ONE〜輝く季節へ〜
2002年1月18日作成
最終更新日 2002年1月31日

キャラ別感想
七瀬留美  長森瑞佳  里村茜  川名みさき  上月澪  椎名繭
【一通り終えて】

『きっかけ』

 元々感動できる良質なシナリオだという噂は知っていたがなかなかきっかけがなかった。そうしたらこの間とある方からのメールで強く進められたので、これを機会にやってみようと思った。

『序盤の印象』

 主人公(以下浩平)の傍若無人な言動に周りが振り回されるところは結構面白い。これに七瀬留美の突っ込みと川名みさきのボケが加わると楽しさは倍増する。話のテンポも日常の断片を見せるだけという感じでサクサク進むので非常に好感が持てる。



【キャラ別感想】

七瀬留美(以下留美)

 いろんな意味で留美はうい奴だった。周りの人がいる前では乙女であることを意識してるところや、浩平のちょっかいについついボケと突っ込みで対抗してしまうところなんか見てて微笑ましくなる。彼のことを意識するようになって可愛らしく振る舞うのもいいけど、思ったことをストレートに言い放っている方が留美らしくていいように思う。
 ただ、最後のあれはなんだったんだろう。留美が浩平を待ち続けていた時間は本当に一年だったのだろうか。はっきりした表現をしていた訳ではないので、想像するしかないのだけど、実際はそんなにも長い時間は経ってなかったのではないか。一年というのは単なる比喩で、そのくらい浩平のことを待ちわびていたところようやく彼が迎えに来てくれた。そう解釈すればなんとなくながらも納得のいく結末のように思えなくもない。



長森瑞佳(以下瑞佳)

 未遂で終わったとはいえ、瑞佳のことを深く傷つけようとしてもまだ浩平のことを信用しているというのはどういうことなんだろう。恋は盲目というけれど、それほど彼のことを愛していたということなのか。それとももっと他に信頼出来る理由があるというのか。事件の全貌も含め、原因が最後まではっきりしなかったのは正直どうなんだろうと思った。
 それと、留身の時と違い、浩平が一年もの間「永遠」と呼ばれる世界にいってしまったことを中途半端に実感出来る描写にも疑問を感じた。下手に状況を知ってしまったことが却って説明不足という感じを引き起こさせてしまっている。いつの間にか浩平はいなくなったかと思うと、一年後には何事もなかったように戻ってきただけで、あとはなんの説明もせず消化不良なまま終わってしまった。半端な描写をして疑念を抱かせるくらいなら留美の時と同様に容赦なく省いてしまった方がよっぽど良かった。



里村茜(以下茜)

 茜が抱えている悲しみ、そして浩平に対するいじらしさというものはそれとなく伺えた。それに、留美、瑞佳に比べて浩平が「永遠」と呼ばれる世界に出立してしまったことについて踏み込んで描いているんだけど、個人的には「ふうん、そうなんだ」という風にしか思えなかった。感動させようとしていることはなんとなく判るものの、そう思わせるには決定的な何かが欠けていたような気がする。



川名みさき(以下みさき先輩)

 身体的ハンデを微塵も感じさせないしっかりものでありながら、ちょっとしたことで拗ねてみたり、惚けた言動を見せたりするなど、ヒロインとしての個性はきちんと確立していた。けれど、物語の結末に関しては茜と同じ感想で、何を思えばいいのか判らないうちに終わってしまっていた。



上月澪(以下澪)

 みさき先輩同様身体的不自由を感じさせない純真無垢で天真爛漫な澪の姿にはどこか心が洗われる気分になる。彼女の屈託のない笑顔を見せられると浩平でなくてもなんとかしてあげなければという気持ちになってくる。かように澪の健気さはしかと心に焼きついたのだが、やはり最後のあれは如何ともし難いものを感じた。



椎名繭(以下繭)

 現実に当てはめて考えようとすると繭の設定はかなり無理があるように思われる。確かに彼女の実年齢と行動のギャップは大きい。それはそうなんだけど、なんでもありの世界という視点で全てを受け入れて、繭が浩平と出会うことで精神的に少しずつ成長していく物語という風に考えると、これが不思議と楽しめるようになった。
 結末に関してもこれまでの中では最も評価できる内容だった。一番の要因は浩平が「永遠」と呼ばれる世界から戻ってくる表現を曖昧にしたことだ。「そうかもしれない」と匂わすことでこれまで語ってきた「繭の成長物語」を引き立たせたまま、心地良い余韻を残して終わらせた演出は見事である。



【一通り終えて】

『永遠とはなんだろう』

 この作品のテーマである「永遠」とは「楽しく暮らしていた日々にずっと留まる」ことのようだ。振り返ってみると大切な人と過ごした日々があまりにも楽しかったものだから、為す術もないまま失われてしまったことが殊更悲しかったのだろう。こんな気持ちを引きずったまま生きていくくらいなら「いっそのこと永遠という名の世界に居続けたい」と願う気持ちはなんとなくながらも判る。

「表現方法について」

 表の日常とは別に存在する「永遠」は抽象的な表現にしているものの終盤で判明する内容を見るとちょっとだけ「MOON.」と似ているように感じた。表現の方法こそ違うながらも、共通しているのは「失って初めて判る特別な想い」を伝えていることだ。「MOON.」ではヒロインであり主人公でもある天沢郁美が母親への痛切なる想いが描かれていた。一方「ONE」では妹の存在がいかに大切さだったかを浩平が実感するというものだった。
 どちらも伝えようとしていることこそ似ているけど、個人的には「MOON.」のような登場人物の細かい心理描写を丁寧に綴っている方がしっくりした。だからといって「ONE」のように抽象的な表現を否定しているわけではなく、あくまでも自分はキャラの心理を深く掘り下げている方が好みだということがいいたいのだ。

『シナリオについて』

 今まで断片的に得た情報から想像を膨らませ、自分なりの解釈を確立しなければ感動することは難しいようだ。自分は繭シナリオで拙いながらもなんとか消化することである程度共感することに成功したけど、それ以外では残念ながら何かを感じ取るということは出来なかった。
 伝えようとしていることは朧気ながら判るものの、如何せん情報量が少なすぎた。これが日常のありふれた学園生活なら何も問題ないし、実際そういう展開になっているのは実に素晴らしい。しかし、物語を紐解く上で「永遠」の世界が登場人物に深く関わることの重要性を考えると、キャラの心情なりなんなりをもう少し詳しく掘り下げてほしかった。

『演出について』

 癖のあるキャラデザインは前作「MOON.」で気にならなければ大丈夫だと思う。背景CGに関しては1998年の作品として考えればまあまあ頑張っている方ではないだろうか。BGMはどうかというと、折戸伸治が監修しているだけあって流石にレベルは高いんだけど、出来れば監修ではなく実際に作曲してほしかった。

『システムについて』

 発売時期が古いせいか読み返せなかったり、未読既読の判定がない、といった不便さはある。しかし、スキップ自体は異様に早いので、使い方さえ間違えなければ多少は役に立つ。それらを除けばシンプルながらもテキストタイプのゲームとして最低限の機能は揃っているようだ。

『結論』

 序盤から中盤にかけて繰り広げられる学園コメディを存分に楽しめただけに、終盤における舌足らずな展開は残念である。しかし、現実に即して考えようとはせず、自由な発想で頭を働かせて自分なりの世界を築くことで楽しむことが出来るシナリオがあったことを考えると、ユーザーの想像力次第ではいくらでも面白くなる可能性を秘めているのかもしれない。


【今回プレイしたゲーム】
タイトルメーカー 対応機種発売年度
ONE〜輝く季節〜タクティクス win95、981998年


【参考資料】
『ゲーム』
タイトルメーカー 対応機種発売年度
MOON.タクティクス win951997年