>> 英雄の定義
次の授業まで少し時間があると思い、芝浦は学食へ向っていた。
コーヒーでも頼んで時間つぶしに携帯ゲームでもするか本でも読むか、少しくらいレポートをまとめるか……あれこれ思案しながらフロアを見渡せば、見知った顔が目に入る。
「あれ、確か……東條さん。東條さんだよね?」
芝浦は紙のコーヒーカップを片手に男の元へ向えば、男はキョトンとした様子で首を傾げる。芝浦を見ても誰か分ってないようだった。
それも当然の話だろう。
以前東條と会ったのは特別講義の時であり、彼は大学の研究員として熱量学の基礎的な知識を教えに来たのだ。芝浦はその時一般参加の学生にすぎず、あの時生徒は30人ほどいただろうからそのうちの一人の顔なんて覚えているはずもないだろう。
「急に声かけられても俺が誰だかなんて分らないよね。俺、芝浦。芝浦淳。以前の講義の時にマクスウェルの悪魔を用いて熱量学の話してくれただろ? 俺、あの時の講義を聴いてた生徒の一人なんだよね」
芝浦の説明を聞いて、東條はようやく合点したような顔になると小さく頭を下げて見せた。
だが合点はしたが何故いち生徒の一人である芝浦が声をかけてきたのかまでは分っていないようにも見える。
講義の時からどこか伏し目がちで気弱そうでいかにも人付き合いが悪そうに見えたが、どうやらその印象通りあまり他人とコミュニケーションを取るのが得意なほうではないらしい。
とはいえ、大学の研究者なんておおむねそんな所はある。
芝浦の大学にいる院生も癖が強く取っつきにくい人が多いし、突拍子もない事を言い出すような大学教授もいるのだから口下手なくらいはまだマシな性格と言った方がいいだろう。
何より東條の話は順序立てがうまく、ボソボソと呟くように喋る割りに妙に聞きやすかったのを芝浦ははっきりと覚えている。
人柄がどうであれ、楽しい話をしてくれる人間であるという事のほうが芝浦にとっては大事だった。
「あの時の話、本当に面白くてさ……あ、前の席開いてるならいい? ……個人的に、もうちょっと話してみたいと思ってたんだよね」
東條が何か言う前に、芝浦は向いの椅子へと腰掛ける。東條は特に何も言う訳でもなく、ただじっと芝浦の様子を見つめていた。
その手には厚ぼったいノートや資料らしき本が置かれている。
「東條さんは、確か清明院大学の院生さんだったよね? 今日はどうしてコッチに?」
「ん……先生に頼まれて、資料を……でも、先方が不在だったから、少し……待ってる所」
「あぁ、待ち時間なんだ。だったら少し付き合って欲しいんだけど……」
自分とは別のジャンルにいる院生の話をきける機会など滅多にない。それが自分の興味ある分野ならなおさらチャンスだ。
芝浦はここぞとばかりに講義の内容を踏まえてあれこれと説明すれば、東條はさして嫌がる様子もなく抑揚のない声で訥々と答えてくれた。
そうして30分ほど話していただろうか。
「あー、なんか俺ばっかり話しちゃってごめんね。前に話聞いた時も思ったけど、東條さんの説明やっぱり分りやすいや。門外漢の俺でもちゃんと伝わるからすごいよね−」
「それは、きっと君の理解力がいいだけ……僕はそれほど丁寧な説明はしてないから……」
「別に、そこは謙遜するトコじゃないと思うけど? あぁ、でも俺ばっかり話しちゃって悪かったかな……何か俺に聞きたい事とかある? ……といっても、俺の分野は、東條さんの分野と全然違うから東條さんの興味をくすぐるような話、出来ないかもしんないけどさ」
コーヒーを飲みながらそう問えば、東條は小首を傾げて少し考える素振りを見せる。
かと思えば。
「……英雄」
ぽつりと、そんな言葉を呟いた。
「えっ? 英雄……?」
「ん……そう。英雄って……どうやったら、なれるんだろうな……って」
てっきり研究に関する質問がくるのかと思っていた芝浦は、少々肩すかしを受けた。
だが東條の顔はいたって真剣であったし、その口ぶりにふざけている様子は見えない。どうやら東條は本気で「英雄」になりたい人間のようだった。
「英雄、そっかー……英雄ねぇ」
とはいえ、その質問には芝浦もさして驚かなかった。
研究者というのは変わり者が多く、ロボットアニメやゲームの世界からなかなか抜け出せない者も多い。
かく言う芝浦だって車やロボットといった機械全般が好きだし、出来る事ならそれを作れるような知識を得るため工業大学へ行きたかったと思う程である。
「難しいよね、そういうのってさ。ゲームとかなら1000人の敵を殺せば英雄のアチブがもらえるけど、現実ではそういう英雄になる尺度とか、英雄になる条件ってのが明確にあるワケでもないし」
「……アチブ?」
「あ、ごめんごめん。アチーブメントの事。達成って意味なのは知ってるよね。ゲームでは良く記録を達成するとアチーブメントが出て、それが称号みたいに付くワケ。1000人殺しの英雄とか、戦闘を100回こなした、とかね」
理解したのかしないのか、東條は黙って頷いて見せる。
そのまなざしは最初より幾分か警戒の色が薄らいでいるように思えた。
「俺は見た事ないんだけど、チャップリンの映画にもあるんだろ? 『一人殺せば殺人者、だが1000人殺せば英雄だ』 って台詞」
「……Wars, conflict it's all business. One murder makes a villain millions a hero. Numbers sanctify ……戦争や紛争というのはビジネスであり、一人の殺人という犯罪が、百万人という殺人により英雄となる。数が殺人を神聖化させる……」
「あ、本当はそういう風に言ってんだ……っと、とにかく、多角的に見るとさ。確かに英雄って呼ばれてる奴らは沢山殺してる奴だよね。獅子心王……リチャード1世は英国でも人気の英雄だろうし、三国志が好きな人から見れば姜維は最後まで北伐を続けた英雄に見えるワケじゃん」
「……うん、そうだね。二人とも戦争で……勇敢に戦ったから……英雄といえるのかも……」
「でもさ、リチャード1世の無理な遠征により英国が疲弊し、結果それがマグナ・カルタに繋がっているという側面は否定できないし、姜維の北伐だって、蜀という国をじり貧にしていたという見解もあるワケだ」
「うん……確かに……そうだね……」
と、そこで東條は顔を上げると、微かに笑って見せる。
「……歴史、詳しいね。僕の周囲に、そんなに詳しい人がいなかったからこの分野には歴史が好きな人、いないと思っていたけど……考えを改めないといけないのかも」
「そんな、詳しいってワケじゃないでしょ。このくらい誰でも習うし……それに俺は東條さんと違ってバリバリのエネルギー系研究者でもないしさ」
そういいつつ、芝浦は苦笑する。
リチャード1世にしても姜維にしても、高校生の頃に遊んでいたゲームの影響で覚えた名前だったからだ。
「とにかく、一口に英雄といっても、人間ってのは多角的に見られるものだからね。リチャード1世も姜維も、戦場では紛れもなく英雄だった。だけど、別の方面から見ると国を疲弊させた愚直さがあったワケだろ。だから『英雄になりたい』って言っても、必ずしも誰からも愛されるような伝説の英雄になるのは難しいと思うワケ」
東條は芝浦の顔を冷たい目で睨め付ける。万人に愛される英雄、という概念を否定されたのに臍を曲げたのだろうか。
そうとは思ったが、自分の意見に間違いはないと思っていたので、芝浦は構わず続ける事にした。
「大体さ、英雄って英雄になろうと思ってなれるワケじゃないと思うんだよね。多分だけど、英雄になろう……そう思った時点で、英雄失格って感じだし」
そう口にしながら、芝浦はふと北岡秀一の顔を思い出す。自分の父親が経営する会社の顧問弁護士で、芝浦自身が過去に問題をおこした時もうまく仲裁してくれた敏腕弁護士だ。
英雄になろうと思った時点で英雄失格なんて、いかにもあの「北岡先生」が好みそうな言い回しだと何とはなしに思ったからだ。
「英雄に、なろうとした時点で……英雄、失格……」
東條はやや不服そうに、唇を尖らせると何度も何度もそう呟く。
不機嫌になったのは目に見えて分ったが、同時にこの程度の事で唇を尖らせて文句を言うなんて酷く子供っぽい男だとも思えた。
最も、芝浦自身気付いてないが芝浦も同じように不機嫌になると唇を尖らせて文句を言う酷く子供っぽい癖があるのだが。
「それに、英雄ってさ。基本的に後世の評価……っていうのかな? 今を生きる人間の評価じゃなくて、後からそう呼ばれる評価だと思うんだよね。もし、生きている人間に『英雄』という評価が与えられるのだとしたら、それは誉れ高い称号なんかじゃない……『呪い』だよ」
「英雄が……呪い?」
「そうさ。英雄になる……英雄になって生きる、生きた英雄ってのは、英雄という言葉に縛られてその力を行使しなきゃいけない。英雄であり続けるために強くありつづけなければならないし、英雄である限り他人からの英雄像を求められる。英雄像は人によって違うだろうけど、高潔であってほしいとか、ストイックであってほしいとか、大概その人間の行動を縛る言葉だったりするよね。そういう他人の目ってさ……もう、呪いでしかないと思わない?」
東條は黙って俯くと、何か考えるよう口元に手を当てる。
英雄という言葉に憧れ、そうなろうと思っていた彼にとって英雄は輝ける称号であり強い光としての側面しか見ていなかったから、改めて秘めた影の深さを噛みしめているのかもしれない。
「多角的に見ると、英雄と呼ばれる人間も悪しき所行をしている事がある……って言ったけどさ。英雄は、別の他人からしたら悪党だったりもするワケじゃん。リチャード1世だって英国では人気の英雄だけど、他方から見れば侵略者みたいなもんだろ。一方から見れば英雄だけど、他方から見れば大悪党……だなんて、生きた人間が背負うにはちょっと重い気がするし。俺たちみたいな一般市民は、もっと気楽に、もっと楽しく生きてもいいと思うじゃん」
「だけど……僕は、それでも……」
それでも、英雄になりたいのだろう。
この東條という男がどうして英雄という言葉に執着しているかは分らない。だが芝浦は、何にしても英雄でありたいという東條に少しだけ興味をもった。
「……なれると思うよ、俺は」
思いがけない芝浦の言葉に、東條は顔をあげる。
芝浦はコーヒーを一口飲むと、自分の記憶を辿るように話始めた。
「東條さんの思い描く英雄ってのが、世界中の人に愛されるような英雄だったらちょっと難しいと思うし、そんなの神だってなし得てないって事くらい、東條さんなら分るよね。それくらい、誰からも愛されるのって難しいことだけどさ……誰でも、誰かのヒーローにはなれるんじゃないか……って思うわけ」
「誰かのヒーロー……誰かの……」
「そ、例えば一国を救う為に戦って命を落とした男がいたとしたら、それは救国の英雄であり沢山の人にとって英雄だろうけど、たった一人の少年少女を身を挺して庇って死んだ男がいたとしたら、その人はその少年少女にとって一生涯の英雄になる……そう思わない」
東條は小首を傾げながら芝浦の言葉を聞く。さして難しい事を言っているつもりはないのだが、よく理解できないのか。
あるいは東條という男は思った以上に他人に対する感情が薄いのかもしれない。
「さっき、英雄は後で見た人間の評価であるって……少なくても俺はそうあるべきだと思うし、生きた人間を英雄と呼ぶのは呪いや枷にしかならないと、そう思っているんだけどさ。それって逆説的に言うと『自分の信じてきた事を成し遂げてた人物』ってのが、英雄になれるんだと……そういう気がしてこない?」
「自分……信じる……」
東條の顔はますます険しくなる。まるで「自分ほど信じられない存在はこの世界にいない」とでも言いたそうな雰囲気だ。
自己評価が極端に低いのだろうか。それ故に他人の評価が気になり、英雄という評価に縋りたくなったのかもしれない。芝浦は漠然と、そんな事を考えた。
「俺にも英雄って呼べるくらい好きな人がいるんだけどさ。そいつは俺がどんなにワガママ言っても優しくしてくれるし、俺が困っている時には助けてくれる。そういう些細な事でも、他人ってその人の事認めて、格好いいなぁって思って、あぁ、こいつって俺の英雄なんだな……って思う事あるし」
「でも、僕は……君の好きな人のように気の利いた事なんて出来ないし……誰かに優しくも、助けてあげる事も……いつも先生に助けてもらってばかりで、他人に迷惑をかける僕は、やっぱり英雄なんて無理なの……かも……」
「あれー、東條さんすごい自己評価低いタイプ? ……俺はそんな事思わないけど。さっきも言ったでしょ、東條さんの話は分りやすくて面白かったって。俺さ、結構色んな講義とか研修とかに顔出してるけど、講師の顔覚えるくらい面白い話してくれる人って片手で数えるくらいしかいないんだよね。その、片手で数える程度しかいない人の一人が東條さん。あんただったんだよ」
その言葉に、東條は虚を突かれたような顔をする。
自分が当たり前のようにやってきた行動にこそ価値があるなど、これまで思ってもいなかったのだろう。
「僕が……僕は、君にとっての英雄になり得る……」
「はは、どうかなー? 俺はもう好きな人いるし、難しいかもしんないけど。でも、東條さんのやってる研究とか突き詰めれば、ひょっとしたら何人も、何十人も、何百人も救える研究になるかもしれない……そうなったらさ、東條さんだって英雄になれるんじゃないかな」
「僕の研究が、誰かを救う……誰かのための、英雄……? いや、でもこの研究は……」
「研究ってのはただの知的好奇心を満たす行為であり、意味があるとか意味がないとかそういう問答はナンセンスなのわかってるよ。俺だってただ自分が好きで、面白いと思ったから今の勉強してるワケだし。でも、そうやって自分のやりたい事突き詰めた先に、何があるかとかわからないじゃん? 俺の研究で人が救えるかもしれないし、もし誰も救えなかったとしても、頑張ってる俺の背中見て尊敬してくれる誰かがいたら、それって俺は誰かの英雄になれてるって事だよね」
東條は、静かに目を閉じまた考えるような仕草を見せる。
その姿を見ながら、芝浦は残ったコーヒーを一気に飲み干した。
「つまり、君は……英雄になるための行動はなくて……行動した後に英雄という評価が残ると。そう考えているんだね」
「ま、簡単にいうとそうだね」
「それなら、僕は……僕はどうしたら……」
「そういうの難しく考えなきゃダメな人? ……自分の好きな事を続ける。それだけでいいんじゃないかな。実際、簡単に見えてそれってすっごく難しい事なんだよねー。特に研究の分野ってさ、まともな研究費もなければ人件費なんて出せないからいつだってじり貧でしょ? そんな中で研究続けていくの、ほんっと大変なことだし」
芝浦は勉強を続ける上で金銭的な不安はないのだが、研究者を志したものの金銭面の不安から才能があるのに辞めていった先輩を多く見て居たのでその苦労は何となしに感じ取っていた。東條も見た印象からはお世辞にも金銭的に裕福には見えないから、苦労しながらも院生を続けているのだろう。
「東條さんは自分が今やってる研究、好きでやってるんだろ?」
「それは……当然。僕は先生に憧れて研究を始めて……この分野に入った、けど……今はこの研究のこと、好きかもしれないから……」
「だったら、それ続けてればいいじゃん。東條さんが先生に憧れてるみたいに、東條さんの後輩たちは東條さんに憧れるかもしんないし。そしたら東條さんの後輩にとって、東條さんだって立派な英雄なワケじゃん。そんなに難しく考えなくてもいいし、理想高くしなくてもいいと俺は思うけどねー」
手元にある資料とノートに視線を落としながら、東條は深くため息をつく。
「君の言ってる事は、軽薄で……享楽的で……僕の求めている英雄と……違うところが多いかもしれない」
「言ってくれるぅ……ま、軽薄なのは分ってるよ。俺は東條さんみたいに、英雄像ってのを真剣に検討したことないから、東條さんほど英雄に対して明確なビジョンをもってないからね」
「でも……そうだね。それなら……僕ももうすこし……頑張ってみたいな、って思えるかも」
その時、東條はゆるりと笑う。
それは最初に見た笑顔よりずっと優しく、柔らかな笑顔であった。
「君、名前。なんだっけ……しばう……しばうり……?」
「芝浦! 芝浦淳」
「僕は、東條悟。清明院大学の香川研究室で研究をしているから……気が向いたら遊びにきてくれると嬉しいかもしれない」
東條はもっていたメモ帳に手早く名前や電話番号、メールアドレスに研究室の場所を示した簡易地図を書くと、それを芝浦の方へと向ける。
「君は僕の言葉を真剣に聞いてくれた。君の意見と僕の気持ちは齟齬があるけど……それでも君は僕の事を笑わないでいてくれた。君は、きっと僕の大切な人になれると思うから……遊びに来て。まってる……から」
そして手荷物をまとめると、ゆっくりと立ち上がる。
「覚えたから……芝浦淳。また……ね」
東條はそこでまた緩やかに笑うと、靴音を響かせながらフロアの奥へと去っていった。
東條が立ち去った後、芝浦は自分の身体が汗で濡れている事に気付く。
「えっ? あれ……俺、こんな汗かいてた?」
無意識に緊張していたのか、汗はてのひらにも滲んでいた。
同時に、身体中の緊張が解け椅子にもたれかかる。思った以上に疲弊している自分に、芝浦は戸惑っていた。
「なんでこんなに疲れてんの? えっ? ……知らないうちに緊張してた? なんで? ワケわかんないんだけど……」
ただ、今思い返すとわかる。
東條悟は、どこか欠落しておりどこか危うい男だったという事が。少し扱いを間違えれば思いがけぬ爆発をする、そんな男だったような気がしたからだ。
言うなれば芝浦はさっきまでずっと、火薬庫の中でランプを焚いて歩いていたようなものだったのだ。
東條と話している時はそれに気付いていなかったが、今改めて東條の所作を、口調を、表情を思い出すとあの男が存外に危険な男だったのがじわじわと理解できる。
自分の中に確固たる世界があり、自分の中に穢してはいけない領域がある。他者に対する感情が薄い人間は、自分の領域を穢されるととたんに攻撃的になる。
それでも一線こえてまで暴虐をつくす輩は稀なのだが、東條はきっとそのラインを越える事が出来る男だ。
「あー……やっべー奴と知り合っちゃったかもー……」
芝浦はそう言いながら、手渡されたメモを見る。
これを捨ててしまうか、焼いてしまうか、無くしてしまった事にすれば縁が切れるかもしれないが……。
「……ま、いっか。爆弾みたいな奴とギリギリの会話するのも、結構面白そうだしね」
芝浦はそう呟くと、自分のスケジュール帳に丁寧にメモ書きをしまう。
つまるところ芝浦も危うい男であり、自分とおなじ匂いのする東條の姿は嫌いになれなかったのだ。
ゲームという享楽に執着する自分と、英雄という幻想に執着する東條。
興味の深さも楽しみ方も全く違うだろうが、だからこそ楽しく話す事ができると、そう思ったから。