「…………ぬーえくん」 「……ぁ?」 聞き覚えのある声に振り向いた鵺は、突然ATカフェの薄暗い空間で場違いに光ったフラッシュとシャッター音に目を見張った。 「なっ、何撮ってんだよテメーは!」 「鵺君の驚き顔〜」 慣れた仕草で携帯を弄る、炎を思わせる不可思議な髪型の男は鵺の隣のスツールに無造作に腰を下ろし、長い足を組む。 「ハイ保存っと……」 「保存してんじゃねー!!」 「可愛く撮れたからね」 悪びれるでもなくニッコリと微笑む炎の王、スピット・ファイア。 この男はその普段の言動からは想像もつかないが意外と写メールが好きだ。 何時の間に撮ったのかアキラと咢の古い写真だったり、シムカや鵺の写真だったり、見るものによっては垂涎の写真が大量に仕舞いこまれている……らしい。 らしい、と言うのは彼はあまりそれを人に見せることがないから憶測でしかないからであるが、鵺はおそらく間違いないだろうと思っている。 尤も、アキラと咢の写真を特に大事に取っていたのなら話は別なのだが。 (………ヘンな奴……) 一見クールな美形に見えなくもないのに、頭の回転だって相当早いのに、その癖どこかすっとぼけている。 「鵺君、いいもの見せてあげようか〜♪」 「あぁ?」 気のない返事を返す鵺に、スピット・ファイアは身体を寄せてくる。 携帯を弄る仕草にそれでも一応ちらりと画面に視線を向けた鵺は。 「……ぶっ」 其処に写った画像に思わず飲みかけていたコーラを噴出しそうになって口元を覆った。 「可愛かったから思わず撮っちゃった〜」 画面に映っていたのは彼が最近お気に入りの黄色いヒヨコの寝顔だった。 無防備に半分口が開いていたりなんかして、もし自分だったら憤死しそうな恥ずかしい写真だ。 「………オマエ、殺されるぞ」 「ばれなければ大丈夫だよ」 「じゃあ人に見せるなっ!」 「鵺君にならいいかなって」 黙っててくれるでしょ、とにっこり微笑む男。 「誰かに自慢したかったんだけどその辺の奴に見せたくなかったしー」 「…………」 ほくほくと表現するのがぴったりの表情で携帯を弄っている男を見やり、鵺は自身の足元に視線を落とした。 そこには全ての電力への干渉とする……よーするに強力な電磁波を操ることのできる雷の (…………俺の心の平穏の為にも、あのヒヨコの為にも、あの携帯駄目にしといた方がいいんだろうか……) ちょっぴり本気で、そんなことを考えたある日の出来事だった。 ― END ―
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ちょっとへんなスピ…(笑)。 うちの鵺様はこんな役回り…ごめんねでも単品…というかチームで好きです(笑)。 |