうと思います。

日米双方がどのような協力をすれば解決できるのか、このような見方、そのような問題の意識のとらえ方を、環境問題とが貧富の格差の問題、第3世界の問題等について取っていかなければならない。

こういうことだと思います。日米関係は今後どうなるかという事に対する、私の答えは皆様自身であり、私自身であると、こういうことになると思います。

 

田中秀佳

まず先程基調講演をして戴いた、渡辺泰造さんです。渡辺さんは昭和9年生まれ、東京大学を卒業後、昭和31年外務省に入られて、アメリカ大使館参事官、ロサンジュエルス総領事、特命全権大使などを経て、平成元年に外務省報道官に就任されました。

日米関係における外交面でのスペシャリストです。

 

そして二人目、野村総合研究所取締役奥村洋彦さんです。奥村さんは昭和17年生まれ、名古屋大学経済学部卒業、昭和39年日本銀行に入られ、その後昭和47年に野村総合研究所に入られまして平成元年取締役に就任されています。経済金融の専門家であり、同時に経済審議会の臨時委員も勤めていらっしゃいます。

 

続いて、名古屋商工会議所の副会頭であり、トヨタ自動車相談役の神尾繁雄さんです。

神尾さんは大正9年生まれ、横浜専門学校商科卒業、昭和15年トヨタ自動車工業に入社、昭和51年に取締役、昭和58年に取締役副社長に就任されまして、昭和61年から相談役でいらっしゃいます。平成2年からは名古屋日米協会副会長、日本商工会議所政策委員などを勤めていらっしゃいます。

海外 特にアメリカ、ヨ−ロッパを中心に国際的な実務面での交渉に長い経験をお持ちです。     

 

そして静岡県立大学の中西輝政さんです。中西さんは昭和22年生まれ、京都大学法学部卒業後、イギリスのオックスフオ−ド大学歴史学部大学院修了、「欧州新秩序と日本の選択」、「ポスト湾岸後の日本と世界」など沢山の著書をお持ちです。新進気鋭の国際政治学者です。

 

そして今日のパネル・デイスカッションのコ−デイネイタ−を務めて戴きます、国際政治情報誌インサイダ−編集長、高野孟さんです。高野さんは昭和19年生まれ、早稲田大学卒業、「日米破局は来るか?」「世界地図変動の読み方」など沢山の著書をお持ちです。テレビ番組でも大活躍の新進気鋭のジャ−ナリストでいらっしゃいます。

 

そして今お手伝をさせて戴きます東海テレビの田中秀佳と申します。どうぞよろしくお願いします。   

さて高野さん、今日は世界の中の日米関係をテ−マにパネリストの皆さん、そしてコ−デイネイタ−の高野さんを含めまして、激論を戦わせて戴きたいと思います。

 

高野 孟

渡辺報道官のお話の中でも色々な問題点が出てきておりましたけれども、例えば情報ということを強調されていたと思うんですが、まさに湾岸戦争をめぐって、そしてそれと重なり合いながら日米関係のパ−セプション・ギャップのような事が起こっていく。

おっしゃったようにマスコミの問題というのは確かに深刻に日米双方にあると思うんですが、それだけではなく、国としての情報の集め方。つまりインテリジェンスといますか、そういうことを巡ってもこの湾岸戦争というのは非常に重要な問題を提起したと思いますし、其の事を始めとして湾岸戦争というのはある意味で非常に日本の外交に留まらず、日本の国の在り方そのものにとっても大きな試練だったという感じがいたしますが、まあ先程の渡辺さんのお話もそういう事を踏まえての問題点の提起だったと思いますので、最初に、第1ラウンドとして渡辺さんの話を聞いて感想といいますか、湾岸戦争以降の状況についてどんな問題点を持っておられるかということを最初に2、3分ずつ、お一人ずつお願いします。 

 

田中秀佳

まずは国際政治学者の中西さん如何でしょうか?

 

中西輝政

渡辺報道官の話、たいへん私は感銘を持って聞かせて戴きました。やはり国際問題を扱う立場の人間、日本人として大きな視野の中から、大きな責任感を持って対処していられる姿、これはやはり私なんかも非常に感銘を持って聞かせて戴いたわけですけれど、私は特に今の国際情勢を見ておりまして感じますのはやはり、大きな視野の中から問題を考える姿勢じゃないかと、特に思いましたですね。それはやはり今回、国際情勢は大変大きな変化の過渡期にあるので、渡辺報道官は火山の噴火という例えをなさいましたけれども、私も今、次から次へと溶岩ド−ムが顔を見せて、思わぬ時に火砕流が山を駆け下りてくる。そういうタイミングをじっと見て、何時大きな大変動が起きるか、そういうことで国際情勢を日々見ている訳ですけれども、非常に大雑把に申し上げて、3つぐらいの点が今国際情勢を見る見所だろうという気がします。非常に簡単にまとめさせて戴くと一つは大きな変動のエネルギ−がまだ尽きていない、冷戦の終わりという地殻変動が次々に噴火を起こすであろう、それが一段落するのは多分93年、94年ぐらいという中長期的な目で国際情勢の大変動を見ていく必要があるだろうと、簡単に申し上げて、二つ目はやはりグロ−バルないろんな、ガット、ウルグアイ・ラウンドの問題など、後で出てまいりましょうが、グロ−バルな枠組みの重要性と同時に地域的なリ−ジョナルな問題、これがからまり合って普遍的な自由貿易体制の中にいろんなブロック経済化が起こっているということ。こういうからまり合いが大きな特徴ではないかと思います。3番目にはバック・トウ・ザ・ヒュ−チャ−という映画がありましたが、今後の新秩序はある面では非常に未来思考的なんですが、我々の足を取られるといいますか、大きなつまずきの原因となるのはある意味で過去のパタ−ンが出てきた時ではないかと、民族の問題、文化文明の違いが国際的な摩擦の発展する。こういうパタ−ンについては十分すぎるぐらい気をつけていかなければならないんではいかと、私は今の国際情勢についてこういう見方をしています。

 

高野 孟

有難う御座いました、神尾さんは報道官の話の中でかって太平洋戦争に日米が歩んでいくパ−セプション・ギャップという話が出ましたが、先程楽屋で伺っていますと向こうで、カリフルニヤでお生れになって、1才半まで居られて、そして日米が悪くなってくる中でこちらにお帰りになったという話を伺ったんですが、そういう経歴も含めて如何でしょうか?

 

神尾繁雄

やはり私が生まれたというだけでなく、今の日本は日米関係が基軸となって動いているんではないか思います。報道官のお話にもありましたが、戦後45年間というのは日米は非常に自由と民主主義という価値観を共有していたために、それがベ−スになっておりましたが、最近になって米ソの2極対立という国際情勢の中で、西側メンバ−の一員として、アメリカをサポ−トしておれば良かったわけですが、現在は米ソの冷戦構造の終決によりまして、軍事から経済へと比重がシフトしております。その場合に社会の安定はアメリカだけに任せておけばいいんではないかという訳にはいかないと思います。

最近の日米関係を見ますと80年代の後半に入りましてから、両国の関係が少しずつほころびが見えてきているように思います。アメリカにおきましてはこの期間を通じまして、財政と貿易の双子の赤字が増大しておりまして、又製造業を中心といたしました物作り軽視による産業ダイナリズムの低下が行なわれております。従いまして長期的に見ますと国際競争力が低下しております。日本は戦後アメリカの庇護の元に経済復興、経済発展を主として心掛けていれば良かったわけであります、で今や一人当たりのGNPはアメリカを抜いております。ある分野では、産業のある分野ではアメリカを席巻し、ある分野ではアメリカを凌駕していると存じます。

しかしながらこういう実態があるにもかかわらず、我々の精神構造はやはりアメリカは大人で、日本は子供であるというような多少甘えの構造がまだ依然として有るように思います。それが経済摩擦と言われるものになってきていると思いますが、常に日本が受け身で、アメリカから問題提起されているという事が続いていると思います。日本としてはアメリカが現在悩んでいるわけでありますから、この悩んでいる部分に対しては言われる迄もなく進んで解決の手を差し伸べて、負担軽減のために積極的に協力していくべきだと思います。こういうことをやると両国の関係がより安定したものになるのではないかと思います。

 

田中秀佳

実際に実務面でご活躍の方が、アメリカに手を差し伸べるべきだという話、大変興味深いと思います。それを受けてどうでしょう、金融の専門家でいらっしゃいます奥村さんは如何ですか?

 

奥村洋彦

先程の報道官のお話の中では、アメリカ自体独力ではいろんな問題を解決する力が弱ってきている、小さくなってきているというところが一番印象的でありました。今、日本とアメリカの関係を考えます時に一番大事な点は、日米間で財産の違い、約1兆ドル、今日の為替レ−トで言いますと、140兆円ばかり日本が豊かであり、アメリカが債務を負っているということです。私はここに至った今日時点では日米間の問題というのは日本人とアメリカ人の問題を超えてしまっていると思います。

今の日米の問題を日本人、アメリカ人特有の問題だと捉えて、それぞれお互いに悪口を言っておりますと、今日は夢にも思わないことが現実化してしまう危険性があると思います。今の問題は世界のどの国でも対外債務を蓄積し、対外債務を負っていますとかならず経験する問題であって、例えば1960年代にはアメリカとヨ−ロッパでほとんど同じ問題を経験しております。その後ヨ−ロッパはどのようにアメリカに対抗していったか?同じコ−スをアメリカは日本に対抗するために取ってくると思います。

今、アメリカの中では非常に優秀な各地域のリ−ダ−の人達が、現在のアメリカの問題は日本が悪いから起きているんだと考えておりまして、これにはいろんな、先程報道官がおっしゃった報道の問題とかいうのが入り込んできていると思いますが、現にそういうことが起きているわけであります。

私ども余りアメリカを追い込むことがあってはならない。しかし、一番追い込むことは、アメリカに媚びる事でありまして、従来と同じように日本のお金をアメリカに出し続けますと、今、夢にも思わない事が現実化してしまうと思います。 

例えば、今、アメリカが追い込まれた時取る手は自由貿易の止めるとか、国際通貨制度を変えるという、舞台を変える事であります、こういうことにならないように日本は賢明な政策を取っていく必要がありますが、それは決してアメリカの言うことをそのまま聞くと言うことではなくて、むしろ逆のことをやっていかなければいけない段階に入っていると思います。

 

高野 孟

それぞれの方の中に渡辺さんの先程の話に対する言及もありましたが、それも含めて一言お願いします。

 

渡辺泰造

今、大きなエネルギ−がまだ燃え切っていない。存在していると、中西教授が言われたのは正にその通りだろうと思います。そしてエネルギ−というのがどちらかというとプラスのエネルギ−ではなくマイナスの方に行く可能性が強い、今、この近い将来において、一番注意しなければならないのは、ソ連の動向ですけれども、これに対して今ヨ−ロッパが最も緊迫、危機感を持ってなんとかしなければということを言い、又ロンドン・サミットでも是非ゴルバチョフを呼んで、何らかの対策を講ずるべきだと、こういうことを言っております。しかし、ソ連の問題について、誰が、何を、対策取れるのかとなると、やはり日米が組まなくては有効な解決策は出てこないのではないかと、このようなマイナスの動き、これからの世界の崩壊、ソ連の問題をとっても、それが日米間の間でどのように議論されていくべきか、私自身は、これは日米のトップ同志が話し合っていかなければならない大きな問題だろうと思います。

エコノミック・サミットの問題ではその他に、今、グロ−バルな枠組みが中西教授が言われた国際秩序を如何に強化していくか、昨年は民主主義、社会主義が崩壊した後、民主主義を如何に立て直すか、民主主義の原理で如何に世界の繁栄を維持していくのかという議論がありましたが、今年は国際秩序、むしろイデオロギ−よりも秩序そのものについて、これをどのように議論していくのかというのが主題になると思います。その中でやはり一つの大きな問題は地域的な問題、これをさっき言いましたマイナスの噴火の方にさせないように、そういう意味で湾岸戦争は終わったんですが、一番心配しているのは中東が全く分裂してしまった。そして分裂した後、元に戻す秩序の枠組みが全然見当らないということ、これも米国、ヨ−ロッパが関心を持っていますが、日本も入っていかなければいけない。そういう意味では今は変化の過渡期、これからも問題、非常に多いというのは中西教授のおっしゃる通りだろうと思います。

奥村さんの言われたアメリカ追従であってはならないということの関連では、正にその通りで、やはりこれからでてくる日本の問題意識、政策の方向というのは日本が日米欧を極の一つとしてどのような形で貢献するかということを一つのイニシチテイブ、対米追従という形でないイニシチテイブ、その意味では奥村さんの言われた分野とは違うと思いますけれど、軍縮、軍備、この問題でやはり武器輸出 非輸出三原則を持っていた日本としては、もしこれからイラクの問題というものが、あの国に対して武器を輸出していた国が有ったと言うことを踏まえて、このような事があってはならないということで強く言いだす、これは米国、英国、その他安全保障理事国、常任理事国が取っていた政策と違うわけですから、そういう意味で一つのユニ−クな政策というのを出す。少しずつですけれどそういうことでユニ−クな味を出していくことが必要なんだと思います。いづれにしても甘えの構造というものを脱却しなければあらないという神尾さんのおっしゃられたことはその通りで、何かしらの形で日本がアイデアを出して行かなければいけない。そのためにはもっと国際構造についてアンテナを、国際情勢についてのアンテナを広く又深く持たなければならないということに帰ってくるのだと思います。

 

田中秀佳

渡辺さんが今おっしゃったように日米はがっちり組み合っていかなければならない、その裏では甘えの構造はいかんと!

 

高野 孟

それは正におっしゃった通りで、何というか、例えば、夫婦とか人間と人間の関係、何でもいいんですが、例えば親友であるということは相手の言うことを何でも聞いていれば、それが親友かということではありませんからね、それでは二人の関係に発展はないということで、その辺が今どういう時にきちんと言うべき事を言い、言う事が出来るのかということが問われていると思います。

湾岸戦争の時、国際貢献は何だという、実はよく解らないまんまに、その言葉だけが一種の脅迫観念のように我々にのし掛かってきたという事があったと思いますが、今、渡辺さんのおっしゃった中で私、大変ウンと思いましたのは、アメリカ追従駄目だという例で、中東の今後の軍縮、或いは軍備管理の問題について、独自のスタンス、これはちょっと反論というわけでは御座いませんが、私、司会者で余りしゃべってはいけませんが、もしそういうお考えがあるとすれば、僕は湾岸危機が始まってからやはりそのスタンスはきちんと出しておくべきだと思うんですね、それは、どうしてアメリカが世界新秩序ということを言って、その試金石としての中東和平の秩序を作るんだと、私は、私というよりは日本の中には私と同じ考えの人も随分居ると思いますが、これを武力でとことんやってしまったら、後で秩序なんか出来ないよということが、私なんかがアメリカに対して危惧した点であったわけです。がある意味では現実にその通りになった。むしろひっかき回しただけになって秩序どころの騒ぎでないという風になって、そこにおまけにアメリカは軍備管理ということを言いだして、大国を集めて会議を開こうといっておりますが、片方では240億ドルの武器を中東に売り込むということをやろうとしているわけであります。要するにその辺がアメリカが自分で自分がよく解らないでやっているところじゃないかと私は思うんですが如何ですか?

 

渡辺泰造

余り私ばかりがしゃべってはいけないんで、中西さん辺りにいくんではないかと思っていたんですが、私自身はちょっと高野さんとは違うんです、どちらかといえば今の世界の大きな川の流れ、歌の文句ではないですが、川の流れのようなもので、その中でアメリカを中心とした渦、或いはヨ−ロッパを中心とした渦、日本を中心とした渦が一緒になって流れている。その大きな川の流れに棹差すのがイラクのような国だったんですね。

その流れの方向が一緒の中での秩序だったらまず他の国々も許せるけれど、今の川の流れを変な風に止めるような動きがあった場合には、これは一緒になって流れている日本はアメリカと協力しなければいけなかったんだと思います。ただその後、何かこう土手がまだ崩れたまんまになっているというか、どっちにいくか解らない、これが今の状態で、その大きな川の流れの一体化した中での秩序、地域面での秩序、これがまだ出来ていない。

非常に抽象的な例証ばかりでよく解らないかもしれないが、国際法の基本を無視したような形での違法な侵略、それを許したまんまで秩序があっても、これはこれから作っていこうとする国際秩序の中ではやはりそういうことは潰していかなければならない、といけないんではないかと、そういうものが無くて後安定して行くというんであればいろんな意味で考えられるけれども、基本的には法とか国際連合の憲章違反とか、そういうものをそのままにして、しかし、ああいう大事な所でしかもあれだけの非人道的な事が起きたことはやはり秩序を越える問題、だけどそれが終わった後で又秩序の問題出てくる、だけどその時には前の経験を生かして武器輸出によってその不安定を招くような事は避けていかなければならない。こういう事を私は考えますけれど、中西教授何か有ると思いますけれど!

 

中西輝政

今のお話は非常に大きく捉えていく必要があるだろうという気がするんですね。

先程私は余り詳しく触れられなかったが、今の変動がずっと続いていくだろうと、だからそこに現われてくることはまだ今解っていないわけですね、これは解らない。先程私は

93年とか94年というようなことを言いましたが、今は何も解らないんですから、これは座って見ているしかないんだ、何もしないでおくということではやはりどうにもならない訳で、対応というのはしていかなければならない、これでいきますと私は、お前は歴史のパタ−ンに余りこだわりすぎていかんのだというご批判を戴くこともあるんですが、

これだけ大きな大変動が起こってしまうと、仮にベルリンの壁の崩れたのは1989年、というのを起点に取りますとまだ2年経っていないわけですね、あれだけ大きな大変化が起こっているわけであります。従って過去の例で考えますと例えば第2次世界大戦が終わった1945年から見まして、その後立て続けに国際情勢むしろ悪い方へエネルギ−がむくむくと出てきて、2年3年後には米ソ冷戦という方向へまいりまして、そして4、5年後には朝鮮戦争が起こって、何とか落ち着いて1段落という、ソフト・ランデイングというか、ある種の均衡点に達するだけでも、53年、つまり45年から見ますと8年くらいの長中期的期間を要しているわけであります。

これは歴史の枠組みの大変動というのは似たような期間、思いつく訳ですけれど、お前は古いパタ−ンばかりだといわれるので余り触れないですけれど、例えば第1次世界大戦が終わった後の時も1918年ベルサイユ講和条約という体制が出来ても結局安定するのは相対的安定期という言葉が初めて言われるようになったのが、1924年、5年ですから、やはり6、7年掛かっている、そういう視野というのが今必要だと思います。

そこで私が今のお話ということで言いますと、一つには非常に大きなグロ−バルな変化、しかも例えば国連とか世界の武器輸出がこれほど無秩序に行なわれている状況に対して、いやまだ新秩序が固まっていないのだから何も手を打つことは出来ないんだということ言っていられない、目の前に大変な事が起こっているわけです、結果も解っているわけですね、ただ今日の話の関係で言えば日米関係を先程のご挨拶の中にも話がありましたけれど、今後とも日米、例えば同盟体制をどうするのかという問題非常に大きな問題として上がってきており、冷戦が終わってどうするのか、こういう問題について今すぐ冷戦が終わったから根本から再検討して、これは過去の物にいたしましようと、こういう判断が出来るはずはない。従って私達、今、そういう大きな過渡期の中にあって責任を果たしていく上で、日米関係の基本的な構想、それからグロ−バルな世界、特に今後重要になるであろう地域、つまり日本にとってアジアですね、アジアを巡る今日のテ−マで申し上げますと、日米関係又後で時間があったら詳しく触れさせて戴きたいんですが、私は日米グロ−バル・パ−トナ−シップ、グロ−バルと言うと広すぎる、しかし今後の時代はグロ−バル時代であると同時にリ−ジョナル時代でもあります、そういう意味では日米アジア・パ−トナ−シップという言葉を、アジアの今後に対して日米が協力しあって大きな新しい何か仕事の方向みたいなものを考えてみたいと思っています。

 

高野 孟

奥村さん、経済の面で言いますと、EC統合が進む、北米自由貿易地域でカナダ、メキシコがアメリカと手を結ぶ、ということでそれこそ過去のパタ−ンに当てはめて世界経済全体がブロック化していくんではないかという議論がありますが、そういうことの関連で今中西さんがおっしゃった、日本のアジアとの関わり、そして又それとアメリカとの関わりという点、何か有りませんか?

 

奥村洋彦

二つの問題があるんですが、今、アメリカはカナダとかメキシコと手を組もうとしているのは事実で、かつ、かなり熱が入っていて、メキシコの人達も上の方の人達は受ける姿勢ですので、私は実現していくと思います。ただこれはアメリカが追い込まれたから手を結ばざるを得ないという面がかなり有るのではないかと、で、60年代にアメリカがヨ−ロッパへ直接投資などで入っていった時に、ヨ−ロッパの人達がどうやってアメリカに対抗しようとしたか、これはすでに25年程前に書かれたフランスのジャ−ナリストの方の書物が有るんですが、その書物の中に既に92年のEC統合をめざした動きが書いてありまして、ソフトな形でヨ−ロッパ諸国が連合して、アメリカに対抗する以外に無いと、今、日本がアメリカへ攻めていってアメリカがこれに対抗するにはやはり同じ手段と考えられますから、北米自由貿易圏構想の一つの顔は、日本などに対する対抗手段として必然的に取らざるをえないという風に考えます。もちろんもっと積極的に自由貿易という面もある訳ですが、そういうもう一つの捉え方が必要である、で、こうなりますと日本はヨ−ロッパは12ヵ国の連合体、アメリカは北米連合体に取り囲まれるわけですが、日本はアジアと手を組まない方が現段階では良いと思います。これは今日本は他国から経済的に追い込まれていないので、手を組む必要が無いというのが一つ何ですが、もう一つは日本をアジアに閉じ込めますと非常に危険な事が起きてきて、現在日本以外のアジアの国の経済力は日本と比べましてたったの6割程度しかないんです。こういった国へ現在世界1の対外純資産4千億ドル、ざっと5、60兆円を持っている日本がアジアにジャパン・マネ−を大量に出しますと、どうしても日本帝国主義的なことが起きかねないんですから、私は余り日本とアジアという風には現在結びつけて考えなくて、むしろ日本は世界全体と結びつけてイニシチャブを取っていくべきだと、それが一番アメリカを救ける方法だと思います。中西教授のおっしゃったのはグロ−バルな視点で日米が手を組んでアジアとの関わりを探ろうということですので、大東亜共栄圏的な発想ではないわけですから、私の申し上げる事とそんなに大きな対立していないと思いますが、私は敢えてアジアの中の日本という考え方はこの際取らない方がいいという事を申し上げたいと思います。

 

高野 孟

神尾さん、ビジネスの側から見ていろんな産業分野について違うと思いますが、とにかくアメリカはうるさくてしょうがない、もう一回アジアに戻るんだということを考えている、そういう投資戦略を考えている所も有ると思うが、その辺はどうご覧になりますか?

 

神尾秀雄

やはりアメリカが基軸になると思いますね、だけど今おっしゃったようにアジアですね、NEACEというんですか、ASEAN諸国ですね、我々は決して軽視してはいけないと思います。これは非常に重要な我々の友達でありまして、そして傷付きやすいという気持ちが常にあります、だからその気持ちを我々は汲みながら、我々が国内で考えている以上に、海外で考えられている日本の経済力ですね、これを近い東南アジア、開発途上国という言葉を使っていいかどうか解りませんが、そういう国へやはり貢献していくべきだと考えております。

 

高野 孟

日本のアメリカ進出について、或る日気が付いたら買われていたと、日本はどうするつもりだと、ロックフエラ−・センタ−・ビルを壊すのかと、更地にして転売するんじゃないかとか、いろんなこと、要するに何の為に、ニュ−ヨ−クの町作りに参加したいから三菱グル−プはあれを買ったのだというメッセイジが届いていないですね、ニュ−ヨ−ク市民に、そういうことは全部有るんではないですか?いろんなケ−スに!

 

渡辺泰造

私は今高野さんの言った事にほとんど賛成なんですが、ちょっと奇異に聞こえるかも知れませんが、日本人がもっと話し、意見を言うべきだと、顔を出して、自分の責任において対外的に発言する人が少なすぎる。従って誰が言うとあれが日本人の意見だということになってしまって、日本の中にも多様な意見がある、日本ではこういう議論が行なわれているということがもっともっと、どちらかというとこのようなことはマスコミの世界でこう描写されているだけであって、実際いろんな方が行って、いろんな議論をしているんですね。そういう意味ではまず日本の新聞にいろんな所で日本の方が話ししているということを是非書いてもらいたいし、同時にもっとそれだけでは足りないんで、もっと日本人の方が言ってもらいたい。で、その時に私の気持ちとしては日本で通用している議論が外国との間ではギャップがあるという事を申し上げたのは、ちょっと誤解があるのでもう少し敷衍しなくちゃいけないんですけれども、国際情勢に対しての基本的な物の考え方、これがもう少し世界的な物の考え方になれば、日本の中で通用している価値基準をもっと外国の中で議論するようになればもっといいんではないかと。国際的にはそれぞれが国益の追求という視点もありますけれど、何か世界全体の為、パブリックに尽くすという面もある訳で、日本の国内ではパブリックに尽くすということは日本国民は皆解っておられると思うんです、ところが国際的にやるとなると何かアメリカの為にやるとか、ソ連の為にやらないとか、そういう事があって、世界全体の為に尽くすということが何かその辺ちょっと遠退いてしまう。もう少し世界というものを自分の物としてやった方がいいんではないか。国際貢献ということを皆さん言う、貢献というと誰かに貢ぐということで誰に貢ぐんだ、

 

高野 孟

そうですね国際貢献という言葉は今おっしゃったようによく解らない言葉なんですが、これは何となく脅迫観念ですね、我々日本人にとって、何かしなければならないということの延長でPKOというのが出てきているんですが、PKOの議論というのは国連の現状を固定しておいて、それに参加する、しないということを言っていても始まらないんではないかという気がしているんですが、これは外務省のスタンスとは違うと思うんですが、戦後、世界第二次大戦の戦後処理機関として5大戦勝国による安保常任理事会というものが、非常に大きな権限を持っているという今の国連の有り様のなかで、それをそのままにしておいて参加するとかしないとか、じゃあどの程度迄か、という議論ということではなくて、むしろ冷戦が終わったという段階で第一次大戦後の国際連盟、そして戦後の国際連合、第三の国連みたいな物を日本はイメ−ジを出して、そういうこの国際的な議論を始めていく、そういう中で新しい国際警察軍でも何でもいいんですけれど、そういう物が、有り様というものも議論して、それに加わっていくという事の方が本当は筋じゃないかと思うんですが、日本の外交を巡る問題、グロ−バルな所から日米のギャップを埋めるのはどうするのかといういろんな話が出てきているわけですが、この所外交の一元化ということが言われて、これはいろんな意味合いで言われていると思うんですが、一つの切っ掛けは行革審で外交を、言うなれば行革審の立場というのは内閣といいますか、総理大臣のもとで各省庁に跨がって色々対外的な活動がある、それを統括しようという主旨ですね、これについては外務省どういう風にご覧になっていますか?

 

渡辺泰造

これは非常に大きな問題で、やはり外交というものが一元化しなかった場合にどういうことが起きたかということを、まず歴史のなかで考えておいたほうがいいと、まあそういう意味での典型的な例は、大権というものが軍部にあると、或いは統帥大典という形で独立した存在であるということで、外交と離れてそういう政策が遂行された結果、日本自身に外交は一貫性が無くなったと見られた事が有る訳で、そういう極端な例を待たなくてもやはり我々が外交をやっていて、さっき言った事と多少関連するんですが、一部では非常にうまくいき、でも他ではうまくいかないという時に、うまくいく方といかない方でバ−ゲンをして相互的な見地から日本全体の国益を追求する、これはどこの国でもやっている外交の常套手段、その意味では基本的な政策の方向、交渉の方向付けというものを一元化しとかなければならない、その観点からの議論が出るわけですけれど、反論としてはこのように専門化し、相当に幅広い問題というものが外交ということで議論されている時に、一つの省庁でそれを全部纏める事が可能ですか、という議論が出てくる。全くその通りで、外務省が今やろうとしている外交一元化というのは、何が何でも外務省が全部の当事者になれというのではなく、行なわれている交渉の一番大事な点を緊密に連絡し、それに対する外交上の判断があった場合には、それを実際の分野における専門分野での交渉に反映できる体制、これを何らかの形で作るべきだと、これがいろんな所で無視されているため、潜在的に損をしている例が、損をしている例を表立って言うこと自体日本にとって得策ではないんですけれども有る。そういう意味では日本全体の国益、さっきも申し上げました全国区の見地から、地方区利益で行なわれていることを調整していくべきだと、でそれを今の現状で内閣というところで纏めていこうではないかと、こういうのが行革審の一部にありますけれども、現実に今内閣というところで纏めて、それが実際に実務として下ろされるのがどうしても各省より集めのグル−プということになってしまって、そこで何が行なわれるかということはもう少し現実的に考えていかなければならない。まあ内閣で決めるにしても、もう少し根回し、下拵えというか、それは一つの省庁で総合的な調整というものを行なわなければ現実に不可能だというのが今の外務省の反論だろうと思います。

その際にこれが各省の権益の争いという風に見られてしまうということが非常に残念な事だと思います。そういう意味で総合調整を内閣がやるということは反対しない。その下拵えを外務省がやらないと現実に今出来ない。だから今外交一元化ということで行革審は現実的な見方をしてほしい、これが我々の見方だと思います。 

 

高野 孟

一元化しないのは一つは自民党のやる外交というのが問題ですね、小澤前幹事長のモスクワ訪問なんてのは、僕は大失敗だと思っています。今日はその議論ではないので、却ってゴルバチョフが北方領土で妥協しにくくなる様にしただけだ、というとんでもないド素人外交だったと思います。外務省は全然関係ないという、誠に不思議な外交多元化が日本では起こっているわけであります。又経済、ビジネスという所からご覧になって日本の外交の一元化といいますか、一元的であるべきか、もっと多元的であるべきだという議論もあると思いますがその辺如何ですか?  

 

奥村洋彦

私はこういう場に出たこと有りませんので分かりませんが、金融政策とか、景気政策とか、構造問題とか、いろんな次元の事があると思いますが、時々大蔵省と日本銀行が意見が違うとか、運輸省とその他の官庁で意見が違う事があります。これはどこの国でもありまして、アメリカが日本に対して交渉してくる時に、ある時アメリカの商務省の交渉団の方と合って、アメリカの取っている金融政策と全く矛盾することを言うんですね、あなたはワシントンでアメリカの中央銀行とまず自ら調整していらっしゃいよといいますと、中央銀行の取っていることは我々はしらん、とこう言うことですから、まあ何処の国でも似た事は有ると思います。私はただ経済外交の時に一番のポイントは今の一元化の話よりはむしろ日本がイニシチャブを取れるように情報戦争で勝つという事だと思います。

日本は勿論軍事で勝つということは選択しない方がいいと思いますので、しかしイニシチャブを取ろうとしたら武器がいる、国際外交舞台でイニシチャブを取るために必要な武器とは徹底的な人的情報です。で、日本がアジアに強いと言う意見もあるんですが、例えばソウルのせいが台、大統領府に行ったら、日本の事を考える人達も全部アメリカ情報、英語で囲まれた部屋で仕事をしていますからね、台平に行こうが、マニラに行こうが、シンガポ−ルに行こうが皆同じなんですね、こういう中でやはり日本がイニシチャブを取って外交をやれといっても誰が総理大臣、誰が外務大臣になっても無理だと思います。そうすると世界の人的ネット・ワ−クを張り巡らすような努力を今からやっておきませんと、何方がトップに立つてもイニシチャブが取れません。ですから日本がイニシチャブを取らないからアメリカから結構馬鹿にされている面があるんですが、

じゃあ取ろうとしたらしばらく時間を掛けて世界に人脈を張らないと無理だということを申し上げておきたいと思います。

 

田中秀佳

神尾さんは如何でしょうか?実際に海外に出て、工場進出された具体的なお仕事をされている上で、この情報に勝つと言いましょうか、そういう部分で外交をどんな風にお考えでしょうか?

 

神尾秀雄

この外交の場合は、今おっしゃった縦割りの組織が非常に災いしているところがあるんですけれども、それではどうしたらいいんだという事を今行革審でなさっていると思うんですけれど、中々難しいと思います。アメリカのように国務省というような、各省庁の上に立っているようなもの、それから大統領府というように非常に大きな権限を持って外交の一元化を進められるような情勢になっておりませんので非常に難しい問題が有ると思いますが。やはり情報の収集能力も欠けておると思います。だから情報を収集するためには人と金をもっとうんと使わないといけないと思います。それから政治、経済、社会というあらゆる面で問題が大きな広がりを持ってきておりますので、各省庁間、党、政府間の調整を図って、終始一貫して国益を反映できるようなキイ的な仕組みを早急に構築すべきだと思います。

 

高野 孟

私、アメリカの友人なんかと時々そういう話をするんですが、日本はもっと進出している日本の企業の、アメリカに進出している日本の企業は地元で名士なんだと、それこそ工場長はその州出身の議員さんとか、知事さんとか、電話一本で話が出来る、人によっては違うかも知れませんが、そのくらい進出した時は大歓迎して、議員も来て、知事も来て、オ−プニングなんかやるわけです。そういう関係というものをどうして議会対策に、対策というのは語弊があるかもしれないが、議会とのコミニケ−ションに使わないのかというアドバイスというか、意見を何人もから聴いている。

アメリカの国会議員というのはすごく地元に弱いということもあるし、そういうことだって外交の一部じゃないかということをよく言われるんですが、その辺如何ですか?

 

神尾秀雄

全くその通りだと思います。これは渡辺さんよくご存じだと思いますが、我々は我々なりの情報網持っておりますし、まあ情報だけでなしに付き合い、交際の中で心許し合えるというのは限度がありますが、ある程度近付ける友人というものを作る必要があると思います。

 

田中秀佳

中西さんはどうでしょう!長年海外で勉強されてその中で目のあたりにされた事が可成沢山有るんではないでしょうか? 

 

中西輝政

今、情報の問題とか、所謂人事ポストの問題といった形で問題出てきておりますが、私はやはり日本外交、外から見ておりましても、内から見ておりましても、内からというのは日本の中でですね見ておりましても、やはり私は政策の問題では外務省の、例えば日ソ外交とか、湾岸戦争を巡るいろんな政策の問題では意見が一致するということは余り無いんですが、この問題に関してはすでに行革審が今出だしておるような日本外交改革的な考え方というものは国際的な常識に反していると、むしろ、敢えて申し上げたいと思います。これはどういうことかというと一つはやはり外務省の中で、外務省だけが一つの外交の窓口になって外国と交渉する、所謂外交の一元化という考え方、交渉の一元化ですね、ところがこれを各省庁が独自に外交チャンネルを持って交渉していくというようなアイデアが出ていますね、これは私なんかが学んできた、或いは外で見ておりましてもこういうことをシステムとして取り入れている国は無いわけですね、こんなことをやると日本が、日本の窓口は何処だということで国際社会に大きな混乱を逆に引き起こす可能性すら有るわけですね、これは内閣で一元化するといっても出先がばらばらになってしまう、この戦術的なレベルといいますか、日常的なレベルでの混乱を引き起こす可能性があると思います。だから対外担当の閣僚を二人置くということも、なんか世界の流れに逆行する。かってイギリスで外務省は北省と南省と二つに別れておりまして、外務大臣が二人居た時代があるんですね、これは政治プロセスが余り近代化しなかった、歴史的に随分古い時代の話で、そういう事が今の時代に出くるのが不思議でございますが、三つめに行革審の問題では私なりに感じているのはやはり情報の問題も外務省自身改革していただかなければならない問題も沢山ございますが、人員の定員の問題ですね、定員の問題を合理化の、行政改革という手前止むを得ないかも知れませんが、これだけ日本国民の外交に対する関心、それから国際社会や役割を果たして欲しいと、大きな役割を果たしてほしいという、そういう日本国民の願望から言って、むしろ定員削減という方向はどちらかというと180度反対の方向に私には感じられまして、政策の問題ではいろいろ外務省に対して注文といいますか、異論は有るんですけれど、この問題についてはやはり外務省がなさっている反論、これはやはり合理的な反論だという風に私には思えます。

 

田中秀佳

さていろんな問題を出されて、又具体的な解決策、ある程度、提案がなされた訳ですけれど、そろそろ今日のパネル・デイスカッションを纏めて戴きましょう。

 

高野 孟

今、最後の方で外交の一元化ということについては皆さんそれぞれなりの言い方で強調されましたが、やはり情報というところが一番ポイントなんだろうと私も思います。

単に外交が一元化していないとか何とか言う以前に、最初でもちらりと申し上げましたけれど国としてのインテリジェンスの機能が確立していないということが一番の問題だろうと思います。

日本に居ると同じ情報という言葉になってしまいますが、情報にはインフオメ−ションとインテリジェンスというものが御座いまして、インフオメ−ションというのは普通マスコミが使っている、何が何処でどうしたというような類の第一次情報でありますけれど、それを集約しながら一つの煮詰められた情報に、要らないところを全部捨てて、インフオメ−ションというのは沢山集めるところに価値があるんですけれど、インテリジェンスというのは捨てる、捨て方に価値があるんですね、そしてアメリカのCIAという国家機関は毎日8時に、たったタイプ用紙一枚か二枚に集約された、昨日世界はこうなった、今日大統領が考えるベき事、決断すべき点は、このポイントだというような類の事を書いた紙を一枚か二枚届けるんだそうですが、そこまで集約された、そして将来に向かって決断に必要な情報というのはこれはインテリジェンスで、やはり外交がどうしたという以前に国としてのインテリジェンスの機能が殆ど整ってないというところにむしろ根本的な問題が有るんじゃなかろうかいう気が私はしております。  

そして情報さえそういう意味できちんと集約されているような、情報の一元化、インテリジェンスの一元化ということが実現していれば、現実には誰がどういう動きをしようと、お前が言っちゃいけないとか、そういうやり方をする事もないんじゃないかと思います。今日は沢山の問題点が出て、とてもこの時間の中では一つ一つの問題が全部問題提起みたいな事でして、結論とか、はこうだとかいう風に行かないと思います。最初に渡辺報道官が基調講演の中でおっしゃっていましたように、やはり日米の間の実態が必ずしもそうでないのに感情的な対立がどんどん広がっていってしまう、という状況というのは決して放置できない。まして今年の秋といいますか、12月にはパ−ル・ハ−バ−50周年という、割と不気味なタイミングもやってくる。丁度その時期から来年にかけてアメリカは又選挙の時期に入って、いろんな悪いことが重なっていきそうな予感がするような時期にさしかかっていると思いますが、又片一方、米の問題なんかはそういう事に積極的な発言をした自民党のリ−ダ−の大物が右翼から脅迫されるというような状況も最近はある様です。

そういうことを巡って又それは合理的な判断を越えてアメリカはけしからん、米に手を触れることは何事かというような、とんでもない反応というのも日本国内で生まれかねないという、その辺が悪い方へ悪い方へ増幅していくということを何としても回避する、その知恵が求められている。知恵というのも又英語にいたしますとインテリジェンスであります。

        

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