『はじめに』
【ヒロイン別所感】
『シナリオについて』
『Hシーンの必要性』
『システムについて』
『CG、BGMについて』
『マニュアルについて』
『最後に・・・』
桐島ルカ
ハッピーエンドは、健志に対して複雑な心境を抱えざるを得ない状態に身を置いていることが、痛いほど伝わってくる素晴らしいシナリオだった。そうした事情があって、本当のことを隠し続けていたことを、ルカが独白するシーンでは自然と涙が溢れてきた。中でも、独白の直前で、生徒のほとんどがルカの為に手術してもらうよう嘆願するところで「ありがとう」としか返事をしなかったことも、ルカが抱く想いの深さ故の愛情だったことにいたく感動した。
夢の中でルカと健志が微妙にシンクロさせることで、2人の本音が伺えたのが何よりも良かった。それと、エピローグにおいてルカの手術結果を、明確にしなかったのも感心した。この場合、どちらにころんだとしても、下手な感動を押しつけられそうだったので、この処置は正解だったと思う。
対してワーストエンドは、途中まではエロティシズムをきっかけに、全てが良い方向に進展するかに見えるところは、ハッピーエンドとは別の意味で面白く描かれていた。それなのに、どういう訳か、気がつくと、悲惨なことになってしまっている。要所で強引だと思うところはありはしたが、巧みな文章だったからか、あまり不自然さを感じなかった。
だからといってルカの精神を壊してしまっていいかというと、そうは思わない。しかし、ひとつボタンを掛け間違うと、ワーストエンドのような結果が起こり得るだけに、心境は複雑である。
二宮杏子
ハッピーエンドに於ける三角関係を中心とした友情と恋愛のドラマも普通に面白かったが、それ以上に、今までの関係が粉々に砕けてしまうワーストエンドは、それに輪を掛けて見応えがあった。
会話の中に見え隠れする複雑な感情は、見事としかいいようがない。どんな手段を講じても、杏子のことを振り向かせようとする東一の必死さには、感心させられた。彼の取る行動は決して褒められたものではないが、本当に好きならば「例え周りの評判を落とすことになろうとも、杏子が側にいてくれるなら他には何もいらない」というところまで自分を追い詰めてしまうものかもしれない。恋愛感情の縺れで、誰か1人でも周りが見えなくなって暴走すれば、当事者が皆不幸になってしまう。それが判ってても抗えないのは「恋愛は肉欲に隷属する」故であろうか。
草葉ゆかり
忘れられない過去の呪縛に囚われるゆかりの苦悩というものに、ただならぬものを感じていただけに、心身ともに救われたハッピーエンドは、素直に安堵することが出来た。
ワーストエンドはどうだったかというと、天才芸術家と称される人間が抱える心の深層を、嫌というほど見せつけられた。それも「ただただ運命を呪うしかないと思えるほどの、悲惨な物語」としてである。過去に背負った呪縛から逃れようとして、結局は逃れられない辛さは、見るに堪えないものがあった。そうやって苦しみぬいた先にあったのは「見たこともない色」に染まってしまった衝撃の結末だった。
どうすることも出来ない状況下であることを考えれば、あのような選択をしてしまうのは、仕方のないことかもしれない。とはいっても、健志が「なんじゃこれ」と叫ぶ「デロリ」とした光景は、未だに思い出したくない異様さがあった。同様に、夢で出てくる童話「かごめかごめ」も、ゆかりの過去と重ねて考えてみると、途端に不気味な歌詞に思えて仕様がない。
天野美由
前半はそれなりに楽しめたものの、他のヒロインに比べると盛り上がりに欠ける嫌いはあった。出来ることなら、他のヒロインシナリオの時のような生き生きとした輝きを見せてほしかった。
ハッピーエンド後半、みんなで美由を救おうと祈りを捧げるのはいいけれど、少しばかり冗長すぎたような気がする。ワーストエンド後半は、最後のオチが良かっただけに、その辺の描写をもう少し見てみたかった。
シナリオ分岐は大きく分けてハッピーエンドとワーストエンドの2種類がある。それぞれは独立したシナリオとして成立しているので、ワーストエンドに突入したからといってゲームオーバーになる訳ではない。どちらがより重要とかいうのではなく、対極にある可能性を描きたかったのだろう。
対して、ワーストエンドシナリオのHに関しては、必然性は感じるものの、引っかかることもあった。確かに、快楽に溺れる様子は事細かに描写してある。テキストも豊富で読み応えがある。あそこまで精神的に追いつめられたら、誰でも気が狂って常軌を逸した行動をとっても不思議ではない。
しかし、気になるのは、どのシナリオでも気がつくと悲惨な結末になっていることだ。精神が崩壊させられるまでの過程は悪くないものの、今一つ納得しきれてない。もう少し精神的に追い込まれていく様子をもう半歩でも踏み込んで見せていたら、よりリアルな恐怖を感じられていたかもしれない。
文字機能で「フォントが選べる」という、当時は画期的だった機能が搭載されていたのは、やはり素晴らしいことである。また、通常画面で使われる女の子CGについては、ヒロインのポージングが自由に見られるという機能自体に、魅力を感じたといった方がいいだろう。なんといっても、ポーズだけでなく表情や眼鏡など、きめ細かく登録してくれるのは、やはり凄いことである。
その後、フォントの選択はほとんどのメーカーで採用されるようになった。しかし、通常画面で表示されるヒロインのCG登録は、残念ながら不採用の方が多いのが現状のようだ。
BGMは、音自体に関しては録音スタジオの環境が良いからか、これも、前作以上に美しい音色に仕上げてある。何より、各場面の雰囲気に合っていたし、普段何気なく聞いてても、心地いいとさえ思っている。中でも、FMラジオで流れる曲が特に良かった。冒頭で掛かるジングルはいかにも番組のコーナーが始まりそうだし、放送中に流れるトランス調の曲がFM番組の雰囲気をリアルに醸し出している。
タイトル 対応機種
発売元 発売年度
ポートレイト
win95/98/2000
テスラ 2000年
現時点での【個人的点数】 【90点】
『ゲーム』
タイトル 対応機種
発売元 発売年度
Blow
〜満ちた月、欠けた月〜win95、98
ロック
クライマー不明