函館からトラスト事務局助成活動 1996  



吉田繁治

函館市元町31番地

ここ数十年で、全国各地の多くの「まち」や「みち」が急速に整備され、

大きく・きれいになった一方、

機械的で人工的、特徴のない画一的な印象も拭えず、

何となく違和感を感じてしまいます。
しかしながら対照的に、ここでは路地をはじめ、
原っぱやツタ這う石壁、昔ながらの家並みなど、
懐かしさや安堵感を覚えるような魅力に溢れています。
控えめな規模、狭いみち、時間を積層してきた空間は、
巨大なスケール、車のための広い道路、整然とした人工的な空間とは異なる、
親しみやすい人間的な温かさに満ちているような気がします。
時代の流れの狭間でひっそりと生き続けてきたかのようなこの空間に、
歩けば歩くほど、
”じわー”っと沁みてくるような愛着を感じます。
 さらに、互いの顔の見える、
確かな人のつながり
が、この穏やかで調和的な魅力を保ち続けてきたように思いました。
そして、昼間同様、”じわー”っと心に沁みてくるような夜を、
ここに創出したい(創出できる)と考えました。
具体的には、「暗さ」を最大限に生かしながら、
皆が少しづつ「生活の明かり」「気持ちの灯」を外に洩らし、
身近で日常的な物に良さを発見し、小さな「価値の光」を添えていく、
といった月や星とも共存できる穏やかでシンプルなものです。
昼のように明るい大量の光や、
非日常的・イベント的な光を目にする機会は増えましたが、
素朴で美しい、夜らしい光を見ることはほとんどないように思います。
加えて、光は目に見えるため、結果をはっきりと認識することができます。
そのため、住民とともに、実際に光環境を創りあげ、
実感することに意義があると考えました。


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