ユメミルクスリ
2005年12月24日作成
最終更新日 2006年1月3日

「はじめに」

 メーカーのサイトで内容を確認するや否や、ほとんど衝動的に購入を決定していた。ダウナー系とわざわざつけるのだから、一体どの程度の暗く淀んだ話しなのか興味があった。ちなみに、修正ファイルは充てない(バージョン1.0.1.0)。




「悪がきっちりと粛清された(あえかシナリオ)」

 クラスで浮いてる少女に惹かれる、という設定で陰湿な虐めで鬱になる、という予想していた通りの展開だった。そればかりか、主人公と白木あえかに降りかかる火の粉を振り払うには、捨て身でいくしかないと思っていたら、それすら、こちらの思惑通りになったことにある種の感動すらした。
 あえかがレイプされそうになった時「これは犯人の仲間の誰かを、確実に殺すくらいの強い気持ちがないと打開できないな」なんて思っていたら、本当にそういう展開になった。陰湿なイジメに対抗するには、被害者は加害者以上の悪者になるくらいのしたたかさが求められる。どうせだれも助けてくれないし、それで辛い目に遭い続けるくらいなら、このくらいの開き直りというか、毅然とした態度を見せつけるしかない。そういう意味では、自分の思っていた通りの展開で切り抜けてくれたことに、溜飲を下げさせてもらった。
 極限状態にまでに追い込まれたら、やはり最後は相手と心中するくらいの覚悟で、抵抗するしかないように思う。いつまでもいい子でいようなんて考えは、常軌を逸した集団には通用しない。それも自分だけではなく、大切な人の命まで懸かっているのだから。自分の恋人がレイプされそうになった時、これはレイプを先導する奴を殺してしまうしかない。そう考えていただけに、本当に行動に移してしまったことには、素直に拍手を送りたい。このことで事件の加害者はかなり悲惨な目に遭うが、それも当然の報いである。むしろ、悪がきっちりと粛清されたことに胸のすく思いをしたくらいだ。




「ねこ子が望んだ夢を共有させてもらえた(ねこ子シナリオ)」

 そうなんだよ、『妖精郷』はというものは、古い地球人には存外見えないものであって、その存在はあるに決まっている。そこまでにどんな苦労を強いられようとも、決して諦めなければ辿り着けるんだと信じたい。ねこ子がどんな境遇にいて、どのように追い詰められていたかどうかなんて、些細な問題でしかない。何もかもを忘れて「ただ今という時間を味わいつくしたい」と思うねこ子の気持ちは、痛いほど伝わってきた。
 バッドエンドで、最後にねこ子が「男坂」の未完のような階段から、パトラッシュの如く消え失せた件に至っては、うかつにも涙がうっすらと浮かべてしまった。これ以上頑張らなくていいから『妖精郷』の世界で安らかにお休み、という図式が不意に浮かんで、なんだか泣けてしまった。現実ではハッピーエンドのように円満に解決するなんてこと、訪れようはずがない。だったら、夢のような気持ちに浸ったまま、別の世界へトリップしたいと願うねこ子を、どうして否定できようか。
 その場限りの夢想に耽るねこ子の無邪気な振る舞いは可愛いとさえ思っている。現実がどうかなんて愚問に過ぎない。ねこ子が望んでいた夢を共有させてもらえたという感覚を、忘れないでいたい。




「どっちつかずの中途半端(弥津紀シナリオ)」

 厳しい現実を見せ付けたあえか、とことん甘い夢を見させてもらったねこ子、という両極端な話には十分満足した。それなら、桐宮弥津紀はというと、どっちつかずの中途半端さが、内容までも消化不良なものにしてしまった。
 常に死と隣り合わせにいる弥津紀が醸し出す、そこはかとない危うさは十分に感じた。けれど、肝心なところで言い逃れをして話の核心に触れようとしないことに、苛立たしさを感じた。弥津紀が思い詰めるようになった原因を探ろうとするのであれば、きちんと解明すべきであった。人に伝えるのが下手だという性格を前面に押し出しきれなかったことも、失敗の要因になっている。お陰で弥津紀シナリオでは終始、何かしら疑問を抱くことが多かった。それは即ち、ユーザーを騙しきれなかったことに他ならない。



「最後に・・・」

 ダウナー系青春恋愛AVGというだけのことはあったと思う。あえかを不良から救い出す方法には激しく賛同したし、ねこ子が見ていた儚い夢にはうっとりさせてもらった。良い意味で極端な思想をシナリオに捻じ込んだと思っている。シナリオのバランスが悪かった弥津紀があったことを差し引いても、トータルではかなりの良作ではないだろうか。



【今回プレイしたゲーム】
タイトル
【メーカー】
対応機種発売年度
ユメミルクスリ
【ルーフ】
win98/Me
2000Pro/XP
2005年