歯周治療成功への条件について
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歯周治療を成功に導くには大切なことが2つあります。
1つは歯肉の周りの汚れをきちんと歯磨きでおとすこと(患者さんの役割)
もう1つは歯肉の奥の深い部分の汚れをスケーリングという方法で診療室で
麻酔下でしっかりとってもらうこと(診療室の役割)です。
この2つが守られなければ歯周病は治りません。
もしも歯磨きをしっかりやっているのに治っていなければ、それは診療室の責任です。
もう1つ
よくある勘違いは
歯周病は「歯磨きのみで治る」ことはありません。
長期的にみてみると、それは改善さえしていないと思います。
歯周病の進行は歯肉の奥深い部分で起こっているからです。もちろん症状は全くない状態で進行してゆきます。
麻酔して、しっかりとスケーリングしてもらいましょう。
何ともなさそうな歯肉
実は深い部分に歯石が付着
かなり深いので歯石を取るのは大変
除去した直後の歯石がない歯根面
以上は顕微鏡下での治療像で、良く歯磨きがされている患者さんですので、
治療が行いやすいのですが、出血があり、何もみえない状態では治療がうまくいきません。
次はレントゲン所見
スケーリングの効果
これは非常に重症な症例で、歯はぐらぐら(動揺度3度)、普通抜歯されるような歯ですが、
スケーリングのみの治療で歯を支えている骨はできてきています。正確な治療がなされれば、
歯を保存することが可能となります。
もちろんスケーリングのみで完全によくならない場合もあります。
その場合は歯周病の手術を行うことが必要となります。
参考文献
Morison et al. (1980)
Badersten et al. (1984)
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歯と歯の間の清掃について
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歯と歯の間の清掃には 歯間ブラシを用いる方法と フロスを用いる方法 があります。
研究によれば、歯間部の清掃には歯間ブラシを用いるのがよいとされています。
歯周病は中程度から重度に進行している場合では、フロスはあまり役に立ちません。
歯を支えている組織の欠損形態から考えて、重要となる部分が磨けないことが理由と考えられます。
参考文献
Christou et al. (1998)
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歯周組織再生療法について
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歯周組織再生療法には GTR法と エムドゲイン法 があります。
GTR法は私が留学したスウェーデン、イエテボリ大学から1980年頃始まったテクニックです。
一般的に歯周組織再生療法とは呼ばれていますが、
GTR法では歯周組織は再生しません。通常の手術のみと比較した場合とでは
約0.5mm程度の歯周組織が回復するといわれていますが、これは平均の値ですから
かならずしもGTR法が通常の歯周外科治療(手術)よりも優れているとはいえません。
非常に費用効果性の悪い術式で、かつ治療が難しく
感染しやすいことが失敗する大きな理由だろうと考えられています。
したがって、私が留学した1993年には、もうすでに用いられないテクニックに
なっていました。
最近の Cochrane Review によれば (Needleman et al. 2001) GTR法を8回行ったら
1回程度は通常の手術よりも効果があるだろうと報告されています。
患者さんと、よく話しをして、それでもやってみるかどうか決定すべきだと思います。
参考文献
Pontoriero et al. (1988)
Pontoriero et al. (1989)
Pontoriero et al. (1992)
Pontoriero & Lindhe (1995)
Pontoriero & Lindhe (1995)
Needleman et al. (2001)
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エムドゲイン法について
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エムドゲイン法はスウェーデンから1984年頃始まったテクニックです。
1993年にはすでに色々な実験データが報告されていました。
歯周組織を再生させることが目的で行われたのですが、
通常の手術と比較し0.5mm程度効果が大きいことは臨床的に報告がありますが、
誤差の範囲と考えられます。
現在までに、明らかに歯周病に対して歯周組織を再生できたという信頼できる報告はありません。
また現在ではエムドゲインは日本では販売中止となっています。
参考文献
Heijl et al. (1997)
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メインテナンスについて
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メインテナンスの概念は主にスウェーデンから始まったといってよいでしょう。
代表的な先生は私が留学したスウェーデン、イエテボリ大学のAxelsson先生です。
彼の代表的な研究では15年間メインテナンスした患者さん (375人) のほとんどで1本も抜歯を
せずにコントロールできたことが報告されています。
通常定期的に歯科医院に6ヶ月に一度毎に来院されることが推奨されますが、
個人により、その間隔は異なるべきですし、何よりも重要なことは個人の歯周病に対する感受性により
異なるということが示されています。
大切なことはメインテナンスに入る前に問題(歯周ポケット/出血)を治しておくことです。
深い歯周ポケットが残存している状態では3ヶ月に一度来院したところで歯周病の進行をとめることはできません。
参考文献
Axelsson et al. (1991)
Rosen et al. (1999)
Rosling et al. (2001)
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