※ こちらはオフライン版逆行パラレル、ルーク&ティア(+何時の間にかアッシュも)逆行ギャグ寄り 力押しルート「Harmonia」と同設定のSSとなります。 「ティア、この後ヒマ?」 「? えぇ、特に用事はないけれど」 買出し当番を終えて戻ってきたと思ったら、ルークは突然そんなことを言い出して。 意図の掴めないまま曖昧に頷いたティアは、次の瞬間思いがけない言葉を聞いた。 「んじゃ膝貸してくんね?」 「…………はい?」 顔を貸してくれだとか、耳を貸してくれだとか言う言葉は何度も耳にしたことがある。 ―――――― だが、膝? 戸惑っている間に右腕を捕られあれよあれよと言う間にルークに宛がわれた部屋へと追い込まれ、ベッドに座らされたかと思うとベッドに上がったルークの上体が膝の上に降ってきた。 「……きゃっ!?」 ただ降ってきただけならそれほど驚きはしない。 ベッドに座らされた時点で膝枕がして欲しいのだろうか、程度のことは考えていたからだ。 驚いたのはルークが仰向けでも横向きでもなく、うつ伏せだったから。 しかも上半身が殆ど腿の上に乗って、肝心の頭は半ばはみ出して、腰に腕が回されて ―――――― 膝枕とはちょっと違う気がする。 クッションだとかお気に入りのぬいぐるみだとか、そういうものを抱きしめて顔を埋めて眠る形に近い。 「ちょ、ちょっと、ルーク!?」 「……重い?」 慌てた声にちらりと視線を上げてきたルークに問われて、少し眠た気なその声がまるで甘えているように聞こえて、ティアはぐっと言葉に詰まった。 上半身だけとは言え、ルークは身長の割りにがっちりとした体格をしているので結構重い。 重いのだが、耐えられないほどではないし、むしろ心地いい重みと言ってもいい。 「…………仕方ないわね」 ふぅ、と小さく溜息を吐いて手を伸ばし、少し固くて癖のある、けれど指通りのいい朱色の髪を撫でる。 それを受けて満足そうに緑柱石の色の瞳が細められ、口元がふにゃりと緩んだ。 喉を鳴らす猫のような、眠りかけの幼子のような無防備な表情に自然と笑みが浮かぶ。 (………ここのところ忙しかったものね……) ここのところ結構な強行軍で ―――――― なんだかんだでいつもそうな気もするが ―――――― パッセージリングの操作に超振動を使う分、ルークの負担は他のメンバーより大きかった。 体力には自信があるようだったが、神経を使う作業であるだけに精神的にも随分と消耗していたのだろう。 「…………少しだけよ?」 「……ん」 僅かに背を屈めて耳元で囁くと、完全に目を閉じたルークが上体を摺り寄せてきて。 (………………可愛い) ティアはその髪を撫でながら、ゆっくりと柔らかな旋律を口遊み始めた。 「………うらやまし〜い?」 くふふふ、と小悪魔の笑みを浮かべたアニスに見上げられ、アッシュは眉間に刻んだ皺を深くした。 籤引きの結果、男性陣の本日の部屋割りはガイ&ジェイド&イオン、そしてルーク&アッシュだった。 要するにあの空間に足を踏み入れる勇気がない限りアッシュは自室に入れないと言うわけだ。 躊躇していたところで一番見つかりたくない相手に ―――――― 否、死霊使いよりマシなのだろうか ―――――― 見つかって、眉間の皺は深みを増すばかり。 「まー、最近ルークってば色々頑張ってたしー、たまにはこーゆーのもいんじゃない?」 結果的にルークに助けられて以来非常に寛容になった導師守護役に暗にそっとして置いてあげよーと告げられて、アッシュは深い溜息を吐いた。 確かにパッセージリングの操作を一手に引き受けて体力的精神的に消耗しているのは知っているので、文句を言いにくいところだ。 もうちょっと回りに配慮しろとか色々と思うところはあるのだが、自室以外の場所でやったら尚のこと迷惑なので ―――――― 何せ事情を知らない人が見ればルークとアッシュはどうみても双子だ。ルークが馬鹿なことをやればアッシュも恥ずかしい思いをするのは間違いない ―――――― 口を噤んでやることにする。 「なんならナタリアにお願いしてやってもらえばぁ〜」 「……黙れクソガキ」 「………あ、てゆーか正直できればやってもらって欲しいんだけど」 「…………は?」 アッシュで遊ぶ気満々、と言う風情だったアニスが唐突に真顔になって。その上そんなことを言い出すものだから、アッシュはぽかんと口の開いた酷く間抜けな顔を晒すことになった。 そんな顔をしてるとルークに良く似ていると思いながら、アニスは深々と溜息を吐いてみせた。 「今日の夕食当番、ナタリアなんだよねぇ……なんか張り切っちゃっててさー。アッシュが足止めしててくれればその間に私がちゃっちゃと用意しちゃうんだけど」 「………………」 何も好き好んでいちゃこらしてくれなんて頼むわけがない。背に腹は変えられない、と言うヤツだ。 「…………善処する」 暫く思案するように沈黙したアッシュは、そう言ってぎこちない足取りで歩き出した。 ―――――― 例えそこに愛があったとしても、辛いものは辛い。 哀愁漂う背中はそんな言葉が書かれていたのが見えた気がして。 「いーじゃん、アッシュは自分が料理できるんだから、アッシュが作ってあげれば」 何気なく彼の背中を叩いたアニスだったが。 「………慰めになってねぇんだよこの屑がッ!!」 「ぷっ……あははは!」 「笑うなこのクソガキッ!!」 切実な台詞に思わず噴き出して、宿中追い掛け回されることになったとか。 ― END ―
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トリプル逆行設定(Harmonia)で。 不憫なアッシュは可愛いと思うわけです。 |