カリソルブついて

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最近カリソルブという薬剤が日本でも使用されていますが、ドリルで歯を削らないで良いとか、

麻酔が要らないという触れ込みで宣伝されています。

しかしながら、この薬剤はスウェーデンで1993年にはすでに使用されていますが、もともとは1985年頃

アメリカの市場に出回りましたが、すぐに使われなくなりました。

この薬剤はやわらかい虫歯の部分しか溶かすことはできませんので、適応は非常に限られています。

通常虫歯は、硬いエナメル質よりも、やわらかい象牙質の方が進行も早く、入り口は小さなものが多いです。

しかし、小さな入り口からドリルで歯を削らないで、薬のみを使用して全ての虫歯取り除くのは不可能です。

麻酔なしで、エナメル質を少し削る必要があります。器具を挿入するためにも必要な場合は削ります。

また、エナメル質のみの虫歯であれば、治療する必要がない場合が多いですし、

その場合はカリソルブは必要ありません。

象牙質まで達した虫歯の場合は、理論的に、象牙質は歯髄につながっていますので、痛い場合があります。

痛みの感じ方で、それを苦痛とされない患者さんもいらっしゃるでしょうが、

32%の人は苦痛を訴えていますし、3%(Nadanovsky et al.)、8%(Kakaboura et al.)の人は

麻酔を要求されていると報告されていますので、そのケースにより異なります。

一般的に治療時間は普通の治療よりも長くかかります(Nadanovsky et al.Kakaboura et alFure et al.)。

カリソルブでの治療中虫歯を取るためにさらにドリルで削る必要がある場合が

10%報告されています(Kakaboura et al.)。

治療は保険適応外となります。

 

歯科恐怖症の患者さんや小さなこどもの乳歯のように、

穴が空いているが虫歯が浅い場合には、適応となる場合があります。

 

参考文献
Fure & Lingstrom (2004)
Lager et al. (2003)

Kakaboura et al. (2003)

Nadanovsky et al. (2001)

Fure et al. (2000)

Ericson et al. (1999)

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虫歯(う蝕)について

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口の中には300〜400種類のばい菌(細菌)がいるといわれています。その中のあるばい菌は かならず歯に吸着してきます。ちょうど磁石の+、−のような関係です。そして歯の表面でばい菌は増殖してコロニーをつくります。人間が増えて集落をつくるのと同じと思ってください。歯の表面にできたばい菌の集落をプラークとよびます。プラークとは、ばい菌のかたまりであって食べかすが付いているのではありません。さて、ばい菌は私たちが食べるもの、炭水化物、特に砂糖が大好きで それを餌にして歯の表面に接着しやすくするベタベタした多糖体をつくり自分たちの足場がためをして攻撃開始、酸を発酵させ環境を酸性にしてエナメル質を溶かします。個体差はありますが、pH5.5ぐらいから溶け始めます。これが虫歯のはじまりです。しかし、乳歯やはえてきたばかりの永久歯は、このpHよりさらに弱い酸性度の環境でも溶け始め、簡単に虫歯となります。また、奥歯のかみ合わせの面には、溝がありばい菌がたまりやすく、また歯と歯の間は磨きにくく、ばい菌がたまりやすいことから虫歯の好発部位となります。歯の歯冠の構造は外側がエナメル質、内側が象牙質、さらに神経(歯髄)へと続きます。エナメル質は象牙質、神経の保護もになっているわけです。ちょうど皮膚が体を保護しているのと同じだといえます。さて、皮膚は切り傷をつくっても自然治癒してくれますがエナメル質も自然に治るでしょうか?ホワイトスポット(白濁)とよばれる初期の状態ではエナメル質がかけていないため、可能性は高いと考えられていますが、患者さんが虫歯とは思わない時期ですので、みのがしてしまいがちです。もう治る見込みのない穴があいてはじめて気づくことになります。エナメル質に穴をあけ、ばい菌たちは、象牙質へと進入、さらに放置すると神経に進入します。痛くなることもあります!歯の根の構造は外側がセメント質、内側が象牙質、さらに神経へと続きます。セメント質はエナメル質ほど硬くなく、厚みも非常に薄く、歯周病の患者さんではセメント質が失われていることもあり、ばい菌は簡単に溶かし象牙質に進入し根面に虫歯をつくります(根面カリエス)。私たちの体の一部である歯は、穴があく状態の虫歯となると二度と元にはもどりません。治療として、ばい菌を取り除きいろいろな材料で歯を復元し、新たなばい菌の進入を防がなくてはなりません。そのため、非常に精度の高い治療が理想的です。しかし、再生可能な時期に防げるならこれにこしたことはないわけです。これを行うには、定期検診と予防が必要です。ご自身の歯の価値を見つめなおしてください。

参考文献
Miller (1984)
Keyes (1960)


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う蝕(虫歯)の治療について

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う蝕?
表面だけのごく浅いう蝕の場合(ホワイトスポット)はフッ素(1000ppm以上)入りの歯磨剤でしっかりと磨くことで進行を止められる可能性がありますが、エナメル質が失われているものは削ってつめる治療が必要になります。

なぜ、そんなに削る?
歯の表面は人間のからだのなかで一番硬いエナメル質でできていますが、その厚みは1ミリくらいしかなく、すぐその下はやわらかい象牙質になっています。ですからたとえ表面が変色した程度で実際欠けていなくても、中のほうではその何倍もの大きさに進行していることがあります。う蝕の治療ではその破壊された部分をすべて取り除かなければなりません。

別に、穴なんかあいてないのに・・・
特に歯と歯の間のう蝕はかなり進行しないと自分では気づかないことが多く、気づいたときには歯の神経(歯髄:しずい)まで進行してしまっている場合があります。このようなう蝕は、自分で見つけることは難しく、またその大きさはレントゲン写真で確認しなければわかりません。

一回じゃ終わらないの?
どんな材料で修復するかによって一回で終わる場合とそれ以上かかる場合があります。また、歯髄近くまでう蝕が進行している場合はしばらくの間、仮りづめして食事の時やそのほかの生活で支障が出ないかどうか様子をみることもあります。

前に治してもらった所なんだけど・・・
う蝕の治療は、破壊された部分を取り除いて、そこを金属や、プラスチックなどで修復するのですが、そうすることでその歯が将来う蝕にならない、と言うわけではありません。むしろ、そういう歯は、原因である歯垢が付きやすく、取りにくい状況にあったわけですから、虫歯になる危険性は高いと考えられます。ですから再びう蝕になってしまっている場合(二次う蝕)は再治療を受け、他の歯も含めて、いわゆるプラークコントロールをしっかりしなければなりません。

そんなに痛いわけじゃないんだけど・・・
原因となっている細菌や、それが産生するある種の毒素によって象牙質の中のほうにある歯の神経(歯髄:しずい)が刺激されると「しみる」とか「うずく」とか言った症状がでてきます。しかし、歯髄まで虫歯が進行していても、常に症状がでるわけではありません。
むしろ、たいした症状はない場合が多いくらいです。
したがって症状はなくても検査によって歯髄までう蝕が進んでいる可能性が高い場合は、歯髄処置(根管治療)を行う必要があることもあります。

治療したところが痛いんだけど
私たちは大きなう蝕のある歯でも、できるだけ歯髄を残して歯の健康を保つよう努力していますが、歯髄の損傷が予想よりも大きいと治療自体が刺激になって、症状が出る、もしくはひどくなることがあります。
それは最初のう蝕の深さによっても異なりますが、症状が回復しない場合はやはり歯髄処置が必要になります。

参考文献
Brannstrom & Lind (1965)
Bender et al. (1963)


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充填治療について

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虫歯の進行は感染している歯の部分を削り取ってやれば、止めることが出来ますが、失われた部分はもとに再生しません。しかし、このままですと、食べ物を噛む時に不自由ですし、再度細菌が侵入して虫歯が再発したりする危険があります。そこで失われた部分をある材料を使って修復する必要があります。これが充填治療です。虫歯による欠損が大きい場合は、充填治療では修復できないことがあり、その場合はクラウンという被せ物を作ることになります。感染部分が神経に及んでいる場合は、神経の治療も必要となります。

充填材料にはグラスアイオノマー、レジン、アマルガム、金属などがあります。
主にグラスアイオノマー、レジンといった材料は、主に前歯のような審美性を必要とする場所に使用します。奥歯にも使用することがありますが、強度があまりないので、小さな虫歯の時に使われます。アマルガム、金属は、主に臼歯などの強度の必要とされる部位に使用されます。グラスアイオノマー、レジン、アマルガムは1回の治療でつめることができますが、型をとってつめる方法の場合(インレー修復:金属の詰物)は模型上で製作するため、2回かかります。

厚生省の統計では、充填物の多くが5−7年で再治療されていると報告されています。多くは、詰め物のまわりから虫歯ができる2次う蝕が原因です。しかしながら、より精密な治療が行われ、正しいお手入れと定期検診をきちんと受けていただければ、充填物はもっと長期間もつことがわかっています。ゴールドインレーでは10年で96.1% 20年で87.0%30年で73.5% がもっています1)。材料の違いにより、その充填物の長持ち度には差が認められます。レジン、アマルガム、インレーを比較した研究では、10年後の生存率は、レジンが55.9%、アマルガムが72.0%、インレーが91.1%でした2)。しかしながら、材料にはそれぞれ利点欠点があります。たとえば、レジンやセメントは金属に比べると、強度が劣りますが、歯を削る量は少なくてすみますし、1回で治療が可能です。また前歯などの目立つ部位にも使えます。ですから、虫歯の場所や状態に応じて、もっとも適した材料を選択するのが良いと思います。

充填処置を行う歯の多くは神経のある歯です。神経を細菌感染から守るためにも、十分な感染歯質の除去と確実な封鎖が必要です。そのために、ラバーダムというゴムのマスクをつけて治療したり、顕微鏡を用いたりすることは、大変効果があります。残念ながら、このようなやり方は、現在のところ保険治療では十分行うことは出来ません。費用は治療時間と材料によって異なりますが、1カ所の治療につき***円ほど必要です。

参考文献
Studer et al. (2000)
Bentley & Drake (1986)



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