『きっかけ』
『物語の前半(共通シナリオ)について』
高校生活におけるありふれた日常が淡々と綴られ、学生時代にありがちなやり取りが描かれていく。それはいいのだけど、その間に心を揺さぶる事件が起こらなかったのが至極残念でならない。『中盤までで思ったこと』
智子との親密度が上がっていくまでの過程が大したことないなと思っていたら、突如彼女の身に降りかかる最初の衝撃が原因で宮本浩(以下浩)が憂鬱極まりない態度を取るようになってようやく面白くなってきた。こんなことなら最初のうちからいろいろと抜き差しならぬトラブルを起こしておいてくれていたら前半も退屈せずに済んだかもしれない。『その気持ち、よお分かる』
浩にとって2度目の衝撃後の様子を見ていると、多くの人が彼女を守ってやらなあかん、という気持ちになるのが手に取るようによお分かる。智子の生い立ちもそうだけど、現状でも彼女の家庭環境は決して誉められたものではない。もし、この状況に身を置いていたら、今智子を守らなければいつ守るんだという気持ちで一杯になっていたに違いない。『そういうこと、だったのか…(智子エンドについて)』
幾多の困難を乗り切り、ようやく2人で輝かしい未来に向かって歩んで行こうと希望に満ち溢れていたその矢先、真っ逆様に突き落される真実を知らされる。否応なしに訪れるどうしようもない失望感は、これまでプレイしてきた人間であれば誰しもが感じることであろう。『ごく普通のラブコメ』
智子シナリオのようなあっと驚くようなことはなく、中盤まではごく普通のラブコメにありがちな展開だった。実際のところ、かなり突っ込みどころはあるのだけど、子供っぽい仕草で感情を露わにされると別にいいか、なんて思ってしまう。【まりも】みたいに素直で可愛らしい後輩からこんなにも慕われたら悪い気になるはずがない。『どうしてこんなことに…(【まりも】バッドエンド)』
【まりも】の仕草が可愛らしかっただけになんの前触れもなく訪れる惨劇は見るに耐えなかった。おそらく智子の親父が持つ巨大な権力を傘に仕返しをしたのだろうけど、娘は無事に帰ってきたんだから何もそこまでしなくてもいいではないか。これでは何のために智子が家に戻っていったのか分かりはしない。これまで無邪気にはしゃぐ【まりも】の愛らしさで和んでいただけに、不条理さが拭えないまま迎える悲しい結末に「どうしてこんなことになったのか誰か教えてほしい」と叫ばずにはいられなかった。『今一つ納得がいかない(【まりも】エンド)』
一応【まりも】にとって幸せと言えそうな結末なんだけど、バッドエンドに比べるとかなり無理があるような気がした。結局のところ浩と【まりも】が襲われた理由というのは不明のままだし、その後のフォローというものも示されなかったことに今一つ納得がいかなかった。『文化祭直前からが本番か』
文化祭直前になって僅かながらだけど面白くなってきた。これから文化祭だと意気込んでいたところに水を差す出来事で穏やかならぬ雰囲気に変貌することや、中井戸麗次(以下麗次)の恋が見事に玉砕するところなんかはそれなりに良かったと思う。それに、【かすみ】の身の上話で先生として大人の考え方というものが垣間見られたのには結構感心した。きちんと相手の事を考えているんだというのがよく分かるいい話だった。『唯一笑えるポイント』
浩が【かすみ】先生のことを想うあまり、あたかも精神が壊れてしまったかのように振る舞うようになってからの【まりも】、麗次との会話にはかなり笑わせてもらった。中でも【まりも】が体型のことでからかわれて傷ついているところに浩がトドメを刺して落ち込ませた後に心の中で呟く的を得た台詞は可笑しかった。ただ、そういう風に思えるのは【かすみ】シナリオの時に限ったことであって、【まりも】シナリオだったらそれこそ洒落にならない。というよりも絶対に言ってはならない禁句になるな。『偉いぞ浩(【かすみ】エンドについて)』
なんていうか、思った以上に心の琴線に触れるいいシナリオだったと思う。事実を隠す時間が長くなればなるほど辛さが増していくところなんかは良く描かれていたと思う。また、それにつれて周りの反応もだんだんと心配になったかと思うと、ついには腫れ物にでも触れるようになるまでの様子もいい感じだった。『なんだか地味なヒロインだったな』
優しくて真面目で引っ込み思案、それでいて心配性な性格はいいとしても、【ほのか】には心に刻み込む決定的な何かが欠けていたように思う。もっとも大人しくて自分をあまり主張したがらないところが彼女の特徴と言われればそれまでである。しかし、まがりなりにも主人公である浩と絡むのだったらもう少し印象に残るような出来事があっても良かったのではないだろうか。攻略対象のキャラというのであれば無理矢理であろうがなんだろうが、何か一つでも突出した取り柄というか人を引きつける魅力というものを身につけてほしかった。一応二つあるエンドを見たけど、メインとサブの狭間にある中途半端なヒロインという印象は最後までぬぐい去ることはできなかった。「軽音楽部の存在意義」
どのシナリオに突入しても文化祭後になるとクラブに顔をほとんど出さなくなってしまう。これでは部活はヒロインとの出会いの為だけに用意されたイベントという感じで、だったら別に軽音楽部でなくてもなんでもいいのではと思ってしまう。せっかくバンドという華やかな素材を扱っているのだから、もう少しシナリオに絡ませても良かったような気がする。「同じようで違う2人のヘタレ」
主人公宮本浩(以下浩)のヘタレ具合は確かに『君が望む永遠』の鳴海孝之(以下孝之)とダブルところがある。しかし、孝之のそれに比べたら浩のなんかはそれほど騒ぐことのほどではないように思う。「ふと思い浮かべたこと」
ゲームをやっているうちに宇宙刑事ギャバンの主題歌がふと脳裏を過ぎった。サビで若いうちならいくらでも取り返しがつく、だから失敗を恐れずに目的に向かって突き進んでいこうという前向きなところは「世界ノ全テ」が伝えようとしている部分と重なるところがあるように思う。『システムについて』
階層別にデータを管理することでセーブ画面は格別に扱いやすかった。他にもスキップ機能や読み返しで音声が再生出来るなど、ゲームを進める上で必要なものは大体揃っている。『演出について』
特筆すべきものはないものの、CGなんかはそれなりの丁寧さで塗られていたし、BGMにしてもピアノやバイオリンの旋律で哀愁漂う雰囲気がよく出ていたように思う。『声優について』
主人公である浩以外は全員関西人でヒロインのみボイス付きで話しかけてくる。最初のうちは関西特有のイントネーションに違和感を抱くも、時間が経つうちに少しずつ慣れていった。はたしてこの発音が正しいのかどうかは分からないので何ともいえないが、どのヒロインもそれなりに演技していたようには思っている。『終わりに』
学生時代ならではの甘く切ない恋物語が随所に見られたことがなによりも良かった。中でも智子シナリオの出来は素晴らしく、彼女のことを守らなければと何度思ったか分かりはしない。極端なことを言えば、智子シナリオの為だけでもこのソフトを購入してみる価値は充分あると思っている。タイトル | 対応機種 | 発売元 | 発売年度 |
世界ノ全テ | win98、2000、Me、XP | たまソフト | 2002年 |
タイトル | 対応機種 | 発売元 | 発売年度 |
君が望む永遠 | win95、98、2000、me | アージュ | 2001年 |
タイトル | アーティスト | 発売元 | 発売年度 |
メタルヒーロー 全主題歌集 |
宮内タカユキ、 水木一郎、他 |
日本コロンビア | 2002年 |