> ハイラガ行 〜 雪つもる道を行きつつ。






 さばみそギルドの面々が炎の魔人を倒した。
 その一方はいち早くハイ・ラガードの街にも伝えられた。

 世界樹の迷宮に足を踏み入れてからまだ間もないギルドであるはずの「さばみそ」――。

 誰もがその勇敢さを讃え、そして驚くべき速さで迷宮の謎を解き明かしていく彼らの活躍に畏敬の念を覚えた。
 そんな最中。


 「――さばみそ。その名をかたると聞いて来たのだが……」


 亜麻色の髪をなびかせた乙女は困惑したように呟く。


 「……これは、一体どういう事なんだ?」


 無骨な鎧に身を包んだ彼女は、そびえ立つ世界樹を背に、歌い騒ぐ「さばみそギルド」を眺める。
 そんな彼女の前に、影のように揺らぐ大男が立つ。


 「……ブリュンヒルデ・ロックハートさん……だな?」


 突然名を呼ばれ困惑する。
 長い白髪に黒いローブ。自らの身体を縛めるその姿で男が呪術を得意とするものであるのはすぐにわかった。

 だが見覚えのない顔だ。


 「誰だ……何故、私の名を知っている?」


 剣の束に手をかけ警戒の色をみせる彼女に対し、白髪の男はその異質な風貌からは思えぬ程に人なつっこい笑顔を見せた。


 「やれ、緊張感の塊みたいな人で……なるほど、シュンスケくんの手紙にあった通りだな」
 「!? ……シュンスケ・ルディックを知っているのか?」

 「いかにも。こう見えてもねぇ、彼、俺の教え子で……月に1度はないけれども。二ヶ月か三ヶ月に一度くらいは手紙のやりとりもしていたもんだよ」



 男は両手をあげ武器がないのを現す。
 だが胸に掲げた鐘は歩くたびに揺れ、不気味な音を響かせていた。

 呪いを生業とするものは、その鐘の音こそ真の武器となる。
 男はまだ武器を捨ててはいない……。


 「……名は、ミクトラン・ソドマ。エトリアで世界樹の迷宮を探索すると。シュンスケくんからそんな手紙を受けとった時にね。幾ばくかの支援をさせてもらった事もあるんだ。こう見えても元々教壇に立ってたご身分でねぇ」


 男は、頼まれてもいないのにそんな身の上話をする。
 だがそれは、亜麻色の髪を持つ乙女が……ブリュンヒルデ・ロックハートがかつて「さばみそ」と呼ばれるギルドに居た時、仲間であったシュンスケ・ルディックから聞いたものと同じであった。

 だとしたら、この男は「さばみそ」ギルドの名の由来でもある。

 ミクトラン・ソドマ……。
 かつての「さばみそ」ギルドは、その冒険の後ろ盾となった人物の名を一部とられて作られている。
 彼がその後ろ盾が一人であったのだろう。


 「……シュンスケくんから手紙がなくなったのは、半年ほど前からだ」


 男は勝手に彼女の対面に座ると、遠い目をしながら言った。


 「それまでの研究や旅先で見かけた珍しい風習などをマメに認めてくれた彼から手紙が来なくなった事は、彼がフィールド・ワークと称して冒険をしているのを知っていたからねぇ。何時その命が潰えても仕方ないものだとは思っていた。思ったんだけどなぁ……教え子の生死も分からずにもやもやした気持ちを抱いたまま教鞭を振るうのは性に合わなくてね。最後の便りに書いてあった事……ハイ・ラガード公国にあるもう一つの世界樹についての話を思い出し、この地にやってきたのさ」


 白い髪が揺れる。
 男はろくに櫛も入れていない髪の毛先に触れながら、一つ溜め息をついた。


 「それで」


 彼女はテーブルの上におかれたエールで唇を湿らせる。


 「それで、どうしたのだ。さばみそギルド……たしか、今のさばみそギルドにはお前も参加しているのだよな」


 さばみそギルド。
 3年ほど前、エトリアにおいて「世界樹の迷宮」と呼ばれるその地を踏破したモノとして、彼女は今その名を語る同名のギルドについて幾つか調べを終えていた。

 ミクトラン・ソドマはその新生さばみそギルドの一員である。


 「気になるか、さばみそギルドが」


 気にならないといえば嘘になる。
 かつて自分たちがともに歩んだあのギルドと同じ名前を語るそのギルドについて。


 「気になるなら、確かめてくればいい」


 男の声に共鳴するかのように、胸にある鐘が低い音で鳴った。


 「……今のさばみそギルドに何がおこっているのか。きっと、キミの目から見たほうが分かりやすいはずだ」


 鐘の音は静かに響く。
 ハイ・ラガードの街も、間もなく正午になろうとしていた。




> しい友達は、古い友達




GM : 「それでは今日のセッションをはじめる前に、一つ、報告させてもらう……これまでさばみそギルドで後衛を努めてくれたミクトだが、仕事の都合がつかなくなってな。暫くセッションから抜ける事となった」


アクセル : 「…………本当に、仕事の都合ですか?」


GM : 「? どういう意味だ、アクセル」


アクセル : 「いや。その……別に深い意味とかは無いんですけどね。何ていうんですか…………俺が、非道い事いったからとか。じゃ、無いですよ……ね?」


アズマ : 「あれ、気にしてたんですかそれ?」


GM : 「全くそんな風には見えなかったが……」



アクセル : 「べべべ、別に! 気にしてませんけど! ……でも、もし俺が非道い事いったからとかだったら、ちょっと、その……悪いなって思っただけです」



GM : 「そうか。だが心配するな。ミクトは本当に中の人の仕事都合だからな……最近、一本連載を増やして忙しいらしいぞ。あれでも」


アズマ : 「意外と売れっ子なんですねぇ、ミクトの旦那は」


シュンスケ : 「それで、どうするんですか? 迷宮の探索は……これからは、僕達4人で進むって事なのでしょうか?」


アズマ : 「うーん……正直、うちの面子は火力は充分ですが前衛の壁はイマイチですからねぇ……アタシとローズの嬢ちゃん二人じゃ、雑魚的はまだしもボスやF.O.Eクラスになると、ちょいと厳しいですかねぇ……」


ローズ : 「ミクトお兄さまが居なくなって、寂しいですわ……」(しょぼん)


GM : 「……心配するな。ミクトから代わりになるPCをつれてきてもらっている……入ってくれ」



 ……その言葉を待っていたかのように、部屋の奥から一人の女性が姿を現した。

 亜麻色の髪を持つ、重装備の乙女だ。



PC6 : 「……はじめまして、で良いだろうか?」


アズマ : 「へぇ……見た所、もうキャラクターも出来ているようですねぇ。お嬢ちゃん、名前は?」


PC6 : 「気易くお嬢ちゃんなどと呼ばないで貰えるか?」(つん)


アズマ : 「あら? ……かわいげのないお嬢ちゃんだ事で」


ローズ : 「アズマ様、ふられてしまいましたの?」


シュンスケ : 「まぁまぁ……一つ、穏便に。穏便に行きましょう。それで……貴方は一体?」


GM : 「そうだな。PC6さん、まずは自己紹介を頼む」



PC6 : 「わかった……私の名は、ブリュンヒルデ・ロックハート。だが、名が長く言いづらいだろう。ヒルダと呼んでもらってもかまわんよ。職業はこの分厚い鎧と盾とを見てもらってもわかるだろう」


シュンスケ : 「守備の要……パラディンですね?」


PC6(以下ヒルダ) : 「そうだ。以前……エトリアでも世界樹の迷宮を探索していた、元・さばみそギルドの一人でもある。君たちからすると先輩にあたるのやもしれんな」


ローズ : 「せんぱい! ヒルダねーさま先輩ですわ!」


アクセル : 「本物のさばみそギルド登場ですか……でも、いいんですか? 今の俺たちはアニキがたまたまシュンスケさんと同じ名前だったから、さばみそギルドを名乗っているだけ……ヒルダさんから見れば偽物のさばみそギルドという訳ですが……」


ヒルダ : 「ふむ……勿論それは気になっている。だが……私には探している人物が居てな……シグというのだが、先代さばみそギルドのリーダーだった男なのだ。恐らく、君たち偽物が世界樹で活躍しているのを知れば、元・さばみそギルドのリーダーとしてその男が放っておかないだろう。そう思い、自分が元・さばみそギルドのメンバーだという点は伏せて接触した……という設定で見てくれ」


アクセル : 「だったら、貴方が元・さばみそギルドのメンバーなのは俺たちは知らないんですね」


ヒルダ : 「そうだな……カスメであるミクトラン氏が抜けて、空いた穴を埋める為に立候補してきた新人冒険者だと思ってくれていい」


ローズ : 「じゃぁ、本当は私の先輩ですけど……今は後輩という事ですわね」


ヒルダ : 「そうだな」




ローズ : 「わかりましたわー! それじゃ、後輩さん、パンかってきやがれでーすのっ!」




シュンスケ : 「なななな、何いってるんだよローズ! ダメ、ダメだよそんな事言っちゃぁぁぁ!」




ローズ : 「? 私何かおかしい事、いいまして? ……後輩にはこう言うんだって、ミクトお兄さまに教わった通りに致しましたのに……」


シュンスケ : 「み、ミクトさん……何教えているんですか、あの人は……」(溜め息)


アクセル : 「ろくな大人じゃないと思ってましたが、やっぱりろくでもない奴ですね。アイツは」


アズマ : 「ですが、アタシらとしちゃぁここでパラディンの立候補は嬉しい所ですからねぇ……きっとちょうど良かったという塩梅でヒルダお嬢ちゃんの加入を受け入れると思いますよ。ヨロシクお願いしますよ、ヒルダお嬢ちゃん」


ヒルダ : 「新参者だがよろしく頼む……だが気易くお嬢ちゃんなどと呼ぶのはやめてくれ」


アズマ : 「あら……?」


ローズ : 「私も自己紹介致しますわ! わたくしは、ローズ・トレイシーともうしますの! よろしくお願い致しますわね、ヒルダねぇさま!」


ヒルダ : 「ん? ……あぁ、よろしく頼むぞ。小さいお姫様」(なでなで)


ローズ : 「あはぁっ……なでなでして頂きましたわ。嬉しいですのっ!」


アズマ : 「何でアタシがお嬢ちゃんって言うのがダメで、ローズの嬢ちゃんがねぇさまって言うのはアリなんですかねぇ……?」


アクセル : 「警戒されてるんじゃないですか? ちょっとアブない雰囲気がするとか……」


アズマ : 「……それって、アタシからミクトさんと同じような香りがするって事でしょうかねぇ」


アクセル : 「…………まぁ、広い意味ではそうともとれるかもしれませんね」




アズマ : 「うわぁぁ、ショック! これでも好青年のつもりだったんですけどねぇ……」




ローズ : 「地味にミクトお兄さまをディスってらっしゃいますわよ、アズマ様」


GM : 「ここに居ないというのにディスられるとは、よほどカルマの深い男だったんだな。ミクトは」


シュンスケ : 「あはは……それで、ヒルダさんはいったいどんなスキルをおもちなのですか? 今後の作戦などを考えてもお聞かせ願えればと思うのですが」


ヒルダ : 「そうだな……まず、私のレベルはキミたちと比べればまだ低く、20程度だ。だからあまり即戦力としては、期待しないでもらえると嬉しい」


シュンスケ : 「……あれ? 一応、エトリアの迷宮を踏破したんですよね」


ヒルダ : 「そうだが、レベル持ち越しといったシステムではないようだな……ここでいうレベルというのは冒険者本人の実力というより、この迷宮での戦いのノウハウなのだ。という説明で納得してもらえると嬉しい」


アズマ : 「レベル20ですか……それだったら暫く後衛で守ってさし上げないといけませんかねぇ、お嬢様?」


ヒルダ : 「……それでも守備力に関していえばお前より上だ。自分の身は自分で守れる。貴様に守ってもらわなくても結構」(※ガッチガチに着込んで防御力100越え)


アズマ : 「うう。守備力に言われると、ちょいと弱いですねぇ」(※防御力90代)


シュンスケ : 「そ、そ……それで、スキルは何を?」


ヒルダ : 「シールドスマイトと、フロントガードだ。ゆくゆくは属性ガードもとっていくつもりだ。盾職の宿命であまり攻撃力はないが、そのぶん仲間たちを守っていくつもりだ。よろしく頼む」(ぺこり)


ローズ : 「大丈夫ですわ! 攻撃力は、私と協力すればきっと何とかなりますの! ……よろしくお願いしますね、ヒルダさま!」


ヒルダ : 「……あぁ、よろしく頼む。ローズ」


アズマ : 「こっちも、同じ前衛としてヨロシク頼みますよ。ヒルダお嬢ちゃん」


ヒルダ : (ぷい)


アズマ : 「あら?」


アクセル : 「嫌われちゃったみたいですね……」


アズマ : 「あらら……これでも友好的に接したつもりだったんですけどねぇ。アタシって、誤解されやすいタイプなんでしょうか……?」


GM : 「ヒルダ君は、性格的に厳しい所があるからな……」


アクセル : 「そうみたいですね……でも、凛として格好いいですよね」


ヒルダ : 「や、やめてくれアクセル君。そういわれると……照れる」


ローズ : 「あ、ヒルダねぇさま赤くなってらっしゃいますわ。……可愛い所もあるみたいですのね」




ヒルダ : 「かかか、可愛いはもっとやめてくれ! は、恥ずかしい……」



GM : 「ローズちゃん。あんまりヒルダ君をからかわないでくれ。真っ赤になって隅っこにいってしまったじゃないか」


ヒルダ : (すみっこ)(もじもじ)


ローズ : 「はーい、わかりましたの!」


アズマ : 「……しかし、本物のさばみそギルドメンバーがご光臨とは。本物と同じ名前ってだけのシュンスケさんは、より頑張らないといけないですねぇ」


シュンスケ : 「うう……プレッシャーかけないでくださいっ」(半べそ)


アズマ : 「あはは……ここは一つ、格好良く新たな迷宮へ行く号令の一つでもとってみたらどうですか?」


シュンスケ : 「うう……嫌ですよ、恥ずかしい……」


ヒルダ : 「何だ? さばみそギルドのリーダーが恥ずかしがってどうするんだ?」




シュンスケ : 「わ、私はリーダーなんかじゃないですよっ……!」




ヒルダ : 「違うのか? 私はてっきり……」


アズマ : 「いやいや、あってますぜ……何恥ずかしがってるんですかリーダー、しっかりして下せぇな」


シュンスケ : 「あ、あ、アズマさん……!?」


ローズ : 「しっかりしてくださいですわ、シュンスケリーダーさま!」


シュンスケ : 「ろ、ろ、ローズまで!?」


アクセル : 「……こうなると、否定し続けるよりやっちゃったほうが楽だと思いますよ。アニキ」



シュンスケ : 「ううう……恥ずかしい。けど、そうだね……だったら、ぼく、頑張るよ……よし! 新たな仲間を迎え、この迷宮を踏破する為! さばみそギルド、行くぞー!」




一同 : 「「「おー!」」」



アズマ : 「……やれば出来るじゃないですか、見直しましたよ。シュンスケの旦那」


シュンスケ : 「ううう、すっごく恥ずかしかったです……」(ぷるぷる)


ヒルダ : 「ははは、なかなか勇ましい号令だったぞ。ではその声にのり、私も……いざ行かん! 神秘に包まれしハイ・ラガードの迷宮へ……」


アクセル : 「流石、先代エトリアの覇者は堂々としてますね……」




ヒルダ : (がっしょんがっしょん…………)「ふぁっ! しまった、久しぶりの鎧だから感覚がまだつかめて……うわぁぁぁ!」(ずべっ!)




シュンスケ : 「……いきなり転んでしまったようですね」


ローズ : 「きゃー! 大丈夫ですの、ヒルダねぇさま!?」


ヒルダ : 「……いたた。す、す、すまん。慣れない感覚で……足下がとられてしまったのだ……」


アクセル : 「格好いい人だなぁと思ったんですけど……ちょっと、ドジな所もあるみたいですね」


シュンスケ : 「どじっこ、って奴ですかね……?」


アズマ : 「あはは! まぁその位の方が、親しみがあるってモンですよ……それじゃ、迷宮へお嬢さんを一人、ご案内致しましょうや……アタシらもまだ知らない、新しい迷宮へ……ね……」




> 深き道を踏みしめ




GM : 「さて、前回のセッションで炎の魔人を倒した君たちの事はすぐに公宮にも伝わる……そして、街に帰るなり君たちは大臣に呼び出された訳だ」


アズマ : 「はいはい……それで、今回はどんな仕事を押しつけられる訳ですかい?」


GM : 「それを言われると流石の大臣も申し訳なさそうだな。(笑) (大臣)『……すでにお主たちが炎の魔人を撃退した事は、このじぃの耳にも入っておる……まだ迷宮に入って間もないというのに、お主たちの探索速度は凄まじいものがある』」


ヒルダ : 「有り体の賛辞などは必要ない……何か困っている事があるのだろう。もしよければ、話してくれないか?」


GM(大臣) : 『本当に、何もかもお見通しのようじゃな……さて、先にお主らにももうしたと思うが、この国の公主様は今、病に伏せてらっしゃる……公女様にとっては、たった一人血を分けた肉親じゃ。何としても病を治したい……そして、病に効くといわれる薬の材料は、伝説によればこの世界樹の迷宮に眠っているというのじゃ……』


ローズ : 「わかりましたわ! ……また、薬の材料をとってくればよろしいのですわね?」


GM(大臣) : 『……そうじゃ。樹海の12階は永久に氷った湖になっておる。その中にひっそりと咲く、氷の花があるのだという……伝承により、幾度も衛兵たちに12階の探索をさせているのじゃが、未だ見つけてはいない……それを3つ。いや、4つ集めてきてほしいのじゃ』


アクセル : 「……今まで誰も見つけてない花だなんて。単なる伝承とかじゃないんですか?」


GM(大臣) : 『いや、それは無いはずじゃ。実際、お主らのような冒険者が氷の中でひっそりと咲く花を見たという話は、幾度も聞いているでな』


ヒルダ : 「冒険者たちには見れて、衛兵たちは見つける事の出来ない氷の花か……」


アクセル : 「俺たちと衛士さんたちとで何か違う事とかあるんですかね……?」


GM(大臣) : 『さて……違いといってもすぐには思いつかぬが……ふぅむ。衛士たちには、夜の樹海は危険である故夜通し歩く事はやめるようきつく言ってある。それも、何か関係しているのやもしれぬな……』


アクセル : 「夜の樹海は歩かない、か……」


アズマ : 「目撃証言がどの時間帯に集まっているか気になるところですが……夜にだけ咲く花なのかもしれませんねェ」


GM(大臣) : 『……引き受けてくれるか?』


アズマ : 「引き受けるも何も、ミッションなら強制イベントじゃないですか」(笑)


GM : 「そういう、ゲームシステムだから仕方ない的な発言は控えてくれ」(笑)


シュンスケ : 「でも、やりますよ……医者のはしくれとして、治せる病気を放っておくわけにはいきませんから」


ローズ: 「公女様可哀想ですわ……早く公女様のお父様のご病気を治してさし上げたいですの!」


ヒルダ : 「……断る理由はないようだな。ご老公、その以来。我らさばみそギルドの名において、必ずや完遂しよう」


GM(大臣) : 『うむ……度々すまぬ。ヨロシク頼むぞ……』


アズマ : 「はぁ……それじゃ、次は氷原の上で幻の花探し、ですかねぇ」


アクセル : 「そのまえに、11階を踏破しないといけませんよ……目的地は11階ですから」


アズマ : 「ですねぇ……はぁ、それにしても雪ですかい。アタシ、寒いの苦手なんですけどねぇ……」


ヒルダ : 「だったらどうしてそんな格好しているんだ? 少し着込めばいいだろう」




アズマ : 「何いってるんですかい! ブシドーは裸がユニフォームでさぁ!




ヒルダ : 「それは本気か? それともつっこむべき所か!?」


アクセル : 「……とにかく、行きましょう。ミッションも受けてしまいましたから」


ローズ : 「アズマ様、寒かったらローズの携帯カイロを貸してさし上げますわね!」


アズマ : 「ありがとう嬢ちゃん」


ローズ : 「低音火傷には気を付けてくださいませ!」




GM : 「こうして君たちは、磁軸の柱をつかい、炎の魔人との激戦があったフロアを越え、新たなる階層……第三階層、六花氷樹海へと到着した。先の大臣の話にもあった通り、このフロアは一面が雪・雪・雪だ」


ローズ : 「きゃー! 凄いですわー、真っ白! まぁっしろですの! 雪がきゅっきゅ言っておりますわ!」(きゅっきゅ)


シュンスケ : 「あんまり走っちゃ危ないよ、ローズ!」



ヒルダ : 「そうだ、雪に足を取られては危険だ……うわぁぁっ!」(ずべっ! ……びたーん)



アクセル : 「だっ、大丈夫ですかヒルダさん!」


ヒルダ : 「いつつ……」


アズマ : 「……ほら、急ぐとあのお姉さんみたいにズッこけるから、気を付けたほうがいいよ。ローズ嬢ちゃん」


ローズ : 「はいですの!」


ヒルダ : 「ぐぬぬ……」


シュンスケ : 「大丈夫ですか……はい、私の肩でよければお貸ししますね。どうぞ……気を付けて進みましょう、ヒルダさん」


ヒルダ : 「シュンスケか……悪い。そうだな、ここは新しい階層……敵の攻撃も、熾烈になっているだろうからな」


アズマ : 「そうですねぇ……念のため、ヒルダの嬢ちゃんは後衛に下がっていてくだせぇや」


ヒルダ : 「何故だ? ……私のレベルが低いから、足手まといになるとでも? これでも守備力はお前と何ら劣る所はないぞ!」


アズマ : 「そう言いますけど、最大HPはまだ後衛並に低いじゃないですか……」


ヒルダ : 「だが私はお前らと何ら劣ってはいない! 前衛で大丈夫だ、前に出させてくれ」


アズマ : 「……はぁ、賢そうな顔している癖に、ハッキリ言わないと解らないんですかねぇ……新人さんが出しゃばれる程、樹海はヌルくありませんぜ……足手まといは下がれ! 中途半端に実力つけた冒険者一匹なんざ、土嚢ほど役にたちやしぇねんだよ!」


ヒルダ : 「……っ!?」


ローズ : 「あ、アズマ様……怖いですわ……」


アズマ : 「……おっと、すいませんねェ嬢ちゃん……ですが……樹海ではアタシも嬢ちゃんも自分の身を守るので手一杯だ……出来るだけ仲間には、傷つき倒れてはほしくないんですよ。アタシもね」


ヒルダ : 「…………わかった。貴様がそうとまで言うなら、私も後衛に甘んじよう」


アズマ : 「分かっていただき光栄ですよ。ヒルダお嬢ちゃん」


ヒルダ : 「だが、危険だと思ったら私はすぐに前に出るぞ。いいな?」


アズマ : 「はい、それで結構ですよ……じゃぁ、行きましょうかね?」


GM : 「君たちはそうして、雪原を踏みしめる……周囲はただ雪だけにも見えたが、先人の踏みしめた痕跡が微かに道となっている。そして木々の向こうには老朽化した遺跡が、影のように佇む姿があった……」


シュンスケ : 「……何だか、もの悲しい風景ですね。雪のせいで、余計に寂しく見える」


アクセル : 「アニキ、足下に気をつけて下さいね。雪が新しくて足が取られやすいですから……ヒルダさんも」


ヒルダ : 「わかってる……しかしこうも、足下がとられやすいと……飛んでるモンスターなどが出たら苦戦しそうだな」


シュンスケ : 「そうですね……向こうには飛んでるぶんアドバンテージがある訳ですから……」


GM : 「……君たちが懸念しながら進めば、皮肉な事に飛行系のモンスターが登場だ……敵は、モリヤンマ! 1mはこす巨大な蜻蛉だ」


ヒルダ : 「こいつ……また三階層に出るのか!?」


アクセル : 「また?」


ヒルダ : 「いや、何でもない……とにかく、陣形を!」


GM : 「君たちが戦闘隊形をとる前に、モリヤンマは舞い踊る……先制攻撃だ! 攻撃は……惑乱の急襲! 攻撃&封じで……ダメージはローズにだ」


シュンスケ : 「何ですって!? だ、大丈夫ですか、ローズ?」


ローズ : 「いたた……ぽかーんってされましたの! でも、大丈夫ですわ……足がうまく動きませんけど、大丈夫だ問題ない! ですの!」


アズマ : 「それじゃ、すぐに反撃といきましょうや! ……小手打ちを!」


ローズ : 「私も殴りますわ!」


アクセル : 「精密射撃を」


GM : 「……そんな集中攻撃をされれば、流石のモリヤンマでも一溜まりもない。もう倒れた」


アクセル : 「ふぅ……コイツは、単体で出たら先制仕掛けてくるタイプかな? めんどくさい奴だ……」


アズマ : 「ですが、アタシたちもそろそろ、強くなってきてますからねェ……一撃で倒されたりって事もなさそうだし。一回戦っただけでボロボロになる、って事もなさそうですぜ」 


シュンスケ : 「樹海磁軸も発動しましたし、慎重に進んでいきましょう……」


ヒルダ : 「そうだな……危険なものになるべく近づかないよう、慎重に行くという案は賛成だ。皆、あまり離れるな!」


ローズ : (ぽてぽてぽて)


アクセル : 「あっ、ダメだろローズ。一人であんまりウロウロすると危ないって今、言われたばっかりだろ」


ローズ : 「でも、この雪がいまもぞもぞ動いた気がしますの……気になりますわ。目的のお花かもしれませんし……」


ヒルダ : 「ふむ……大臣は花は12階にあるといってたが……」


アズマ : 「でも、動くモノがあるってのは気になりますねぇ……敵かもしれませんし、とりあえず様子を見ましょうや。ローズ嬢ちゃん、そのもぞもぞ動いてる奴ってのは、何処にいましたか?」


ローズ : 「ここですわ! このすみっこにいましたの!」


アズマ : 「どれどれ……」


シュンスケ : 「……たしかに何か動いてますね。何でしょう」


GM : 「君たちがのぞき込むと、目の前にあった雪がみるみる大きくなっていく! まずは人間の子供程度の大きさに……それからアズマ君と同じくらいの背丈になったかと思ったら、今はその背丈もこえ、2mをゆうにこすヒグマほどの大きさへと変貌している!」


シュンスケ : 「えぇっ!?」


アクセル : 「あ、あぶない! ローズ、早くこっちに……逃げないと!」


ローズ : 「でも……何だかこのおっきい生き物さん、足下が妙にグラグラしておりますわよ〜」


アクセル : 「でも……」


ヒルダ : 「いや……ローズの言う通りだな。巨体のわりに足が細い……」


シュンスケ : 「関節の稼働もおかしい風に思えますね……何だろう、これ……生き物としておかしい……」


GM : 「……そうして君たちが訝しげに眺めていると、巨大な影が大きく傾き崩れ去る……どうやらその巨体は、複数の魔物達が組み合わさって出来ていたものだったようだ」


アズマ : 「組み体操ですかい!?」


ヒルダ : 「しかも失敗して脆くも崩れ去ったようだな……」


アクセル : 「もう少し足下の部分にちゃんと人員……じゃない、魔物員を配置しておけばよかったんですけどね……」


GM : 「出てきたのはスノーゴースト2体だ。どうやらこいつらが、まとまって巨大な魔物の振りをしていたらしい」


アズマ : 「初見の相手ですが、2体なら問題ないでしょう……嬢ちゃん、一気にいきますぜ!」


ローズ : 「はいですの!」


シュンスケ : 「怪我はしないように気を付けてくださいね……」


GM : 「……大軍だった頃ならもう少しマシな戦いが出来たろうが、数が少なくなってはな。このモンスターはここの階層だと弱い部類だし……一応仲間を呼んだりもするが」


ローズ : 「呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃじゃーん、ですわー」


アズマ : 「それをすぐに斬!」(うばしゃぁ!)


GM : 「……やはり、すぐに倒されてしまうか。君たちはスノーゴーストを退治した」


ローズ : 「びくとりー! ですわっ」


シュンスケ : 「お怪我はありませんか?」


アズマ : 「思ったより被害はないですねぇ……アタシたちも、随分強くなったって事でしょうか」


アクセル : 「……これなら、注意しながら進めば奥までいけそうですね。F.O.Eとの衝突を避けて、先を目指してみましょう」


アズマ : 「そうですねぇ……それじゃ、雪の道を進んでいきましょうか……ふぅ、架空の世界とはいえ寒々しい……」


ローズ : 「きゃー、雪ですわ雪ですわ! 私、こんなにつもってる雪を見るのはじめてですの!」(ぱたぱた)


シュンスケ : 「あぁ、あんまり離れたら危ないですよ、ローズ……」(オタオタ)


GM : 「奥に進めば新しいモンスターも出るな……フィッシュマン2体だ」


アズマ : 「……恨みはないですが、お覚悟!」(ジャキン)


GM : 「アズマの攻撃はきくな、ほとんど残りHPは僅かだ」


アズマ : 「またつまらないモンをきってしまいました」(チャキ)


アクセル : 「……雷属性がよくきくみたいですね。俺は氷属性で攻撃してみましょう」


ヒルダ : 「相手は魚だぞ? 氷には強いんじゃないか」


アクセル : 「試しですよ……意外な弱点があるかもしれませんし。どうですか?」


GM : 「効果は薄いようだ、が……アズマが事前に削ってたからな。一応それで倒れた。珍しいアイテムも落としたようだ」


アクセル : 「耐性属性でレアドロップするタイプのモンスターですかね」


ヒルダ : 「なるほど、そういうのもあるんだな」


シュンスケ : 「今回のレアドロップは運よりも、そういう……属性攻撃とか、封じた後攻撃とか、条件ドロップが多いみたいなんですよ」


ヒルダ : 「なるほど……これなら博識があるのに運がないとかディスられる心配がなくなって、よかったな、シュンスケ」


シュンスケ : 「そうですね、私もあまり運がいい方じゃないですから、運中心のドロップだったら非道いモノしか拾えない気がひしひしとしますよ」(笑)


アズマ : 「さぁて、もう一匹もぶち殺したんで、先に進みましょうかね……どうですか?」


GM : 「そうだな……先にすすむとチラホラ、f.o.eが見える」


シュンスケ : 「あんまりお相手したくない連中ですね……どんな動きですか?」


アクセル : 「えっと……あ、こいつら特定の場所を守っている。しかも、追いかけてくるタイプです」


ヒルダ : 「突破しないと先に進ませないタイプか……」


アクセル : 「俺が威嚇して足止めするのも出来ますけど……」


アズマ : 「突撃や足止めはまだ考える手段じゃねぇですぜ……他にも道があるんだ。どこかに迂回路があるかもしれませんから……もう少し奥にいってみましょうや」


GM : 「ふむ……そうやって先に進むと、そこにもF.O.Eが」


アクセル : 「げ……」


ローズ : 「抜け道はありませんの?」


アクセル : 「無さそうだなぁ……とにかく、F.O.Eは避けていこう」


ローズ : 「雪、きゅっきゅですわ……」(ころころ、ころころ)


アズマ : 「何やってるんでさぁ、嬢ちゃん?」


ローズ : 「せっかく、すごい雪があるから雪だるまを作っていきますの! 私、こんなに雪を見た事ありませんわ……雪だるまつくったことありませんの!」


シュンスケ : 「な、何をして……そんな事してたら危ないよ、ローズ」


ヒルダ : 「……いいじゃないか。警戒は私がする」


アズマ : 「だったらアタシが雪玉を転がすのを手伝ってさし上げましょう……さぁ、転がしますよ嬢ちゃん」


ローズ : 「わぁ……おっきい雪だるま作りますわぁー」(きゅっきゅ)(ころころ)


GM: 「そうして避けてすすむ……が」


アクセル : 「……ここにもF.O.Eがいますね」


ヒルダ : 「まるで進路に立ちふさがっているようだな……」


シュンスケ : (ざくざく、ざくざく)


アクセル : 「あ、アニキ! あんまり近づくと危ないですよ」


シュンスケ : 「大丈夫です無茶はしません……おっと、こっちのF.O.Eも追いかけてくるタイプのようですね。恐らく全て同じF.O.Eでしょう……」


ヒルダ : 「突破しないと進めない、か……」


アクセル : 「でも、道はまだあります。とにかく他に抜け道がないか探してみましょう」


ローズ : 「はいですの! ……きゃー、雪玉だいぶ大きくなってきましたわぁ〜」


アズマ : 「まだまだ大きくしますぜ! 一番でっかい雪だるまってやつを作りましょうや!」(ごろんごろん)


ヒルダ : 「……まて、アズマ! ……前方に何かいる、F.O.Eだ!」


GM : 「ヒルダは気付いたがもう敵は随分と迫ってきている……F.O.Eは雪だるまつくりかけを壊すと、がしゃんがしゃん」


ローズ : 「あー、私の雪だるまが!」


アズマ : 「嬢ちゃんを悲しませるたぁいくらF.O.Eでも。いや、F.O.Eだからこそ容赦しやせんぜ! ……で、敵は?」


GM : 「飛来する黒影……蝙蝠の翼をもち、鋭い嘴を携えた翼竜タイプのモンスターだな」


アクセル : 「プテラノドンみたいな奴ですね」


GM : 「そうだな、見た目の印象はそれに近い」


アズマ : 「何だ、あっちこっちウロウロしているだけあって、大した奴じゃぁなさそうですねぇ……隊列を……」


GM : 「君たちが戦おうとするより先に、飛来する黒影が躍り出る。攻撃は……ダストデビル! 攻撃対象とその左右の相手にダメージ……前衛に攻撃をいれたから、ここではアズマとローズだ!」


ローズ : 「きゃー、痛いですの。もうダメですわ……」(ばたん)


アズマ : 「嬢ちゃん!?」


シュンスケ : 「た、大変だ……ローズ! えぇっと、ここはローズを回復して、それから……」


ヒルダ : 「……いや、アズマもダメージを受けている以上そう長くは持たん! 一度撤退して建て直すぞ……全力逃走だ!」


アズマ : 「いや、まだやれっ……」


ヒルダ : 「被害を広げるつもりかバカが! 行くぞ!」(ぐいっ!)


アズマ : 「……くぅっ」


GM : 「全力逃走か……通常はこのスキルは、前にいたフロアまで一気に逃げる。というスキルだが……今回は下の階まで逃げられなかった。一歩、下がっただけだ」


シュンスケ : 「……大丈夫かい、ローズ」


ローズ : 「いたた……何とか起き上がりましたわ……でも」


アクセル : 「今のゴタゴタでうっかり袋小路に閉じこめられたみたいですよ……どうします? アリアドネの糸で戻りますか?」


アズマ : 「仕方ないでさぁね……一端戻って体勢を……」


ヒルダ : 「……いや、まってくれ。まだ私たちはそれほど消耗していないだろう。よかったら……私を前衛にして、もう一度戦ってはみないか?」


アズマ : 「お嬢ちゃんをですかい……はは、バカいっちゃいけねぇや。まだ新米のお嬢ちゃんを前衛にした所で出来る事なんざぁありゃしませんって」


ヒルダ : 「その役立たずの新米に、おまえは今助けられたんじゃぁないのか?」


アズマ : 「……っ。それを言われると弱いですねぇ」


ローズ : 「私は、ヒルダねぇさまと一緒に戦いたいですわ! 雪だるまさんの敵討ちをしますの!」


シュンスケ : 「……私もまだTPに余裕がありますから、もう一戦なら試せると思いますよ」


アズマ : 「はいはい……皆がそういうならアタシもこれ以上文句はいいませんよ。そのかわり、自分の身は自分で守ってくださいね。お嬢ちゃん?」


ヒルダ : 「当たり前だ。私は自分の身くらい自分で守れるさ」


GM : 「それでは再度、F.O.Eに挑む訳だな……敵は先ほどと同じ、飛来する黒影だ」


アズマ : 「月影を! ……縛りがきけばいいんですけど」


ローズ : 「私は鬼力をアズマ様に与えますわ。ヒルダ様は……?」


ヒルダ : 「フロントガードだ……私は基本的に、攻撃はしないものだと思ってくれ」



アズマ : 「はぁっ!? 何いってるんですかい、それって攻撃はアタシやローズお嬢ちゃんに任せるって事ですか」



ヒルダ : 「そういう事になるな」


アズマ : 「そんな、自分は高みの見物ですか、いいご身分で……」


ヒルダ : 「あぁそうだ……こうして盾を構えおまえたちが戦う姿を支える事。パラディンは、それしか出来ない。だから……頼んだぞ、アズマ」(ニコ)


アズマ : 「……!」


GM : 「では戦闘だな、ローズの鬼力、ヒルダのフロントガードは発動が早いな。こっちの攻撃より先に発動するが……」


ローズ : 「頑張ってくださいましね、アズマ様」(それちゃっちゃっちゃ)(応援ポーズふりふり)


ヒルダ : (か、可愛い……)


アズマ : 「いつも応援ありがとう、お嬢ちゃん」


GM : 「次は飛来する黒影の攻撃だな。攻撃は、礼によってダストデビルだ。中央にいるヒルダを狙い、左右に!」


ローズ : 「やーん、痛いですの!」


アズマ : 「……っ! ん、ですが思ったよりダメージが……ありません、ね」


ヒルダ : 「当然だ! ……フロントガードは発動している。アズマの攻撃も、ローズの攻撃も……この私が必ず守りきるからな!」


アズマ : 「お嬢ちゃん……」


ヒルダ : 「言っただろう……私は、自分の身は自分で守れると。そのついでに、お前たちも守ってやれるといった所かな?」


アズマ : 「お嬢ちゃん……余計な口をきいたようで悪かったですねぇ……それじゃ、一気にたたき込みましょうや! アクセル!」


アクセル : 「はい、跳弾を!」


シュンスケ : 「私は怪我した皆さんに回復を!」


アズマ : 「このままアタシとアクセルがガンガン攻め込みますから、防御の方はお願いしますよ、お嬢ちゃん……いや、ヒルダさん」


ヒルダ : 「……あぁ、任せておけ」


GM : (ふむ……ダストデビルはかなりのダメージを与えられる攻撃ではあるが)


ヒルダ : 「フロントガード! ……どうだ」


ローズ : 「あまり痛くありませんわ! ヒルダ様がちゃんと守ってくれてますの!」


GM : (……ヒルダのフロントガードのおかげでダメージがだいぶ減っているな、複数攻撃でも)


シュンスケ : 「エリアヒールです! 皆さん大丈夫ですね?」


GM : (シュンスケがすぐにエリアヒールで建て直す……これは倒されるのも、時間の問題だな……)


アズマ : 「月影! ……決まりましたぜ?」


アクセル : 「……続いて、跳弾! いきます」


GM : 「いやいや、まてまて! ……アズマの月影で、もう倒れている。君たちは無事、F.O.E……飛来する黒影を倒した!」



一同 : 「「「やったー!」」」(ぱちぱちぱち)



アズマ : 「はぁ……またつまらないものを切っちまいました」(チャキッ)


シュンスケ : 「でも、良かったですね! このF.O.Eが倒せるんだってわかれば、今までふさがっていた道も何とか進む事が出来そうですよ!」


アクセル : 「えぇ……ですが、流石に消耗が非道いです。連戦は難しいですね……一度帰って、体勢を立て直しましょう。幸いここから出口まで、それほど離れていません。糸を節約して歩きで戻れそうですし……」


ローズ : 「だったら、帰り道に戻るまで私、雪だるまをつくりながら戻りますわ! 今度こそちゃんと作りますことよ。よろしくて?」


アクセル : 「ダメって言ってもやるんだろ……仕方ないな。今度は俺も手伝うから、一緒に作りながら帰ろう」


アズマ : 「そういって、実は雪玉転がしたかったんですかい? アクセル坊?」


アクセル : 「そそ、そんな事…………い、いいじゃないですか! 俺もこんなすごい雪、見るの初めてなんですから……」


アズマ : 「あはは、別にダメだとは言ってませんぜ!」


シュンスケ : 「うん……折角だから、一緒に雪玉転がしていこうか?」


ローズ : 「わーい、おっきい雪だるま作りますわよー!」(ころころ)


アクセル : 「け、結構難しいな、これ……」(ころころころころ)


ヒルダ : 「警戒は怠らないでくれよ、二人とも!」



アクセル&ローズ : 「「はーい!」」



アズマ : 「あはは……それじゃぁ、そろそろアタシたちも行きましょうか、お嬢ちゃ…………いや、ヒルダさん」


ヒルダ : 「あぁ……」


アズマ : 「……嬢ちゃん扱いして申し訳なかったですね。貴方は立派な、パラディンでさぁ」


ヒルダ : 「気にするな……おまえも、立派なブシドーだ」



シュンスケ : 「……何やってるんですか、二人ともー?」


ローズ : 「早くこないと置いていっちゃいますわよー」


アクセル : 「あんまり離れると、危ないですよ!」



アズマ : 「さぁて、皆さんお待ちかねですし。アタシたちも行きましょうか」


ヒルダ : 「そうだな」


アズマ : 「これからの探索も改めて……よろしくお願いしますね、ヒルダさん」


ヒルダ : 「あぁ、こちらもよろしく頼む。アズマ」




 ……かくして、新たな仲間を得たさばみそギルドの面々たち。

 お互いギクシャクしながらも探索を続け、お互いの距離を少しずつ縮めながら、奥へ、奥へと進んでいく。


 雪と氷の世界。

 その先に過酷な「真実」がある事など、まだ何も知らないまま……。






劇 : 新しいお友達がやってきました。





 幕間劇を始めよう。

 それは、現実世界の物語。


 仮想世界にやってきた、新たなプレイヤーの物語。


 ……君は、彼の日常に、触れても、触れなくても良い。


 ・

 ・

 ・


 セッション途中の、都内 某所――。



西園寺馨(GM) : 「……ふぅ。一度街に戻った事だし、そろそろ一端休憩してもいいか。流石に疲れてきたからな」


狩名義明(アズマPL) : 「大丈夫ですかい、無理はいけませんぜ……このシステムは、負担がかかりますからねぇ……」


西園寺 : 「あぁ、だが大丈夫だ少し休めばいい。それに……」


月岡沙織(ローズPL) : 「やったー、おやつ休憩の時間ですわー! 今日のおやつは何ですの? 何ですの?」


月岡陽介(シュンスケPL) : 「こら、ローズあんまりはしたない事を……すいません、すいません!」(ぺこぺこ)


西園寺 : 「……子供たちも、腹のへる頃だろうしな」


月岡晃(アクセルPL) : 「おやつにするんですか? 俺、ポテトチップスとコーラ買ってきましたよ」


狩名 : 「アタシも一応かってきましたよ……ココナッツサブレと麦チョコですが」


晃 : 「渋いですね……」


沙織 : 「親戚のお婆ちゃんのおうちで出るお菓子ですわ!」


狩名 : 「すいませんねぇ、自分の好きなおやつをかった結果オッサンでした」(笑)


西園寺 : 「俺からはロールケーキを準備させてもらった……遠慮なく食べてくれ」


沙織 : 「きゃー、ロールケーキ……手作りですわ! きれーい、果物がトッピングされてますの! でも……まだ切れてませんわ」


???(ヒルダPL) : 「だったら私が切ってこよう……少し待っていてくれ」


月岡 : 「その間に、ぼくはお茶でもいれようかな……皆さん何がいいですか? コーヒーと紅茶、ジュースはコーラがありますけど……」


沙織 : 「私、お紅茶がいいですわ! お砂糖いっぱい解かしたミルクティーが飲みたいですの!」


晃 : 「俺はコーラ……あ、いいです陽介さん。俺は自分でやりますから」(カチャカチャ)


狩名 : 「しっかりしてますねぇひーくんは……じゃ、アタシはコーヒー。ブラックで」


??? : 「私もコーヒーだ。砂糖とミルクをつけてくれ」


月岡 : 「はい……えっと、さとう。こーひー、さとう……こうちゃ……さとう……」


晃 : 「手伝いますよアニキ、まったく家事とか苦手ですよねぇ……」


月岡 : 「あぁ、ごめんひーくん……」(オロオロ)


??? : 「ロールケーキを切ってきたぞ」


沙織 : 「きゃー! いちごのところ、さおちゃんにくださいませ!」


月岡 : 「お茶も入りましたよー」


西園寺 : 「済まないな……色々やってもらって」


月岡 : 「あはは……いいんですよ別に。家ではいつもやってますからね」(かちゃかちゃ)


狩名 : 「さて……お茶の準備も出来たところで……そろそろそちらのお嬢さん、紹介してもらえませんかねぇ。西園寺先生?」


西園寺 : 「お嬢さん……あぁ、そういえばヒルダのプレイヤーの紹介はまだだったか」


狩名 : 「えぇ。今回はいきなりセッションをはじめてしまいましたからねぇ……宜しければ自己紹介、お願いできませんか。PC6さん」


PC6 : 「そうだな……私の名前は、 滝 睦(たき むつみ) という、ヒルダのプレイヤーをやらせている。前回のエトリアでもパラディンをやっていた……うぅむ、自己紹介となると難しいな、他に何か聞きたい事などあるか?」


沙織 : 「はいはいはーい、ですの! 睦さまは……彼氏さん、いらっしゃいますの?」


滝 : 「っつ……か、彼氏か……!?」


西園寺 : (思わない方向からの思わない質問に狼狽えているな……)


狩名 : (案外と初々しいお嬢さんのようで……)


滝 : 「かか、彼氏は……いない! 今は、そう……仕事が恋人、といった所だな……」


月岡 : 「へぇ……お仕事が恋人とか、キャリア・ウーマンのようで素敵ですね! 何をされているんですか?」


滝 : 「……公務員だ。やりがいのある仕事をしている」


晃 : 「やりがいのある仕事かぁ……いいですね。俺も大人になったら、自分のやりがいがある仕事ってのをしたいなぁ……」


狩名 : 「小さい頃から将来やりたい事を考えるってのは、いい事ですぜ……ただ、仕事をするために生きるよりどんな人間になりたいか。ってのも重要視しろよ、チビッコ……仕事が立派でもろくでもねぇ人間になったら、始末に負えないからな」


晃 : 「い、言われなくてもわかってますよ! 仕事だけが人間じゃないですからね……」


西園寺 : (最近の子供はマセているとよくいうが、晃くんは本当に大人びているな)


月岡 : 「それで、滝さんはいま、おいくつなんですか?」


狩名 : 「ちょ、旦那……それ、普通女性にはしない質問ですぜ?」


月岡 : 「えっ? ……あぁっ、す、すいません、私ときたら不躾で……」


滝 : 「いや、別にかまわんよ……私は、今は27歳だ。早生まれで誕生日は遅いんだが、学年的にはそこ。そこにいる、西園寺とかいう男と一緒だな」


西園寺 : 「…………」


沙織 : 「へー……西園寺さまと睦さまは同級生なんですね!」


滝 : 「……同級生、というか元クラスメイトだな。高校時代、よくこいつらとは連んだものだ。なぁ」


西園寺 : 「そうだったな……イインチョウには迷惑をかけたもんだ」


滝 : 「その呼び方、まだするのか? 私はとっくにお前たちの委員長では、ないんだがな……」


狩名 : 「仲が良かったんですねぇ、未だにクラスメイトと連んでられるなんて、いい仲間じゃぁないですか」


滝 : 「そうだな……私たちは、いい仲間だった……本当に、本当に……」


晃 : 「…………」


滝 : 「それより、君たちの自己紹介も頼んでいいか? ……西園寺とは面識があるが、他の面子はほとんど初めてみる顔だからな」


月岡 : 「あぁ、そうですね……先に名前を聞く前に、名乗るべきでした。私は、月岡陽介……とある大学で教鞭をふるっています。とはいえども、准教授であまり威張れた立場ではありませんが……そしてこの子たちは」


晃 : 「月岡晃……11歳です」


沙織 : 「さおちゃんです! 月岡沙織……9歳になりましたの! 猫さんが好きです! あとラッコさんとかパンダさんも好きですわ!」


月岡 : 「す、すいません賑やかで……二人とも私の、息子と娘です」


狩名 : 「そして俺が、狩名義明……職業は、うーん……ここは営業職って事でヨロシク出来ないかな。あんまり人に言える程、立派な仕事をしてない訳さ」


滝 : 「……狩名義明、か。わかった……そういう事に、しておいてやろう」


狩名 : 「そーそー、そういう事にしておいて。しかしまー……27歳か、女盛りで綺麗なもんだな。もうちょっと若いと思ってたが」


滝 : 「誉め言葉のつもりだとしても、何も出んぞ……私は外見でちやほやする男は信用しない主義だ。知り合いにそういう男がいるが、奴は信用できんからな」


狩名 : 「……おっと、これは手厳しい。ま、別にいいですけどね……仲良くやりましょうや。滝お嬢さま」


滝 : 「お嬢さま扱いはやめろ、子供じゃないんだ……」


狩名 : 「そうやってむくれているうちはまだまだ子供だよ、お嬢さま?」


滝 : 「だったら私は狩名坊ちゃんと呼ぶか……おまえ、なかなかの坊ちゃん育ちに見えるからな」


狩名 : 「あいたた、これは手厳しい……坊ちゃんは勘弁だな」


滝 : 「私もお嬢さまは勘弁だ」


狩名 : 「だったら互い、名前で呼ぶか。俺は狩名でも義明でもいいぜ」


滝 : 「だったら狩名にしよう。私も滝でいい」


狩名 : 「わかったよ、睦。これからよろしくな」


滝 : 「名前で呼んでいいとはいってないだろう、馴れ馴れしい男だ……が」



 差し出された手を握りかえし、滝は小さな声で囁く。



滝 : 「よろしくな、狩名……いつかお前が本当の名前を、聞かせてくれるよう願っているぞ」



 ……滝睦の言葉で、狩名は驚いたように目を見開きすぐに苦笑いになる。

 彼女は、椎名哲馬のかわりにきた。

 椎名に何か言われてきているのかもしれない。


 それに……。

 「公務員」そう名乗る限り彼女は警察関係者なのだろう、狩名はそれを直感した。

 消防士や市役所職員などはわざわざ公務員と言わなくてもいいのだ。それを隠したがるのは警察くらいのものだ。




狩名 : 「こりゃ、俺の本当の名前がバレるのも時間の問題ですかねぇ……」



 狩名は微かに微笑みながら、お茶会に望む仲間の姿を見据える。

 その笑顔は穏やかだがどこか冷たい。

 己を出さない仮面のような笑顔だった。




 ゲーム終了まで、あと10日。




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