水月
2003年11月22日作成
最終更新日 2004年2月15日

【マヨイガへの手掛かり】
琴乃宮雪  宮代花梨  香坂アリス、香坂マリア  牧野那波、ナナミ

一通り終えて

『はじめに』

 いろんなところの感想で【マヨイガ】と呼称されるものに対する反応の異様さに興味を惹かれた。果たしてそれがどれ程の存在なのか、この目で確かめようと思う。ちなみに、難解な説明とあっさりすぎた結末だった和泉エンドと、「気がつけば・・・」で全てが片付けられていた鈴蘭エンドは、【マヨイガ】との関わりがとても希薄に感じられたので、それぞれの感想は割愛させてもらった。
 修正ファイルに関しては一切使用してない(Release Ver.1.00)。また、雪エンド3、雪エンド1、和泉エンド、花梨エンド、姉妹(アリス、マリア)エンド、鈴蘭エンド、マリアエンド、アリスエンド、那波エンド、雪エンド2、の順にクリアしている。 

『序盤で抱いた印象』

 幻想的な雰囲気の漂うオープニングにちょっとばかり引き寄せられた。流れる映像こそシンプルながらも、どことなく「痕」(リーフ)を彷彿させる儚くも美しい音色に、何かが起こりそうな予感を抱かせた。
 そうこうしているうちに、程なくして浮き彫りになる雪とナナミの淫靡な行動に、息を呑んでしまった。どうして彼女達は性欲のことになると執拗なまでに渇望してしまうのだろう。その辺りの事情を納得のいく形で説明してほしいところだ。もし、あるのならば凄いことであるのと同時に、家庭用に移植されない原因にも為り得る。普通の日常に潜むエロティシズムが必要不可欠だというのなら、その行動に掻きたてる理由は一体なんだというのか。


【マヨイガへの手掛かり】

琴乃宮雪

『雪エンド(1、3)について』

 物語も後半になったであろう頃、雪という名の少女の存在を揺るがす展開に唖然しつつも、何かひっかかるものもあった。そうした感情を抱えたまま雪エンド3を迎えたが、彼女や【マヨイガ】の正体については、判然としないままだった。推測すると、現実とは別の次元の世界、もしくは夢の中の閉じた空間、でなければ透矢がいうように並列した世界の一つなのか、謎は深まるばかりだ。
 続いて雪エンド1を見てみると、いつ夢と現実の狭間に放り込まれるかどうか判らないほど、不安定な世界だということがなんとなく判ってきた。おそらく、雪エンド1というのは、一種の現実逃避を形に表したのであろう。仮にそうであったとしても、雪のような可愛らしいメイドさんが、自分の為だけに誠心誠意尽くしてくれるのだとしたら、瀬能透矢でなくてもこっちの方がいいやと願いたくなるのが人情というものだ。
 もう一つ焦点となるものがあるとすれば、透矢に対して執拗に肉体関係を求めていた雪とナナミの謎である。これも雪エンド1によって明かされている。理由は、雪もナナミも特別な能力を有した人種で、数ある特徴の一つに野生動物のように性的興奮を求めることも挙げていた。これで納得いくかどうかはともかく、雪やナナミがみだりに性的な欲望に駆り立てられる理由があったというだけでも、良しとせねばなるまい。

「雪エンド2について」

 雪エンド1でベタな幸福を目の当たりにしていたからか、雪エンド2を見ていたら無性に切なくなった。たった一つの選択で、雪という名の少女の存在が抹消されたままなのかと思うと、あまりにも悲しすぎる。例え、透矢が生み出した幻であったことが事実であったとしても、自分は雪がこの世に存在していたことを頑なに信じたい。



宮代花梨

『花梨エンドについて』

 シナリオを通じて【マヨイガ】とは何かが朧気ながらも掴めてきた。つまり、ゲームの世界におけるパラレルワールドの境界線みたいなところなのだろう。分岐するいくつもの選択肢の中心でナナミは見守っているものの、あくまでも後見人としてサポートするという感じなので、必ずしも望むような結末になるとは限らない。【マヨイガ】は現実でも夢でもない、別次元に存在する異世界ということのようだ。それと、【マヨイガ】が日本神話に関係しているということも何かの本で記載していたが、それ以上のことは残念ながら読み取れなかった。



香坂アリス、香坂マリア

『【マヨイガ】は実在するのか』

 どうやらアリス、マリアルートは本編(雪、花梨、和泉)とは別個のようではあるが、【マヨイガ】と全く関係ないかというと、そうでもなさそうだ。それにしても、アリスとマリア、それに彼女達の母親は一体どんな存在なのだろうか。夢や幻という単純なものでなく、霊のようなものが透矢に訴えかけていた、とでもいうのだろうか。それは何故なのかを考えると大分興味が出てきた。
 まず、姉妹と母親についていうと、彼女達の正体云々はともかく、世間で言う常識を知らないと「常人では見えないものが見える時もある」という理屈に、ちょっとではあるが納得してしまった。人生を重ねていくと「社会のルールが絶対に正しい」と信じ込んでしまいがちである。もちろん「そうしなければ安心して生きていけなくなる」という暗黙のルールも判らなくはない。しかし、それに縛られてばかりだと人生なんて案外つまらないものに思えてしまう。
 【マヨイガ】関連ということでは、神様やサンタといった現在の常識では実在しないとされているが「それらがいるのかいないのかを証明するのは難しい」なんて面白い例え話をしていた。例えば、テレビで討論されるUFOや地球外生物の存在の是非で互いの持論を戦わせているが、未だに結論は出ていない。その理由の一つに「本当に実在しないと仮定して、それを客観的に立証する方法が現代の科学をもってしても不可能」ということがあると思う。
 では【マヨイガ】はどうなのだろう。実在するかどうかとなると「一般の常識という枠で考えれば、あるはずがない」という結論になるだろう。しかし、そんなことでは芸がないし、何よりも面白くない。それに、先ほどの屁理屈からいえば、存在するかどうかなんて話はいくらやっても不毛で意味がない。だから、ここでは証拠とか根拠とかは脇に置いといて、まずは【マヨイガ】があるということを前提に、如何に想像力というか妄想力を膨らませられるかが、【マヨイガ】に近づく為の第一歩になるのではないだろうか。



牧野那波、ナナミ

『【マヨイガ】の秘密に迫る』

 現在と思われる透矢と那波の世界と、過去の七海とナナミの世界が【マヨイガ】を介在して繋がっていると錯覚してしまうことに、なんだか不思議な縁があるように思えてならない。那波とナナミの関係であるとか、何故ナナミは那波の意識に入り込んでいるのかなどを考えると、どちらが本当の世界なのか、それとも、全ては誰かの見ている夢の中の絵空事に過ぎないのか判らなくなる。
 那波シナリオでは手掛かりとなるようなキーワードがいくつかある。「水月」とは「水の波間に漂う月の様な不確かな存在」、夢とは「ここではない、どこか。今ではない、いつか」と「可能性」などが挙げられる。いずれも「どうとでも解釈の出来る捉えどころのない言葉」ではあるものの、「人によって考え方は千差万別なので、同じものを見ていても解釈の仕方は各個人で全く異なるのは当たり前」ということがいいたかったのかもしれない。
 さらに「この世に、あるべきものではないものが住む場所」と「非常識を常識に変える場所、世界が生まれる場所」に加え、これまでの手掛かりを併せて考えると、【マヨイガ】のなんたるかがある程度浮き彫りになったと思う。つまり「【マヨイガ】はどこにでも存在しながらも、肉眼では誰にも発見されることのない、一種の理想郷みたいな世界」ということのようだ。その世界に運良く潜入することに成功した透矢は「人の願いを叶える奇跡」によって、「星の数ほどある可能性」を体験したということなのだろう。


【一通り終えて】

『システムについて』

 読み返しの量が少な過ぎる(8ページ分)ことと、文章履歴で誰の台詞か判らないのは、ちょっと不親切ではないかと思った。各種環境設定も大まかな変更しか出来ないものの、必要なものは概ね揃っているので、まずは先に挙げた部分の改善が当面の課題であろう。

『まとめ』

 この作品で優れていたのは、いろんな意味で謎めいていた【マヨイガ】に対して、納得のいく回答に辿り着かせるヒントを提示したことである。これによって、【マヨイガ】とは何かというのをある程度浮き彫りにしたことは、大いに評価したい。
 用意された多くのエンディングは、無数にある可能性であると諭していたことについても感心させられた。選択肢で分岐するタイプなら当たり前のことかもしれないが、そのことを真正面から問いかけてきたのは、今まで体験した中では「水月」が初めてだった。
 日本の神とか鬼がちらついていたので、てっきり伝奇色の濃い物語になるものと思っていた。実際そっち系の話が謎に絡んでくることはあったがいずれも説明不足で、全体のテーマはどちらかというと「【マヨイガ】と呼ばれる不思議ワールドの秘密とは何か」というファンタジー色の強い話だったことに、一先ずは安心している。
 ただし、シナリオの完成度はどうだったかというと、大いに疑問が残る。【マヨイガ】に関わっているとされる「神話、伝承、特殊能力」に関する謎を散々振り撒いておきながら、どれもこれも独りよがりな説明ばかりでさっぱり理解できなかった。謎めいた部分と同じくらい大きなウェイトを占めていた恋愛にしても、琴乃宮雪は別格だったものの、それ以外はギャルゲーにありがちな範疇に留まるものばかりで多少面白味に欠ける嫌いがあった。あれこれと欲張らず、【マヨイガ】の謎に迫る内容と雪シナリオを中心に添えていれば、今以上に楽しめていたかもしれない。

『最後に』

 とはいうものの、【マヨイガ】と呼称される世界には不思議な魅力が一杯詰まっていた。おそらく、ゲームが始まった時点ですでに【マヨイガ】に引きずり込まれていたのだろう。あくまでも本人の意思次第とはいえ、様々な超常現象に手助けしてもらうことで、望む結果に導くことが可能な世界が本当にあるのならば、溺死する前に一度は伺ってみたいものである。そして、もし自分が【マヨイガ】に紛れ込むことに成功したら、是非とも琴乃宮雪に逢って彼女の膝枕の上で夢心地な気分を満喫してみたいものである。


【今回プレイしたゲーム】
タイトル
【メーカー】
対応機種発売年度
水月
【F&C(FC01)】
win98/Me/
2000Professional
(Service Pack 1以降)
2002年


【参考資料】
『ゲーム』
タイトル
【メーカー】
対応機種発売年度

【リーフ】
win95 不明