44日目 45日目 46日目 47日目

No.47: 日曜日 (2006.11.5)

やはり、書類が足りなくて困惑する夢を見て目が覚める。
きょうは朝から頭痛がする。
明日は滞在許可書の申請。その他いろいろ。
きょうは一日、宿題と明日の準備に費やす。
明日は迷っている時間の余裕がないので、時間と経路を整理。

10:30 : 翌日のレッスンに備えて練習。
12:15 : 室内楽の楽譜を買いに。(現金を少し用意。メトロのカルネを購入。)
(Metro.7 La Courneuve行 → OPERA: M.3 Pont de Levallois行 → EUROPE)
13:00 : 滞在許可書の申請に。(約45分の余裕をみて。)
(EUROPE M.3 Gallieni行 → OPERA: M.8 Cretril-Prefecture行 → BASTILLE)
17:00: 時間に余裕があったら、帰宅して室内楽の予習をしてからフランス語に。
(徒歩で帰宅して練習 → CITE: M.4 Porte d'Orleans行 → ST-PLACIDE)
19:00 : 余裕がなかったら、フランス語に直行。
(BASTILLE M.1 La Defense行 → CHATELET: M.4 Porte d'Orleans行 → S.P)

さて、どうなることやら・・・
うまくいくときはうまくいくのだろうし、そうでないときは仕方がないのだろうし、まあ、なるようにしかならない。
きょうは、作り置きのポトフと、焼きたてのパンがあるので、けっこうハッピーな晩飯だ。
さあ、フランス語の宿題と、書類の整理をして、お役所言葉を少し覚えて、早めに寝よう。



日曜日でも開いているパン屋に、今晩と明日のパンを買いに。
6:30頃の市庁舎とセーヌ川と月。もう暗い。そして寒い。

44日目 45日目 46日目 47日目

No.46: レクイエム (2006.11.4)

きょう、練習や夕食を済ませた後に、マドレーヌ教会にモーツァルトのレクイエムを聴きに行く。
なんと、夜の9時の開演。地図で場所を確認して、『ああ、あのコンコルド広場の近くにあった巨大な教会だ』と気がつく。
コートを着て外に出るが、寒い。夜の寒さはもう冬だ。

マドレーヌ教会にいって、学生用の一番安いチケットと、3ユーロ(\450)のプログラムを買い、お釣りに2ユーロもらう。
会場内に入ってから、ふと、ひょっとすると10ユーロ、お釣りをごまかされたかもしれない、と思う。(暗くてよく見えず、払ったお札の額面をちゃんと確認しなかった。)
お金を払ってから、「チケット、1枚だね?」と聞かれたことがちょっとひっかかる。
いや、今となっては実際のところはわからない。

3ユーロのプログラムは、「プログラム」と印刷された表紙の裏は広告だった。
その厚めの2つ折りの紙に、コピーのプログラムがぺらんとはさんである。
やられたね・・・

マドレーヌ教会、圧倒的に大きく、華やかだ。
その大きさと華やかさゆえに、かえってここが教会であることを忘れてしまいそうだ。

シューベルトのアベマリアの独唱から演奏が始まる。
とても長い残響時間と、大きな空間のため、わんわん響いた小さな声。
オケの音も混沌と混ざり合って、ひとつひとつの楽器の音は聞こえない。
そのあと、同じようなかんじでサリエリとヴェルディーの曲が演奏される。

学生用のうしろの方の席に座ったので余計にそうなのだろうが、この音響状態では演奏が上手いのか下手なのかもまったくわからない。
不協和音が解決しても、不協和音は響き続けて混ざり合う。
とにかく響きの塊しか聞こえてこない。

演奏者ひとりひとりの存在感がほとんどかんじられない。
みんな、とても小さくて非力に見える。
ここに座っているぼく自身も、本当にちっぽけで無力な人間の一人に思えてくる。
大きな建物の下で、地面に張り付いてちまちまと演奏している人間たちと、ちまちまとそれを聞いている自分たち。
・・・そんなことを感じさせるのは、このバカでかい教会の設計者に、そういう宗教的な意図があったからだろうか?

モーツァルトのレクイエムが始まる。
混沌と混ざり合った響きの中に、きらきらと浮かび上がるヴァイオリンとソプラノの高音域。長い残響で強い和音を作るユニゾン、そして強い存在感の総休止。(アーメン終止も圧倒的)
シンプルで単純な和声進行でかかれた曲が、直前の和音と混ざり合い、複雑で幻想的な響きを作る。
いままで聞いたことのないようなモーツァルトの響き。

ホルンがときどき音をはずす。はずした音も、長い時間、響き続ける。

モーツァルトはこの曲を完成させることなく亡くなって、彼の弟子が補筆してこの曲を完成させたのだが(ぼく自身は、今まで、そのことはあまり意識して聞いていなかったが)、しかし、曲が弟子が補筆した部分に差し掛かると、ただのわんわんとした響きの塊に戻ってしまう。



大きく、華美な、マドレーヌ教会。
十字架にも、イエス像にも、あの独特の悲壮な重さは感じられない。
人がみんなアリのようだ。


終演後、教会から出ると、コートを着ていても肌を刺すように寒い。
この大きな教会に圧倒されたのか、レクイエムの影響か、はたまた真偽がはっきりしないお釣り事件も影響しているのか、少し虚無的な気分で外に出る。
教会の外の柵の出口で、「ムッシュー、お願いします。マダム、お願いします。」と言って、紙コップを持ってお金を乞うているおじさんの横を通り抜ける。

外から、しばらくこの大きな教会を見上げていると、さっきのおじさんが紙コップを持って、なにかしゃべりながら近づいてきた。きれいな目をしている。
そんな余裕はないくせに、思わずさっきのお釣りの2ユーロ硬貨を紙コップに入れてしまう。
紙コップの中身はサンチーム硬貨(数十円)ばかりだった。
おじさんが、「ありがとう、ありがとう。では、良い夜を!」と、笑顔で言う。
「良い夜を!」と笑顔で返事して、寒い夜道を、少しやるせない気分で帰宅する。

44日目 45日目 46日目 47日目

No.45: お休み (2006.11.3)

きょうは家でのんびりして、宿題をするが、なかなかかたづかない。
フルートの宿題もそうだが、フランス語の宿題もある。

あしたマドレーヌ教会でモーツァルトのレクイエムをやるようだ。
聴きに行こうかと思っているが、まだちょっと迷っている。
来週の月曜日から火曜日までちょっと修羅場なスケジュールで、その準備をしないといけないのだが、明日の進み具合をみて決めようかと思っている。

きょう、またポトフを作る。(いま、煮込んでいるところ。)
前回とちょっと調理の手順を変えてみるが、味はどうかな?
たくさん作ったので、これで修羅場なスケジュールを乗り切る予定。

さて、これからフランス語の宿題を少し片付けるか。


うちのユニットバス・・・じゃなくて、シャワー兼トイレ室のタイル。
よく見てみると、一枚一枚微妙に絵柄に差異があり、手で絵付けされたもののようだ。まだ印刷技術が発達していない時代に、誰かが一枚一枚描いたものかもしれない。
しかし、タイルの目地は新しい。古いタイルをはがして、もう一度貼り付けて修復したのだろうか??
44日目 45日目 46日目 47日目

No.44: 国立近代美術館 (2006.11.2)

もう家の中にいても寒い。
ちょっと外に出るのもおっくうで、たくさんあるフルートの宿題をずっと練習していたが・・・やっぱり出かけることにする。

外に出ると、やっぱり寒い! コート来て来ればよかった。手袋も欲しいかんじ。
国立近代美術館へ向かう。
こんどの日曜日が無料のようだが、有料でもいいからゆっくり見たいので、ま、ケチらずに行くか、と思って。

途中で、映画かなにかの撮影現場に出くわしたり、画廊を外から覗いたり、パリ市庁舎の建物に見とれたり・・・、やっぱり出かけると「ぶんげんも歩けば棒にあたる」みたいなかんじでいろいろと面白い。

ふらふらと道草をくいながら国立近代美術館方面に歩いていくと、古い町並みの中から突如として異様な建物が現れる。


これか・・・。(ちなみにこちらは美術館の裏側)
古い町並みに、強烈な異物感のある建物が現れる。


それにしてもすさまじい破壊力の建物だ。

国立近代美術館についてからも、隣接のブランクーシのアトリエを見にいったり、館内の地下にある無料のスペースを見に行ったり、いろいろと面白いものがありすぎて、なかなか美術館にたどり着けない。
もうちょっと見たいのを我慢して、チケットを買って、チューブのエレベーターにのって美術館へ向かう。


正面。この斜めのチューブが美術館に通じているようだ。
建物の中からでないと、このチューブに入れないようだ。


建物の正面でボディーチェック。なにをチェックしているのかは不明。
(ついでにパリジャンのファッションにも注目!)


地下の無料スペース。こちらは本当にリアルタイムの「いま」な感じがあり、
美術館所蔵作品にはない魅力がある。(所蔵作品はすでにちょっと古臭い)


チケットを買ってチューブを昇っているところ。(上から下を見下ろしてます)


チューブの中から、夕焼けのエッフェル塔が見える。きれい。


最初に見に行った6階では「Raushcheberg 展」と「Klein 展」というのをやっている。
(名前の読み方はわからない。)
最初に見た「Raushcheberg」の方は、戦後の「前衛」なかんじの作品。そのころの「いま」が感じられてかなり面白かった。
かなり面白かったのは事実なのだけれども、突き放したような距離感がある作風で、どちらかというとあまり好きなタイプではない。

もうひとつの「Klein」の方、作品も面白いが、作家自身もかなり面白い人だ。
最初は「青」にはまっていたようで、青い作品ばかり作っているが、その青のうつくしいのなんの・・・。人類が始めて見た地球のような、深い水のような、ガスバーナーの青い炎のような、青い放射性物質のような・・・ なんとも筆舌に尽くしがたい青色をしている。

次は、ローズピンク色にハマってローズピンク色の作品ばかり作り、次は金色に、次は炎(焼き絵?)に、次は女の魚拓(きれいなお姉さんを全裸にして絵の具を塗り、紙に押し付ける版画みたいなもの)にはまる、というかんじ。
最後には、青と金とピンクが統合した作品群が展示されているが、これがまたきれい。

制作光景のフィルムなども上映されていたが、もう子供のような芸術バカだ。
バズーカー砲みたいなでかいガスバーナーを危なっかしい手つきで懸命に使っている姿や、裸のお姉さんで魚拓(女拓?)を懸命に作っている姿のカワイイこと!
(カメラもけっこう意識していて、蝶ネクタイなんかしちゃって、それまたカワイイ。)
そのフィルム、真剣に見ている人もいるし、笑いながら見てる人もいる。
おもしろいね~

その後、下の階の常設展を駆け足で見に行くが、時間切れで少ししか見れず。
しかし、なんだかんだと4~5時間は見てまわったことになる。
・・・また来よう。



「Raushcheberg 展」の入り口。


「Raushcheberg 展」のポスター。これの実物を見たが、ヤギの剥製に
ペインティングしたり、胴体にタイヤをはめたり、ちょっと暴力的な印象。

* * *


「Klein 展」の入り口。
作品だけでなく、展示の仕方がまたすばらしい。


買ってしまった小さめな画集。でも、こんな「青」じゃありません!
(印刷物になった時点で、すでにあの青じゃないです。)


屋上(レストランがある)に出ると、きれいな月が昇っている。

44日目 45日目 46日目 47日目
home