不老不死

ドイツにペリーローダンシリーズというSF(サイエンスフィクション)の連作シリーズがあり、日本でも月に348巻目が発行された。

これはドイツで企画され、初刊は、1961年、複数の作家が、メドレー方式で書きついで行くというもので、週刊誌として続いている。

日本では、1971年に、ドイツの2冊分をまとめて、1巻としてハヤカワSF文庫から発行されてきた。本家のドイツでは、すでに、3000巻に近付いているだろう。
 45年以上続く、世界最長、最大のフィクションである。
             
                   
                                        
小生も日本語版を創刊以来読んでいるが、内容的には、いささかマンネリ、ご都合主義になっているのはやむをえない。
このような連作では、寿命が長い小説やアニメは、日本でも、ゴルゴ13、サザエさん、こちら亀有公園前派出所、ドラえもんなど、色々なものがある。

 このような日本発の連作とペリーローダンの違いは、二つあると思う。
一つは、ペリーローダン他の主な登場人物が、「細胞活性化装置」なるものを、手に入れて、不老不死であること。
もう一つは、作家が大勢いて、さまざまなアイデアを出し、書きついで行っていることである。

主人公が不老不死であれば、如何に広い宇宙空間でも、如何に長い時間でも、自由に活躍させることができる。また、作家が複数であれば、次々とプロットを引き継いでいくことができる。
ともかく、初期の作家は、すでに死んでいない。日本語に訳していた最初の翻訳者もすでに死んでいる。しかし、作品は継続され、主人公は、時空を超えて活躍している。

 一方、如何に、長寿命の作品といえども、主人公が人間であり、その寿命に限界があるとすれば、作品の内容には、限界が出てくる。蝉しぐれの主人公は、少年から壮年までを描けば、それでひとつの結末を迎える。

何十巻と発行されているゴルゴ13の劇画を読む?時、彼の時間は、本の中で止まっている。彼のような、超人的な活躍を月に一回やったとしたら、今頃は、還暦を迎えていてもおかしくはない。 そして、それを許容するとしても、長谷川町子の死をもって、サザエさんは終わってしまう。

 時間も空間も、作家の死も無視して、継続しているペリーローダンシリーズは、成功している株式会社のようなものである

会社が、不老不死であるためには、事業の内容も時間と空間の中で変化し、働く人たちも次々と変わっていく必要があろう。

 読者が無くならない限り、作者達のアイデアが無くならない限り、永続することのできる小説を創造したという意味において、このシリーズは大きな意味がある。