ふらふら 日記


■ 4月30日(日) 小樽赤岩 曇りのち雨

 舗装道路がダートになるころには道路の両側は完全に白くなった。 50cmくらいは雪が残っており、雪解け水がジャブジャブと路上を流れている。 少し進んだ所が小樽の赤岩の駐車場だった。 日本海が見下ろせる高台で、はんぶん雪に埋もれた遊歩道が海に向かって下っている。 海以外の三方向は雪で真っ白だ。 ちょうど雪上ハイクの団体さんが林の向こうから降りてきた。 皆さんスパッツにヤッケといういでたちだ。 周囲は完全に冬の景色だ。
 「こんなところで登れるのだろうか?」

 朝二番の相鉄線の電車に乗り、羽田から飛行機で千歳に着いた。 レンタカーを借り、EPIのガスを買いたいというKさんの希望で札幌の山のお店に寄ってから小樽までやってきた。 途中、何かの開店祝いに飾られている生花におばさんたちが群がっているのが見えた。 名古屋のように札幌も「花ドロボー」の土地柄なのだろうか?  小樽の赤岩の駐車場に着いたのは13時過ぎだった。

 せっかく来たので、とりあえず岩場まで行ってみることにする。 トポを見ると、アプローチは上からと下からの二つがあるようだ。 上からのアプローチは雪に埋まっていてわかりそうにない。 遊歩道をたどりながら海に向かって降りていく。 しばらくは土が出ていたけれど、途中からはほとんど雪の上を歩くようになった。 岩塔を登っているクライマーが一組だけ見えた。 目指す西壁らしき岩が見えてきたけれど、アプローチは完全に雪の中に埋もれている。 よくわからないので、結局、雪の斜面を直登することになった。 スニーカーでキック・ステップし、雪の少ない尾根状の部分を潅木をつかみながら這い上がり、ゼーゼーいいながらようやく壁の下に到着した。 壁の状態はまあまあだけど、アプローチがこれでは・・・。

 汗でグショグショになったTシャツを脱ぐと、雪の斜面を海から吹き上がってくる風が冷たい。 フェリーが眼下の灰色の海をねむたそうに横切っていく。

 天気予報は夕方から雨だと言っていた。 「アジアン・ビート 10c」をフラッシュしたころには雨が降り始めた。 一本だけでも登れてよかったと思わないといけないのだろう。

 壁づたいに左側に上っていくとフィックス・ロープがあった。 ここが上からのアプローチの場所のようだ。 駐車場までは雪上ハイク10分ほどだった。

 赤岩を登るには一ヶ月くらい早すぎたようだ。 スパイクのついた長靴などでアプローチがこなせられれば岩は登れる状態だったけど、 雪解け水で駐車場もグショグショの所が多く快適なキャンプは望めそうにない。

 赤岩をあとにして国道を洞爺湖方面へ向かった。 残雪で真っ白の後方羊諦山が大きく見えた。 途中の道の駅にでも泊まろうかと考えていたけれど、冷え込んでとても寒い。 洞爺湖の周りにはキャンプ場も沢山あるようなので、そこまで車を走らせる。 洞爺湖へ下り始めるあたりからは雪もなくなってきた。 小樽あたりよりは季節がひと月くらいは進んでいるようだ。

 水の駅近くのキャンプ場に行くと、テントが見えた。 湖畔の快適なキャンプ場だった。 ここにテントを張って寝た。 今日は長い一日だった。 夜中に雨が激しく降った。

■ 5月1日(月) 義経岩から青厳峡 朝は曇り、のち雨

 朝になって雨は一時的にやんだ。 キャンプ場の近くを少し散歩した。 水洗トイレや水場、ゴミ・ステーションもあり、洞爺湖のほとりのなかなかよいキャンプ場だ。 軽自動車に乗ったおばさんがキャンプ代金の徴収に来た。 一人500円だった。

 テントを撤収し義経岩を見物に行く。 岩場へ登る道が荒れていてわだちも深い。 また雨が降ってきた。 こじんまりとしたところで、岩は有笠に似ていると思った。 乾けば一日は十分に遊べそうな感じだけれど、今日は完全にびしょびしょで登れる状態ではない。

 青厳峡へ向かう。 伊達市から高速道路に乗る。 途中で千歳を通過し、夕張方面へ行く。 昨日千歳に着いて、千歳、札幌、小樽、洞爺湖、また千歳とぐるりと一周したことになる。 福山からの道が通行止めなので日高町経由で占冠から青厳峡へ行く。 だんだんと雨が強くなり、周りにはまた残雪が目立つようになってきた。 日高の沙流川キャンプ場を見てから青厳峡へ向かう。

 道路工事で道がなくなっている手前の所に駐車し、歩いていくとすぐに岩場だった。 工事のためにかなり景観が変わっているようだ。 測量や調査をしたらしく、木の杭がたくさん立っている。 道路に近い岩は乾けば問題なく登れそうだ。 しかし、それより奥の岩は雪の残っている斜面を登っていかないと取り付けない。 取り付きも雪の上で、壁もかなり濡れている。 とにかく雨がやんで天気が回復してくれないとどうしようもない。 雪の中を歩き回ったためにスニーカーはまたしてもグチョグチョになってしまった。 長靴が必要だ。

 車にもどり、ニニウのキャンプ場に向かった。 しかし、途中で通行止めだった。 日高町の沙流川キャンプ場に泊まることにする。 芝生の広場の水はけがよさそうな所にテントを張った。 料金は、計算方法がよく理解できなかったのだが、だいたい一日一人500円くらいだった。 オートキャンプとバンガローもあった。 キレイな水洗トイレや水場があり快適なところだった。

 日高町にはAコープとコンビニがある。 Aコープでゴムの長靴を買った。 Aコープは18:30までで、コンビニはたぶん24時間だと思う。

 キャンプ場の向かいにある温泉施設で15時から日帰り入浴を受け付けている。 スキー場に併設されている旅館のような所で、一人500円だった。 広くてのんびりくつろげる温泉だった。 テントで夕飯を食べて寝た。
 「このままずっと雨だったら何しに来たのかわからないな。」

■ 5月2日(火) 青厳峡 晴れ後曇り

 今日はなんとか晴れた。 朝、キャンプ場の近くの沙流川の土手を散歩した。 ふきのとうがたくさん咲いている。 川は雪解け水と雨で増水しゴーゴー流れている。 山には雪が見える。 下流の方から二羽の白鳥が突然飛んできて、大きな羽音に驚かされた。

 昨日買ったゴム長靴をはいて青厳峡へ行く。 濡れているルートが多いけれど、選べば登れそうだ。 とても寒いが、とりあえず登れるルートがあって嬉しい。

ニンジン(5.9 ★)OSm
 ガバ連続のやさしいフェイスでアップによい。 名前の通り岩は赤い。
馬鹿にするぜ(10a)OSm
 でだしがポイントでしょう。 あとはガバでやさしい。 上部がかなり濡れていた。
ネギ坊主ダイレクト(10d ★)2回目でRP
 上部の壁のホールド・ファインディングがポイントでしょう。 わかってしまえば比較的やさしいと思う。
ジェロニモ(11a ★★)2回目でRP
 中間部のテラスからカンテをへて左上していくガバの多いややかぶたルート。 核心は短い。 少し濡れていたけれど登れてよかった。
マスコ・ダ・ガバ(5.9)OSm
 指の痛いカチ系の垂直フェイス。 あまり登られていないようで少し汚かった。
玉ネギ(5.8)OSm
 ガバのフェイスだけれど、ボルトもホールドも遠い。

 午後から工事のおじさんが二人きただけで一日中貸切状態だった。 青厳峡を登るには少し時期が早いのかもしれない? 

 最初は「登れるだけでも満足です」という気分だった。 しかし、午後になると日が陰ってきて、真冬のワイルド・ボア・ゴージのように寒くなり、 「もう少しだけ暖かいといいのに」と思ってしまった。

 夜、Kさんは後から合流する奥さんを迎えに占冠まで出かけていった。

■ 5月3日(水) 青厳峡 快晴

 気持ちよく晴れた。 けさは昨日よりも暖かく感じられる。 キャンプ場から街へ行くのと反対方向に散歩に出たけれど、興味を引くようなものにはめぐりあわなかった。

 Kさんの奥さんが合流したので今日は三人でクライミングに向かう。 日高町の信号を左に曲がり国道へ入ると昨日までとは景色が一変していた。 まるで違う街に来たようだ。

 車も人もまばらだったのに、今日は道路には車がつらなり、道の駅やコンビニの駐車場には車があふれ、コンビニのトイレには壁に沿ってL字型の待ち行列ができていた。 ゴールデン・ウイークなのだった。

 コンビニでパンとココアを買った。 トイレは混んでいたけれど、レジはすいていて助かった。

玉ネギ(5.8)RPm
 アップに登った。 昨日の方がうまくのぼれたような?
人気ルートだぜ(10a)OSm
 二本目のボルトへは左からでも、直上したあと右からトラバースでもどちらでも登れるようだ。 上部はガバで快適。
爆発するぜ(11c)2x
 今の私の体調ではできる見込みがないと判断して二回でやめた。 かぶったガバの楽しいルートでした。 Kさんはちゃんと登っていた。
ワンダー・ガール(11a)OSm
 右のクラックを使わないという限定があるそうです。 私はクラックは使わなかったけれど、クラックの上のガバは使いました。 ガバ連続のルートで、限定が気にならなければ楽しめると思います。

 私達以外にも数パーティやってきた。 比較的暖かく、空気も乾燥し、壁も乾いている所が多くなって良いコンディションだった。 雪解けもだんだんと進んでいるようだった。

 クライミングの後、いつものように日高のAコープに寄った。 買い物をして、Aコープの前の屋台であんこの入った大判焼きを買った。

 「何やさん? いつもレンタカーで買い物にくるけど」とおじさんに聞かれた。

 同じ所に車をとめて毎日買い物にくるのでチェックされていたようだ。 長靴をはいて汚い格好をして、ほとんど地元の工事現場のおじさんと同じなので不思議に思われていたのかもしれない。

 「キャンプ場に泊まって遊びに来ているんですよ」と答えておいた。

 大判焼きは95万円だそうだ。 100円出したら、おつりは5万円とおじさんは言っていた。

 キャンプ場の向かいの温泉でのんびりした。 畳のひいてある所にあがりこんでストレッチもしてしまった。

■ 5月4日(木) 青厳峡 晴れ

 天気予報によれば、今日まで良い天候で明日は雨ということだ。 三日連続になるけれど今日も登って明日をレストという予定にする。

ニンジン(5.9 ★)RPm
 ガバなのでアップによい。 ボルトもケミカルで安心。
裏切り(10b)OSm
 カンテを登る。 最初と、テラスからの出だしでまごついてしまった。
ワンダー・ボーイ(11b)3x
 最後が少し難しい。 一生懸命やったけれど今の私では登れなかった。 三日連続のせい?

 朝は昨日よりも冷え込んだけれど、昼間は暖かく壁のコンディションも日に日に良くなっていくようだ。 今日も数パーティの人出だった。 岩場の下の道路は工事のために通行止で車が通らない。 道の真ん中に荷物を広げ、ゴロリと寝転んで空を見たりしていた。

 工事は今は中断しているけれど、大きな橋をかけたりするような本格的なもののようで、再開されたら登れなくなる岩もでてきそうだ。 道路に近い岩塔などは撤去の対象になるかもしれないという話らしい。

 救急車のサイレンが聞こえてきた。 工事現場やクライミングの事故ではなくラフティングの事故らしかった。 ゴールデンウイークでお客さんも多いらしい。 雪解け水で川は増水しゴーゴー音をたてて流れているので素人目にはかなり危険に見えるけれど、もともとラフティングは危険なものだからスリルがあってよいのだろうか?  クライミングだって同じようなものかもしれないけれど・・・。

 岩場からは対岸のトンネル工事現場が見える。 その前の道路を救急車が占冠方面へ走っていった。 しばらくすると何台かの車が連なって同じ方向に向かっていった。 その中にはラフティングに使うようなボートを数隻重ねて荷台に積んだトラックもあった。

 Kさんは「天国列車 12b」をRPしていた。 さすがだった。 明日のレストの後は別の岩場へ移動しようという気持ちになった。

■ 5月5日(金) レスト、洞爺湖へ移動 雨後曇り

 まだ曇りだったので、朝食の後にカメラを持っていつもどおり散歩にでかけた。 今日はレストなので時間はたくさんある。 Kさんたちは富良野へ行くそうだ。 私はこの辺をぶらぶらして過ごすことにした。 コンビニで文庫本を買って帰ってくるころには雨がつよく降り始めた。

 テントの中で綿矢りさの『インストール』を読んだ。 雨がフライを打つ音しかしないので、いつもは本を読むのに時間がかかる私でも、二時間ほどで読み終えてしまった。

 雨も小降りになってきたので、町の図書館へいってみた。 着いた時にはカウンターの奥にいた係員の他には誰もおらず、シーンと静まりかえっていた。 「パソコンなどが置いてあってインターネットにアクセスできるかもしれない」という期待を少しは持っていたが、本以外のものはないようだった。 自分では買えない大きな写真集などをのんびりと見た。

 そのうち地元の中学生と思しき子供達が数人やってきて、ケータイをいじりながらベチャベチャとしゃべり始めた。 どこでも同じようなものだと思った。 おしゃべりにも飽きたのか、一時間ほどで彼らは雨の中を傘もささずに歩いて去っていった。 再び、雨の音しか聞こえないくらい静かになった。

 15時頃にキャンプ場にもどるとKさん達はもう帰っていた。 車を借りて一人で温泉に入ったあと、テントの撤収にかかる。 撤収中は雨があまり激しくなくてたすかった。 私の運転で洞爺湖へ向かった。

 私達が千歳空港のトヨタレンタカーで借りた車は「カローラ」だった。 予約のとき、もう一つ小さいクラスの車(ビッツなど)をKさんは探したそうだけれど、すでになかったそうだ。 借りたときは正直言って「なんだ、カローラか」といささかがっかりしたのだけれど、実際に何度か運転してみると、移動の手段としては悪くなかった。

 4WDでスタッドレス・タイヤをはいておりカーナビが付いていた。 義経岩へのアプローチは荒れていたので4WDのおかげで助かった。 知らない都市の市街地を走るのにカーナビは便利だった。 高速道路を走るときに横風がふくと少しふらふらするのが気になったくらいだ。

 私が北海道をドライブしていて感じたのは、なんかアメリカみたいということだった。 広い田舎道をずーっと走っていって街が近づいてくると制限速度が遅くなる。 街を過ぎると制限速度が速くなり、建物のほとんどない自然の中の田舎道を再び走り始める。 そんなにスピードを出していないつもりでも、メーターを見ると80kmくらいはでている。 市街地以外には信号もほとんどないので、カーナビの予想時間どおりに目的地に到着する。

 伊達市内で給油と買い物を済ませ、キャンプ場へ向かう。 前回よりもテントがたくさん張ってあった。

■ 5月6日(土) 義経岩、帰宅 晴れ

 フライを一部あけ、頭だけテントからだして外の様子をうかがうと、すごい霧が出ていた。 がまんできなくなり、5時過ぎにカメラを持って1時間ほどウロウロした。 写欲を満たしてからまた少し眠った。 テントを撤収するころには快晴になった。

 今日は登らないKさんの奥さんを洞爺湖温泉街で降ろし、二人で義経岩へ向かう。 義経岩は洞爺湖を見下ろす高台にあって景色がすばらしい。 昭和新山と有珠山が見え、洞爺湖に浮かぶ島の影が湖面に映っている。 快晴でよい天気だけれど、昨日の雨の影響でまだ濡れている部分があり、ポタポタとしずくが落ちている所もある。

南中央(10a ★)OSm
 壁の真ん中を登るルート。 中間部が濡れていて登りにくかった。 乾いていればアップによさそうなルートでした。
ブラック・ホール(10b)OSm
 少しかぶった短いガバのルート。 素直で登りやすかった。
オレンジつぶつぶ(11a)2回目でRP
 下部が少し難しい。 チョークのついている大きなホールドが動いていて怖い。 上部は左のルートと同じでいいのかな?
大山崎ひとみ(11b ★)2回目でRP
 「南中央」のバリエーション。 左にトラバースしてハングをダイレクトに越えていく。 ホールド・ファインディングがポイントか?  終了点がアイボルトだったので、「南中央」の終了点にいってから降りた。
大人の日(11b ★)FL
 ガバのカンテのライン。 義経岩全体に言えることだけれど、もろくて岩がいつ落ちてきてもおかしくない。 ビレイヤーも含めて下にいる人は注意が必要です。 このルートからも大きな石が落ちました。
ならの木(10a ★)FL
 最初がポイントでしょう。 あとはぐいぐいカンテを登ります。 終了点からの眺めが良かった。

 ボルトは古いものが多くチェックが必要かもしれないと感じた。 (ゴールデンウィークの後、終了点や一部のボルトの打ち変え作業が行われたそうです。)

 壁はだんだんと乾いてきて、時間がたつにつれてよい状態になってきた。 高校生の山岳部の生徒や先生(?)とその子供達みたいな団体さんがいて賑やかだった。 汗ばむほどの陽気で、荷物を広げてテントやフライをカリカリに乾かした。 暖かいせいか、テントウ虫やカメ虫も大量にウヨウヨしていた。

 16時前にはクライミングを終えた。 近くのキャンプ場の隣にあったログハウス風の風呂に入った。 380円で普通だった。 Kさんの奥さんともここで合流し、千歳空港へ向かった。 レンタカーを返し、飛行機にチェックインした後、三人でビールを飲みながら夕食。 あっというまに時間がたち、21時前に店を出た。 空港のレストランやお土産屋さんはほとんどが21時にしまってしまうようだ。

 21:45の飛行機で羽田へ。 羽田からは乗り継ぐ電車がどれも最終だった。 横浜から「かしわ台」行きの電車に乗り、終点で降りて家まで歩いて帰った。 1時半くらいだった。

 次の日、右のわき腹のあたりが赤くかぶれて痒くなった。 義経岩でウルシか何かにやられたらしい。 なおるのに一週間くらいかかった。

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Copyright 2006 Hirosawa Makoto