> ハイラガ行 〜 エトリアから、来ました。






 大陸の北方に ハイ・ラガード公国 と呼ばれる小国が存在した。

 その大地には世界樹と呼ばれる、天までそびえる神木が存在し、そこに一つの伝承がある。
 かの神木が頂点には、「空飛ぶ城」へと繋がる道が存在する……。

 世界樹の彼方にある、空飛ぶ城を見つけだせ。
 公国より出されたそのおふれに、多くの者たちは色めき立ち、街には自然と冒険者たちが集まってきた。

 そんな最中……。



??? : 「ここが、ハイ・ラガード公国ですか」



 白衣をまとった男が、ハイ・ラガード公国の門をくぐる。

 隣には少年と少女が。
 男の手を離さぬよう、しっかりと握りしめ連れ立つ姿があった。



??? : 「おじさま、おじさま。本当に、冒険者になるんですの?」



 甘い金色の髪を持つ少女は、不安そうに男を眺める。
 震える小さな指先で、男の手をしっかりと握りしめていた。



??? : 「あはは、大丈夫だよ。キミが心配するような事はしないって。ここなら、冒険者であれば誰でも受け入れてくれる……故郷のない僕らが逃げ込むには打ってつけ。そうだろう?」



 男が優しく笑えば、それまで震えていた少女は安心したように頷くと男の腕に絡みついた。
 それまで隣に控えていた少年も、一つ頷くと男の前へと進む。



??? : 「行きましょうアニキ。大丈夫です、当面の生活費は、俺がこの銃で稼ぎ出してやりますよ」



 少年はそう言うと、勇ましく銃を構える。
 古びた銃は、かつて名うての猟師であった祖父より受け継いだものだった。



??? : 「あはは、頼もしいなぁ。だけど、危ない真似は駄目だよ。もし行くなら、ボクもついていくからね?」


??? : 「ですが、アニキ……」


??? : 「一人でなんて行かせないよ、だってボクたちは家族なんだから……」



 家族。
 その言葉で、少年は僅かだが頬を赤らめる。



??? : 「そう、でしたね……じゃぁ、行きましょう。アニキ」



 先に歩む少年の前には、神木と呼ばれる世界樹のその巨大な幹が見える。



??? : 「……世界樹の、迷宮。か」




 その木を見上げ、白衣の男は呟く。
 その目はハイ・ラガード街でもなく。神木と呼ばれる世界樹でもない、もっと遠くにある何かを見据えていた。





> 新しき険者の集い 〜 豪華絢爛キャラクター紹介



 某月 某日

 都内、某所にて……。





ギルドマスター(以下便宜上、GM) : 「……さて、そろそろ頃合いか。皆、キャラクターはもう出来ているな? もし出来ているのなら、そろそろ世界樹の迷宮2をプレイしはじめたいのだが……」


プレイヤーC : 「あのっ、兄さま。この数値は、これであってますの?」


プレイヤーB : 「ちょっと待ってて……あぁ、違うよ。ここが間違って……あ、すいませんGM。もう少し、待ってもらえますか?」


GM : 「うム……まだならもう少し待つとするか、他のプレイヤーもかまわないな」


プレイヤーD : 「アタシは別にかまいませんよ? まぁ、のんびり行きましょうって、ね?」


プレイヤーA : 「ですが……あまりお待たせするのも悪いですからね。もし良かったら、先にキャラクターが出来ている人だけは自己紹介初めてしまいますか?」


GM : 「そうだな……そうさせてもらうか。別にかまわないか、プレイヤーB君?」


プレイヤーB : 「はい、構いませんよ。プレイヤーCも、少し手直しすればすぐにゲームに入れると思いますので」


プレイヤーC : 「はぅぅ……色々なスキルがありますの。私(わたくし)、迷ってしまいますわ……」


GM : 「それじゃぁ、先に自己紹介を初めてもらおうかな。出来ている人から頼む」



プレイヤーE : 「ラジャー了解ぃぃぃ! それではトップバッターはこの俺様! 優美かつ豪華な自己紹介をだなぁ」



GM : 「いや、オマエは最後だ」



プレイヤーE : 「ノオオォオオォ、ガッデーム! ホワァァイ。何故、何故ですかGM!」



GM : 「オマエは煩い上に濃いからな。トップで紹介して他の面子が気圧されでもしたら、大変だろう? だからだ」


プレイヤーE : 「ノォォ……ノォォ……ガッデェム……ガッデェム……GMには神の慈悲もないぜ……」


GM : 「慈悲をかけて欲しければ普段からそれなりの素行を心がけてほしいものだがな……さて、それでは…………プレイヤーAさんから、お願い出来ますか?」


プレイヤーA : 「あっ、は。はい、私からですね、わかりました。えぇっと、私の名前は……名前は、シュンスケ・ルディックと言います。ヨロシクお願いします!」


GM : 「…………」


プレイヤーD : 「へぇ、シュンスケ・ルディック……ですかい?」


シュンスケ・ルディック : 「は、はい。えぇっと……職業はメディックになります。眼鏡で白衣のグラフィックの……」


プレイヤーD : 「いやいやいや、それよりその名前はたしか……世界樹の迷宮エトリアの迷宮を制覇したアルケミスト……シュンスケさんと同じ名前じゃぁ無いんですかねぇ? そうですよね、GM」


GM : 「……たしかに、以前のプレイで使用していた名前だな」


シュンスケ : 「えっ!? そ、そうなんですか? す、すいません、私、存じ上げませんで……」


プレイヤーD : 「以前と同じ名前っていうと、前回の迷宮。エトリアを踏破した英雄さんと同じ名前、って事になるんでしょうが……いいんですかねぇ? 英雄と同名ってのは」


GM : 「……俺は別にかまわんが」


プレイヤーE : 「むしろ、同じ名前だからかつての英雄と間違えられて、この国では待遇がいいかもしれないな! 『おお、エトリアのギルドをひきいし勇者シュンスケよ! この伝説の剣をもって、迷宮を踏破しろ!』 ……なーんて、いきなり英雄待遇されるかもな!」


プレイヤーD : 「なるほど……それで、別人だっていうシュンスケ君が平謝りしている訳ですかい?」


シュンスケ : 「す、スイマセン! すいません! 私そんな英雄なんかじゃ……た、ただのしがない町医者なんです! ごめんなさい、人違いです!」


プレイヤーC : 「おじさま、もう平謝りしておりますわ」


プレイヤーB : 「まだ始まってないのにな……」


GM : 「わかった、名前はシュンスケ・ルディック……職業はメディックだな。あと、他にスキルや設定などがあったら教えてくれないか?」



シュンスケ : 「はい。年齢は、31歳で……スキルは、回復マスタリーをとって、キュアを習得しています。あと、博識を……迷宮では何かと知識が必要だとききましたので……」


GM : 「キュアと博識か……うん、回復役としては無難なスキル取りじゃないか?」


シュンスケ : 「はい。なにぶん、あまりゲームには不慣れなので……回復役の方が初心者には安心だろう、とプレイヤーBに言われ、このようなスキルに致しました。あの、至らぬ所はあると思いますが、何とぞヨロシクお願い致します!」 (ペコペコ)


プレイヤーD : 「あはは、そう遠慮なんてしなくてもいいと思いますぜ? ほら、旦那。楽に行きましょう、楽に。ね?」 (ぽんぽん)




GM : 「では、次は……プレイヤーB君、終わってたら自己紹介をお願い出来るかな?」


プレイヤーB : 「はい。俺は……名前は、アクセル・ガンズと言います。職業はガンナーです」


プレイヤーE : 「がんなー?」


GM : 「世界樹2で新規採用された職業だな。後列の攻撃特化職とでもいうか……属性攻撃から全体攻撃まで覚える職業だ」


アクセル : 「外見は、緑ガンナーで……このパーティには、どうやらアルケミストが不在みたいなので、まず銃マスタリーをとり、それから属性攻撃をとってます。アイスショットとサンダーショット。初期SPが3だったので、フレイムショットはレベルを上げてから取得しようかな、と思ってます」


GM : 「なるほど、たしかに属性攻撃は無いと苦戦を強いられる事もあるからな……」


アクセル : 「はい。皆さんの足りない部分は俺が補っていこうと思います」


GM : 「了解、それじゃ、次のキャラは……」




プレイヤーC : 「はいはいはいはいー! 出来ましたのー!」




GM : 「……よし、大きな声で自己主張しているな。プレイヤーC君、お願いしようか」


プレイヤーC : 「はい! プレイヤーCは、ローズ・トレイシーって名前ですの! ローズって呼んで欲しいですわ。金色の髪で、赤いドレスを着てますの。お仕事は、ドクトルマグスをやってますの!」



プレイヤーE : 「ドクトル……何だって?」


GM : 「ドクトルマグス……これも、世界樹2の新職業だ。回復、補助、攻撃などどんな側面でも対応出来るキャラだな……」


ローズ : 「私(わたくし)は、巫術マスタリーをとってキュアを覚えましたの! これで皆さんのお怪我を治しますわー!」


プレイヤーE : 「女の子の回復か、いっぱい回復しそうだな!」


シュンスケ : 「わ、私も一応回復役ですが……」




プレイヤーE : 「男の回復より女の子に回復してもらった方が嬉しいに決まってるだぉがぁぁぁ! ぼけがぁぁぁぁ!」




シュンスケ : 「う、すいません。私、役立たずで……」 (しょぼぼーん)


プレイヤーD : 「いやいや、実際回復の効果はメディックの方が上ですぜ、シュンスケさん、そんな顔しなさんなって」(ぽんぽん)


アクセル : 「そうですよ、シュンスケのアニキ! だからあまり気を落とさずに……って。おい、そこのブタ!




プレイヤーE : 「ぶぶぶ、ブタ! ブタとかいいましたよこの子! ブタはいけません、ブタは……人間に対してブタなんて口の利き方、どういう教育してるんですかこのガキんちょはもー!」



アクセル : 「……うるさい」(ジャキッ、と銃をかまえつつ)


プレイヤーE : 「うお!?」


アクセル : 「……はしゃぐのはいい。だが、アニキの……シュンスケさんの事をコケにするなよ。命が欲しかったら……な」


プレイヤーE: 「うぐぐぐぐ……」



ローズ : 「あと、ローズは伐採をとりましたわー!」


GM : 「伐採?」


ローズ : 「はいですの! 世界樹の迷宮は、きっと綺麗な所だと思いますの。ローズは、そんな森のお花とか、木の実とかいっぱいいっぱい集めますわ!」


シュンスケ : 「いいじゃないか! 素敵だと思うよ?」


プレイヤーD : 「たしかに素敵に聞こえるが、何だろうねぇ。伐採というと、木の実をとる。というより……木ごとブッた斬るってイメージがあるのが、難点でさぁねぇ……」


GM : 「そして、ローズ君がこれだけほのぼのしている最中……」



プレイヤーE : 「おー、殺せるもんなら殺してみろってんだ、この尻の青ぇ若造がよぉー!」(ぎりぎりぎり)


アクセル : (ダキューン、ダキューン)




プレイヤーE : 「うおおおおお! ほ、本気で撃つ奴があるか、ぼけー!」


アクセル : 「殺せと命令されたから望み通りにしてやったまでですが? 何か?」



GM : 「……早くも仲違いしている輩がいるのだが、大丈夫かこのギルド?」


プレイヤーD : 「あはは、長く迷宮に顔をつきあわせてれば、何とかなりましょうって。さて、次はアタシが名乗りをあげても、よござんすかね?」


GM : 「あぁ、頼む」




プレイヤーD : 「はい、アタシの名前は 御子神善鬼(みこがみぜんき)と申します……」


プレイヤーE : 「ん、名前の元ネタは御子神典膳か? たしか、徳川将軍家の剣術指南役にもなった剣豪、小野忠明の旧名……だったか」


ミコガミ? : 「あはは、よぉくご存じでらっしゃいますねぇ……いかにも、その御子神典膳と、彼の兄弟子である善鬼から名前を拝借したんでさぁ」


プレイヤーE : 「いやぁ、昔太閤立志伝5で剣豪プレイしてたからねぇ! 剣豪にはちょっと、詳しいんだよな」


GM : 「……うム、しかしその長い名前では登録出来ないだろうな。ミコガミで登録するか? それとも、ゼンキ?」


ミコガミ? : 「いや、この大仰な名前がコッチでは呼びにくいのは、当人も充分察しておりますからねぇ……そう、ここは東の方から流れてきた剣士という事で、アズマと名乗っておきましょうか……よござんすか?」


GM : 「あぁ、構わないだろう。この街では、偽名でも何でも問題ないようだからな……それで、アズマ。キミの職業は?」


アズマ : 「はい。まぁ、この名前でもお察し頂けるかと思いますが……アタシは、剣豪。ブシドーをやらせて頂いております。スキルは、青眼の構えがレベル1と小手打ちがレベル1」


アクセル : 「青眼?」


GM : 「封じ技と雷系の属性攻撃を覚えるスキルだな」


アズマ : 「それと、ちょいと鞘撃も取らせて頂きやした。うちの前衛、ドクマのお嬢ちゃんは剣メインのようですし、壊属性の攻撃手段もあった方がいいかと思いまして。アタシのスキルは、以上ですかね」


GM : 「了解した、それじゃ最後……プレイヤーE、紹介を頼む……」


プレイヤーE : (低く渋い声で、ナレーション風に)「数多の試練を乗り越え、ついにこのハイ・ラガードに来た奇跡の天才。それがこの俺……かつて学院と呼ばれた賢者たちのつどう街で教鞭をとっていたが、かつての教え子が……」


アクセル : 「……長くなりそうなら、かいつまんで話してくれませんか? 時間の無駄なんで



プレイヤーE : 「ちょっ、無駄ってなぁ! これでも俺には熱い設定が一つや二つ、三つに四つあってだ……」




GM : 「アクセルの言う通りだ。時間の無駄になる。モノローグを続けるくらいなら、名前と職業だけ言ってくれ」


プレイヤーE : 「あーもー、折角設定考えてきたのになーくそー……名前は、ミクトラン・ソドマ。職業はカースメーカー、白カスメだ!」


アズマ : 「ミクトラン……たしか、アステカ神話の冥府……でしたっけ?」


ミクトラン : 「んーだなーや。 とはいえ、自分はこの大仰な名前とか好きくないから、単純に登録名はミクトね」


GM : 「なるほど……ミクトラン・ソドマという名前は前作『さばみそギルド』の出資者の名前と一緒だが……」


ミクト : 「……あぁ、一応前作と関連あるキャラが居た方がいいかなーと思って、俺気を利かせた! かつて教え子だった男が、エトリアの迷宮を踏破したという噂を聞きつけ、 『何をー、教え子が出来るなら俺もやったるー!』 って気になって、迷宮のあるハイラガにやってきた、って設定ね」


GM : 「なるほど……それで、スキルは何をとった? カスメは取得出来るスキルが多いからやりくりが大変だろうが……」




ミクト : 「呪言マスタリー3!」



GM : 「…………!」


アクセル : 「……は?」


ミクト : 「だから、呪言マスタリー3! もうどんな呪言もつかえるーだろ、3なら! ほら、呪言レベル3の魔法表をくれ!」


アクセル : 「……呪言マスタリー3って、アンタひょっとして何のスキルも持ってないのか!?」


ミクト : 「え? ……呪言マスタリーをとれば、自然とスキルを覚えられるシステム……とかじゃ、無ぇーのか?」


GM : 「……」


アズマ : 「…………」



アクセル : 「違うよバーカ! …………全く、貴方はいままで他のプレイヤーの自己紹介の、何を聞いてたんですか! 何をっ!」(ぎりぎりぎり)


ミクト : 「いたたたたた! ちょ、ボク、耳はやめなさい耳は! 人間耳は鍛えられないんだからそんな風にあつかったら。うぁぁぁ、痛い痛い痛い痛い、切れる。きーれーる!」(じたじた)


アクセル : 「あーもーヤダ! アニキ、このカスメはここに捨てて、4人で探索しましょう! こんな奴、居てもいなくても一緒ッスよ!」


シュンスケ : 「ま、まぁまぁ……レベルが上がればSP(スキルポイント)が貰えるんだから、レベルがあがるまでまとう。な、アクセル? ケンカは駄目だよ?」


アクセル : 「あ、アニキ……まぁ、アニキがそういうのでしたらガマンしますが……」


ミクト : 「そうだ、ケンカは駄目だぞ!」


アクセル : (ジャキッ)


ミクト : 「うおっ!?」


アクセル : 「オマエに指図される筋合いはないからな、オッサン……」




ミクト : 「おおお、オッサンって言われましたよ! オッサンって! 俺はまだ若いっつーの!」




ローズ : 「……何だかいきなり、アクセルが白カスメのおじさまと喧嘩などを始めてしまいましたわ〜」


シュンスケ : 「あああ、アクセル〜。ここは、穏便に。穏便に、な?」


アズマ : 「ちょいと、こりゃぁ先行き不安だねぇ……」


GM : 「……まぁ、何とかなるだろう。それでは、世界樹の迷宮2……ハイ・ラガード公国を舞台にしての、新たなる迷宮への挑戦を始めたいと思う。みんな、よろしく頼むぞ!」




一同 : 「「「よろしくお願いしま〜す!」」」





> 新ギルド最初の試練



GM : 「さて、かくしてキミたちはハイ・ラガード公国へとやってきた。ここは大陸の北方にある高地で、奥には巨大な木が見える。どうやらこれが、神木と呼ばれる街のシンボル。世界樹のようだ」


ローズ : 「うわぁぁぁ、おっきー、おっきー木ですわー、おじさま、アクセル、すごーい大きな木がありますわよー」(きゃっきゃ)


シュンスケ : 「うわっ、そんな引っ張ったら駄目だよ、ローズ」 (おたおた)


GM : 「このハイ・ラガード公国では今、おふれが出ている……能書きは長いのだが、要約するとこの神木・世界樹の頂上に空飛ぶ城があるらしい、その伝承を確かめる冒険者を募集する、ってものだ」


アズマ : 「天空の城ねぇ……」



ミクト : 「ラピ○タ! ラ○ュタだな! 流行りの服はキライですか? ふははは、人がまるでゴミのようじゃぁぁぁぁ!



アクセル : 「オマエ、一人で喋りすぎだ。少し黙れ」(ジャキッ)


ミクト : 「ぎゃー、止めてー、暴力反対ー。銃刀法違反ー! 憲兵さん、この人です逮捕してー」


GM : 「などとやってるのを横目に、キミたちは冒険者のギルドに来た。この街に来た冒険者は、まずこのギルドに所属を書く……ハイ・ラガード公国では今、迷宮に挑む冒険者は全て『国民』として迎え入れる準備がしてあるらしい」


シュンスケ : 「それは好都合ですね……」


アズマ : 好都合ですかい?」


シュンスケ : 「あ、はい。私と、アクセルとローズは……元々、別の土地にある孤児院で暮らしていたのですが、賊にその孤児院が荒らされ……行くあてがなくなっていた所でしたので、国民として受け入れて頂けるのなら是非もないなぁと、そう思いまして」


ミクト : 「そういう設定なのか……うう、苦労してるねぇ……よし、おっちゃん人肌脱ぐ! オマエたちの手助けしちゃる! ……みたいな感じできっと、俺はこいつらと連んだんだろうな」



アクセル : 「お断りします。お帰り下さい」



ミクト : 「えぇええぇええ、そう言うなよー!」



アズマ : 「アタシもきっと、ミクトの旦那と同じようなタイプでしょうねぇ……元々、腕試しに面白そうだと思ってコッチに流れてきたら、子供かかえてチョロチョロしている、冒険者とは思えない風体のシュンスケさんを見て、放っておけなくなった……って所でしょうか」


シュンスケ : 「ううう、皆さんすいません。私、とにかく子供たちを育てなきゃならないんです……」(めそり)


GM : 「うむ、とにかくキミたちはそうして冒険者として流れ着き、冒険者ギルドに所属する事になった」


ローズ : 「ギルド? ぎるどって、何ですの?」


アクセル : 「組合の事だよ、ローズ……昔は、特に商人なんかがギルドをつくって、モノの値段その相場を相談したり、やれどこの店で何が安いと情報交換したり、品質をチェックしたり、新人の教育をしてたんだけれども……」


アズマ : 「冒険者ギルドは差詰め、栄光を求め街に押し掛けてきた冒険者たちを管理する施設って所でしょうかねぇ?」


GM : 「そういう事だな……さて、キミたちが冒険者としてハイ・ラガード公国に赴いて先ず案内されたのが、その冒険者ギルドだ。ギルドには、重々しいフルプレートアーマーを装備した人物が立っている。顔もすっぽり隠している為、男か女かはわからない、だが……。 『この国に来たのなら、冒険者とはいえ国民だ』 等と語る声はやや高いから、女性なのかもしれない」



ミクト : 「無骨な鎧の下にある可憐な美女か……素敵だな!」


アクセル : 「……何で美女だって分かるんですか?」


ミクト : 「隠してあるもんは、古今東西美しいって相場が決まってんだろーがー! きっと金髪碧眼の麗しい美女だーぜー! たはー、萌えるな!


アクセル : 「…………はぁ」(溜め息)



ミクト : 「うわっ! ……すっごい見下したような目で見た後、駄目だこいつって溜め息つかれたよ! でも負けない。ミクトつおい子だもん!」



シュンスケ : 「えーと、ここでは名前を登録しないといけないんですよね? 名前……私の名前は、シュンスケ・ルディックだから……」


GM : 「と、そこでキミの名前を見たギルド長が驚いたように顔を上げる。 『シュンスケ・ルディック……よもや、エトリアの迷宮を踏破したあの、シュンスケ殿か?』


シュンスケ : 「い、いえ、私は……」


GM : 「(ギルド長)『さばみそギルドの活躍は耳にしている! ……これはキミきたら渡して欲しいと、ある男から託されたものだ。受け取ってくれるね?』 と、ギルド長は輝く王冠と取り出した……」


シュンスケ : 「い、いえ。違います! で、ですから私は……その方とは、偶然同じ名前なだけでして……」




ミクト : 「はぁい! いかにも、こちらにおわす方こそ迷宮を踏破したあの伝説の! シュンスケ・ルディック様でございまぁっす!」




シュンスケ : 「ちょ、ミクトさぁん!」


ミクト : 「いいじゃねぇの、間違えているとはいえ、何かくれるってんだ。素直にもらっておこうぜ!」


シュンスケ : 「で、でも、それは詐欺じゃ……」


アズマ : 「アタシも、ミクトの旦那の意見に賛成でさぁ。これから迷宮、何があるかわかったもんじゃない。くれるもんは、貰って置いたほうがいい……冒険には、多少の狡さも必要ですよ……よござんすね?」


シュンスケ : 「ううう……はい、わかりました……では、それを受け取ります」


GM : 「王冠を手にすると、急に周囲は色めき立つ。 『おお、あれが噂のさばみそギルド!』『なるほど、彼らはやってくれそうだ!』 と」


シュンスケ : 「あああ、あまり目立つのは恥ずかしいんですが……」(汗)




ミクト : 「うへへへへへ! そうさ、この方こそエトリアの迷宮を踏破したシュンスケ様だぜぇ、ほら。お前らー! 頭が高ぇぇー! 控えおろうぅぅぅ!」



シュンスケ : 「あああ、や、やめてくださいミクトさん! ははは、恥ずかしいです……」



ローズ : 「えっへん! そうですの、おじさまは凄いんですわよー! 何せ、素手でヒグマを仕留めた事がある猛者ですのよね!」



シュンスケ : 「ああああ、もう、ローズまで全く……!」



GM : 「と、一気に有名人になったキミたちは、宿でも……商店でも、一躍時の人となる。そんな最中、最初に声をかけてきたのは冒険者の酒場を経営する主人だ。 (酒場の主人)『よぉ、オマエさんがたがエトリアの英雄かい! とにかく、ちょっと顔貸してくんねぇかな?』



アクセル : 「酒場の主人?」


ローズ : 「はうう……ローズは、まだお酒飲めませんの。おジュースを頂けます?」



GM : 「酒場の看板には、鋼の棘魚亭と書かれている。酒場の主人は、ローズにオレンジジュースを差し出すと気さくに話しかけてくるな。樽のような体格で、いかにも陽気そうな。だが冒険者を長く見続けているから、その視線は厳しくもある男だ。 (酒場の主)『よぉ、英雄殿。あんたらが来た噂は聞いてるぜ。勿論、迷宮には潜るんだろ?』


シュンスケ: 「あ、あ、は。はい、とりあえず食い扶持くらいは稼ぎたいので……」


アズマ : 「ちょいと、シュンスケの旦那。アンタは英雄役なんだから、あんまりシケた事言うのは無しにしましょうや……アタシは刀の腕を磨くって目標がありますからねぇ、出来れば奥の奥まで、ずずずいっと探索するつもりですよ?」


GM : 「(酒場の主人)『おいおい、英雄のわりには謙虚だねぇ……能ある鷹は爪を隠す、って奴か? いや、だがもし迷宮に潜るんなら、先ずはラガード公宮に行っちゃくんねぇか』


アクセル : 「公宮?」


GM : 「ハイ・ラガードで冒険者たちにおふれを出している場所だな……。 (酒場の主人)『英雄様が来ているって事で、あんたらに仕事を頼みたいって連中もチラホラ居るんだが、この国では迷宮の試練を突破したモノにしか仕事を頼めない事になってんだ……さァさ、そのジュースはおごりにしておくから、とっとと試練を突破して、ウチの仕事を受けてやっちゃぁくれねぇかねぇ?』


アクセル : 「ふぅん……つまり、このハイラガって国では冒険者が、おふれを達成出来る程の力量があるかどうかそのテストがある、と」


ミクト : 「そんでもって、そのテストに受からないと冒険者として、国民として認められないって事か。かー、簡単に国民にはなれないって事か。めんどくせぇーなぁー」


GM : 「まぁ、際限なく冒険者たちを入れていたら見込みのない難民だらけになるから、苦肉の策なのだろう……さぁ、ハイラガ公宮に行くか?」


シュンスケ : 「……選択肢は他になさそうですね。仕方在りません、出向きましょう」


GM : 「ん……こうしてキミたちがハイラガ公宮に向かうと、出迎えたのはすっかり腰が曲がった高齢の男性だ。 (大臣)『聞いておりますぞ、たしかさばみそギルドを率いていた……いやいや、英雄がこの探索に乗り出すとは、心強い限りです……』


ミクト : 「高齢の男? 何だ、エラそうなじいさんか?」


GM : 「身なりからすると、かなりエラそうだな……薄手のローブはかなり上等な素材で出来ている。というか、ぶっちゃけて言うとこの国の大臣にあたる男だな。視線は鋭く、冒険者たちを値踏みするように見ている」




ミクト : 「偉そうな、大臣か……。よしわかった! ……こいつを倒そう!」




ミクト他一同 : 「「「エェェエエェェー!?」」」



アクセル : 「い、い、いきなり何を物騒な事言ってるんですか、貴方は!」


ミクト : 「だぁって、こういう時に出てくるこの、ハゲチャビンな狡猾そうなジジイといえば、悪の親玉に決まってるだろー、きっと賄賂とかもらってるぜ賄賂! 山吹色の菓子! 後に迷宮踏破の直後 『よくぞここまで来ましたな……だが宝はわたん、しね!』 みたいな事をされる前に、今遺恨をたったほうがいいって!」




アクセル : 「仮にそうだったとしても、今そんな事をしたら俺たちは大臣殺しの大悪党ですよッ!」



アズマ : 「来たばっかりのハイラガで、いきなりお尋ね者になって逃げまどうハメになるのは遠慮したい所でさぁね」


ローズ : 「大丈夫ですわ! おじいさまは、ローズが絶対に殺させたりしませんの!」


ミクト : 「な、な、何をー! 知らねぇーぞ! 後で、宝の山直前になって、『ふふふ、よくここまできたな若造!』とか言われて、宝をぶんどられても知らねぇーからな! たけしの挑戦状みたいな事になっても知らねぇーんだぞ!



GM : 「……続けていいか?」



ミクト以外一同 : 「どうぞどうぞ」



GM : 「大臣の話は長いが、要約すると 『この国の民に。冒険者になりたかったら試練を受けて欲しい』『冒険者としての目標は、空飛ぶ城を見つける事』『迷宮で見つけたものは好きにしていいけど、珍しいモノを見つけたら報告してほしい』『試練については、迷宮にいる兵士が知っている……』 と、いった所だな」



ミクト : 「要約しても長いな」


GM : 「本当はもっと長いぞ? 何ならその長台詞を、一字一句間違えず言ってやろうか?」


ミクト : 「い、いや、いい。今日は遠慮しておく!」


シュンスケ : 「と、とにかく……迷宮にいって、兵士さんに話をきいて試練を受ければいいんですね?」


GM : 「そういう事だな」


アズマ : 「だったら善は急げって奴です、早速迷宮に行ってみましょうや……アタシは刀の腕を磨きたい。シュンスケさんたちは、この国の国民に認められたい。利害は一致するし、共闘は悪い条件じゃ無いでしょうからねぇ」


シュンスケ : 「ありがとうございます、アズマさん。助かります!」


アクセル : 「じゃぁ、あそこの白髪あたまは特に利害もないですから、置いていきましょうか?」




ミクト : 「ノォォォ! ノォォォ! 連れていって! 俺も連れていーってー!」(じたじた)




GM : 「……と、そんな男の雄叫びを背後で聞きながら、キミたちは初めてハイラガの迷宮へと足を踏み入れるのであった」




> 地下一から帰還せよ!




GM : 「かくしてキミたちが最初に足を踏み入れたのは、古跡ノ樹海……深緑も眩しい、暖かな日差しの入る穏やかな森に見える」


ローズ : 「きゃー、お花がありますわ! アクセル、私お花を摘んでもよいですか?」


アクセル : 「いいけど、ここには怖い魔物がいるんだから、気を付けろよ?」


シュンスケ : 「たしか、大臣さんの言う通りならここに兵士がいるんですよね、どちらに居るのでしょうか……?」


アズマ : 「さぁて……とりあえず、道は真っ直ぐにしか無いようですし。ここは一つ、暫く真っ直ぐに進んでみましょうか?」



GM : 「そうして進んでると、すぐに一人の兵士が気さくに声をかけてくれる (兵士)『聞いてるよ、キミたちがエトリアを踏破した、さばみそギルドの英雄たちなんだって?』」


シュンスケ : 「あ、はい……そういう事になってます。一応」


アクセル : 「アニキ、もっと堂々としててくださいって!」


GM : 「(兵士)『大臣からも話は聞いてるよ。試練を受けるんだって? ……なに、エトリアを抜けた君たちなら大丈夫だよ。さぁ、こっちへどうぞ……』 と、キミたちはいきなり兵士に、ずんずんと迷宮の奥につれていかれる」


シュンスケ : 「ちょ、まってください、足、早いですよー」


アクセル : 「こんな、いきなり迷宮の奥につれていってどうするつもりなんですか? 魔物とか出るんじゃ……」


GM : 「うむ、どうやら兵士は何か、魔物よけの鈴みたいなものを鳴らしているようだな……と、有る程度奥に進むと、兵士は足をとめる。 (兵士)『さぁ、ここから来た道まで、地図をつくりながら戻ってきてくれ。それが、迷宮の最初の試練だよ』




一同 : 「エェェエェェェェエェェー」




シュンスケ : 「……そ、そ、そんな! 初めて来た場所ですよ、そんな道なんて覚えてないですよ」(あせあせ)


アクセル : 「こ、ここはモンスターが現れる場所じゃないんですか!? そんな、いきなり放置されて……もし倒れたら……」


GM : 「だが兵士は、焦るキミたちを後目に早々と立ち去ってしまった。 (兵士)『それじゃぁ僕は迷宮の出口付近でまっているから、地図をつくって帰ってくるんだよ……』」



ミクト : 「なーんだよー、いきなり放置プレイ! 放置プレイかよ!」



ローズ : 「放置プレイですの! ほーちぷれーですのー! ローズ、放置プレイされてしまいましたわー」



アズマ : 「……ミクトの旦那、小さいお子さんが居るんですからあんまりそういうネタ、控えてくれませんかね?」


ミクト : 「……うム。 今俺も、激しくそう思った」


シュンスケ : 「はぁ……とにかく、出口を目指して進むしかなさそうですね……幸い、地図には現在地も書いてありますし、出口の方角も分かっていますから、地図を書きながら出口を目指しましょう」


アクセル : 「そうですね……あ、アニキ。地図は俺が書きますよ」


シュンスケ : 「ごめんね、アクセル。ありがとう」


アズマ : 「さて、それじゃぁアタシは前に出ておきましょうかね……」


ローズ : 「きゃー、向こうに蝶々さんがいますわー! シュンスケのおじさま! アクセル! 早く先に進んでみましょう〜!」(ぱたぱたぱた)


シュンスケ : 「ああああ! だ、だ、駄目ですよローズ、勝手に進んだら……」


GM : 「……そうして、無防備に進んでいくローズの周囲に、ガサガサと巨大な獣が蠢く音が聞こえてくる」


ローズ : 「がさがさ、ですの? ネコさんとかおりますかしら?」


アクセル : 「下がれ、ローズ! こんな所にネコなんて可愛い生き物が居るわけない、きっと危険な生き物だ!」


GM : 「……アクセルの叫び声と同時に、2つの影がキミたちの前へと躍り出る……さぁ、戦闘だ! 敵は……針ネズミ2体だ」


ミクト : 「……針ネズミ? 超音速?


GM : 「音速で走る青いハリネズミは、メーカーの垣根をこえてしまうから出演は無しだな」



シュンスケ : 「なんだぁ、ハリネズミなら危険はないですよぉ」


アズマ : 「ハリネズミを、知っているんですかい? シュンスケの旦那?」


シュンスケ : 「はい! ……以前、友達がペットで飼っているのを見た事があるんです。……針のような棘をもっているので危険に見えますけど、本当はとっても臆病な動物ですから、恐れる相手ではありませ……」


GM : 「……などといっているうちに、ハリネズミはシュンスケの身体を捉える! ダメージは18!」 (ずがごっ!)




シュンスケ : 「ふぁぁぁぁぁぁっ!?」




アクセル : 「アニキ! アニキ、大丈夫ですか!?」


ローズ : 「きゃー、おじさまー! おじさまの間接が曲がらない方向に曲がってますの!」


シュンスケ : 「……あ、あれ……おかしい、なぁ……怯えてるの、かな……?」 (血ぃどくどく)


アズマ : 「おやおや……どうやら相手の方、アタシらが常識で知っているハリネズミとは別の種類の生き物みたいだねぇ……油断しているとやられそうだ、さて、アタシが少し仕置きしてさし上げましょうか……」


ローズ : 「ローズも戦いますわ! おじさまの仇を打ちますの!」


シュンスケ : 「べ、べ、別に僕はまだ死んでないよ、ローズ……」 (血ぃどくどく)


GM : 「針ネズミ一体に、攻撃をたたき込むんだな……うム、流石に全員の集中攻撃には耐えられない。針ネズミ一体を屠った。だが、もう一体の攻撃は飛ぶ……前衛は、アズマと誰だ?」


ローズ : 「ローズが出ておりますの!」


アズマ : 「だとすると、アタシが攻撃を受けると致しましょうか……初めての迷宮で、初っぱなからお嬢ちゃんの身体を盾にするたぁ、ブシドーの心意気に反しまさぁ」


GM : 「なるほど。では、アズマが盾になる形で敵の間に入る、ダメージは……18。減らしておいてくれ」


アズマ : 「……何と、思いの外体力もっていきますねぇ。いやいや……もう一発喰らったら命が無さそうでござんすよ」(苦笑)


GM : 「ブシドーは高い攻撃力の反面、装甲が殆ど紙という職業だ。致し方ないな」


シュンスケ : 「だ、大丈夫ですか? すぐに次のターンに回復を……」


アクセル : 「いや、アニキの回復はどうしても後手にまわりますからね……今の行動スピードだと、敵の方がアニキより早く行動しますから、下手すればアズマさんがもう一撃喰らって堕ちるかもしれませんよ」


シュンスケ : 「あああ、そうですね。私はどうしたら……?」


ローズ : 「ローズが回復致しますわ! ローズの回復は、針ねずみ様より早いですの! 私なら、アズマ様の回復が間に合いますわ!」


アズマ : 「お嬢ちゃん……恩に着まさぁ」




GM : 「じゃぁ、次のターンだな? ……このターンでは最初にローズの回復が飛び、ひとまずアズマは死地を脱する」


ローズ : 「アズマ様ー、痛いの。痛いの、とんでいけー、でーすわっ!」


アズマ : 「あはは……ありがとうございまさぁ、身体が軽くなったようでさぁ」


ローズ : 「ですの!」


GM : 「だがすぐに針ネズミの鋭い爪が、アズマの身体を切り裂く! ……同じだけダメージを減らしておいてくれ」


アズマ : 「う! ……はぁ、死地を脱したと思ったらまた死地だ。ままならぬもんですねぇ……」


ローズ : 「大丈夫ですわ、私また回復させますの!」


アクセル : 「だけど、次の攻撃が来る前にアイツを仕留めれば問題はない! ……アズマさん、行きますよ!」


アズマ : 「委細承知! ……アタシの刀、この切れ味。その身をもって知るがいい! ……なぁんて、どうでしょう?」


GM : 「うム……利いてるな。針ネズミは痛そうにその場でうずくまっている」


アズマ : 「ありゃ、まぁ……ちょいと仕置きが過激すぎましたかね?」


アクセル : 「でも、手心を加えてやる義理はないですよ! ……こっちだって命とられそうなんだ、本気でやらないと……俺も撃ちます! ダメージは?」


GM : 「うム……あと少し、といった所だろうか。キィキィ鳴きながらも闘争心は失わずぎらぎらした目でこちらを見ている」


アクセル : 「うーん、仕留め損なったな」


シュンスケ : 「だ、だったら私が殴ります! 後衛で杖ですが……それっ、どうでしょう?」


GM : 「……ム、思いの外ダメージが蓄積されていたな。その一撃で針ネズミは倒れる。キミたちは、初めての迷宮で出会ったモンスターに勝利した!」




一同 : 「「「やったー!」」」 (ぱちぱちぱちぱち)



アクセル : 「……って、ちょっとまってください。今の戦闘、何か一人全く戦ってなかった奴居ませんでしたか?」


シュンスケ : 「えぇっ。そうだったかい?」


アクセル : 「アニキは目の前の敵に夢中だったから気付かなかったかもしれませんが、俺は隣だったからよくわかりましたよ……オマエは何をしていたんだ、おいそこの白カスメ!」(ぎりぎりぎりぎり)




ミクト : 「ぎゃーっ、バレた! 息を潜めて成り行きを見守っていたのが、ばーれーたーよー!」



アズマ : 「何だ、さっきからたしかに一人足りない気はしてましたが、ミクトの旦那だったんですかい」


ミクト : 「だだだ、だって仕方ねーだろ! 俺は、元来か弱い職業なんだから、殴り合いの仕事ってのは向いてねーんだよ!」


アクセル : 「何のスキルも持ってないオマエは、殴り合い意外の仕事も出来ないんじゃないんですかね?」



ミクト : 「そ、それを言われると図星ではあるが! ……だが一応、心の中で念を送ってたりしたんだよ! カースメーカーとして、敵の攻撃がミスりますようにとか。そういう呪いを脳内で念じてたりはしたんだからね!」



ローズ : 「……ミクトのおじさま、ただ見ているだけでしたの?」 (じーっ)


ミクト : 「うっ! ……いやー! やめてくれー、そんな少女の無垢な瞳で俺を、見ないでくれー!」 (じたじた)


ローズ : 「アクセルも、おじさまも、アズマ様も……皆頑張っている時に、ミクトのおじさまだけ見ているだけだったとか……私、とっても悲しいですわ……」(しょぼーん)




ミクト : 「ふぉぉぉぉぉ! アクセルに説教くらっている時は何も感じなかったというのに、幼女の視線を浴びせられると急に罪悪感が胸に疼く! 胸に疼くよ!」




アクセル : 「何で俺の説教は耳に届いてないんですか? ……まったく、このロリコンめ


アズマ : 「あははは……まぁ、これ以上ローズのお嬢ちゃんを幻滅させない為にも、次は杖で殴る位の仕事はしたほうがいいですぜ、旦那?」


ミクト : 「うむ、そうする……」




シュンスケ : 「それでは、ひとまず先に進みましょうか。アクセル、地図はどうです?」


アクセル : 「はい……えぇっと、大丈夫です。きっちり書けてます」


アズマ : 「はぁ……敵さんの攻撃、思ったより厳しいみたいですねぇ。ぶらぶら、寄り道でもしながら帰路につこうかなぁと思いましたが、これは寄り道しすぎるとこっちの命も無さそうだ。早々に出口に向かいましょう」


ローズ : 「はいですの! ……こんな恐ろしい怪物がいっぱい居る所では、おちおちお花も摘めませんわ」


GM : 「うム……そうして、キミたちはさらに奥へと進んでいくと、無数の花々が色とりどりに咲き乱れる小部屋へと到着する」




ローズ : 「!? きゃー、すごーい。見た事もないお花がいっぱい咲いてますの! アクセル、アクセル……お花を、摘んできても宜しいですの?」



アクセル : 「駄目だ、ローズ。さっきの化け物を見ただろう? ここは危険なんだ。それより出口を目指して進むぞ……いいね?」


ローズ : 「は、は、はいですの……」 (しょぼぼぼぼぼぼぼぼぼーん)


ミクト : 「おいこらアクセル! ……おまえはこの、ローズちゃんの可憐な頼みが聞けないのか! ……見ろ、こんなに落ち込んで。ローズちゃんが可哀想だとは思わないのか、おい!」


アクセル : 「別にそんな事は……ただ、俺は。まだここは危険だろうから……」



ミクト : 「馬鹿タレが! ……迷宮には最初から危険はつきものだろうが! 危険だから、危険だからと言って全て禁止していては、ローズちゃんはいつまでたっても希望だった花摘みが出来ないであろう! 危険から守るのは我々の勤めでもある! という訳で……いいぞ、ローズちゃぁん! おじさん達が守ってあげるから、好きなだけ、花を摘んでくるといい!」


アクセル : 「おい! 白オヤジ! 何を勝手に……」


ローズ : 「本当ですの? 本当に、花を摘んできてよろしいんですの?」


ミクト : 「うむっ! ガンナー小僧が許さなくても、この俺が。大人として許す!」


ローズ : 「わーい! ……わたくし、おじさまとアクセルにお花の首飾り作ってさし上げますね!」


アクセル : 「このっ、カスメオヤジ。何を勝手に……!」


ミクト : 「いーじゃ無ぇーかよ。あんなにローズちゃん喜んでるんだぜ!」



ローズ : 「〜♪ 〜〜♪ 〜〜〜♪ 〜♪」



ミクト : 「オマエさんの意見はたしかに正しいよ。ここは危険だから、何かあったらいけないから。ってそれから彼女を遠ざけるのはな。だけど、そうやって彼女のしたい事を全て取り上げちまうの、おじさん、残酷な事だと思うぜ?」


アクセル : 「……っ!?」


シュンスケ : 「まぁまぁ……折角ですから、少し休憩しましょう。この花のニオイは心地よいですし……ここは日差しも温かいですよ」


アズマ : 「そうですねぇ……アタシも、魔物の返り血がついた刀を少し手入れしておく事に致しやしょう」


GM : 「そうして、キミたちは思い思いに休息をとっている。すると……」


シュンスケ : 「………………」


アズマ : 「ん? 急に無言になって、どうかしやしたか、シュンスケの旦那?」


シュンスケ : 「いや、何でしょう……何か、こう、ざわざわと嫌な予感がしてきたのですが……」


ミクト : 「そうかぁ? ……俺は何も感じないけどな」


ローズ : 「お花の冠が出来ましたわー! おじさま、どうぞ!」


GM : 「そうして、ローズが皆の元へと駆け寄った直後だった。突如、森はざわめきキミたちの周囲に魔物が集まってくる……さぁ、戦闘だ! 敵は、毒吹きアゲハ2体!」



ローズ : 「ほぇ?」


シュンスケ : 「いけない、ローズ! 早くこっちに来るんだ!」


アズマ : 「なるほど……香しい花があればそこに蝶が舞うのも道理。そしてこの樹海では、悪意の性質をもつ魔物が現れるのも道理。って所ですかい……よござんすよ、お相手致しましょうか!」


ミクト : 「……みればすでに囲まれてるみたいだなぁ! あはは、こりゃ仕組まれたか!」


アクセル : 「……だから俺は危険かもしれないって忠告したんですよ」


ミクト : 「はっはー、だがアイツらをヌッ殺せばいい事だろ! さぁやろうぜ。 ……俺も、精一杯応援するからな!」


アクセル : 「この役立たず……!」


GM : 「では、戦闘だ。キミたちもコマンドを頼む」



アズマ : 「さぁて、アタシはどうしますかね……ちょいと、この敵はさっき戦った針ネズミよりお強い気がしますよ。ここは、鞘撃……いや、小手打ちを仕掛けておきやしょうか」


ミクト : 「……小手、あるのかな。あの敵に」


アズマ : 「そこはちょいと、アタシも気になる所ですが……」(笑)


GM : 「小手打ちはあくまでスキルの名前だ、気にしないでくれ」(笑)


ローズ : 「ローズも攻撃しますの!」


シュンスケ : 「怪我人はおりませんよね? では、私は杖で殴りに行きます。微力ですが皆さんのお手伝いをしないと……」


アクセル : 「俺も、スキル攻撃を……アイスショットか、サンダーショットか。ここはサンダーショットにしておこう。撃ちます!」


ミクト : 「では、俺は応援を……」


アクセル : (ギロッ)


ミクト : 「わ、わ、わかりましたよー! 戦います、戦います。戦えばいいんだろー、畜生ー……どうせ一桁にしかならんだろうけど、杖でなぐーりまーす。っと」





GM : 「では戦闘だな。行動順番は、ローズからか」


ローズ : 「やっつけますの! ……当たりまして?」


GM : 「あたってはいる。大したダメージではないが……」


ローズ : 「……しょんぼり、ですの」


アズマ : 「さぁて、嬢ちゃんに追撃といきたいところですが、アタシはもう少し行動は遅れますかね?」


GM : 「そうだな、スキル攻撃となると行動順番は遅くなる」


ミクト : 「それじゃ、俺の攻撃だな! 杖で激しくぶん殴る! さぁダメージは!」


GM : 「3」


ミクト : 「なん、だ、と……! こいつはきっと、杖攻撃に耐性を持つモンスターに違いない」(笑)


シュンスケ : 「私の攻撃は7のダメージを与えてましたから、別に杖攻撃に耐性がある訳ではなさそうですよ」(笑)


アクセル : 「下がってろ白あたま! ……サンダーショット!  これでどうだ」


GM : 「ダメージは入る。が……まだピンピンしてるな」


アクセル : 「チッ!」


アズマ : 「それじゃぁ、アタシの攻撃としゃれ込ませて頂きやしょうか……小手打ち、いきやす! よござんすか?」


GM : 「うむ……かなり利いてるな。だが、まだ落ちない。残りの体力は僅かではあるが」


アズマ : 「おやおや……打ち損じましたねぇ、アタシとした事が、こりゃ良くねぇや……」


GM : 「こっちの攻撃、毒吹きアゲハ1の攻撃は、アズマに。ダメージは22だ」


アズマ : 「はいはい……って、これはマズイねぇ。もう一匹の集中砲火を受けたら、アタシはもうお陀仏ですよ」(苦笑)


GM : 「もう一匹の攻撃は……毒のリンプンだな。こいつは、全体に毒のバステを付加させるスキルだ」


アズマ : 「おおっと、危ない危ない……アタシは耐えたみたいですぜ?」


ローズ : 「ローズも大丈夫でしたわ〜」


シュンスケ : 「私も、毒にならなかったみたいですが、大丈夫ですか。アクセル? ミクトさん?」


アクセル : 「っ!? ……すいません、アニキ。俺は、毒入りました」


ミクト : 「ぶはははは、オマエだけ毒入ってやんの! ざまぁねぇなぁ!」


アクセル : (じろっ)


GM : 「それじゃ、ダメージを入れてくれ。毒吹きアゲハの毒ダメージは、毎ターン25だ」


ミクト : 「25!? それ、体力殆どもっていかれないか?」


シュンスケ : 「あああ、だ、だ、大丈夫かい、アクセル?」


アクセル : 「……俺は、大丈夫ですよ。それより、次のターンに回復を頼みます!」


シュンスケ : 「あ、あぁ、わかった。でも、アズマさんも怪我をしているし。僕はどうしたら……?」(オロオロ)


ローズ : 「アズマ様は、私が回復致しますわ! おじさまは、アクセルの回復をお願いしますの!」


シュンスケ : 「あ、あぁ、そうだね。そうする、ローズ、アズマ君の事は頼んだよ」


ローズ : 「ガッテン承知!  でーすの! アズマさま、今キュア致しますね!」


アクセル : 「俺もスキル攻撃を。今度はアイスショットだ! 回復は頼みましたよ、アニキ!」


シュンスケ : 「う、うん……」


ミクト : 「よし、じゃぁ俺は……全く与えられない杖ダメージと、応援。どっちをしてほしい?」


アクセル : 「杖で殴りながら応援してろ!」



GM : 「さて、次のターンだが……ローズとシュンスケの回復の方が、毒吹きアゲハの行動よりは早いか……それで、アズマにアクセル。二人は死地を脱するな」


アクセル : 「ありがとうございます、アニキ……」


シュンスケ : 「いや、アクセルが無事ならそれでいいんだよ」


アクセル : 「体力が戻ったなら攻撃を! アイスショット、ダメージは?」


GM : 「21……だが、まだ体力は半分以上残ってる」


ミクト : 「とどめだー! でりゃぁぁぁ、杖でばっこーん!」


GM : 「荒々しい雄叫びとともに放たれた攻撃で、毒吹きアゲハは……倒れる事もなく、多少のダメージを受けた」


ミクト : 「ですよねー……後は頼んだぞ、若者たちよ!」


アズマ : 「はいはい……とはいえ、これだけ体力が残ってたらアタシでも落としきれませんかねぇ……小手打ち、入りやす。よござんすか?」


GM : 「あぁ、当たってはいる。が……アズマの予想通りだな。それでは落ちない。蝶は傷ついた羽を揺らしながら、まだ空を舞っていた……そしてキミたちに再度、毒のリンプンをはなつ!」


アズマ : 「しまっ……!?」


ローズ : 「あ、アズマ様! 大丈夫ですの?」


アズマ : 「いやいや、まともに吸い込んじまったみたいだねぇ……」(苦笑)


ミクト : 「うおおお! しまった、俺様も毒になっちまったぁぁ!」


アクセル : 「……ふっ」(笑)


ミクト : 「なぁっ!? ……今鼻で笑ったな、このガキがぁぁぁ!」


アクセル : 「別に、笑ってなんかいないですよ? 滑稽だと思った事を、少し顔に出しただけですから」(笑)


ミクト : 「それ、笑ってるっていうんだろうが、くそー!」



ローズ : 「ですが、大変ですわ! 毒の人が三人になりましたの、回復の手がまわりませんわ……」


アズマ : 「アタシの事はいいですから、アクセルとミクトの旦那を回復してやってくだせぇ。なぁに、その前に仕留めてやりまさぁ!」


シュンスケ : 「で、ですが……」(オロオロ)


アクセル : 「……いや、俺の事こそいい! ローズ、アズマさんを回復してやってくれ! 俺たちの攻撃より先に、毒吹きアゲハの攻撃がとんできたらアズマさんが倒れてしまうだろう! ここで主戦力のアズマさんを失った方がヤバイ!」



ローズ : 「!? はいですの、わかりましたの! ……でも、アクセルは」


アクセル : 「俺とアズマさんで、このターンで削りきってやるから心配するな。な?」


ローズ : 「…………は、はいですの!」




GM : 「では、次のターンは……最初に、ローズの回復が飛び、ひとまずアズマ君は死地を脱する。か」


ローズ : 「痛いといたいの、とんでいけー。でーすわー!」


アズマ : 「何度もかたじけのぅござんす、ねぇ。嬢ちゃん」


GM : 「だが、攻撃も飛ぶ……ダメージは……今回はローズ、キミだ」


ローズ : 「きゃん!」


シュンスケ : 「ローズ!? ……大丈夫かい?」


ローズ : 「ふぇぇっ……で、でも、まだ大丈夫ですわ! アズマ様やアクセルより、元気です!」


ミクト : 「何だ、意外と固いな。ドクマ」


アズマ : 「実はアタシより打たれ強いんじゃないですかねぇ、お嬢ちゃんは」(笑)


ローズ : 「ローズ、強い子ですわ!」


ミクト : 「ローズが攻撃を請け負ってくれたおかげで、このターンで人死にが出る事はなさそうだな」


アクセル : 「……でも、これ以上長期戦は無理だな。このターンで決める、サンダーショット……どうだ?」


GM : 「……流石にもう瀕死だ。あと一撃で落ちる」


アズマ : 「だったらアタシが行かせてもらいましょう……小手打ち! よござんすね?」


GM : 「うム……流石にそれで落ちた。キミたちは、無事に敵を倒す事に成功した!」




一同 : 「「「やったー!」」」 (ぱちぱちぱちぱち)




アズマ : 「ふぅ……ちょっと休憩のつもりが、思わぬ強敵と出くわしちまいましたねぇ」


アクセル : 「俺もほとんどTPは残ってませんよ……」


ミクト : 「何だ、軟弱だなぁオマエらは! 俺はまだ豊富にTPが残って〜る〜ぜ〜」


アクセル : 「…………オマエはスキルをもってないんだろう、スキルを!」(ぎりぎりぎり)


ミクト : 「痛い痛い痛い! 痛いです、耳とかやめてください痛いです! マジで!」


アクセル : 「とにかく、とっとと出口に向かいましょう。もう雑魚戦も厳しくなってきましたから……」


シュンスケ : 「そうだね……その前に、ほら、アクセル。身体をみせてごらん?」


アクセル : 「なぁっ!? 何するんですか、アニキ。俺なら……」


シュンスケ : 「……ほら、こんなに怪我をして。駄目じゃないか、無理をしちゃ。キュアしておくから、あんまり僕を心配させないでくれよ?」


アクセル : 「あ……アニキ……」


ミクト : 「おーい、そんな所でトロトロやってんじゃねーぞ。コラ。置いてくぞー?」


アクセル : 「あっ! ……何勝手に進んでるんですか! まってください……行きましょう、アニキ」


シュンスケ : 「……うん」


GM : 「さて、そうしてキミたちが出口を目指し進んでいけば……程なくして、目の前には見覚えのある地形が見えてくる。出口だ」


ミクト : 「おおっ、やったな! 何とか脱出できたみてぇだぞ」


アクセル : 「油断しないでください。帰りの僅かな距離、っていうのは案外危険が多いものです」


ローズ : 「そうですわ! 遠足は、家に帰るまでが遠足ですのよ!」


GM : 「迷宮探索は遠足ではないのだが……と、そこまで来ると、キミたちを途中まで案内してくれた兵士と思しき男が声をかける。 (兵士)『やぁ、もう戻ってきたのか。思ったより早かったね。地図は、ちゃんと出来ているかい?』


アクセル : 「あ、はい。コレです」(さっ)


GM : 「兵士は、渡された地図をしげしげと確認する……」


ミクト : 「大丈夫なんだろうなぁ……ちゃんと地図書けてっか?」


アクセル : 「当たり前です! ……俺は貴方とは違うんで、こういう時にふざけたりしませんよ」


ローズ : 「うにゅ〜……でも、こうやって地図をじーっと見られてると、緊張しますの〜」


GM : 「……兵士は地図を暫く見ると、満足そうに頷く。(兵士)『うん、流石はさばみその名をもつ伝説のギルドだね! 地図はきちんと出来ているみたいだよ!』」




一同 : 「「「うわ〜、良かったぁ〜」」」 (安堵の吐息)



GM : 「と、いった所で、ひとまずミッションは合格のようだ……兵士はキミたちに道を開けてくれる。このまま、もう少し迷宮の探索を続けてもいいが……さて、どうする?」


アクセル : 「……さっきの道、毒吹きアゲハと戦ってからは雑魚とかち合うのが怖くて駆け足で抜けてきちゃったんですよね」


アズマ : 「そうですねぇ……もうちょっと、探索の余地はありそうでしたが……さて、どうしますか? シュンスケの旦那?」


シュンスケ : 「だ、駄目だよ。みんなこんなに怪我をしているのに、私は無理を勧められないよ! 一度街に戻って、休んでから迷宮に向かおう?」 (おろおろおろ)


アズマ : 「そうですね、アタシも旦那の意見に賛成でさぁ……という訳で、一度街に戻りましょう」


ミクト : 「何だと〜、俺はまだTPにもHPにも余裕があるんだがな〜」


アクセル : 「あ・ん・た・は! TPを使うスキルをまだもってないだけでしょ〜が!」(ぎりぎりぎり)




ミクト : 「ノオオオオオォ! 痛い痛い痛い! 暴力反対! 助けて、憲兵さーん! この人がいじめまーす!」




アズマ : 「さて……ミクトの旦那はほっといて、ひとまず街に戻りましょうかね?」


ローズ : 「はいですの! ……ローズ、お腹空いてしまいましたわ。美味しいお料理が食べたいですの〜」


シュンスケ : 「そうだね、少し早いけど何か食べようか?」


ローズ : 「はいですの! ローズ、ハンバーグが食べたいですわー」


GM : 「……こうして、キミたちは無事に公国の任務を完了し、ハイラガの街へと戻っていったのだった……と」



 ……こうして幕を開けた 「新・さばみそギルド」 の冒険。

 いきなり迷宮に放置され、困惑しつつも何とかその任務を達成した。


 さて、彼らは無事に迷宮その頂上にある 『空飛ぶ城』 を見つける事が出来るのか。

 それとも、迷宮の露として消えてしまうのか。


 そして……。




ミクト :  「このガキゃぁぁ! 黙っていれば調子こきおってからにぃぃ!」 (ぎりぎりぎり)


アクセル : 「うるさい! 文句言う前にもう少し働け! このゴクツブシ!」 (ぎりぎりぎりぎり)



 こんなに仲が悪くて、果たして冒険を続けていく事が出来るのか!

 特に謎を呼ぶ事もないまま、次回の冒険に続くのである!







劇 : こんにちは、新・さばみそギルドのプレイヤーです。





 ゲームの世界があれば、それに興じているプレイヤーの日常の世界もまたある。

 架空の小国、ハイ・ラガードに訪れた5人の冒険者たち。

 これは、そんな彼らの「日常」の物語である。



 ……君は、彼らの現実にある日常に、触れても、触れなくても良い。




GM : 「……さて、そろそろいい時間になったな。ここらで少し休憩にしよう。別にかまわないな?」


アズマ : 「アタシは別にかまいませんよ? GMさんも、ずっとゲームのコントロールをしているんだ、体力もいるでしょう」


ローズ : 「もう終わっちゃいますの? ……ローズ、もうちょっと遊んでいたいですの!」


GM : 「心配するな、少し休んだら今日はもう少しすすめる事としよう。いいな?」


ミクト : 「そりゃ、構わないけどよー……俺としては、ここらでお互い自己紹介しておきたいんだが、いいか?」


シュンスケ : 「自己紹介……ですか?」


ミクト : 「んだ。 ……今日集まっている面子は、GMは皆知り合いみたいだがよー……俺は、GM以外の面子を知らねぇーんだ。よかったら、自己紹介してもらえねーかな? このままじゃ、俺は皆の事をキャラクター名でしか知らないって事になりかねんからな!」(笑)


アクセル : 「名を名乗れって、事ですか? ……人に名前を聞く前に、自分が名乗ってからじゃないんですかね?」


ミクト : 「おいおいおい! 何だよこのガキ、本当に現代っこだなぁ〜……ま、別にいいけどな。俺の名前も、隠すようなモンじゃねぇし……俺は、椎名 哲馬(しいな てつま) と言うモンだ。年齢は、35歳……いや、我ながらオッサンになったもんだ。(笑) 職業は……ひょっとしたら名前で知ってるかもしれねぇけど……」


アズマ : 「!? ちょいと待ってくだせぇ。椎名哲馬って、ひょっとしてあの。月刊オーバードライブで【クラリック】って漫画を連載していた……椎名哲馬と同じ名前ですかい?」


ミクト(以下椎名): 「同じ名前、ってか本人だぜ。職業は漫画家だよ。一応……な?」


アズマ : 「うわぁぁぁ、マジでですかい? いやぁ、アタシあの漫画結構好きで……単行本も全部持ってまさぁ!」


椎名 : 「あ、そうなんだ? いやー、悪ぃなぁ! そんなメジャー雑誌で連載してる訳じゃねぇから……」


アクセル : 「漫画家だって……知ってる? ローズ?」


ローズ : 「知りませんわ……アニメでやってますの?」




椎名 : 「ほらみろ! お子さんの反応なんてこんな、シビアなモノなんだけどな!」(笑)



GM : 「……オマエの作風は大人向けだから、仕方ないだろ?」


椎名 : 「分かっている! 自分も、子供に読んで欲しい漫画は描いてないと、そう思っている! 思っているが……こうも露骨に子供が興味をもってくれないと、悲しいモノがあるぜ畜生ー!」


アズマ : 「アタシは好きなんですけどねぇ……」


シュンスケ : 「す、すいませんうちの子たち、普段あまり漫画は読まないので……」 (ペコペコ)



アズマ : 「ん……うちの子、ですかい?」


シュンスケ : 「あ、次は私が自己紹介をしてもよろしいですかね? ……私の、名前は月岡 陽介(つきおか ようすけ) と言います。年齢は……今、38歳です。ほら、アクセル。ローズ、自己紹介をしなさいね?」



アクセル : 「はい……アクセル・ガンズをプレイしている、月岡 晃(つきおか ひかる) と言います。11歳です」


ローズ : 「はいですの! ローズ・トレイシーをプレイしている、月岡 沙織(つきおか さおり)ですの。9歳です! さおちゃん、って呼んでほしいですの!」


シュンスケ(以下月岡) : 「……晃と、沙織の……えぇっと、父親になります。まだまだ、父親としては未熟なのですが……」


アクセル(以下晃) : 「何いってるんですか! アニキは……陽介さんは、俺たちの立派な父親ですよ?」


ローズ(以下沙織) : 「そうですわ、おじさまは、とっても素敵なお父様ですのよ?」


月岡 : 「あはは……二人とも、しっかりした子供たちでね。色々助かってますよ……」


アズマ : 「へぇ……二人のお子さんがいらっしゃるとか、そんな風には見えませんでしたよ」


月岡 : 「いやぁ……私も、まさか自分が家庭を持つなんて思いませんでしたけど……人生、わからないものですね。今は、この子たちが父親にしてくれてますよ」


椎名 : 「はぁ……しかしまぁ、何というか。随分よそよそしい親子というか何というかだな……おじさま、とか呼ばれてンの? アンタ。父親なのに?」


月岡 : 「はい……えぇっと、それは……」


アズマ : 「まぁまぁ、家族の形なんて人それぞれでしょうからね。深入りはしませんよ……さて、アタシも自己紹介して、よござんすか?」


GM : 「あぁ、ヨロシク頼む」


アズマ : 「はいはい了解っと……んじゃま、このアズマプレイ用の喋りは取っ払っておこうかな? さて、俺の名前は狩名 義明(かりな よしあき)てもんだ。みんな、ヨロシク頼む」


沙織 : 「ふぁっ!? アズマ様……普通に喋ってますわ!」


アズマ(以下狩名) : 「あはは! アズマのしゃべり方は、一応ブシドーキャラっぽくと思って、ちょっと練習してきただけなんだな、これが! これでも、学生時代は映画研究にこっててね……こういう小さい所に、拘りたくなるタイプなのさ」


沙織 : 「ほえー……凄いですわ、アズマ様! じゃない、狩名おじさま?」


狩名 : 「あぁ、よろしくね、さおちゃん」


沙織 : 「よろしくですの! ……狩名おじさまは、普段何をされている方ですか?」


狩名 : 「何をって……いや、しがない会社員さ。とりわけて語る事もないかねぇ〜……ちなみに、今回のこのゲームは前回でさばみそギルドを率いていたリーダー、シグ役の桐生君から……桐生和彦から勧められてやる事になった。世界樹の経験はほとんどないけど、一応、桐生君から概ねの事は聞かされているから、その知識を生かしていければと思うんで、ヨロシク頼むな」


椎名 : 「うわぁ、本当に流暢な標準語を喋るな。さっきまで、へんてこな【〜でさぁで】【よござんすか?】調ばっかり聞いてたから、逆に違和感だよ」(笑)


晃 : 「アズマさんの台詞は、完全に作ってたんですね……」


狩名 : 「当たり前じゃないかよ! どこの世界に常日頃から、【〜でさぁで】【さねぇ】調で話すヤツがいるんだよ!」(笑)


椎名 : 「……何だろう、普通は居ないんだが。俺の知り合いに若干名、そういうしゃべり方をする奴に心当たりがある」(笑)


GM : 「奇遇だな、俺も今、脳裏に若干名。そういうしゃべり方をする奴が思い浮かんだ」(笑)


狩名 : 「マジでか!? ……いや、こんな喋りする奴いるの? よござんすとか、言うの?」


椎名 : 「いや、よござんすは流石に言わないけど……居るんだよ。俺たちの知り合いに、語尾に【〜さね!】か【〜だねぇ】ってつける奴」(笑)


狩名 : 「マジで! ……いやぁ、それは凄いな。会ってみたい」


GM : 「機会があったら紹介しますよ……さて、自己紹介はこんな所ですかね?」


椎名 : 「いやいやいや、待てって。まだオマエの自己紹介が、済んでないだろ?」


GM : 「俺か? ……だが、俺が誰だか。皆はもう知ってるんじゃないのか?」


椎名 : 「たしかに俺は、オマエの名前を知ってるよ。んだがな……あえて自己紹介してくれねぇか? ……オマエがいま、ここで。そんな大仰なキツネ面をつけている理由と、一緒にな」



 椎名哲馬はそう言いながら、GMの仮面を叩く。

 哲馬の言う通り。
 GMの顔には、白く塗られたキツネ面が着けられていた……。




GM : 「……別段、名乗る必要はないと思っていたが。名乗れ、と促されたのなら仕方ないな。俺の名前、名前は……」



 GMは、そこで自分の仮面を一度撫でる。
 それから仮面の下、低くくぐもった声で、こう告げた。




GM : 「俺の名前は、そう……西園寺 馨(さいおんじ かおる)……と、そう、名乗らせてもらおう。いいだろう?」


椎名 : 「西園寺? 何いってるんだ、オマエの名前は……」


GM(以下西園寺) : 「……いいよな?」


 仮面の下から響く声はさらに低く、強い覚悟を感じさせる……。


椎名 : 「わかったよ。オマエがそう言い張るんら、西園寺馨で納得しておいてやるよ……」


西園寺 : 「……兄さん。すいません……今は……お願いします……」


椎名 : 「……そんな声出すんじゃねーよ、ガラにもねぇなぁ……わかったわかった。オマエのその西園寺ごっこ、暫く付き合ってやる!」


晃 : 「…………」




沙織 : 「西園寺さん……GMのお兄さまは、西園寺様と仰るのですね?」


西園寺 : 「……あぁ」



沙織 : 「それでは、西園寺さま! 今日から、私を。晃兄さまを。陽介のおじさまを……さばみそギルドのみんなを、ヨロシクお願い致しますわ!」



西園寺 : 「あぁ……わかった。拙い案内だが、キミたちのハイ・ラガードの冒険をGMとして全力でサポートさせてもらう……だからキミたちもくれぐれも、無理せず。迷宮の真実を、暴いてくれ給えよ? ……期待しているからな?」


一同 : 「はーい!」



 ……かくしてはじまった 新たなる世界樹の迷宮での冒険。

 新たなさばみそギルドの冒険が始まる最中、彼らはまだ知らなかった。


 自分たちが、ここに立たされている理由を。

 そして……。


 ……この出会いが、数多の嘘に塗り固められているという事も。




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