「てゆーかさあ、あれから3年も経つってのに、アンタ達いつになったらくっつくの?」
「……っ!?」
 つまらなそうに鼻を鳴らしたアニスのあんあまりと言えばあんまりな発言に、ルークは口にしていたお茶を飲み下し損ねて大きく咳き込んだ。
「げほ、ごほっ……」
「お、おいルーク、大丈夫か!?」
「………だ、大丈夫」
 慌てた様子で背中を摩ってくるガイを片手で制して、息苦しいやら恥ずかしいやらで一瞬で茹蛸の様に真っ赤になってしまった顔でアニスに向き直る。
「な、なんで、いきなりそんな話にっ!」
「だってさぁ。アンタ達全然進展しないんだもん。………てゆーかー、早くしないと誰かに盗られちゃうよ? ティアだってもうすぐ成人なんだしー、婚約者の一人もいてもおかしくない年なんだからね?」
 少女らしいとは言い難い仕草でケッとばかりに吐き出したアニスが、立ち上がって鼻先に指を突きつけてきて、ルークはぐぅと唸るような声を上げた。
 ルークが今年成人だったのだから、一つ年下のティアは来年成人と言うことになる。
 それ即ち、彼氏の一人や二人いてもおかしくはない年だと言うことだ。
 ティアは美人だし、スタイル抜群のメロンだし、仕事も出来るし、ユリアの血族だしと、数え上げればキリが無いほどに、様々な条件を満たしている気がする。
 と言うか間違いなく、狙っている男は一人や二人じゃないんじゃないかと、思う。
「………………」
「あ、いや、その、ティアは仕事人間だからな、浮いた噂の一つも無いからそれは大丈夫! 大丈夫のはずだ、うん!」
 ずぅん、とルークの肩が沈むのを見て、ガイが慌ててそう言って彼の肩を叩いた。。
 ティアはずっとルークを待っていたのだからそんな話が無いのも当然なのだが、二年の空白を抱いているルークはそれを知らない。
 そしてそのことを知っている嘗ての仲間達は、もどかしく思いながらも口を出すわけにも行かず、さり気なく焚きつけたり弄ったりしつつも見守っていると言う現状である。
「そ、それにしても三年か…………見た目が一番変わったのはルークだな」
 空白の二年間の間に、髪も背も伸びて、身体自体も一回り大きくなったように感じる弟分に、ガイが感慨深気な声を漏らす。
「そうですねぇ。年齢から言えばアニスの方が変わっていてもおかしくないのですが………」
 そう言うジェイドはそろそろ四十路に足が届こうかと言う年齢のはずなのだが、相変わらず二十代後半にしか見えない化け物っぷりだ。
「私はまだ成長期なんですー」
 ぶぅぶぅと頬を膨らませて見せるアニス………こちらも少し背が伸びたぐらいで余り変わっていないように見える………にちらりと視線を向けて、ルークはそう言えばと首を傾げた。
「アニスって幾つになったんだ?」
「へへ〜、ぴっちぴちの16歳になりましたv」
 良くぞ聞いてくれました、と言うように頬に手を当てて跳ねるような声を上げるアニス
「16か……旅を始めた頃のティアとちょうど同じ年だな」
 何気無い様子でガイが呟いて、瞬間。
「………………」
「………………」
「………………」
 ルークの視線は凝視するようにじぃっと、ガイのそれはさりげなくけれどしっかり、そしてジェイドのそれは確かめるようにほんの僅かにちらりと。
 動きは違ったけれど、確かに、ほぼ同時に、一点に向かった。
 ――――― 即ち、身長同様成長の気配の薄い、膨らみの乏しい胸元に。
「……………ティアと、同い年……」
「………言いたいことがあるなら、はっきり言ってくれていいんだよ?」
 素の彼女を思わせる低い声が漏れる ――――― 口元は笑っているが、眼が笑っていない。
 何時の間にかその手にトクナガが握り締められている。
「……………い、いや、別に、ティアは16の頃にはもうスゲーメロンだったけどアニスは三年前とあんまり変わってないなんて思ってな……っ!!」
 しまったと思った瞬間、顔面にトクナガがヒットしていた。
「乙女の胸元を凝視するなんて最低ッ! 天誅ーっ!!」
「わ、ちょ、ごめん! ごめんなさいッ!!」
 トクナガでど突き倒されながら逃げ回るルークを尻目に、ジェイドはのんびりとした所作でお茶を啜る。
「…………かわりませんねぇ」
「………あんたもな」
 確かに同じ場所を注視したはずなのに、どこ吹く風。
 他人事のように笑うジェイドに、ガイは深い溜息を落とした。
― END ―
 

ED後ネタで没ったものを拾い上げてみました〜。

2009.09.04

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