Welldone

 

「本当にすまん・・・迷惑をかけた」

「牛騒ぎ」の翌日、ギロロはもう一度私に頭を下げに来た。

「いいわよ、別に。アンタだって好きで牛になったわけじゃなし」
「だが、おまえを危険な目に遭わせてしまった」

侵略者のくせに、律儀なヤツ。
だから私は、どこかでこいつを信用しているのかもしれない。

ずっと心にひっかかっていた疑問が、ぽろりとこぼれ落ちる。

「・・・アンタ、侵略しなくていいの?」

ギロロは一瞬、呆気にとられたように目を見開いた。

「侵略していいのか?」
「ダメに決まってるじゃない」
「は!・・・だよな。だが侵略はさせてもらう」

本当に?こいつにそれができるの?



―――不思議だ・・・お前になら喰われてもいい・・・。



鮮やかによみがえる、牛になったギロロの言葉。

あの時、思ったのだ。
圧倒的な科学力を持つボケガエル達がこの星をいまだに侵略できないのは・・・
少なくとも、こいつが侵略の手を最後の瞬間ゆるめてしまうのは・・・

私のせい、かもしれない。

「・・・ごめんね、ギロロ」

ギロロが不思議そうに首をかしげる。

「夏美・・・? 何故、おまえが謝る?」
「何となくよ」

そのまま彼をひょいと膝に乗せ、抱きしめた。

「なっ、なな、何をする?!」
「別にいいでしょ、取って喰いやしないわよ・・・・あ」

喰われても、いいんだっけ。

「なっ、何をっ、はなっ・・・はなせ、夏美・・・おいっ!?」

目を白黒させながら、あわあわと言葉にならない言葉で訴え続けるギロロ。
これ以上、抗議の声を聞くのも面倒くさくなって、その口をふさいでやった。

顔が近付いていく間の、不思議なものを見るような表情。ああ、あの時と同じだ。



―――お前はいったい・・・俺の何だ?



こっちが聞きたいわよ。アンタ、私の何なの?

唇が離れた瞬間、ボン!と音がして。
いつもの100倍も赤くなったギロロは、プスプスと煙を出して動かなくなった。

「・・・あらやだ、ウェルダン」

やりすぎたかしら?
意識のないギロロを指でつつく。反応なし。

「ミディアムレアくらいには意識が残ってないと、食べにくいわよ。・・・ばか」



FIN

 


けろっとさんばなー
お気楽ケロッ!と生活/けろっと 様