『きっかけ』
【 1章 (伊月と小夜) 】
『序盤について』
『三角関係になったことで少しは面白くなってきた』
双子の水瀬姉妹と出会うまでの道のりこそあまり良くなかったが、微妙な三角関係に発展する頃にはそれなりに面白くなってきた。中でも姉妹による駆け引きが見え隠れする展開はなかなか上手く描かれていたと思う。『なんとなくいいなと思える話だった』
終盤に差し掛かって伊月の意外な事実が判明した辺りから徐々に続きが気になりだしてきた。最後は水瀬姉妹の気持ちのすれ違いによって演出された切ないお別れという締めくくりだった。具体的にどう良かったのかはよく理解してないんだけど、なんとなく心揺さぶられる結末だったようには思っている。『ちょっとだけ小夜のファンになった』
あれから何度か読み返すうちに自分なりの解釈が浮かんできたので、ちょっと書いてみようと思う。これまでもどちらかといえば小夜を応援していただけに、彼女の立派な立ち居振る舞いを見ていたらついつい彼女の擁護というかフォローをしてみたくなってしまった。「こんなことを小夜は思っていたのではないか」
小夜と風間彰(以下彰)が偶然再開するシーンでの会話で、小夜は彰のことに気がつかないような素振りだったけれど、実際は違うのではないかと思い始めた。
【 2章 (さやか先輩) 】
『今一つ説明不足の内容に終始戸惑った』
【 3章 (透子と茜) 】
『強烈に存在をアピールする義理の妹茜』
「どこまでも可愛らしい妹」
話を進めていけばいくほど、茜の無邪気で溌剌とした姿にどんどんと惹かれていく。彼女の素直さ、愛らしさ、さっぱりした性格は理想の妹像そのものといって差し支えない。『なんだか知らないけど面白かった(茜エンドについて)』
最後はなんだったんだろう。まあ、良和のカウンセラー「若林鏡太郎(以下鏡太郎)」の性格が歪んでいたのはいいとしても、茜は兄である良和のことが好きだったのではなかったのか。それがどうしてあんな空恐ろしい結末になってしまったのだろう。確かに、良和にとっては残酷な結果になってしまったんだけど、理屈はともかく、背筋の凍るような終幕は個人的には好きなので一向に構わない。なんていうか、いい意味で「そうきたか、やられたあ」という感じだった。なんにしても、今までの中ではもっとも面白いシナリオであることは間違いない。『本当にしてやられた(透子エンドについて)』
茜が良和に擦り寄ってくる本当の理由を知って鳥肌が粟立った。そうか、そういう秘めた想いがあったから良和と透子の仲を裂こうとしていたんだ。だとすると、茜エンドで茜と透子が二人して奇妙な会話をしていたことにも納得がいく。あの場面を見る限り、茜の願いは成就したといえそうだ。たとえ、周りから変な目で見られようが、彼女さえ満足しているのなら、そういう愛情もありかなと思う。
【 4章 (名無しの少女) 】
『序盤は面白く中盤は中弛み』
『夏祭りエンドについて』
2章以上に何がなんだか分からない内容だった。そもそも千夏は1〜3章でどういう役割をになっていたのか、それすら理解できなかった。反面、お嬢に関しては彼女自身が明確に語ってくれた。そう、お嬢は死んだ者の魂を成仏させる死神だったのだ。『お土産エンドについて』
夏祭りエンドと同じく「なんのことやら、はてさてふむう」な感じだった。こちらでも千夏の説明は曖昧で、某かの力を用いて人助けをしようとしていたくらいのことしか分からなかった。それにしても最後はなんだったんだろう。途中までは病弱の妹ちとせだけでなく、宏もこの世から旅立ってしまうばかり思っていた。そうしたら、お終いのところで稲葉兄妹だけでなく、名無しの少女までもがひょっこりと顔を出していた。となると、これまでのシリアスな展開は本当になんだったんだろうかと思い悩んでしまう。とりあえず、現状では己の読解力の無さも手伝ってこの程度のことしか考えが及ばなかった。『そして、セカンドプレイ』
一通り事情を飲み込んでから再び最初から読み返してみると、今まで分からなかったことが理解出来るようになることで違った面白さが体験できる(特に1章で)。そのため、「水夏」を真に楽しむことが出来るのは2周目からといえるかもしれない。『プロローグについて』
一番初めのプロローグ、実は4章の主人公である宏が村に訪れた時の情景だった。その辺りの事情が分からなかったので、あの時はダラダラしていて退屈だ、なんて思ったのだ。それにしても、こうしてもう一度やり直してみると、まっさらな状態で始めた時では味わえない新たな発見の連続に驚かされるばかりだ。
セカンドプレイ 【 1章 (伊月と小夜) 】
『家庭環境』
「対照的な2人のヒロイン」
静の伊月と動の小夜という好対照なヒロインを見てこれまでは小夜の歯に衣着せぬ物言いが割と好きだったが、改めて見直すと夢みがちで一つのことに没頭すると周りが見えなくなる伊月も悪くはないなと思えるようになった。『1章における自分なりの解釈』
たとえ一時的にせよ、伊月が現代に蘇られたのは、おそらくは死者と対話出来る千夏と不思議な力を秘めた巻物によって引き起こされた奇跡ということなのだろう。きっと実の父親に撲殺された時の無念な気持ちが千夏の心に届いたものと思われる。そして、伊月の気持ちを汲み取った千夏は巻物の力を借りて期間限定で復活させたのではないかと推察される。もちろん生き返った訳ではないから、どこを怪我をしようと何度も撲殺を謀ろうと、翌日には元通りになる。
セカンドプレイ 【 2章 (さやか先輩) 】
『とにもかくにももう一度考えてみる』
セカンドプレイ 【 3章 (透子と茜) 】
「リプレイならではの楽しさ」
「駅の待ち合わせや、茜の身体に対する違和感、疲れやすいと良和がぼやく原因、そして入院している『あかね』という名の記憶喪失少女」などはもう一度見直すことで「ああ、そうだったのか」と納得することが多かった。それから海水浴中に(透子が演じた)茜が溺れるというハプニングがあり、その時診てもらった医者こそ茜という名の少女の主治医だった。後で医者は少女に2人にあったことを話す。そこで「お前さんと同名異人に会った。もう一人連れがいて2人は兄妹だといっていたが、その割には全然似てなかったな」というようなことを少女に聞かせるのだが、これも事情を知っているだけに思わず顔が綻んでしまった。こうしてリプレイすることでそれぞれに秘めた思惑を改めて確かめられたことは何にも増して嬉しかった。「ひょっとしたら茜も…」
透子の執念も凄まじいものがあったが、もしも、良和と出会う前から彼女を独り占めするにはどうすればいいかと考えていたとしたら、茜も相当な手練れである。何故なら透子は鏡太郎の気持ちこそ理解していたが、茜の真意までは見抜いてない節があると思ったからだ。ただ、透子の側からすれば、まさかそこまで茜に慕われているとは想像だにしていなかったに違いない。茜にしても本当の気持ちを知られたら嫌われてしまうのではないか、という懸念もあってこれまでは表だった行動は控えていた。その辺の微妙な感情を考慮してもう一度見直してみると、同じ台詞でもまた違った世界が開けてくるような気がする。「血の繋がりについて」
良和は序盤で茜と血の繋がりはないといっていたが、終盤で繋がりのあるようなことを完全にではないが匂わせていた。これを前提にすると鏡太郎は「茜と良和は血の繋がりはない」と嘘をついたことになる。しかし、シナリオを見る限り、どっちともとれるような表現で本当のところはなんともいえないのかもしれない。セカンドプレイ 【 4章 (名無しの少女) 】
4章に限って言えば、序盤から中盤にかけての印象は最初の頃とあまり変わらなかった。セカンドプレイにおいても序盤を過ぎてからの延々と続く中だるみな展開はやはり戴けない。どうせなら序盤に見られた宏、お嬢、アルキメデスによるたわいのない掛け合いを中心にした方が面白かったような気がする。『どうやら夢オチのようだ』
夏祭りエンド(ひょっとしたらお土産エンドも)は夢オチということで間違いなさそうだ。この結末自体はあまり好きではないけれど、夢の中で巻き起こる不思議な現象はそんなに悪くなかったと思う。『学生服の少女エンドと鬼籍エンドについて』
どっちつかずの選択肢を選んでいるうちに辿り着いたのだが、いずれも唐突に事の成り行きをなぞらえるだけという不親切な結末だった。また、学生服の少女エンドでお嬢が学生服を身に纏うのだけど、その際、どんな格好だったのかが見られない(背景は真っ黒)というのも残念でならない。
【一通り終えて】
『独自の便利な機能がいくつも搭載されている』
章単位でクリアすると二度目からはあらすじとして読み飛ばしていける機能には度々お世話になった。長い文章や退屈だった部分などはこれでさっさと次に進められるのは非常に有り難い。
細かいところでは、シナリオ情報という文章の量やどこまで読み進めているのかや、選択肢の有無などが一目で分かる機能は便利だったし、個別で声のオンオフを設定できるというのも重宝した。
ゲーム画面の構成では1〜3章がノベルタイプで4章はウィンドウ型でメッセージが表示される。このうちどちらが良かったのかというと、後者にあたるウィンドウ型の方に分があるように思った。理由は、後者は誰が発言しているのかが読み返し時に分かるのに対し、前者は全く分からないからだ。また、メッセージの読みやすさにしても、窓枠にすっぽり収まっている方がテンポよくゲームを進められるので、次回作以降ではウィンドウ型で統一した方がいいと思う。
『演出について』
どの章のヒロインも朗らかな表情の似合ういかにも一般受けしそうな容姿だと思う。ただ、キャラの表情がコロコロと変わる割にはその違いがあまり感じられなかったのはちと痛い。微妙な表情の変化を狙ったのだろうけど、もっとパターンを増やさないと意味がないように思う。『声優について』
何はともあれ茜役の声優がずば抜けていた。「地球在住のプリティーな女の子」というイメージにピッタリな愛らしい猫撫で声で縋り寄ってくるのだからたまらない。そんな中、透子の声優が今一な感じだったのと華子(千夏)の台詞で「さ、す、せ」が聞き取りにくかったのは残念だけど、それ以外は概ね水準以上の素晴らしい演技だったと思う。『シナリオについて』
全体を通して言えることは一度で理解するのは非常に困難な内容だということだ。そのため、シナリオをきちんと把握するには繰り返しプレイする必要がある。しかし、そうしてシナリオに対する理解力を深めても、それだけでは不十分と言わざるを得ない。そこから自分なりの解釈をどこまで当てはめられるかで「水夏」という作品の評価は決まるといっても過言でない。「個人的な疑問に対する答え」
このままだと単なる説明不足と決めつけてしまうところだが、ちょっとばかり腑に落ちなかった。何故なら、他のレビューサイトを見ると舌足らずな内容と思われる2章と4章について評価しているところが少なからずあったからだ。その辺りをいろいろと読み漁ってみたものの、今一つピンとこなかったので、それなら自分で納得のいく結論が出るまで繰り返しプレイした方がいいだろうと思い立った。『結論』
断片的に用意された情報を手掛かりに、想像力をどこまで拡げられるかによって評価が分かれる作品だと思う。意図的に省かれた部分を自分なりに補完することが出来れば十分楽しめるが、それが出来なければなんのことやらさっぱりという状態に陥ってしまう。とはいえ、明らかに説明不足な部分があったことも確かで、その点ではかなり人を選ぶ作品だと思うが、1、3章の展開は個人的にもの凄く気に入っているので、こういうのもたまにやる分にはいいかもしれないとは思っている。タイトル | 対応機種 | 発売元 | 発売年度 |
水夏 | win95、98、me | サーカス | 2001年 |
タイトル | 対応機種 | 発売元 | 発売年度 |
銀色 〜完全版〜 | win95、98、Me | ねこねこ ソフト | 2001年 |
Kanon | win95、98 | key | 1999年 |
AIR | win95、98、2000 | key | 2000年 |